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≫バイキングの大迷惑
■発売元 T&Eソフト
■開発元 シリコン&シナプス(現:ブリザード・エンターテインメント)
■ジャンル パズルアクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 9240円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー形式)
■総説明書ページ数 22ページ
■推定クリア時間 35〜50時間
村中のバイキング達が、一年に一度、楽しみにしている日がやってきた。
この日は秋の収穫を祝い、狩りの大会と大宴会が開かれる日だ。
この夜、一番幸せだったのは、村はずれの悪たれバイキング三人組だったに違いない。

そう、あのトンデモナイ事件に巻き込まれるまでは…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆固有の特技を持った三人のバイキングを交互に動かし、仕掛けを突破していく独特な味わいに満ちたゲームシステム
◆長所と短所の区別が明確で、それぞれの特徴を掴み易い作りが見事な三人のバイキング
◆三人それぞれの個性が如実に現れた特技のアクション(ステージが進むにつれて、思いもしない応用方法が判明したりなど、作り込みも深い)
◆独特のゲームシステムを最大限に活かす作り込みが成された全50以上ものステージ
◆宇宙船、原始時代、更にはお菓子の国など、カオスの極みとも言えるステージロケーション
◆アクションの発展と仕掛けの推移など、プレイヤーの関心を引き付けて離さない設計が光るレベルデザイン
◆今作のシステムの醍醐味を堪能できるステージ5-6(終盤である為、直には遊べないが、このステージをやる目的だけでも今作をプレイする価値はある!)
◆当時の海外製ゲームとしては異例とも言える、懇切丁寧なチュートリアル(説明書要らず)
◆ステージの開始時、やり直しの再開時に表示される親切設計が光る、良心的なパスワードコンティニューシステム
◆少しだけ間を挟むが、直に復帰可能なテンポの良さと快適な設計が見事なギブアップ機能
◆絶妙なレベルデザインによる緩やかな上昇過程が見事な難易度設定
◆やや挙動がフワッとしているが、直感的にキャラクターを動かせる手触りの良さが光る操作性
◆アメコミ調のデザインと鮮やかな色使いが印象的なグラフィック
◆ジャンル故の地味さもあれど、新ワールド開始前のデモなど、意外に派手な所もある演出全般
◆(いい意味で)緊張感皆無のステージクリア時の漫才トーク

--- Bad Point ---
◆後半以降の鬼畜気味な難易度設定(特に終盤は僅かなミスも許されない難しさ…)
◆一部、意地悪なパズル解法の存在(主にオラフ絡みのネタ)
◆フワッとした挙動が地味にクセモノな操作性(終盤でそれに悩まされるようになる…)
◆当時の海外製ゲームならではの灰汁の強いキャラクターデザイン
▼Review ≪Last Update : 12/30/2012≫
何故にバイキング、何故に宇宙人。

突っ込んではいけません。


他社作品の移植作業を主要業務としていたソフトハウス、シリコン&シナプス(後のブリザード・エンターテインメント)が初の自社オリジナル作品として製作したパズルアクションゲーム。国内版のローカライズはT&Eソフトが手掛けた。

奇妙な世界観とタイトル名に割り合わない丁寧な作りが光る、隠れ過ぎた傑作だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型パズルアクションゲーム。三人のバイキングを交互に動かし、出口(ゴール)への到達を目指すというものである。その概要からして明らかだが、今作は連係プレイに主眼を置いた作りとなっているのが特徴。基本ルールこそ単純だが、そのシステムの存在もあり、取っ付き易いけども一筋縄では行かないという、新感覚のパズルアクションゲームに仕上げられている。
本編は一本道構成。基本的に順番に沿ってステージを攻略していく事になる。ステージは純粋にゴールへの到達を目指すものだけで、いわゆるボス戦ステージと言ったものは皆無。パズルアクションというジャンル名に忠実過ぎるラインナップとなっている。また、順番に沿ってとは言え、ある程度のステージを攻略すると新たな舞台に移り、それまでにない敵や仕掛けが登場する。ステージの種類がパズル限定な為、全体的に淡々としている感は否めないが、ロケーションが変わるなどのプレイヤーを飽きさせない為の配慮は徹底。基本部分はしっかりと抑えた作り込みが図られている。
そして、それらのステージを攻略する際に操作する三人のバイキング達の詳細は以下の通り。見れば分かるように、三人それぞれ、違った特技と特徴を持ったキャラクターになっている。

