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  4. 高橋名人の大冒険島II
≫高橋名人の大冒険島II
■発売元 ハドソン
■ジャンル アクションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 9975円(税込)
■公式サイト ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ((※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 21ページ
■推定クリア時間 12〜15時間(エンディング目的)、25〜30時間(完全攻略目的)
高橋名人は恋人ティナとの長い付き合いを経て、遂に結婚に至った。
幸せいっぱいの二人はいかだに乗って新婚旅行へと出かけ、色々な島を訪れるなど、平和な日々を過ごしていた。
だがある日、突然激しい嵐が起こり、大波が名人達を乗せたいかだを襲った。あっという間にいかだはバラバラになり、名人とティナは荒れ狂う海の中へ投げ出されてしまった。

名人と離れ離れになったティナは『わくわく島』に流れ着くが、今までの記憶を失ってしまっていた。また、名人も別の島に流れ着き、それまでの記憶を失ってしまっていた。だが、大事な人が居た事だけは記憶の奥底に残っていた。

月日が流れ、ティナを助けた『わくわく島』の王様は彼女と恋に落ち、やがて二人は結婚式を挙げる事になった。そしてティナが結婚の誓いを交わそうとした瞬間、大きなタカが舞い降り、ティナをさらっていってしまう。
偶然にも結婚式が行われていた城の近くを通りかかった名人は、ティナがさらわれていく様子を目撃。王様より事の次第を聞いた名人は、さらわれた花嫁ことティナを助ける為、そして自らの記憶を取り戻す為、冒険へと旅立つのだった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前作とは180度異なる、RPG的な味わいとやり応えに富んだゲームシステム
◆RPG要素が盛り込まれたが、基本の遊びはステージクリア型という、これまでのシリーズ経験者も取っ付き易い作りでまとめられた本編構成
◆ダッシュ移動、魔法攻撃、そして剣による近接攻撃など、これまでのシリーズに無かった新しいアクションの数々が異彩を放つ主人公の高橋名人
◆新たに近接武器(剣)が加わり、大幅にバリエーションが増した攻撃用武器の数々
◆簡素だが、閉ざされた道の開放、アイテム回収など、特有のツボはしっかり抑えた探索要素
◆探索要素の追加により、前作の推定3倍以上にも増強された、やり応え抜群の総計ボリューム
◆スクロール方向、仕掛けなどに至るまで、しっかり差別化が図られているのが見事な全6つ以上ものステージマップ
◆前作までとはまるで異なる味付けが成されたボス戦(結構、テクニカルな行動が求められてくる)
◆ギャンブルゲーム、競馬風ミニゲームなど、少なめながらもインパクト申し分無しのミニゲーム
◆挙動が変わったが、直感的に動かせる手触りの良さと違和感の無さは健在の操作性
◆大きめのキャラクタードット、背景周りの丁寧な描き込みが素敵なグラフィック
◆前作に負けず劣らずの名曲が取り揃えられた音楽
◆高橋名人が台詞付きで喋る、地味に衝撃的な場面が盛り沢山のストーリー

--- Bad Point ---
◆ビックリするほど地味になってしまった演出(特にボス撃破時の演出が酷い)
◆終盤に運要素が絡む、残念な問題点を抱えた難易度設定(具体的には最終ボスと戦うのに必要な装備の入手条件)
◆運が絡む問題点がある故、やや理不尽な面も持ったアイテム収集のやり込み
◆魔法の使い勝手の悪さ(どの魔法も消費MPが大き過ぎる)
◆本編のテンポを阻害している感が否めない、移動マップ画面におけるエンカウント戦闘
◆ステージクリア型ではない故のシンプルさの欠如(前作と同じ内容と思って遊ぶと痛い目を見る)
▼Review ≪Last Update : 12/30/2012≫
高橋名人、遂に喋る。

