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  4. マーヴェラス もうひとつの宝島
≫マーヴェラス もうひとつの宝島
■発売元 任天堂
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 SA-1チップ搭載
■総説明書ページ数 34ページ
■推定クリア時間 12〜20時間(エンディング目的)、24〜35時間(完全攻略目的)
遥か昔、金銀財宝を求めて大海原を駆け巡った海賊達。
略奪の為には手段を選ばない荒くれ者の男達の中に、広い知識と優れた頭脳で後世にまで名を残した一人の大海賊がいた。他の海賊達からも一目置かれた、その大海賊の名は『キャプテン・マーヴェリック』。

近代文明の発達により、いつしか海賊達の時代が終焉を迎えた時、彼は蓄えた財宝の全てを一つの島に隠した。

「私の財宝を手に入れたくば、私の仕掛けた謎を解いてみよ」

当時の新聞に載ったキャプテン・マーヴェリックの挑戦状は、世界中を駆け巡った。それ以来、多くの冒険者達が財宝を求めて彼の仕掛けた謎に挑んだが、誰一人としてその謎を解き明かす事はできなかった。

それから数十年の時が過ぎ、『キャプテン・マーヴェリック』が伝説となった今でも、「見た事も無い宝・マーヴェラス」は、何処かでひっそりと眠っているのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆三人の特徴ある主人公を交互に操作し、ゲームを進めていく斬新なゲームシステム
◆基本的にコントローラ全てのボタンを使用するが、意外と抵抗感も無くすんなりと覚える事ができる、抜群の操作性
◆ヒントシステムの存在もあり、攻略本が無くても…そして謎解きが苦手な方でも絶対に解けるようになっている、見事なバランスで構成された謎解き
◆地中に隠されたアイテム、隠しイベントなど小ネタが満載でかつ、細部までしっかりと作り込まれているフィールド
◆怪しいオブジェクトをクローズアップし、細部まで徹底に調べて詳細を解き明かす、謎解きアドベンチャーゲームならではのゲームシステム『サーチシステム』
◆三人システムに深く刻み込まれた、「仲間の絆」を強調したテーマ性
◆何処かゼルダのオマージュ的なものも織り交ぜられた、個性的なアイテム
◆種類豊富で、非常に高い完成度を誇る音楽
◆バリエーション豊かな展開が盛り沢山の秀逸なストーリー(特に3章は必見)
◆一癖も二癖もある登場キャラクター達(彼らの台詞回しに関しても秀逸)
◆数々の確信犯的なゼルダ演出(メッセージ効果音など…)

--- Bad Point ---
◆4章のボス戦がかなりややこしい(いちいち、ボスを調べなきゃならない。面倒)
◆同じく4章のラックロック回収イベントがかなり難しい(ほぼ運勝負…)
◆ラックロックというお金系のアイテムを手に入れた時、いちいち「○個目のラックロックを手に入れた!」という表示が出てゲームが止まる(これはウザ過ぎ…)
◆宝箱の開封作業がかなり面倒(いちいち、セレクト画面で鍵を選ぶのは…。)
◆人物との会話の後、必ずコマンド選択画面に移行してしまう(これは特殊な時以外は省いて欲しかった)
▼Review ≪Last Update : 10/6/2007≫
このゲームには、未来があった。

しかし、その未来は時期的な不幸によって滅ぼされてしまった…。


夏休みにキャンプ目的で無人島にやって来た少年達が、ふとした事からキャプテン・マーヴェリックを巡る騒動と謎に巻き込まれていく事になる物語を描いた、完全オリジナルのアクションアドベンチャーゲーム。スーパーファミコンの衛星データ放送『サテラビュー』でかつて放送されていた、『BSマーヴェラス』が元となった作品でもある。