■エリック
赤髪と髭がチャームポイントバイキング。
高い運動能力が特徴で、三人の中ではトップクラスの移動速度を誇る。
また、ジャンプとダッシュのアクションが可能。
攻撃手段は持たないが、ダッシュアタックという体当たり攻撃もできる。

■バリオグ
髭がチャームポイントのバイキング。
豊富な攻撃手段を持つ、唯一の戦闘特化型のキャラクター。
近接攻撃用の剣と遠距離攻撃用の弓矢を装備している。
移動速度は並。エリックのようにジャンプやダッシュのアクションはできない。

■オラフ
体格の大きいバイキング。
あらゆる攻撃を無効化させる強力な盾を持っている。盾は左右上の三方向に出す事ができ、上部に出した状態で高いところから飛び降りると、ゆっくり下降する事ができる。
移動速度は並。他の三人に比べ、できるアクションも少ない。

以上、この三人をプレイヤーは交互に動かし、ステージ攻略を目指す。交互に動かす、と言った通り、基本的に三人は一人だけしか操作できない。操作対象のキャラクターの後ろを残る二人が自動的についてきてくれると言った、便利機能は実装されていないのである。その為、操作せずに放っておくと、その場から動かず、孤立してしまう。なので、仮に敵が徘徊する場所に操作対象でないバイキングを放置するなどしたら、後に悲惨な結果が訪れるのは容易に想像がつくだろう。そんな仕様というのもあり、今作ではなるべく、三人が離れ離れにならずに行動していく事が求められてくる。それはステージの作りに関してもまた然り。単独行動で進むと、確実に途中で手詰まりが発生する構成になっているので、下手に一人の操作だけに集中すると、他の二人を近くに動かすと言った面倒な手数を踏む事になる。また、一人のバイキングは容易に突破できる場所も、残る二人のバイキングでは越える事すら困難であるなど、性能の違いにより、別のルートによる遠回りを強いられたり、時には平等に突破する為の道を作ると言ったパズルを解く事になったりもするのだ。
更に今作はゴールに到達すればステージクリアと言っても、一人だけが到達しても無意味。三人全員がゴールに到達しなければ、ステージクリアとはならないのである。なので、例え一人でも道中でやられてしまったりでもすれば、問答無用でそのステージの最初からのやり直しを強いられる。そういう厳しい約束事の為、三人それぞれのステータスにも神経を配らなければならない。一応、ダメージ制なので一発の攻撃を喰らった程度でやられたりはしないものの、全員を無事にゴールに導かねばならないだけに、そこを管理する緊張感は相当なもの。まさに連係プレイ主眼を置いたゲームならではとも言えるレベルデザインとゲームデザイン。一筋縄では行かない内容になっている。
こうも癖のある作りだと、操作の癖などを覚えるのが大変ではないのかと思うかもしれないが、その点は心配御無用。というのも、今作の序盤のステージは三人のキャラクターの特徴、アクションの操作などを練習できるチュートリアルになっているので、説明書を読んだり、何度も操作を練習する必要もなく、ルールと癖を理解できるようになっている。また、バイキングの切り替え操作もLRボタンを押すだけと簡単で、ストレスは皆無。それにルールにしても、基本的にはゴールを目指すだけ。ゲームに慣れてない初心者でも取っ付き易いものになっている。そんな説明書要らずで過度に人を選び過ぎない為の施策が凝らされているのも今作の大きな特徴。意外と痒い所にまで手の届いた作りになっている。
とは言え、ゲームとしての一筋縄のいかなさは結構なもの。三人の個性的なバイキングを動かすという特徴的なシステム、そのシステムを最大限に活かしたパズルなど、手応えは十分。あまりにもユルいタイトル名から、温そうなゲームを連想してしまうが、そう思ったが最後、とてつもないしっぺ返しを喰らう。そんな想定外の緊張感と歯応えが今作にはたっぷり。色んな意味で意外性が強過ぎるゲームに仕上げられているのだ。

