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≫カドゥケウスNEW BLOOD
■発売元 アトラス
■ジャンル ドラマチック手術アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※出血、暴力、殺傷描写等あり
■定価 6090円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 4つ(※2ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー不可
■その他 ヌンチャク専用、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 36ページ
■推定クリア時間 8〜10時間(エンディング目的)、60〜80時間(完全攻略目的)
北アメリカ、極北の地アラスカ。
内陸の街『フェアバンクス』からほど近く、雄大な自然に囲まれ、人々が強く春の訪れを待つこの地に、『モンゴメリ記念病院』が街を見守る老人のように建っていた。

やがて大きな運命に飲み込まれる事になる、二人の医師を抱いて。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆相変わらずの患者を救う独特の『使命感』が秀逸なゲームシステム
◆器具操作の簡略化が成され、前作にも増して快適になったリモコン&ヌンチャクによるWiiらしさ溢れる操作性
◆手順の簡略化が行われ、更に全体的な使い勝手が増した全10以上の手術器具
◆瞬時の状況判断を可能とした、ゲーム的な使い方が見事なフルボイス演出
◆不備の修正で更に快適なものへと進化した、スキップを始めとするサポート機能群
◆『火傷』、『臓器移植』等、更にバリエーションが増強された全50以上ものオペ
◆連携して患者を治すという、本物の手術っぽい手応えが新鮮な二人同時プレイ
◆相変わらず常時切り替え可能なのが嬉しい、秀逸な難易度選択システム
◆イージーでも手強くなり、シリーズ独特の『命の重さ』がグッと強まった、絶妙且つやり応え満点の難易度
◆キャラ別攻略が加わり、更に遊び甲斐が増したやり込み要素
◆自らの限界に挑戦するやり甲斐の深さが光る、新モード『スコアアタック』
◆相変わらずのグロテスクな雰囲気皆無の巧のグラフィック
◆世界観の一新でよりクールなテイストに様変わりした音楽
◆シリーズ伝統の「手術の生々しさ」を否が応にも煽る、質感溢れる効果音
◆海外ドラマ風味の世界観と設定、素早い展開が光るシナリオ

--- Bad Point ---
◆超執刀の性能が違う程度でしかない二人のキャラクター(扱う手術器具の違いとかあっても良かったかもしれない)
◆イージーでも難しくなった事で、シリーズ初心者に優しくなくなった難易度
◆各器具との隙間が狭まり、逆に誤選択し易くなった手術器具選択アイコン(前作ぐらいのサイズが丁度良かった)
◆少々、強引過ぎる展開の目立つシナリオ
◆前作より更に霞んだものになってしまった文字フォント
▼Review ≪Last Update : 6/28/2009≫
そして舞台は、アメリカへ。

もはや『ER緊急救命室』です…。


リモコン&ヌンチャクによる斬新な操作性、そして抜群のゲーム性でニンテンドーDS版に勝る劣らずの高評価を獲得した、『カドゥケウスZ 2つの超執刀』のゲームシステムを継承する形で作られた、新生カドゥケウス。

