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≫カドゥケウスZ 2つの超執刀
■発売元 アトラス
■ジャンル ドラマチック手術アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※出血、暴力、殺傷描写あり
■定価 6090円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 4つ(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 ヌンチャク専用
■総説明書ページ数 29ページ
■推定クリア時間 8〜10時間(エンディング目的)、40〜65時間(完全攻略目的)
2018年、幾多もの危機を乗り越えてきた人類の歴史に新たな影が落ちる。

死に至る奇病『ギルス(guilth)』。

その発生地、原因、有効な治療法全てが不明。その脅威に立ち向かうのが、医療の裏の歴史を支え、あらゆる病の撲滅を目的とする世界組織『カドゥケウス』。

主人公、新米外科医の月森孝介はある手術がきっかけで『ギルス』との戦いへと巻き込まれ、カドゥケウスに身を寄せる事となる。遥かなる医道のその先に、彼らは何を見出すのだろうか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆DS版と変わらぬ、患者を救う『使命感』が異彩を放つゲームシステム
◆DS版とは異なる『スピード感』溢れる動作が異彩と放つ、Wiiらしさ満点の操作性
◆ストーリーの再確認が効くようになって自由度が増した、『エピソードセレクト』システムによるゲーム展開
◆スキップ機能、リトライ機能追加で格段に向上したプレイアビリティ
◆縫合が適当な書き方でもOK扱いになるなど、大幅に緩くなった処置成功判定
◆操作手順の一部簡略化で使い勝手が向上した、全10種類以上の器具(一部、新器具も追加)
◆DS版無かった新たなオペとシナリオ展開が秀逸な、新シナリオ『ミラ編』
◆効果持続時間が延びたほか、プレイヤーキャラクターごとに発動時の効果まで変化する仕掛けも追加されて、よりパワーアップした必殺技こと『超執刀』
◆常時切り替え可能の仕組みが初心者に優しい、秀逸な難易度選択システム
◆判定基準の改善で、より適切なものへと進化した、絶妙なゲームバランス
◆内容の大幅変更、新オペの追加など、DS版経験者も新鮮な気持ちで楽しめる工夫が凝らされた全50以上ものオペ
◆Wiiリモコンの特性を活かした操作感が秀逸な新オペ『骨折』
◆スコアアタックの他、全難易度制覇も加わってやり甲斐が増したやり込み要素
◆DS版以上にシャープさが増し、グロさが軽減した巧のグラフィック
◆DS版のノリをベースに、曲数が増えてより印象深いものへと進化した音楽
◆DS版譲りの「手術の生々しさ」を嫌というほど演出する、質感溢れる効果音

--- Bad Point ---
◆ぶつ切りし過ぎな終盤のシナリオ展開(DS版経験者しか分からない内容…)
◆DS版とは異なる画風に改められたキャラクターデザイン
◆決まってカンファレンスからやり直しになるリトライ機能(オペの最初からスタートするようにして欲しかった)
◆ディスクメディアらしさの無いボイス演出(折角だから、フルが良かった)
◆前に突き出す判定がややシビアな『電気ショック』の位置セット操作
◆少し霞んでいて見難い文字フォント
▼Review ≪Last Update : 6/21/2009≫
医神、Wiiで生まれ変わる。

例え舞台が変わろうとも必ず、救ってみせる。


ニンテンドーDSのタッチペン操作を最大限に活かしたゲームシステムで、海外も含めユーザーから高い評価を得たSF外科手術アクション『超執刀カドゥケウス』のリメイク作。

