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≫超魔法大陸WOZZ(ウォズ)
■発売元 BPS
■開発元 レッドカンパニー(現:レッド・エンタテインメント)
ティーズミュージック(音楽制作)
■ジャンル ロールプレイング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 11340円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 34ページ
■推定クリア時間 18〜26時間(エンディング目的)、70〜80時間(完全攻略目的)
謎と不思議に満ちた大陸『WOZZ(ウォズ)』。
この大陸は今、突如現れた恐怖王バラムによって壊滅の危機にあった。『フィアレイン』と呼ばれる雨により、ウォズの民は恐ろしいモンスターに変えられ、残された人々も恐怖の日々を送っていた。

この危機を打開する為、ウォズの長老にして大魔法使いのサリバンは、人間界の勇者を召還する事を決める。
そもそも、バラムが強大な力を手にしたのは、人間界の科学を利用した為。
ならば、彼を止められるのは人間界の者でしかない、と考えたのだ。

かくして、サリバンは人間界の勇者召還の儀式を準備。
そして、遂に人間界から勇者が召還された…と思いきや、

召還されたのは、三人の少年少女だった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ロールプレイングゲームの基本中の基本だけを抑えた、普通過ぎるゲームシステム
◆普通過ぎる内容ならではの安心感(変に捻ったシステムも無いから気楽に遊べる)
◆発想はありがちだが、能力全般の個性付けが丁寧に成された全8人のアドベンチャーフレンド達
◆高低差によるダメージ変化概念がユニークな戦闘システム
◆戦闘のアニメーションON/OFF、メッセージ速度調整、カーソル位置の記憶ON/OFFなど充実したオプション機能群(マップ上のショートカットポイントなどのサポートも充実)
◆極めて適切な確率調整が成されたエンカウント率(ストレスを感じ難い絶妙な調整)
◆様々な組み合わせを試し、新たなアイテムを創造する、中毒な面白さに秀でた『発明システム』
◆キーレスポンスの快適さと気持ち良さが光る、優れた操作性
◆優し過ぎず、難し過ぎずの安定したレベルにまとめられた、適切なゲームバランス
◆ファンタジックな世界観にマッチした、爽やかで透明感溢れる音楽(特にフィールド系)
◆独特のデザインセンスと鮮やかな色使いが光る、フィールド全般のグラフィック
◆終盤にて「普通じゃない」展開を見せる、王道且つ捻ったストーリー
◆メイン・サブ共にかなり骨太な総計ボリューム(特に三人の主人公のシナリオを全部やるとなると…)
◆剣と魔法の世界らしからぬ少年漫画風味の設定がなされた、個性的なキャラクター達
◆漫画チックなイベント演出(大きな漢字が表示されたりなど、実にユニーク)
◆常軌を逸したアイテムストックの最大値(何と、999個まで持てる!)

--- Bad Point ---
◆システム全般の安っぽさ(独創性皆無で、普通過ぎる)
◆直に元に戻せる為、ほとんど意味を成して無い戦闘での高低差の概念
◆使わないで全然問題無しという、適当な扱いの発明システム(入れたなら入れたなりに、ストーリーで活かして欲しい)
◆音楽が通常戦闘曲を使い回しで、全く盛り上がらないボス戦
◆僅かな台詞の違い程度しかない、空気同然な三人の主人公選択システム
◆やたらとくどい動きをする、戦闘シーンでのキャラクターアニメーション(無駄な動きが多いせいでテンポが悪い)
◆何故かオプションのアニメーションOFFが解除されるボス戦(演出的には盛り上がるが、肝心のアニメーションが…)
◆同じくやたらとくどく、更に見た目も地味な魔法などのエフェクトグラフィック
◆ラスボスを除き、大半が決まった法則で攻撃を行う敵キャラクター達
◆「ファ●ナルファンタジーから拝借しました!」と宣言してるに等しい、そのまんまなメニューウィンドウデザイン
▼Review ≪Last Update : 5/30/2010≫
「普通って言うなあ!」