※ご本人ではなく、ゲームの方の名人です。


1992年に発売され、正統進化を遂げたゲームシステムと絶妙なゲームバランス、質の高いサウンドで好評を博した『高橋名人の大冒険島』、2年ぶりの続編。

前作から完全な別物へと様変わりした、歯応え抜群・新鮮味満点の続編だ。

ゲーム内容は前作『高橋名人の大冒険島』とは大きく趣の異なる、横スクロールのアクションRPG。高橋名人を操作し、6つの島を探索して石版を手に入れ、魔物にさらわれたティナの救出を目指すというものである。
前作の王道のステージクリア型アクションから、一転。探索主体のアクションRPGとなった事により、ゲームシステム周りも完全に刷新。敵やその攻撃に触れるだけでやられてしまう一発アウト制を廃止し、ファミコンの『高橋名人の冒険島IV』で初起用されたライフ制を起用。更に武器・防具装備システム、全体移動マップ、特殊アイテム獲得による能力強化、石版による魔法攻撃などの新要素を追加。「何処が高橋名人の冒険島だ!?」と突っ込みたくなるほど、別物同然なゲームデザインとなっている。無論、アクションRPGへとジャンルを変更した事により、全体のボリュームは約三倍に増強。それに伴い、シリーズとしては初めてとなるセーブ機能も設けられるなど、やり応え抜群の内容となっている。
システム周りだけに留まらず、名人のアクションも刷新。装備システムの導入によって打撃攻撃が可能となり、何も武器(アイテム)を持っていなければ攻撃不可能という従来のお約束が破壊されている。しかも、今回は名人が扱う武器もお馴染みの手斧ではない。一応、手斧自体はあるが、メイン武器になるのは何と剣!ファンタジー系のRPGではお約束とも言える剣になっている。その為、今回は敵との戦闘も近接攻撃が主を占めており、これまた従来とは異なる操作テクニックが要求される設計になっている。また、先ほどにも挙げたがゲームが進むと魔法攻撃もできるようになり、大胆なゴリ押しも効くようになっている。他にも細かい所で、Yボタン押しっぱなしでマリオのようなダッシュ移動ができるようになったり、ジャンプの飛距離・挙動も別物と言った違いがあり、前作や過去の冒険島シリーズとは全く異なる操作感となっている。
過去のシリーズのイメージから、基本的に超現場主義(現地調達)を徹底するヒーローというイメージの強かった名人だが、今作にはその面影は全くない。それもあり、これまでのシリーズをプレイしている方ならば戸惑うこと必至。挙句、鎧をつける事によって衣装まで変化するので、かつての野性っぽさは何処へと言った感じである。まさに絵に描いた新生・高橋名人。これまでとはまるで異なるプレイヤーキャラクターに仕上げられている。肝心のゲームシステムもだが、本当に前作の面影皆無の別物である。
しかし、アクションRPGとは言え、基本的には一本道。主な目的も6つの島を探索し、その最深部で待ち構えるボスを倒して『石版』を入手すればクリアと、従来のお約束に則ったものにされているので、ステージクリア型のアクションゲームとしてのらしさは残されている。ただ、島のマップ自体は広め。更に探索主体なのもあり、色々な所をウロウロする事になるので、ゲームとしての手応えはむしろ任天堂の『メトロイド』などに近い。同じハドソンのゲームで例えるなら、『迷宮組曲』に近いだろうか。いずれにせよ、前作のような軽い気持ちで遊べるゲームではなく、腰を据えてプレイするタイプのゲームになっているので、2を名乗っているから1と同じと考えるのは非常に危険。ある意味、前作ファンを陥れるトラップ的な続編と言っても良いかもしれない。
あの手軽なゲーム性も、スリリング且つ遊び応えのあるゲームバランスも、そして超現場主義で戦う名人も今作にはおらず。しつこいが、ゲームシステムからアクション性、ボリュームに至るまで、全てが「高橋名人、何処行っちゃったの!?」な有様。しかし、『大冒険島』というタイトルにはこの上ないほどマッチした内容に完成されている。これぞまさに、驚愕のフルモデルチェンジ。全てにおいて想定の範囲外な転身を遂げた『高橋名人の大冒険島』となっている。

