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≫トレジャーハンターG
■発売元 スクウェア(現:スクウェア・エニックス)
■開発元 スティング
■ジャンル ロールプレイング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 スーパーファミコン版:8295円(税込)
バーチャルコンソール版(Wii):800Wiiポイント
■公式サイト ≫スクウェア・エニックス紹介ページ / ≫スティング公式 / ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 39ページ
■推定クリア時間 14時間〜25時間
遥か昔、まだ世界には誰も姿も無く、ただ世界樹が深く佇んでいるだけだった。
そして、ある日、世界樹は3つの果実を実らせ、そこから「妖精」、「人間」、「魔族」が生まれた。彼らはそれぞれ、自らがいるべき世界へと潜み、三者はその存在さえも意識する事は無かった。 だが現在から丁度千年前、魔族が住む闇の国に強大な指導力と強烈な支配欲を持つ、新たな王が生まれ、彼は人間が住む地上の支配を目論んだ。
しかし、人間達は世界中の国に住む妖精達と力を合わせ、これを撃退。妖精達の聖なる力により、闇の国の者達は、永遠の闇に封印されたのだった。

それから千年後の現在、人間達は過去の大戦も世界樹の国の存在も忘れ去り、平穏な日々を過していた。しかし…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆敵との戦闘やイベントを順に乗り越えていく、見事な正当派っぷりが光る進行システム
◆移動面の特化、イベントや戦闘の特化と個々の特徴が綺麗に割り振られたマップ構成
◆ありとあらゆるオブジェクト(物)に触れる幅の広さが面白い、『バシバシシステム』
◆アイテムやカエルを売ってお金を稼ぐ、トレジャーハンターらしい(?)資金管理システム
◆双六風味でシミュレーションっぽい手応えが新鮮な『アクションポイント・バトル』
◆罠の設置から所持アイテムの遠投まで、豊富な攻略法を試せる、幅広くも奥深い戦略性
◆対戦する敵ごとにそれぞれ異なるものが用意された戦闘フィールド(地味に凄い)
◆詰め将棋のような知略勝負の妙を堪能できる、やり応え満点のボス戦
◆如何にも敵を攻撃した&倒したという手応えを大いに演出する、質感のある効果音
◆一歩一歩進む事の重さと攻撃の爽快感を上手く表現した、戦闘時の操作性
◆適度に手強く、適度に優しくの絶妙のバランスを維持した難易度(ダンジョンでの謎解きも丁度良い難易度)
◆一見シリアスながらも、ギャグ満載で何処かほのぼのとしているストーリー
◆レンダリング技術による鬼気迫る描き込みが光る、珠玉のグラフィック
◆そのグラフィックを効果的に活かした、ド派手な演出(ラスボス登場のデモは必見)
◆スーパーファミコンの限界を超えた高クオリティの音源が見事な音楽(しかし…)
◆世界を自由に歩き回れる楽しさが味わえる、ラスボス撃破後のフリープレイ

--- Bad Point ---
◆アイテムを渡す際、いちいちキャラの方向をボタンで定めなければならない、面倒臭過ぎるメニュー画面
◆モノラルに設定すると、どの音楽も片方の音しか聞こえなくなってしまう謎のサウンドモードにおけるバグ
◆アニメパターンが少ない為、宙に浮いてるような感が気になる、マップ移動時の操作性
◆冗長極まりない魔法エフェクト(もっと短くすべき)
◆一度動くと、二度とやり直せなくなる戦闘時での移動(せめてキャンセル機能を…)
◆連続で仕掛けられると、全滅しかねない威力を持った敵の全体攻撃(もう少し弱く…)
◆資金面でジリ貧になりがちな序盤(もうちょっと高価なものが手に入っても…)
◆最大所持数が少ない為に、直にパンクを起こすアイテム管理画面(少な過ぎ…)
◆子供に見せた類のものじゃない、某ダンジョンにおけるマナー違反イベント
▼Review ≪Last Update : 12/8/2007≫
世界には、沢山の冒険が待っている。

そして、おかしな人間も沢山待っている…。


『ファイナルファンタジー』シリーズでお馴染みのスクウェアが、スーパーファミコンで最後にリリースした、完全新作RPG。企画・開発は『バロック』、『神機世界エヴォリューション』などで知られるスティングが担当。