オリジナルの失敗を矯正し、新たな手応えをも付加した、痛快リベンジ作品だ。

初代『超執刀カドゥケウス』のリメイクという事で、基本的なゲーム内容はそちらに準拠。メスやピンセット等の手術器具を駆使し、患者を蝕む病魔と戦っていく、手術アクションゲームである。しかし、基本的な内容はオリジナルと同じでありながら、ゲームシステム周りには大幅なアレンジが加えられている。
特に代表的なものが操作系統全般。Wiiへとハードを移行したというのもあり、DSのタッチペン操作から、リモコン&ヌンチャク操作へと変更。リモコンで手術器具全般を扱い、ヌンチャクで手術器具等を切り替える、Wiiらしい独自色に富んだものへと改められている。更にそれに伴い、ゲームバランスにも大きな手入れが行われており、緻密且つ的確な判断が要されたDS版の「正確性重視」から、瞬時の器具切り替えが求められる「スピード性重視」の調整へと改良されている。その為、DS版と同じ手術であっても、以前とはまるで異なる雰囲気・手応えを堪能可能。DS版プレイ経験のあるユーザーでも、新鮮な気持ちで取り組める、何ともニクいバランスに仕上げられている。
また、操作性やバランスの他、細かい部分にも結構、手入れが行われている。DS版にはなかった、手術中の会話を早送りする『スキップ機能』、最初から手術をやり直す『リトライ機能』が実装されてたり、メインの進行は一本道でなく、『エピソードセレクト』による自由にクリアした手術・ストーリーを楽しめるスタイルに改められていたり、難易度選択機能が追加されていたりなどと。大半はオリジナルで「致命的な欠点」としてプレイヤーから上がっていたものであり、それらは今作にてほぼ完璧に矯正された格好となっている。オリジナルでその不便さに泣いたプレイヤーからして見れば、この上ない改善だ。特にスキップとリトライ、この二つは何でオリジナルでは入れなかったんだと文句を言いたくなるほどの便利さ。これに慣れてしまったら、もうオリジナルに戻るなんて事はできなくなる。
エピソードセレクトのシステムも、オリジナルのストーリーがあまり記憶に残らなかったプレイヤーにとって、再確認できるというメリットがあって良い。手軽に各オペのスコアアタックにチャレンジできるようになったのも、オリジナル経験者には嬉しい改善点だと言える。
その他にも、単なるリメイクに留めず、ミラ・キミシマなる新たなキャラクターによる新シナリオ&新オペの追加、キャラクターデザイン周りの大幅な一新など、オリジナルから手が加えられたところは多岐に渡る。
ゲームシステムはオリジナルと変わらないのに、基本的な操作感が違う為、手応えがまるで違う上、新鮮味が強い。それに加えて、細かいシステム周りも改善されているから、遊び易さも半端で無いという出来栄え。ただのDS版をWiiに移しただけのリメイクじゃないのは、それらの事実だけでも、よくお分かりになるだろう。ほとんど、新作に近いリメイクなのである。または、初代の失敗を無に帰すリメイクならぬ、『リベンジ作品』と言っても良い。

そんな初代の失敗を無に帰す、多くの『リベンジ』こそ、今作最大の売り。別途紹介済みだが、ニンテンドーDSで出た初代カドゥケウスこと、『超執刀カドゥケウス』はゲーム性は抜群だったが、システム面は致命的と言って良いほど、不備が多かった。オペの最初からやり直せない、時々入る仲間の会話が早送りできない。それらは「手術アクション」という、人の命が絡んだゲームとしての雰囲気を高める効力も発揮してはいたが、やはりプレイヤー側にとって、もどかしかったのも事実。肝心のゲームの面白さを損ねるものとして、機能してしまっていた。「どうして、それを入れなかったんだ?」と、人によってはその不備に疑問符どころか、怒りを覚えた方もいたかもしれない。
そんな初代で多くのプレイヤーを悩ました不備が、今作ではほとんど改善。仲間から入る会話は早送りできるようになり、オペのやり直しも自由に効くようになり、ストレスを感じることなくオペが楽しめるようになった。やり直しをした際、再びオペのカンファレンスから始まるなど、まだ一部には不備もあるのだが、そう言った事が全くできなかった初代と比較すれば、それも些細なもの。後戻りができない「手術」のイメージも崩れたけど、それもまた些細なもの。イメージ重視かゲーム重視かで、もしかしたら迷いもあったのかもしれないが、あえてゲームを取ったその判断は英断。特有の癖の強さを取っ払い、より多くの人に遊んで頂く為、雰囲気を犠牲にしたのは大きな評価に値する。そもそも、「最初からやり直す為には、患者に死んでもらう」という必要がなくなっただけでも、何処まで進化したかはお分かりだろう(汗)。倫理的な拙さが大幅に和らいだというだけでも、かなりの進化である。
また、数多く不備が改善されて、ストレスなく楽しめるようになったオペも初代からのリベンジがよく現れた箇所。成功基準があやふやだった縫合処置が、ワリと適当な処置でも判定されるようになったほか、今回はタッチパネルでないので、タッチズレと言った事故が生じ難くなったのが有り難い。更に、ひょっとしたらラスボス以上に厄介だった寄生虫『ギルス』の一種『テタルティ』の処置法も簡略化されたほか、吸引器具『ドレーン』がタッチペンをスライドして吸い出すのでなく、Aボタンを押して吸い上げる簡単な操作となり、腫瘍摘出等のオペが快適にできるようになったのも気持ち良い。
更に紹介済みだが、今回は難易度選択が可能となり、初心者にも安心して楽しめる土俵が作られたのも大きなポイントだ。しかも難易度はゲーム中、常時変更可能で、少し腕に自信がついてきたらノーマルに変更、クリアできないオペはイージーでクリアし、後でノーマルで攻略する、自由なスタイルで進められる方式なのが嬉しい。バランスも適切で、イージーであろうと、手術をテーマにしたゲームらしい、「命の重み」が尊重された手強さが残されているのがニクい。単に初心者に優しいだけでないその作りは、如何にもコアなゲームならお任せのアトラスらしい、と言ったところだ。
リモコン&ヌンチャクによる新たな操作体系も、初代にないスピード感と快適性に富んでいて見事な仕上がり。タッチのズレもない上、慣れればかなりのスピードで手術が進行できるなど、DS版とは異なる気持ちよさとスキルアップの快感があるのも面白い。そしてその操作体系がもたらす、独自の手応えもまた格別。
単なるリメイクに留めず、過去の不備を潰し、そして新たな面白さを表現するその徹底したこだわりは、冗談抜きに仰天モノ。リトライの煩わしさなど、完璧とまでは行ってないが、初代の失敗を無に帰そうとする心意義は相当なもので、まさにリメイクならず、リベンジである。遊び易さ、面白さ共に全てが、初代を超越した完成の域。気持ち良いぐらいなまでに、カドゥケウス完成形としての出来に徹しているのである。冗談無しに今作のノリに触れてしまえば、もう初代には戻れなくなる。本当、何てものを作ってしまったんだアトラス…である。

