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ツクールシリーズ MEDIUM-NAUT(ミディアムノート)


© 2021 Gotcha Gotcha Games © 2021 Blue Boss

■発売元:Gotcha Gotcha Games
■作者:Blue Boss(楢村匠)
■ジャンル:探索型SFホラーアクション
■IARCレーティング:7歳以上対象(軽度の暴力、ホラー表現あり)
■定価:1,500円(税込)


宇宙開拓船「オストラシーダ号」はある日、未開拓の惑星に墜落する大事故を起こしてしまう。
乗船者救出のため、急きょ調査団が墜落現場へと向かうも、彼らは何の成果もあげられずに帰還。
いわく“霊的な現象”の影響により、船内に入ることができず終いだったという。

この事態を受け、霊媒師「ユーミ・キサラ」に任務が依頼された。

彼女に課せられた任務は、乗船者たちのIDチップ回収と船内の調査である。
一体なぜ、オストラシーダ号は事故を起こしたのか?そして、“霊的な現象”の正体とは。

Good / Bad Pick up


▼Good Point
◆課された任務を完全にこなすか、あるいは妥協するかをプレイヤーが自由に選べてしまう本編の設計
◆自分の体力を代償にするか否かで主人公の能力、行動範囲の広がりに差が出る選択型アップグレードシステム
◆選択次第で極端に難しくするのも易しくするのも自在な柔軟性の高い難易度(基本の難易度も適度な手ごわさ)
◆選択次第で短くなるのも長くなるのも自在な本編ボリューム(早ければ1時間以内、長ければ5時間以上ほど)
◆場所を探すのみならず、憑りつかれた悪霊を退治する戦闘要素も盛り込まれた乗船者探し
◆それぞれに詳細なプロフィールや過去を設定するなど、練り込まれた乗船者たちの設定
◆IDチップの情報などから出現の法則性を探す推理が求められるなど、一筋縄ではいかない悪霊退治
◆キーアイテムのIDチップ、レポートの回収に応じて真相がひも解かれていく設計が光るストーリー
◆細かなアニメーションと緻密な描き込みが異彩を放つグラフィック
◆墜落し、霊的現象にも襲われた宇宙船内の不気味さを引き立てる、雰囲気重視で時に勇ましくもある音楽
◆主に音響効果を活用する形でプレイヤーをドキッとさせてくる、自重なきホラー演出

▼Bad Point
◆スタート時点でマップの全体像は確認可能とは言え、基本は手探り進行となる突き放し気味なゲームデザイン
◆悪い意味で自重なきホラー演出(本当に何の前触れもなくくるパターンが多いため、苦手な人には応える)
◆1つしか作成できないセーブスロット(引き継ぎ要素もなし。周回するたびに前回のデータを消す必要がある)
◆基本的に思うがままに動かせるが、ジャンプ周りに独特のクセを持った操作感(少しだけ慣れが要される)
◆敵が大量に現れると派手に処理落ちするなど、全体的に不安定な快適性周り
◆ゲームオーバーになるとタイトルへ強制的に戻されるのに加え、その際にカーソルが本編を最初から始める「START」を指定しているという意地悪な仕様(※Nintendo Switch版限定、SteamのPC版は「CONTINUE」を指してくれる)