ごめん、普通としか言えないんだよ…。


今は亡き小学館のゲーム誌『ゲーム・オン!』の企画で誕生した、完全新作のロールプレイングゲーム。開発協力にレッドカンパニー(現:レッドエンターテインメント)、キャラクターデザインには『学級王ヤマザキ』、『コロッケ!』等で知られる、樫本学ヴ氏を起用している。

大作になる運命を背負われて誕生した、普通のロールプレイングゲームだ。

普通のロールプレイングゲームと称した通り、中身はそのまんま。かの『ドラゴンクエスト』やら『ファイナルファンタジー』と何ら変わりの無い、街やダンジョンを探索し、イベントや敵との戦闘を乗り越えていく、基本に忠実過ぎるロールプレイングゲーム(RPG)である。これと言って突出した個性も無い、普通のロールプレイングゲームである。
大事なことなので、二回言わせてもらった。突出した個性が無いとか、じゃあシステムは二番煎じだらけなのかというと、ずばりその通り。三人の主人公を選択することで変化するシナリオ、全部で8人の個性豊かなサポート系仲間キャラクター『アドベンチャーフレンド(略称:AF)』など、何処かで見たことのあるようなものばかりとなっている。独自のもので、アイテムを合成して乗り物や武器を作り出す発明システムなんてのもあるが、ゲーム本編の進行にそれほど深刻に影響してこないので実質、おまけに過ぎない。というより、空気も同然。そんな具合にどれもこれも、目立つインパクトも無ければ、手応えにしても新鮮味に乏しく、今作独自の味を引き立てるものとして機能してない。既視感の強い要素が大半を占めてしまっている為、普通という印象が際立つ有様となってしまっている。
しかも、システム全般のグダグダ感も尋常で無い。主人公によって変化するシナリオとか、「三人ごとに違ったシナリオが楽しめるんだ」と思わせて実際は三人共にシナリオは共通で、一部のごく僅かな展開が変わる程度。変更した際の違いは皆無に等しいトンデモっぷりとなっている。なので、「2周目は違ったキャラでプレイしよう」というプレイヤーのモチベーションを刺激する機能も果たしておらず、もうグダグダ。無理矢理、違いを出す為に導入したに過ぎぬ、おまけ同然の要素としてまとめられてしまっている。発明システムにしても、発想そのものは面白い。今作から2年後に発売された、『スターオーシャン』のアイテムクリエイションシステムの先駆けとも言え、様々なアイテムを組み合わせ、新たな武器や乗り物を誕生させる過程は、中毒になる面白さがある。
だが、この発明最大の売りで、このシステムを使わないと作れない乗り物(ロボット)の性能が基本的に戦闘力が違う程度と、あまりに中途半端。しかも、先に話したように別に乗り物が無くとも…というより、発明システム自体を使わずとも、ゲームクリアは可能なバランスが取られている為、存在感は皆無という中途半端っぷり。発想が良いのに関わらず、作り込みが甘いという何ともグダグダな仕上がりなのである。そもそも、この発明でしか作れない乗り物の個性に乏しいという時点で、安易な気持ちで導入した感バリバリである。これもまた、シナリオ変化と同様に違いを出す為の安易な導入にしか見えないのが痛々しい。
アドベンチャーフレンドにしても、他のRPGではよくあるNPCシステムのマニュアル操作版という程度のもので、これまた真新しさ皆無と悲惨。キャラクターの性能は明確に分けられていて、戦闘に程好い刺激を与えてくれるのは救いだが、それでも元の発想がオマージュ同然なので、イマイチな感は拭い去れない。
そして、そんなAF達の性能が発揮される肝心の戦闘を司るシステムにしても、これまた普通で真新しさゼロ。一応だが、相手のフィールドの段差が低いか、高いかによってダメージ量の変化する、少し個性的なシステムは積まれている。だが、この高低差を変化させる技は偏ってる為、変更するとなるとリスクを伴う。しかも、全体のバランスは、他の一般のRPGと変わらぬ、レベルの優位性が求められる調整が基本という有様。全然、意味を成してないのである。
更に極め付け、ボス戦とかで高低差を広げても、すぐ戻されたりとあまり効果が無く、展開は攻撃主体に偏りがち。結局、単に視点が斜めなだけのコマンド選択型バトルになってしまっているのである。お粗末としか他に言い様が無い。
他のシステムと同様に、高低差の概念を取り入れ、他との違いを出そうと言う狙いはあったのだろう。しかし、本編のバランスはレベル前提の取り方なのでほとんど空気。ここまで来ると、何をしたかったのかが分からなくなるほど。「大作になる運命を背負われて出てきたのにこれかよ!」と、本気で突っ込みたくなるほど、素っ気無い作りとなっているのである。幾ら何でも、これはやっ付け過ぎるとしか言い様が無い。発明システムのように光るものがあるのも事実だが、結局、ゲーム全体に漂う「普通のRPG」っぽさを払拭しきれるほどの作り込みが成されてないのだから、努力不足にも程がある。だったら、普通のRPGを名乗って開き直った方が良かったじゃないのかと、逆に言いたくなるほどだ。
何故に普通のロールプレイングゲームと断言したのかは、全てこれらの所為である。とにかく、どの革新的な試みにしても、作りが甘い。そして、ベースのシステムがドラクエやFFなどで定番化した、面白いことが約束されたものである故、普通っぷりが漂うゲームになってしまっているのである。正直、これを大作と評するだなんて、愚の骨頂。まさに誇大広告、大言壮語。システム面だけで見れば、見栄だらけのRPGなのである。