前作以上にWiiらしさが強化された、シリーズ会心の力作だ。

ゲーム内容は前作『カドゥケウスZ 2つの超執刀』と変わらない。メスやピンセットなどの手術器具を駆使し、患者を蝕む病魔と戦っていく、手術アクションゲームだ。基本システム、操作性等も前作を踏襲。リモコン&ヌンチャク操作、エピソードセレクト方式によるゲーム進行、スキップ機能を始めとする救済処置と、その大半が今作でも実装されている。
そして勿論、事実上『Z』の続編という事で、新要素も幾つか追加。代表的なものに限るが、二人同時プレイ、キャラクターセレクトシステム、フルボイス演出等が加わった。 これらの内、二人同時プレイ、キャラクターセレクトシステムは、前作『Z』にあった新シナリオ『ミラ編』の発展系と言った感じ。前作では、特定ステージだけ、操作キャラが違う仕組みだったのが、今作ではほとんど全てのオペで、二人の異なるキャラを選んでのプレイができるようになった。そして、オペクリア時のクリアランク(評価)も選んだキャラ別に行われる方式へと大幅にモデルチェンジ。ゲーム全体のやり込み甲斐を増強させる要素としての進化も遂げている。ただ、各キャラクターの性能は、前作の『Z』と同じく、オペ中に発動できる必殺技こと『超執刀』の能力が異なる程度。選べる手術器具が異なるなど、そこまで明確な差別化はされてなく、キャラごとに違った手応えが味わえるようにはなっていない。結局、ミラ編を自由度の高い仕組みへと変更したに過ぎない作りで、そこまで新鮮な手応えに富んでる訳ではないというのが、賛否の分かれるところだ。ただ、やり込み派プレイヤーにとっては、このセレクトシステムは嬉しい進化点。全三種類の難易度制覇、スペシャルオペだけでは物足りないと感じていた方なら、納得の手応えと満足感を堪能する事ができるだろう。
二人同時プレイも、「もし、二人で攻略できれば楽に攻略できるのに…」と前作やDS版等でもどかしく思っていたプレイヤーには嬉しい新要素。ゲームプレイの面においても、片方が傷の縫合を担当し、もう片方は異物の除去を担当する感じに、役割分担でオペ攻略が楽しめるようになったのがとても新鮮だ。一人で黙々とプレイする時以上に「本当に手術をしている」という手応えが感じ取れる。収録オペにも、その同時プレイの面白さ、魅力を引き立てる内容のものをきちんと用意する抜かりの無さ。他の二人同時プレイが可能なアクションゲームとは異なり、パーティ性よりも「協力する面白さ」が濃い目な仕上がりとなってるのも特筆すべきところだ。まさに、手術を題材にしたゲームだからこその味わいがある。そして、据え置きだからこそ実現した、オリジナリティの高さも流石。前作以上に「DS版では出来なかったことをやろう」とする、スタッフのチャレンジ精神が満ち溢れている。
もう一つのフルボイス演出も然り。前作では、DS版と同じく掛け声程度だったボイスが、遂に完全フルボイス化し、ディスクメディアだからこその強みが発揮されている。更にフルボイス化した事により、ゲームプレイの快適さも劇的に向上。次にプレイヤーが処置すべき事をスピーディに確認できるようになったので、テンポが格段に向上した。いちいち、メッセージを読んできちんと確認しなければならなかったDS版、前作とは雲泥の差とも言える進化だ。 元々、フルボイス演出との相性の良いシステムを積んだゲームなので、今回の満を持しての起用は嬉しいところ。「フルボイスならかなりやり易いんだろうな」と思ってたユーザーにとっては、涙モノの新要素と言える。また、出演声優陣も大変豪華。主人公は海外ドラマ『24』のジャック・バウワー役でお馴染みの小山力也、『ダーク・エンジェル』のマックス役等で知られる冬馬由美のほか、実力派の面々が揃っている。彼らのゲームプレイを大いに盛り上げる力強い声には、思わずプレイヤーも力が入ってしまうこと間違いなし。実力派だからこその強みを大いに堪能できるだろう。
この他にも、新登場のオペからニンテンドーWi-Fiコネクションによるオンラインスコアアタックと言った新要素も追加。DS版のリメイク(リベンジ)色強めだった前作とは異なり、Wiiオリジナルだからこその売りが発揮された仕上がりとなっている。まさに、Wii版カドゥケウス完成形と言った感じである。