Game Overview


◇エンターブレイン販売の2Dアクションゲーム制作用ソフト「アクションゲームツクールMV」で制作された探索型SFホラーアクションゲーム。高難易度の探索型アクションゲームとして名高い傑作『LA-MULANA(ラ・ムラーナ)』シリーズの作者で、インディーゲーム制作チーム「NIGORO(ニゴロ)」のボス、楢村匠氏が個人(Blue Boss名義)で作り上げたオリジナル作品でもある。Nintendo SwitchのほかにもSteam向けにWindows PC版が展開されている。
前述したようにジャンルは、迷路のように入り組んだ空間を進みながら敵と戦ったり、謎を解いたりしていく横スクロールのアクションゲーム。プレイヤーは主人公で霊媒師の「ユーミ・キサラ」を操作し、墜落した「オストラシーダ号」の内部を探索しながら、乗船者たちの生きた証である「IDチップ」の回収と、“霊的な現象”の詳細解明を目指す。なお、霊的な現象の詳細解明というのは、船内の端末に記録された「サイモン博士のレポート」の回収と、乗船者のIDチップ回収と仕組みは一緒。かみ砕いてしまえば、2種類のキーアイテムを“なるべく”回収することに挑むゲームというのが大まかな内容となる。

◇基本的に2種類のアイテムを回収しながら、船内のどこかに設けられた出口から船外に脱出できればゲームクリアとなり、エンディングを迎える。“なるべく”と前述したように、ゲームクリアを迎えるに当たってIDチップ、レポートの全回収は強制ではない。ごく一部しか集めていなくても、なんだったら全く回収していないとしても、船外に脱出できた時点でゲームクリアになる。しかし、任務という名の仕事をロクに果たさず脱出した後にいかなる顛末が待ち受けているのかは……概ねご想像通りである。なので、最良の成果を出した上で脱出しましょう、そうしましょう。なお、IDチップは基本的に乗船者(という名の遺体)に「祈り」を捧げることによって獲得、レポートはセーブポイントを調べるだけとなっている。これと言って複雑な操作は求められない。「祈り」にしても対応するボタンで一発である。
また、舞台となる「オストラシーダ号」の船内は広い反面、乗船者は数十人程度と限られているため、IDチップ回収のためには隅々を探索していく必要がある。また、墜落事故を起こした船内のお約束とも言える異形の存在(いわゆる敵)も徘徊していて、ユーミを視認すると襲い掛かってくる。ただ、敵自体はユーミの装備する銃火器で普通に倒せる。銃火器自体にも弾数制限はないため、普通のアクションゲーム感覚で対処可能だ。なぜ霊媒師が銃火器を扱うのかというツッコミどころはあるが、そこは未来だからってことで納得しておこう。

◇特徴は探索型アクションゲーム定番のアップグレードシステム周り。基本的に乗船者の一部からユーミの基礎能力などを向上させるアイテムか武器をもらう、船内環境を変化させる措置を取ってもらうことで行動範囲が広がる仕組みになっている。ただし、いずれもユーミの体力(ENEGY)を代償として払う決断を下さなくてはならない。これが本作最大の特徴。強化と探索範囲の拡大を図れば図るほどにユーミが弱体化していき、行き過ぎれば体力の最大値が1だけになって、探索と戦闘の難易度が急激に跳ね上がってしまうのだ。
ごく一部“例外”のケースもあるが、そのような決断を下しつつ、船内の探索を繰り広げていかなくてはならないため、プレイヤーを随時苦悩させるゲームデザインになっている。なお、先ほど記したように乗船者は「祈り」を捧げることでIDチップを獲得できるが、もしも何のアイテムも受け取らず、行動もさせずに祈ってしまうとそれっきり。二度とできなくなってしまう。

◇乗船者の中には船内で起きている“霊的な影響”で悪霊化してしまっている存在もいる。このタイプの乗船者に遭遇するとボス戦になり、対象を倒すまではIDチップもアイテムなども回収できない。倒すに当たっては相手の攻撃を避けつつ、銃火器による攻撃を叩き込んでいく形。いかにもアクションゲームらしい戦闘となっている。また、悪霊も乗船者ごとに異なる種類が憑りついていて、中には特定の順序を辿らなければ姿を見せないタイプ、それまでに回収したIDチップとレポートから得られた情報をもとに推理しないと出所を突き止められない厄介なタイプも存在する。これもあって、チップの全回収を目指すに当たっては、極めて入念な探索と根気が必要になる。