そして、今作最大の売りにして欠点も、このロールプレイングゲームとしては普通過ぎて仕方が無い作り。まさに、ドラゴンクエストやFFをリスペクトして作っただけに過ぎぬ、及第点の出来でしかない内容となっている。
全てにおいて、安っぽい。そして、志が低い。
ゲーム展開はRPGのテンプレートに則ったままで特徴皆無、マップ構成にしてもRPGでは典型的な全体マップと局地マップの二分割制。更に敵との戦闘はエンカウントによる遭遇方式と、これまた普通。ストーリー設定にしても、様々な種族など設定からしてファンタジーRPGのテンプレートに則っており、普通さが炸裂している。そして極め付けは、メニューウィンドウやカーソルのグラフィック。ご丁寧にも完全にファイナルファンタジー(厳密には4以降)のそれ。カーソルグラフィックは白い指し手、そしてメニューウィンドウの背景色は澄んだ青である。ここまで来るともう、ギャグの域。結局、大作すなわちファイナルファンタジーという考えで作っただけのかと、突っ込みたくなるあざとさである。これで大作を名乗ろうとするとか、本当に戯言もいい加減にしてくれ、である。 但し、先も語ったように普通過ぎるとは言え、今作の作り自体は丁寧だ。断じて駄作ではない。新要素全般は中途半端な有様となってしまっているが、戦闘バランス、エンカウント率、操作性と全てが問題なく遊べるレベルに仕上げられている。特にバランスの良さは特筆モノであり、謎解きにせよ、戦闘にせよ適度に歯応えのある難易度でまとめられているのは見事だ。テンプレートに則ってる感も否めないが、ほとんどストレス無く遊べるというだけでも、かなり高い評価に値する。地味ながら、エンカウント率(敵との遭遇頻度)も大変適正な調整。出過ぎず、出なさ過ぎずの良い塩梅でまとめられているので、マップ移動中にストレスを感じることはほとんどない。この辺の調整にしても、全体バランスの良さと並行して評価に値するポイントだ。
また、「安心感」があるのも大きな強み。著名なRPGのテンプレートに則ってる故、極端に捻ったシステムやダンジョンの仕掛けとかも無く、素直に気持ちよく遊べる。戦闘にしても、高低差によるダメージ変化の要素があるとは言え、基本はコマンド選択の王道の作りだからシンプルに取り組めるし、成長周りに神経を使う必要も無い。
更に細かいところでも、マップ移動における豊富なショートカット、戦闘アニメのOFF機能など、痒い所に手の届くオプション、サポートが充実しており、プレイヤーへの行き届いた配慮が成されてる辺りも、純粋にRPGを楽しみたいと思う人には有り難いところだ。色々と惜しい要素があるからこそ、もっと頑張って欲しかったのも事実なのだが、純粋にRPGとして問題なく遊べるこの出来を考えれば、それのまた正しかったのかもしれない。
大作を目指しながら、テンプレート通りな作りでまとめてしまったのは正直、褒められたものじゃない。でも、例えテンプレート通りであれ、問題なく遊べるゲームへと仕上げた今作の開発スタッフは、良い仕事をしたと言っても決しておかしくは無い。そう言った普通のRPGとしての洗練振りからして、今作は普通の有り難味を堪能できるゲームとも言えるだろう。