双六風味な『アクションポイント・バトル』にシリアスなようでほのぼのとしたストーリー、高品質の音楽(変なバグあり)が独特の味わいを醸し出す、異色のRPGだ。

ゲーム内容は、正統派のイベントクリア型ロールプレイングゲーム。主人公レッドとその仲間達を操作し、敵との戦闘やダンジョンを乗り越えながら、7つの不思議な財宝『オーパーツ』を集めていくというものだ。
正統派と称した通り、RPGとしての基本的な部分は至ってオーソドックス。ゲーム進行の基本が、フラグ立て(キャラと会話し、ストーリーを進めていく)だったり、またマップが移動面限定の『ワールドマップ』、情報収集や戦闘などのイベント限定の『エリアマップ』に2つに分けられていたりと、RPGとしてはワリとベタな作りとなっている。
『バシバシシステム』なる、名前からして新しそうに見えるシステムもあったりするのだが、これも実際はマップ上のオブジェクト(障害物や草など)をいじれるという、RPGの調べるのコマンドを拡張しただけのもの(ただ、本編とは無関係なものまで触れるなど、その幅の広さは一目置くものがある)。他に類を見ない新しい試みは、それほど無いのだ。
ただ、その事を逆手にとってか、今作は所々で変な試みを行っている。例えば、資金集め。これが何と今作では、戦闘で資金を一切入手できず、アイテム類の売却でなければ、手に入らないようになっている。なら、売れるようなアイテムを持っていない場合、どうやって資金を稼ぐのかと言うと、街などで飛び回る『カエル』を捕まえ、それを売りさばくのだ。だが、仮にカエルを売りさばいたとしても、実はあまり金にはならず、結局…資金難を解消するには腐る程、カエルを集めるしかない。一応、ゲームがある程度進むと、アイテムの売却で資金をまかなえるようになるのだが、序盤はそんなのは無い為に資金難に陥り易く、カエルによる稼ぎが必須。トレジャーハンターらしからぬ事で金を稼ぐハメになるのだ。
そのお金を用いてアイテムの購入を行う、店での買い物の仕方もまた珍妙。店にいる店員に話をかけ、商品の一覧からアイテム類を選んで買うタイプでは無く、店の奥で商品を選び、その後、亭主に話し掛けて購入するという、かの『不思議のダンジョン2 風来のシレン』を髣髴とさせるものになっている。
そして、メニュー画面におけるアイテム交換。これもまた変で、メニュー画面に出ているキャラをイチイチ、LRボタンで方向を動かし、渡すべきキャラに合わす事でアイテムを渡せる仕様となっているのである。こんな仕様であるが故に、方向転換をするのを忘れ、誤って別の人に渡してしまうなんて事故が起こる事も。
この他にも、特技を取得できる道場など、いわゆる”変な試み”はまだある。
いずれも見て分かる通りだが、わざとらしさ全開である。あまりに基本となる部分が普通過ぎるから、周辺を構成するものは特殊にしようと露骨に狙った感じがどうにも否めない。特に最後に紹介した、アイテム交換のシステムはそれが悪い方向に働いてしまっている一例で、特殊ではありながら使い勝手も悪いという悪循環を引き起こしているほどだ。こんなのなら、普通にコマンドで処理できるタイプの方が、誰が考えても遥かに快適だっただろうに、何でわざわざこうしてしまったのか。全く持って、理解に苦しむ。
このように今作、基本は正統派のRPGながらもメニュー周りやアイテム回収の面において、変な試みが成されおり、無意味な遊び心地の悪さを出してしまっているのである。試み自体が斬新で面白いのは確かだが、使い勝手の良さが出せてない時点でこれは失敗してるも同然だ。もっと使い勝手の良さにこだわってたら、どれだけ面白くなっていただろう。