ステージクリア型アクションから探索型アクションRPGとなり、名人自身のアクションまで別物になった。こうも様変わりしたとなると、前作が好きだった方にとって今作は受け入れ難いゲームになっているのではないのか?ここまでの解説を読めば、その疑念が噴出するのは避けられない。正直な所、その答えはイエスでもありノーでもある。人による、としか言い様がない。ただ、断言できるのは、名人シリーズは手軽ながらも歯応えのあるステージクリア型アクションである、とイメージしている方ほど受け入れ難い作品になっている事だ。そもそも、ジャンルが違う事からして、それは明らかである。
ただ、先も語ったが、シリーズのテイストはきちんと残されている。探索主体とは言え、基本は一本道で、舞台となる複数の島の最終目的は最深部で待ち構えるボスを倒す事。言うなれば、これまで複数のコースとボス戦コースで構成されていたステージをひとまとめにしたとも言える構成なので、従来のステージを攻略する達成感と目的の分かり易さはそのまま。妙な複雑さは皆無で、旧シリーズの伝統を残した設計となっている。
また、単純に一つの探索型アクションRPGとしての出来も良好。装備や能力の強化でアクションが増え、進める道が広がっていくなど、この手のゲーム特有の探索の面白さはちゃんと盛り込まれている。それでいて、ステージクリア型アクションというシリーズの伝統から、謎解き要素は控え目。単にフィールドを歩き回っていれば、自然と突破口が見えてくるレベルデザインが図られているのもあり、非常にテンポ良く、それでいてサクサクと進めていける作りになっているのも大きな強みと言える。謎解きが無いとなると、探索の手応えが弱いのではと懸念を覚えるかもしれないが、そこも今作はアクション性の高い仕掛けを多めに配置してバラエティ感を演出。プレイヤーを飽きさせず、そして緊張感を失わせない為の趣向を凝らした作り込みにより、単調さを完全に取り除いている。その為、シンプルな構成からは想像もつかぬ手応えと密度の濃さを実感できる。更に島ごとの構成(マップデザイン)もかなり凝った出来。王道の探索主体はさることながら、足場の少ない危険地帯、上下移動がメインの変則的なエリア、そして全体マップとの並行で探索を行う複合型エリアなど、何処の島も個性的なアイディアが炸裂している。全体の広さも長過ぎず、短過ぎずの絶妙なバランスでまとめられており、丁度飽きが来るタイミングでボス戦に突入するなど、入念な計算が図られた設計になっているのも秀逸。そんな個性豊かで楽しい島が次々とプレイヤーの前に立ちはばかるので、不思議とコントローラも手放せなくなる。この手の探索型アクションRPGでは、如何にプレイヤーのモチベーションを持続させられるかのレベルデザインが面白さのカギとなってくるが、今作はその最も大事にしなければならない所を見事に守り通している。それも、島ごとに異なる遊びを設け、さながら遊園地のアトラクションのようなワクワク感を演出しているのだから、お見事としか他に言い様がない。これぞ『大冒険島』だと断言できる、秀逸且つ説得力抜群のレベルデザインと言えるだろう。
また、バラエティ感への演出に関しては前作でも炸裂しており、飽きの来ないスリル溢れる体験をプレイヤーに提供していた。このレベルデザインはそんな前作の良さも自然な形で受け継いでいるのも見事な所。例えジャンルが変わろうと、続編としての継承の姿勢は残そうとした制作スタッフのこだわりが発揮されている。何から何まで変えず、匂いをきちんと残し、続編としての体裁を守ろうとする辺りにセンスを感じさせられる次第だ。他にも、島の最深部で待ち構えるボス達も突飛な攻撃と意表を付く動きでプレイヤーを翻弄させる、ニクい面子ばかりで戦い甲斐はバッチリ。探索型アクションRPGらしいアイテム収集も健在で、マップの隅々を調べ倒していく快感もしっかりとしている。
それでも、あの『高橋名人の大冒険島』の続編としてはかなり異質な内容であるのは事実。シンプルなステージクリア型アクションを楽しみたい方にとっては、なかなか骨が折れる上、受け入れ難い部分もある。しかし、探索型アクションRPGとしての完成度はなかなかのもので、レベルデザインからアクションの楽しさに至るまで、一切の妥協を感じさせない仕上がりになっている。そして、見え難い所に前作の良さを残したりする気配りも効かせるニクさ。変わり過ぎの続編であるのは間違いないが、違うからダメというにはあまりに勿体無いほど、その完成度は上々。これこそまさに『大冒険島』だと言い切れる、その説得力溢れる内容は体験する価値大いにアリと言えるだろう。ある意味、今作は正真正銘の高橋名人の大冒険なのである。続編にして、それを成し遂げる時が来たのだ。