各種リベンジのほか、今作からの新要素も光るものばかり。特に新キャラ、『ミラ・キミシマ』が主人公のシナリオで展開される新オペはユニークで、Wiiリモコンの特性を程好く活かした仕上がりなのが面白い。中でもパズルのような『骨折処置』のオペは、ユニークな手触り感に満ちた作りになっているので要チェックである。
また、カメラのフラッシュで視界を保ったりなど、異常環境下での新オペも魅力的。Wiiらしさこそ無いが、手術アクションはこんな風にも魅せられる、という事を大いに思い知らされる仕上がりになってるので、これも要チェックだ。
また、今回はシナリオも少し一新されていて、終盤の展開が初代とは違うものとなってる。しかし、この展開は初代の終盤から直結した展開となっていて、結局、経験者向けの作りになってしまってるのが惜しい。一応、ダイジェストとして初代の終盤も語られるのだが、折角、今回はディスクメディアで容量も多いのだから、そこもステージとして入れてほしかったところである。 更に今回はボイスによる演出周りも若干、強化されているのだが、初代から少し増えただけ、掛け声のみなのが残念。これも折角ディスクなのだから、フルボイスとかにして頂きたかった。
対し、グラフィックは大幅に進化。初代以上にグロさが軽減され、シャープでカッコイイものへと様変わりしたのが嬉しい。初代では「虫」にしか見えなかったギルスも「モンスター」っぽいデザインとなり、気色悪さが軽減されたのも良い感じである。一方でキャラクターデザイン全般は結構、好みが分かれる。同じアトラスの『ペルソナ』を手掛けた人が担当しているので、その手のファンにはウケが良いかもしれないが、初代のイラストが好きだった方は嫌悪感を覚えるかもしれない。こればかりは、好みによるのでどうしようもないのだが。しかし、初代のアニメテイストとは異なり、シリアスなイメージが強化されたのは純粋に評価に値すると言える。

その他、音楽も新曲が加わった事により少しパワーアップ、スコアアタック等のやり込みも難易度コンプが加わるなど、やり応えは増強されている。
不備をあらかた潰したとは言え、リトライ後の流れや一部のオペの難易度など、細かな粗は存在するが、遊び易さでは初代を超越している。リモコン操作による気持ち良さも相当なものだが、それ以上に初代の失敗を潰そうとする熱意が異様なまでに込められたこの『カドゥケウスZ 二つの超執刀』。如何にDSの初代が未完成品であったかを思い知らされる、Wii初期の名作だ。Wiiユーザー並びに初代経験者なら是非、遊んで頂きたい逸品である。この面白さと気持ち良さ、従来のコントローラを使うゲームでは到底味わえない。レッツチャレンジだ。
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