◇ほかに本作はホラーを名乗るなりに、何の前触れもなく悪霊が出現して戦闘が発生するといったプレイヤーをドッキリさせる類の演出が随所に仕込まれている。しかも、ただの演出ではない。この手の現象に遭遇すると、驚きのあまりユーミが腰を抜かしてしまい、一時的に行動不能になる仕組みがある。そのため、悪霊と対峙するに当たっては、すぐに立ち直れるよう素早く十字キー(コントロールスティック)を入力するといった対応も時折求められてきたりする。
全体的には高難易度の探索型アクションである『LA-MULANA』の作者が作っているなりの“らしさ”が滲み出た作り。特に推理も要求される乗船者の捜索にその作風とセンスが顕著に現れている。ひとつの探索型アクションゲームとしても、アドベンチャーゲーム(ノベルゲーム)の分岐要素をパワーアップシステム周りに翻案して落とし込むという意欲的な試みが光っていて、他の同ジャンルの作品では堪能できない味と体験が凝縮された内容に仕上げられている。

Review 【Latest Update :4/19/2026 | First Publication Date:4/19/2026】


「選択」のテーマを全編、余すところなく活かしきった作りが光る良作探索型アクション。
ただし、ホラー演出が結構心臓に来る類のため、苦手な人は要注意。

数ある「選択」のテーマが活きている部分はやはり、任務を絶対に完遂する必要がないという点だ。IDチップ、レポートをすべて集められず、一部の乗船者を発見できずとも、船外に出てしまえばそれで普通にゲームクリアとなる。プレイヤー側がどこまでやるかを簡単に見極められるため、易しくするのも難しくするのも自由自在な設計になっているのが面白い。

とは言え、船外に出る出口がどこにあるのかはゲーム中には基本教えてくれない上、全体像を確認できるマップ画面にも記されないため、自力で探し出す必要がある。また、そこに到達するためには一部どうしても必要になるアイテムがあるため、数名の乗船者は必ず発見しなくてはならない。逆に言えば、必要なアイテムが揃っていて出口の場所が判明していれば、残りはすべて無視しても問題なく、その時点でクリアしたも同然だ。

こうも自由な遊び方と進め方を許容した作りが本作の中でもとりわけ異彩を放っている。多少のネタバレになるが、それゆえにか本作にはラスボスもいない。一応それらしき存在はいるのだが、相手にするかの判断は例によってプレイヤーの「選択」に委ねられる。戦いたければ戦っていいし、戦いたくないならそのまま出口から船外へ「さようなら」してもいいのだ。

高難易度の探索型アクション『LA-MULANA』の作者が手がけた作品ゆえ、同作の経験者やその恐ろしさを耳にした人は、本作に対しても容易ならざる難しさを警戒するだろう。だが実際のところ、単純にエンディングを迎えるだけなら大して難しくない。人によっては簡単にすら感じてしまうほどで、事前の情報と実体験の間にはよくも悪くもギャップがある。

ただ前述した事柄は「分かっていること」を前提にしている。初回プレイ時は右往左往することもあり手ごわい。しかしこれだけは強調しておきたい、「『LA-MULANA』ほどの難しさではない」と。

IDチップやレポートの全回収を目指す場合、一部には『LA-MULANA』シリーズを思わせる推理が求められる。IDチップとレポートに記された文字情報から悪霊の出現法則や隠し部屋の位置を探し出すというものだが、いずれも厳密に精査すれば自然に解き明かせるレベルで、理不尽さは感じさせない。その種の推理の数も一部限定なので、十分に許容できる。

戦闘難易度もほどほどの塩梅に落ち着いている。主にボスに当たる悪霊は攻撃パターンがシンプルで読みやすい上、位置取りによっては力押しで一気に倒す戦法も通用する。繊細なテクニックはほとんど要求されないので、アクションゲームがそれほど得意でない人も根気さえあれば問題なく立ち向かえるバランスだ。