まさにこれこそ、時代に埋もれた不遇の名作。任天堂らしい作り込みの深さと仲間同士の絆を描いたゲームシステムが光る、アクションアドベンチャーの隠れた名作だ。

ゲーム内容は、『ゼルダの伝説』に近い2D見下ろし視点で展開するアクションアドベンチャーゲーム。プレイヤーは主人公となる三人の少年(ディオン、マックス、ジャック)を交互に操作し、フィールド上に張り巡らされた謎解きや章毎に用意されたイベントをこなしながら、ゲームを進めていく。
『ゼルダの伝説』に近いと称した通り、本作のゲームとしての手応えはまさに同社のゼルダそのもので、大雑把に言ってしまえば、現代を舞台にした『ゼルダの伝説』とも言うべき内容となっている。実際、ゲーム本編ではこれでもかと言わんばかりにゼルダを髣髴とさせる演出から謎解き、更にはアイテムまでもが登場。ゼルダのプレイ経験のあるユーザーならば即座に「これはゼルダじゃないか」と声を挙げてしまうだろう。その為、これは悪質なコピー作品じゃないのか、と言いたくなるのも当然の流れではあるが、本作は断じてそのようなものではない。そもそも、本作を手掛けたスタッフというのはあの名作『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』を手掛けたメンバーであり、それ以前に本作は企画当初から『現代版ゼルダ』として進められていたものなのである。また、新規スタッフも当然のように幾人か参加しているのだが、その大半はゼルダファン…ゼルダをこよなく愛す面々ばかりなのだ。そのようなゼルダ絡みのスタッフが関与しているというのならば、ここまでオリジナルと似た作りになっているのも納得が行くだろう。
だが、本作が凄いのは同じスタッフとファンが関与した作品だからといって、単なる二番煎じに納まっていない所。ゲームとしての遊び応えは基本的にゼルダと同じとしながらも、細かな面において斬新な試みが数多く成されているのである。
例えば進行形式。本作ではストーリーに沿いながらイベントや謎解きを攻略していく、シナリオクリアタイプを採用しており、非常にストーリー性に富んだ構成となっている。しかもストーリーは章毎に分けられており、舞台となる地も章ごとに変化、更にストーリーと直結してゲームが進んでいく構成故に、フィールド上のありとあらゆる場所に謎が配置されているなど、非常にアドベンチャー色の強い作りにもなっているのだ。中でも、登場人物の行動を観察する謎解きは、本作の構成だからこそ生まれた賜物。まるで探偵ごっこをしているかのような、新しい謎解きの面白さを打ち出している。
また、この遊びを更に深めるものとして本作では『サーチシステム』なる新要素を導入。フィールド上のオブジェクト(物)をクローズアップ(拡大)させ、細部まで調べるというこれまたアドベンチャー的なシステムで、ただその場にあるだけに過ぎなかったオブジェクトに深い意味を持たせ、謎解きの奥行きを助長させている。調べられる対象物も豊富で、それにより隅々まで世界に触り浸れる面白さを実現し、2Dドットで描かれた世界に異様な現実味を出させているのも実にユニーク。拡大後の画面が往年の任天堂のアドベンチャーゲームを髣髴とさせる作りとなっているのも実にニクいところだ。
この他にも、ゲームプレイの大半を占めるのは謎解きであり、冒険の邪魔をする敵との戦闘は少ないのも、これまたアクションアドベンチャーとしては風変わりな部分。
確かに遊び応えはゼルダそのもの。しかし、実際は上記の通り別物で、アクションというよりもアドベンチャーゲームの面白さを最優先。言うなれば、アドベンチャーアクションとも称すべき作りになっているのだ。