しかしその一方で、戦闘システムはなかなか面白いものに仕上がっている。本作では『アクションポイント・バトル』なる戦闘システムを採用しているのだが、これがまた斬新で、何と双六を遊ぶような感覚で戦闘を行うのである。
具体的に解説すると、戦闘が始まると戦闘フィールドが展開され、主人公レッドを始めとする仲間キャラと相手となる敵がフィールドの低位置に配置される。そして、そこから交互に移動を行いながら相手に接近し、攻撃を行っていくのだ。だが、移動はそうすんなりとはできず、フィールドには三色の『グリッド』なるマスがあり、このグリッドの上を移動する事によって各キャラは『アクションポイント(通称:AP)』を消費。このAPがゼロになると、その時点で移動を強制的に止められてしまうのである。グリッドは色によって消費するポイントが異なり、青が一番消費量が少なく、黄が中間、赤が最も多いとなっている。つまり、赤のグリッド上を動いた際が一番行動が限られ、敵の行動が早く回ってきてしまうのだ。こう言ったグリッドごとの特徴を把握した上で移動を行っていかないと、敵に不意を付かれたり、また袋叩きにされたりと散々な目に遭う。流石に序盤では難易度も抑えられてるので、そう言った事は無いが、中盤辺りはほとんどがそんな感じで、少しの油断が命取りとなる。思いのほか、結構戦略性が高く、侮れないシステムに仕上がっているのだ。
また、戦闘中では直接攻撃のほかに所持アイテムを投げて遠距離攻撃をしたり、一部の床(グリッド)に罠を仕掛けたりなど、できる事もバリエーション豊か。戦闘のフィールドもそれぞれ道中で相手となる敵ごとに異なったものが用意されており、常時異なる戦略が要求されてくると言う構成も、プレイヤーをハラハラさせてくれる。同じフィールドに統一すれば、間違いなくダレかねないシステムなだけに、この配慮はナイスだ。
そして、その多様な戦略性の妙を限りなく追求した、ボス戦も面白い。いずれも「如何に効率よく敵に近づき、ダメージを与えていくか」という、詰め将棋に似た面白さが十二分に発揮されており、こちらの攻撃手順を一つ一つ考えていくだけでも楽しく、バトルそのものの戦略性の高さと奥深さと大いに引き立てている。戦闘バランスも全体攻撃が強力過ぎるところもあるが、適度に手強く、適度に易しくという絶妙のバランスを維持している。戦略性の高いボス戦も手数を見切れば軽々と倒せてしまうなど、丹念な調整が成されている。戦闘自体がそこそこキャラの体力を消費する為、戦闘終了後に自動的に体力が回復するシステムが導入されているのもナイスな配慮だ。冗長過ぎる魔法エフェクトやレベル上げのやり難さ、移動キャンセルの不備など、不備も多々あるが、システム自体の完成度は抜群。まさにアクションゲームとシミュレーションの融合とも言うべき実に奇抜な仕上がりとなっており、先の変なシステムとは違い、触るだけでも楽しい面白さが詰まったものになっているのだ。まるで、ここだけに開発中のエネルギーの全てを注いだかのように。
実際、先のシステムとは違い、わざとらしく狙ったような匂いが薄いのがその表れだ。というか、ここまで戦闘システムが面白いのなら、無理に他のも奇抜なのにする必要は無かったのではないのか?どうにも、その辺が腑に落ちない。

その他、操作性も変なところがあり、戦闘での感触は概ね悪く無く、キビキビとよく動いてくれるのだが、移動面では何処かフワッとした浮遊感があるのがちょっと気になる。アニメパターンが少ない事にもあるかもしれないが、もうちょっと細やかな動きは表現できなかったのか、気になるところだ。なお、ボタン配置当に複雑な所は無いのは救い。その辺は、正統派である事をしっかりと堅持してる。
グラフィック、音楽はスクウェアらしくハイレベルな仕上がり。いずれも、スーパーファミコンの性能の限界に挑戦した出来栄えで、特に透明感溢れる音楽は絶品。作曲陣も崎元 仁、岩田 匡治と言った豪華メンバーが担当しているのも見逃せないところだ。だが、『サウンドモード』をモノラルに設定すると、どの音楽も片方の音しか聞こえなくなってしまうバグがあるのはあまりに致命的。モノラルテレビ使用者に対する差別まがいの仕様となってしまっており、腹立たしい。曲が良いだけに、これは何が何でも取り除いて欲しかったものだ。
ストーリーもイマイチ。全編『勧善懲悪なヒーローモノ』な雰囲気で、どうにも『トレジャーハンター』っぽさに欠ける。しかし、全編シリアスなのにほのぼのとしている雰囲気があるのは、何処となく新鮮な味があって良い感じだ。

他にも、スクウェアらしいド派手な演出、エンディング後のフリープレイ、個性的な仕掛けや謎解きが多数織り込まれた空気感満点のマップなど、見るべきところは多々ある。
システム然り、バトル然り、変なところが沢山あったりして、かなり癖の強いゲームであるのも事実な本作だが、出来自体は決して駄作というわけでは無く、面倒な所はあるが、十分に傑作と言えるだけに値する作りになっている。特に、アクションゲームとシミュレーションが融合したかのような、双六風味の『アクションポイント・バトル』はRPG好きを公言する方ならば、一度でも触ってみるべき価値ありまくりだ。
正統派でありながらも、ひたすら変なことにこだわり、他のRPGには無い独特の雰囲気と特徴的なバトルシステム、ほのぼのとしたストーリーをこれでもかと言わんばかりに導入した、この『トレジャーハンターG』。癖は強めだが、結構な意欲作である。RPG好き、そして風変わりなゲームが好きだという方にお薦めの一本だ。
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