探索周りにしても、序盤から広範囲に動ける構造ゆえ右往左往しやすい側面はあれど、隈なく調べることを徹底すれば自然にユーミを強化でき、行動範囲も広げていける。船内の構造を記したマップは本編開始時点で全体像が解禁されているため、探索自体も意外とスムーズに進められる。セーブポイントもそこそこ多めだ。

超絶と称せるほどの高難易度ではなく、不親切になりすぎず親切になりすぎずの塩梅を保った好バランスが光る。『LA-MULANA』の先入観が強いと逆にいい意味で裏切られること請け合いだ。自由度の高さもあって2周目以降のやり込みも面白く、選択に応じて難易度から探索の順序まで多彩な変化を見せる設計は、効率化の醍醐味を求める人にもきっと心ときめく体験を与えてくれるはずだ。

もっとも、冒頭に記したようにホラー演出に対しては(特に初見時ほど)心に甚大なダメージを受けるかもしれない。何の前触れもなく悪霊が現れ、それと同時に爆音気味の音楽や効果音が流れる感じなので、結構ダメージが入る。苦手な人はくれぐれもご注意を。そういうのがどうしてもダメというなら、本作を遊ぶのは止しておいた方がいいかもしれない。

逆に言えば、それほどドキッとさせられる程度にグラフィックと音楽、演出周りの完成度は優れている。特に音楽は、暗闇に覆われ霊的現象にも見舞われた宇宙船内の設定にマッチしたおどろおどろしい楽曲が充実していて、雰囲気を大いに引き立てている。ドット絵で統一されたグラフィックも素晴らしい出来で、特にキャラクターのアニメーション周りの細かさにはこだわりを実感させられる。

IDチップとレポートの回収と共にひも解かれていくストーリーもよくできている。最終的に暴かれる霊的現象の真実、そして最後に手に入るレポートのコメントには、これぞホラー作品と言わんばかりの納得感と切なさを抱くだろう。乗船者それぞれの設定と個性付けも細かく作り込まれており、誰かしら強い印象を残す乗船者が出てくるかもしれない。

ボリュームは純粋に船外を目指すだけなら最速で1時間ほど、任務の完全な遂行を目指す場合は5〜6時間と適切な規模に収まっている。短めと言えば短めだが、謎解きとホラー演出もあって密度は濃く、物足りなさは感じにくいだろう。

総じて「選択」をテーマに据えた自由度の高さと、適度に手ごわい難易度が光る本作。アドベンチャーゲームの分岐要素を探索型アクションゲームの枠組みへユニークな形で落とし込んだゲームデザインは独自性が高く、マップデザインやゲームバランスの調整も適切で良作の水準に達している。

しかしながら、ホラー演出が強烈ゆえに好みが分かれやすい作品でもある。仕様的に古い部分もあり、ゲームオーバーになるとタイトル画面へ強制的に戻されるのはストレスを感じるかもしれない。この際、「CONTINUE」ではなく「START」にカーソルが合っている仕様も地味に厄介で、誤操作を起こしやすい。
この難点はSteamのPC版ではアップデートで改善済みだが、Nintendo Switch版では未修正だ。さらにNintendo Switch版には、敵が多く登場した場面で処理落ちが起きやすいという独自の難点もある。

それゆえNintendo Switch版は正直オススメしにくい。環境があるならSteamのPC版をオススメする。決して遊べない訳ではないが、快適性を求めるのならばそちらを。
ただ、作品自体の面白さは全機種版共通だ。一連の特徴に何かしら惹かれるものがあったのなら、ぜひお試しいただきたい。特に探索型アクションゲーム好きなら要プレイだ。SF全開な世界で霊媒師となり、宇宙船内の霊的現象の謎を解明しよう。解明のカギになるのは恐怖に物怖じしない心と、銃火器を扱うセンスだ。それがSF世界の霊媒師というものなのである。