そんな完成形とも言える、洗練されたゲーム内容が今作の大きな売りである。流石、前作『Z』とは違う完全オリジナル作品、そして『Z』を手掛けた新スタッフ初のオリジナルというだけに、今回は全体的な気合いの入れ様が違う。
特に収録オペとその展開で、前作みたいに「後半からギルス(寄生虫)のオペ限定」みたいな偏った流れにならず、最初から最後まで独立したオペが続いていく構成でまとめられているのは凄い。常に新鮮な気持ちを維持したまま、本編を進めて行けるだけでなく、中だるみが生じることも一切無い。オペの種類も今回は大幅に増強されており、前作で初登場した『骨折』以外にも『火傷』、『臓器移植』、『装置解除』、『ペースメーカー装着』など、DS版でもお目にかかれなかったものが、続々と登場。前作にもあった腫瘍摘出などのオペも勿論あるが、それも「アプローチを変える」などの工夫が凝らされていて、同じ手術でも全く違う手応えが感じ取れるという、驚愕の設計が成されている。基本、同じオペであれば前と同じ処置手順を行えば良かった前作、DS版とは雲泥の差とも言える徹底振り。そして、それこそがカドケが直さねばならない欠点だったんだと、言わんばかりの本気ぶり。ここだけでも、今回が如何に気合いの入った作りなのか、それを感じ取れるだろう。本気で完成形を目指した、と言っても過言でない入れっぷりなのである。
そして、シリーズ独特のハチャメチャさも薄れておらず。『ギルス』の進化系とも言える『スティグマ』との戦いは、まさにその象徴とも言えるもので、あのギルスを超越する、あり得ない戦い(手術)をプレイヤーに提供してくれる。患部追跡、部位破壊、そしてシューティング(!)…と。そのハチャメチャぶりは前作を圧倒するほどで、もはや別ゲームと化しているほど。そんな他のゲームを遊んでいるかのような手応えが今回、何時にも増してパワーアップしているというのもまた、先のオペの増強と並行して見逃せない。そしてゲームバランス全般。前作でWiiリモコンによる『スピード感』を全面に押し出したバランスは更なる強化が成され、より素早い操作と的確な手術器具切り替えが要される硬派なものへと進化を遂げている。一番簡単な難易度である『イージー』でさえ、苦戦するほど、それも例え手馴れたプレイヤーでさえ。ある意味、プロ仕様のカドゥケウスとも言える調整である。
実際、本当に今回はイージーでさえ難しく、後半以降、クリアするだけでも大変なオペが多数登場する。更に、いわゆる覚えゲー的な記憶力が試されるものも幾つか登場。それもまた全体の難易度を高める存在として機能していたりするほど。前作の『イージー』は一定のごり押しが通せたのに、とこの難易度アップには一部、賛否両論があるかもしれないだろう。ただ、決して難易度が高まったからと言って、理不尽な難しさになってないのが凄いところ。『イージー』でも苦戦する事はするが、ある程度、繰り返せば必ず攻略できるバランスでまとめられてるのは、流石硬派なゲームには手馴れたアトラスだけにある。それでいて、Wiiのカドゥケウスとしての「らしさ」を活かす、スピーディな操作が肝になる調整も万全で、全オペ共通して「素早くリモコンを動かす面白さ」を尊重したバランスになってるのには溜息が出る。
また、イージーの難易度強化により、シリーズ独特のバランスより感じ取れる「命の重み」が蘇ったのも特筆に値するポイントだ。前作も前作で、そこそこの「重み」はあったが、一定のごり押しが効く調整となってたのもあり、若干、薄味になってたのも事実。やはり命の重みが感じ取れるようにしなければとでも思ったか、それをちゃんと尊重した調整に施したのは本当、お見事と他にコメントがない。何でも温くすれば良いってものじゃないところに、ゲーム屋としてのこだわりが感じ取れて好感触である。結果として、難易度が上がって初心者に厳しくなったのも事実だが、カドゥケウスのバランスとはこういう「重み」があるからこそのもの。あえてユーザーに媚びず、ゲームに媚びたその判断にはつくづく、頭が下がるばかりである。そして、リモコン操作によるカドゥケウスにその「重み」を付加させようとする徹底振りもまた然り。
フルボイス、二人同時プレイ、そしてキャラチェンジ、それらの要素もまた、Wiiのカドゥケウスらしさを増強させるものとしての存在感は大きい。しかし、肝となる部分はそこを完全に上回る完成度。遊んだプレイヤー全てにカドゥケウスと言うゲームの面白さ、そして前作以上に進化したという手応えを提供してくれる。 それはまさに、Wiiのカドゥケウスとしてのらしさを増強させ、更に魅力を高めようとするスタッフの情熱によってもたらされたもの。尋常で無いクオリティでまとめられた、完璧に近い凄さが満ち溢れているのである。もはやこれは、Wii版カドゥケウス完成形と言って良いほどに。

その他、リモコン&ヌンチャクによる操作性や手術器具全般、スキップを始めとする救済処置など細かい部分の使い勝手も向上。特に前作で、何故か行う度、カンファレンスに戻されていた『リトライ機能』が、ちゃんと手術スタート時から始まるようになったのは地味に嬉しいところ。プレイ時の煩わしさがより軽減されている。
操作性も器具切り替え、当たり判定の調整などが改善されたのも受けてより、快適な使いこなしができるようになったのもナイスな改善点。器具操作も『エコー』がボタン連打でなく、リモコンポイント方式になるなど、かなり快適なものに様変わりしたのが非常に有り難い。
グラフィック、音楽周りも総じてレベルアップ。中でも音楽はより、旋律が印象深くなったほか、全体的にクールなテイストの曲が増えたのが印象的。世界観を一新しただけにある、新たなカドゥケウスのイメージを演出している。
シナリオもまた、前作のアニメテイストなものから海外ドラマ風味のものへと様変わりし、シリアスな雰囲気が増したのが面白い。しかし、それを意識し過ぎたが故、オチも含めてやや強引な押しの展開が目立ち、若干、荒削りな作りになってしまっているのが非常に惜しい。あえて海外ドラマを狙って、の意図があったのかもしれないが、もう少しスピードを遅く出来なかったのか…。素材は悪く無いだけに、ちょっと惜しい。

画面サイズが縮小され、前作以上に文字フォントがぼやけ気味になってしまったのも感心できない。オプションでサイズ調整ができないなど、細かい不備も目立ち、もう少しそこに気は配れなかったのだろうかと、悔やまれるばかりだ。
しかし、ゲーム自体の完成度はかなりのもの。前作をより進化させ、Wiiのカドゥケウスとしてのらしさを増強させようとするスタッフの姿勢が伝わる、かなり力の入った出来栄えとなっている。Wii独自の操作性と面白さはそのままに、よりそのWiiのゲームとしてのらしさを増強させようとする本気が詰まった、この『カドゥケウスNEW BLOOD』。
前作と同様、Wiiを持ってるユーザーなら是非遊んで頂きたい逸品である。
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