そんな今作最大の売りは、三人のバイキングを交互に動かす、連係プレイによるゲーム性の面白さ、奥深さを極限にまで突き詰めた珠玉のレベルデザインだ。
具体的にはステージの作りなのだが、これがもう、素晴らしいという一言では済まされないくらいに完成度の高いものになっている。使い回し皆無、ロケーションが多彩と言った事は当たり前。そこに連係プレイのゲーム性、能力の異なる三人のバイキングの意義を見出す為の仕掛けや巧妙なトリックを仕込ませて、他のパズルアクションでは絶対に味わえないスリル、興奮を徹底的に演出するという所まで作り込んでしまっているのである。
特にその真骨頂とも言えるのが終盤手前にある、下降エレベーターの仕掛けが設けられたステージ5-6。トリックの詳細はネタバレになる為、伏せさせて頂くが、このステージはまさに今作のゲームシステムだからこそ実現し得たと言っても過言ではないほど、完成度の高いものになっている。一言でこのステージのトリックの魅力を言うと「熱い」。プレイヤーキャラクターが一人だけでは絶対に体験できないであろう興奮とスリルが味わえるのだ。終盤手前のステージな為、辿り着くまでが長いのタマにキズではあるのだが、パズルアクション好きならば何が何でもチェックしなければならないステージであるのは言うまでもなく。ある意味、伝説級と言っても過言では無いほどの出来となっている。
勿論、これ以外のステージの完成度も非常に高い。使い回し皆無というだけでも相当なものだが、何と言っても三人のバイキングの能力、連係プレイと言ったゲーム性、アクションゲームとしての面白さと言った魅力を余す事無く反映した作り込みが成されているのが凄い。ジャンル特有の面白さと今作ならではのオリジナリティを絶妙なバランスで織り交ぜたその丁寧過ぎる作りは、もはや職人という言葉で締め括れないほどのものがある。
ロケーション周りにしても、「ゲームなんだから何でもあり」という自由奔放っぷりが炸裂していて楽しい。バイキングという事でやっぱり最初は海…と思わせて、最初のステージは星の海を航行する宇宙船であったり、その後には何故かタイムワープによって原始時代に飛ばされ、更にその後にはお菓子の国と言った場違いな舞台が出てくるなど、もはやバイキングである意味が無いではないかと突っ込みたくなってしまうような展開が続くという始末。悪ノリしまくりだ。しかし、こんな予想だにしない舞台が次々と出てくるので、とにかく先が読めない。それでいて、それぞれの舞台では固有の仕掛けが登場し、今までとは違った解法が求められてくると言った変化も生じるので、プレイヤーを全く退屈させないというのも秀逸だ。何の為にバイキングを主人公にしたのか、意味が出せてないのは少し気になりはするが、「楽しければそれでいいじゃん」という潔い適当さが炸裂したその作りは気持ちよさすら覚える。ステージの作り込みだけでなく、こう言った見た目の面でも楽しさを出そうとする気配りが成されているのもまた、今作が如何にプレイヤーを楽しませる事に注力して作られたかというのを実感させられるばかりだ。
また、先ほどにも触れたが、序盤のチュートリアルステージ以外にも、次のステージに移行すると同時に毎回表示されるパスワード、ギブアップ機能などの親切な配慮が徹底されているのも見事。当時、大味さが良くも悪くも特徴だった海外製のゲームとしては思えないほど痒い所に手の届く作りになっている辺りには、あまり身構えず、楽な気持ちで遊んで欲しいというメッセージを実感させられる。とは言え、実際の本編は終盤になると楽な気持ちでは遊べなくなるのだが、そこに突っ込むのは野暮という事で。
三人を交互に動かす、そのシステムだけでも十分な新鮮味があるのに、今作はそこを煮詰めに煮詰めるという驚異的な作り込みを施し、結果的に唯一無二の手応えと攻略が楽しめる内容に仕立て上げてしまった。新たな手応えを売りとするゲームで、その独自性とゲーム性を徹底的に追求する姿勢はある意味、当然とも言えるが、今作の場合は(良い意味で)その一線を踏み越えてしまっている。その隙の無さは、任天堂のゲーム、当時の視点から考えればそれ以上の出来と言ってもおかしくないほどである。ここまで変な名前のゲームが凄い出来と言っても半信半疑に感じてしまうかもしれないが、断じてまやかしではあらず。実際にプレイすれば、その凄味を存分に感じるだろう。それほどまでに今作の完成度は突出している。当時としては驚異的なレベルなのだ。