だが、本作における最大の売りは何と言っても、三人のキャラを交互に使い分けながらフィールドを駆け巡るという、画期的なゲームシステムだ。本作では何と操作する事になる主人公は三人であり、プレイヤーはその三人の主人公達(少年達)を状況に応じて使い分けたり、協力したり、更には別行動を取らせたりさせながらゲームを進めていく事になるのだ。三人の主人公達はどれも個性的で、小さなディオンは移動スピードが速く、高速ダッシュのアクションができる、ノッポのジャックは頭脳明晰で発明の特技を持っているほか、ジャンプのアクションができる、そして太っちょのマックスは移動速度こそ遅いが、その巨体を活かした強力な攻撃、そして水中で深く潜る事ができると言った、実にバリエーション豊かな特技を所持している。これら個人の能力を踏まえた上で、プレイヤーは状況に応じてキャラを交代させ、立ちはばかる謎解きや敵との戦闘を乗り越えていかなければならないのだ。
正直に申して、本当に斬新としか表現のしようが無いシステムである。それまで一人の主人公を操作する事が定例だった本ジャンルにおいて、三人のキャラを操作させるというその試み自体が実に大胆。これだけでも本作が、革新的なゲームとして評される意義はある。そして、その面白味を最大限に引き出す為、その三人でなければ解けない謎解き、そして三人で一緒に大きな岩を持ち上げ、投げ飛ばしたりする『チームワーク』のアクションを用意するその周到ぶりにも感服。それらの遊びに一切の無理矢理さが無く、自然にゲーム本編に溶け込んでいるのも流石の一言に尽きる。
また、ゲームバランス的にも三人でなければ解けない謎解きを登場させたりして独り善がりなプレイを抑制し、仲間との協調を重視する徹底振りもお見事。ゲームとしての説得力の高さと三人で無ければ成り立たないゲームを生み出そうとする制作スタッフの尋常でないこだわりを痛感させられる。だが、凄いのは何と言ってもこのバランスから、「仲間と力を合わせれば、どんな困難も突破できる」という仲間同士の絆のテーマ性を滲み出させ、ゲームプレイを通じてプレイヤーにその大切さを訴えかけている事。これには脱帽である。新しい遊びを打ち出すだけでなく、ストーリー的な説得力の高さをも打ち出しているシステムなんて前代未聞。システムとしてのオリジナリティを出すばかりか、ストーリーの深さまで出してしまうシステムを作り上げてしまうとは、まさに神業と言う以外、何も出来ない。
その他、操作性に関してもイメージから来る面倒臭さを限りなく払拭し、三人を操作するのに一人を操作する感覚で楽しめるという、理想的な敷居の低さを実現しているのも上記の事と並行して素晴らしい点である。
もう、この時点で本作が単なる二番煎じとなっていない事は想像に難くないだろう。
唯一無二と言わんばかりのオリジナリティと想像を上回る説得力、全てがゼルダとは別格なのである。遊び応えは同じなのに、全く違う遊びと異なるテーマ性を提示。まさに本作こそ、最高にして理想的なオマージュ作品と言っても過言ではない。既にある面白さに別格のものを付加させたスタッフの手腕の高さは、拍手を送る限りだ。

システムだけでなく、操作解説等のサポート要素の素晴らしさも語らずには要られない。特に『ヒントシステム』は実に秀逸で、アクションアドベンチャーの方でも安心してゲーム本編と世界観に浸れる敷居の低さを実現している。しかし、ヒントと言ってもゲーム中の全ての謎解きに用意されている訳ではなく、終盤になるとヒントがほとんどもらえなくなるなど、しっかりとシビアさも兼ね備えている。世の中、そんなに甘いものじゃないんだという社会の厳しさを描いているようで、何だか面白い。如何にも任天堂らしい、(良い意味で)意地悪な配慮と言える。
全体的なゲームバランスも任天堂らしい、簡単過ぎず難し過ぎずの絶妙のバランスを維持。謎解きの解法も全てが理に適っており、気付かなかった自分を責めたくなるものが満載。誰もが納得の手強さと楽しさを味わう事ができる。
グラフィック、音楽の出来もなかなか。特に音楽は、自然系の曲やボス戦の曲、『青き者の巣』なるダンジョンの曲の出来が大変素晴らしい。前者は人によっては、『スーパーマリオ64』のピーチ城前庭を髣髴とさせられるかもしれない。
また、2章の過去世界序盤で流れる、リコーダー調の曲も必聴の価値ありだ。

メインとなるストーリーも良く出来ており、特に3章の人食い植物絡みのシナリオは秀逸。ストーリーを盛り上げる登場キャラクターも、マーロー博士やキング・ブルなど一癖も二癖もある奴らが盛り沢山で、見るものを飽きさせない。
宝箱の開封作業が面倒、ラックロックというお金のアイテムを回収した時に必ずゲームが一時的に止まる演出が挟まれる、4章のラックロック回収イベントが厳し過ぎる、同じく4章のボス戦が面倒臭いと言った気になる点もあるが、全体的な出来は文句無しに名作に値する出来。
斬新且つストーリー性を含んだゲームシステムと、深みに満ちた世界観という素晴らしい側面を持ちながらも、時期的な不幸によって、誰からも注目される事なく埋もれていってしまったこの『マーヴェラス もうひとつの宝島』。ゼルダファンのみならず、アクションゲームが好きな方、そしてゲーム初心者の方まで是非、遊んでみて欲しい、隠れた名作アクションアドベンチャーゲームだ。文句無しにお薦め。謎の財宝『マーヴェラス』を巡る、不思議な冒険へと旅立とう…。
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