操作性もアクションの変更で、挙動が前作とは別物になっているが、キーレスポンスと配置は極めて良好。単純に動かして気持ちの良いものに完成されている。名人自身のアクションも近接、遠距離の攻撃、魔法の使用などバリエーションが増えているのもあり、いつになく動きが芸達者。これまでとはまるで違う「強さ」を全面に出したその動きは要チェックだ。
ただ、レベルデザインや操作性が悪くない一方でゲームバランスは難あり。特に最後のボスが運要素を駆使しないと手に入らない武器と防具が無ければ勝てない難易度設定になってしまっているのは致命的にも程がある。そもそも、運要素を絡める時点でアウト。単純に努力すれば入手可能であれば良かったのに、何故に運なんて不確定なものを入れてきたのか。それまでの流れは悪くないだけに非常に勿体無い。また、魔法を使う際に消費するMPの数値も全体的に高めに設定されてしまっており、使い勝手の悪さが際立ってしまっているのが残念である。バランスブレイク防止が狙いなのかもしれないが、最も弱い魔法ですらMPを半分近く消費するというのは如何なものだろうか。
グラフィックも全体的に悪くは無いのだが、エフェクト関連の演出周りが地味過ぎて迫力に欠ける。敵を倒した際の演出にしろ、全てが前作以下のしょぼいものになってしまっているのは問題ありだ。ボスにせよ、もうちょっとド派手に散るエフェクトを入れられなかったものだろうか?この地味さもあり、全体的に勝利した際の達成感が弱くなってしまっているのは、さすがに劣化し過ぎだと言わざるを得ない。前作のあの派手さは何だったのか?

対し、音楽は今回も良い出来。作曲担当は前作の古代祐三氏からハドソン所属のサウンドスタッフへと変更されているのだが、全体的に素晴らしい楽曲が多く、前作以上と言ってもおかしくないクオリティになっている。特に『ひやひや島』と『さらさら島』の二曲は要チェックだ。
また、今回はシリーズとしては珍しく台詞でストーリーが語られる場面があるのも必見。内容自体は正直な所、そんなに深いものでもなく、ひたすら平坦なのだが、今まで無口と思われた名人があれこれ喋る様は実に衝撃的。その決定的瞬間は要チェックである。その他、全体のボリュームもエンディングまで10時間ほどと結構な量のほか、アイテム収集にカジノなど、寄り道要素も充実しており、遊び応えは申し分ない。
主にゲームバランスと演出周りにおいて残念なところが目立つが、アクションRPGとしての出来の良さと『高橋名人の大冒険島』の続編としての奇抜さは目を見張るものがある。ほとんど前作とは別物の為、シンプルなステージクリア型アクションゲームを楽しみたいプレイヤーにとっては受け入れ難い側面はある。しかし、シリーズ最高クラスのボリュームに優れたレベルデザインと、紛れもない『大冒険島』としての密度の濃い内容が異彩を放つ今作。探索型アクションRPGが好きなプレイヤーなら是非、プレイしてみて欲しい意欲的な傑作にして続編だ。衝撃の進化を遂げたその内容とまさかの喋りをお披露目する高橋名人(そして、この物語の行く末)に括目せよ。
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