ただ、操作性はさすがに当時の価値観を崩せなかったのか、少々もっさりとしたものになってしまっている。特にエリックに限られた話だが、ジャンプの挙動は如何にも当時の洋ゲーらしい鈍さがあるので、ある程度の慣れが必要とされる。
また、難易度も序盤はそれほどでもないものの、中盤以降は結構難しく、ラストに至っては僅かなミスですら許さないほど鬼であるなど、結構ぶっ飛んでる。更に一部のステージにおいて、意地悪過ぎる謎解きのトリックがあるのは頂けない。一応、クリアできないほどではなく、トライ&エラーを繰り返すにつれ、突破口が見えてくるバランスになってはいるが、そこそこ精神的に強い方でなければ結構厳しいかもしれない。
ボリュームに関してはステージ総数64以上と申し分無し。先にも触れたが、使い回しは一切無いほか、ロケーションもぶっ飛んでいたりと、存分に楽しませてくれる。やり込み要素周りは無いが、物量と密度が相当なものなので、凄まじい満足感を得られること請け合いだ。
グラフィック、音楽もなかなかの出来。特にグラフィックはさすが海外製と言うべきか、キャラクターのアニメーションから背景の描き込みに至るまでクオリティが高く、単に見るだけでも楽しくさせてくれるものになっている。音楽も全体的にシンプルな感じだが、ステージの雰囲気にマッチしているだけでなく、ステージ攻略を邪魔しない程度の主張具合であるなど、色々と気を使って作られているのが秀逸だ。

演出周りはパズルに重きを置いたゲームというだけに全体的に地味。ただ、次のワールドへと移動する際のデモシーンは迫力満点など、。魅せるべき所ではちゃんと魅せてくれる。また、ステージをクリアすると同時に、三人のバイキングが漫才を始めるという演出も地味に面白い。ただ、その内容はアメリカンジョーク全開なので、人によっては話の笑いどころが分からない可能性もなきにしも非ず。万人向けの内容ではないので、要注意…なのかどうかは分からない。その他、ジョーク満載の漫才などローカライズもしっかりとしており、意味が通じていないテキストと言った雑な所が一切見受けられないのも見逃せない部分だ。
終盤の難易度が非常に高いこと、一人やられたらゴール不可能になる反面、やり直すにはプレイヤー側がポーズメニューで『やり直し』を選ぶ必要がある事、そして主人公三人が人生恵まれ過ぎで憎たらしいなど、欠点も散見されるが、ゲーム自体の完成度は高く、当時の海外製ゲームとは思えないほどの丁寧な作り込みが光る作品に仕上がっている。独自のゲームシステムを活かす作り込みと素晴らしいステージの数々で、プレイヤーに唯一無二の体験を提供してくれるこの『バイキングの大迷惑』。
珍妙なタイトル名に抵抗感を覚えるかもしれないが、迷う事無かれ!
これぞスーパーファミコン屈指の隠れ過ぎた傑作である。難易度は高めだが、アクションゲーム好きやパズル好きならば要プレイ。この面白さ、埋もれたままにしておくのは勿体無い!お薦めです!
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