しかし、「何故?」と首を傾げたくなる部分もある。序盤の戦闘バランスが後半よりも厳しいこと、敵が全て決まった法則で攻撃を行うこと、そしてボス戦で流れる音楽が通常戦闘曲の使いまわしである、などと。
特に後者は致命的過ぎる欠点だ。一番の盛り上がり所で、専用音楽を設けず、普通の戦闘曲を使いまわすだなんて、どういう神経をしているのか。そういう場面でこそ、きちんと盛り上げないと、プレイヤー側が萎えてしまうものだろう。それを導入しないだなんて、訳が分からない。容量不足で削ったにしても、理解できない。じゃあ何故、一回だけしか戦わないあるボスには専用の曲が二曲もあるのか?正直、今作はここで致命傷を負ってしまってると言っても過言では無い。もし、ここでボス戦の曲を流す作りとなってれば、完璧な普通のRPGとなっていただけに勿体無いにも程がある。
また、ゲームテンポやエフェクト周りのグラフィックにしても、もう少し頑張れなかったものかと疑いたくなる出来。戦闘における地味とも言えず、派手とも言えずの魔法エフェクトを見るとつくづく思う。ボス戦だけ戦闘アニメがONになる仕様も、演出としては良いのだが、肝心のキャラクターのアニメーションがくどく、テンポがより悪くなってしまうのも頂けない。もう少し、パッと動くスピード感を出せなかったのか、悔やまれる限りだ。本当、これらに関しては只でさえ、普通過ぎる今作に要らぬ傷を与えてしまってるとしか言い様が無い。
とは言え、テンポ周りで操作性のキーレスポンスは良好でこれと言って問題なし。ストーリーも、設定こそRPGのテンプレートに則ったありがちな内容だが、最後の最後に「普通じゃないもの」を見せてくれるなど、相当頑張っている。僅かながらも、そう言った救いがあるのは幸いと言えるだろう。

その他、発明システムによる発明品コンプリートに地味過ぎず、派手過ぎずの爽やかなフィールドグラフィックと音楽など、そこそこ魅力的な部分もある。
とは言え、ゲーム自体が大作という名の紛い物に等しい有様なのは残念な限り。安心して遊べる内容なので、駄作という訳ではないが、あまりにテンプレートに則り過ぎてる様は本当、どうにかならなかったのかと言いたくなる。
もっと特徴的なシステムを煮詰めれば、正真正銘の大作と言うに相応しいRPGになっていただろうに、結局、ストーリーを除いて何処も彼処も普通の一言で簡単にまとめられてしまうこの『超魔法大陸WOZZ(ウォズ)』。
繰り返すが、駄作ではない。そして、大作でもない。更に言うならば、傑作と言うにも程遠い。ザ・普通のRPGである。RPGは普通こそが一番、変わったストーリーを楽しみたい、そう思う人ならやるべき価値のある一本だろう。大作が遊びたい、特徴的なRPGがやりたいという人にはオススメしない。普通過ぎるから。何処かで「普通って言うなあ!」と叫んでいても、無理に振り向く必要は無い。結局、普通だから。そんなゲームです。
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