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≫タクティクスオウガ
■発売元 クエスト(※VC版:スクウェア・エニックス)
■ジャンル シミュレーションRPG
■CERO C(15歳以上対象) ※犯罪(虐殺、拷問)描写あり
■定価 スーパーファミコン版:11970円(税込)
バーチャルコンソール版(Wii):800Wiiポイント
■公式サイト ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 2つ+中断1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)、16個(※ターボファイルツイン使用時)
■その他 ターボファイルツイン対応(※バーチャルコンソール版は非対応)
■総説明書ページ数 45ページ
■推定クリア時間 40〜60時間(エンディング目的)、300時間以上(完全攻略目的)
ゼテネキア大陸の遥か彼方に浮かぶ、ヴァレリア諸島。
かつてこの島は、覇王ドルガルアなる男により統治されていたが、彼にはその遺志を継ぐ者がいなかった。
程なくして彼は逝去し、島の覇権を巡り、ヴァレリア諸島内の国々は分裂。ウォルスタ人、ガルガスタン人、バクラム人の三民族が凌ぎを削る、内紛状態へと陥ってしまう。

その3つの勢力の内、少数派のウォルスタ人は現在、指導者であるロンウェー公爵がガルガスタン陣営に捕縛され、窮地に追い込まれつつあった。

物語は、公爵救出を画策する、三人の若者が潜む港町『ゴリアテ』から始まる…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆与えられた勝利条件を達成しながらマップを攻略していく、シンプルな基本ゲームルール
◆マップ上で地続きに展開する事に限定した、テンポの良い戦闘システム
◆高低差の概念を取り入れた事による、高度な戦略性が光る立体マップ
◆ユニットごとの装備品の重さ等で行動順が左右する、斬新な『ウェイトターン』制
◆ウェイトターン制の存在もあり、異様な中毒性を醸し出しているユニット編成画面
◆ユニットごとの信仰エレメントによって攻撃相性が変化する、ディープな属性システム
◆雨によって移動範囲が変化したりなど、更なる戦略の妙を演出する天候変化システム
◆一般兵士から弓兵、更にはスケルトンなどのモンスターまで用意された、豊富なユニット
◆能力面の強化に留まらず、戦略の幅までも広げる、奥深いクラスチェンジシステム
◆忠誠心如何で、時に敵側へと立場を逆転する、人間味溢れる味方ユニット
◆民族紛争という名の惨劇を生々しく描いた、重厚且つ壮大なストーリー
◆絶対的な正義がこの世に存在しない事を嫌と言うほど思い知らされる、エグい選択肢
◆戦争の愚かさや人の業の深さを美しく表現した、カッコイイ台詞と章題
◆チュートリアルにストーリー解説など、無駄に充実したサポート機能
◆カーソルを無駄にカチャカチャ動かすだけでも気持ち良い、抜群の操作性
◆戦略性の高さを余す事無く表現した、歯応え満点且つ絶妙なゲームバランス
◆まさに職人技とも言うべき、細やかな仕事ぶりが光る、美麗なグラフィック
◆ストーリーの悲惨さをリアルに表現した、重厚且つ時に悲しげに語りかける音楽
◆普通にコンプリートするなら余裕で300時間は超える、膨大なやり込み要素

--- Bad Point ---
◆イマイチ、テンポの悪さが光る『トレーニングモード』(戦闘が始まるまでが遅い…)
◆バランスブレイカー『ペトロクラウド』(鬼…)
◆途中中断は許されてもセーブが出来ないのが辛い、多重構成で長いラストマップ
◆立体マップの都合により、他のユニット以上に優遇されてる感のある弓兵
▼Review ≪Last Update : 12/8/2007≫
お前はその手を汚して栄光を掴むか…?

それとも、汚さずに栄光を掴むか…?


『カオスフレーム』なる斬新なゲームシステムで、シミュレーションRPGに革命を起こした伝説的名作『伝説のオウガバトル』の流れを汲む続編的作品。

貴方に訪れる運命は栄光か、それとも破滅か。新システム『ウェイトターン制』による斬新且つ高度な戦略性、自らの選択によって左右する残酷なストーリーで送る、シミュレーションRPG超大作だ。

ゲーム内容は、ユニット(駒)となるキャラクター達をカーソルで移動させながら敵を倒し、与えられた勝利条件を満たしてマップを攻略していく、シミュレーションRPG。プレイヤーは主人公デニムと共に数多くの戦い(マップ)を乗り越え、そして時に重大な決断を下したりしながらゲームを進めていく事になる。
シミュレーションRPGとしての基礎となる部分は、他の同系列の作品と大差はないように見えるが、細かな面において今作は、斬新なシステムと試みを数多く導入している。
まず第一に、マップ構成。今作では、シミュレーションRPGお馴染みの見下ろし視点の平面状(2D)マップでは無く、高低差の概念を取り入れたクォータービュー形式(斜め視点)の立体マップを採用。ユニットの待機する位置によって、攻撃範囲(射程)が変化したり、また受けるダメージが変化したりと言った新たな枠組みを取り入れ、それまでの作品には無い、より高度な戦術性を実現しているのである。更に敵への攻撃に関しても、ユニットそのものが向いている方向如何によって、攻撃の命中率・並びにダメージ率が変化するという面白い試みも成されており、戦術の妙を掻き立てる。
そして第二のターン制も、そんな立体マップ上における戦略の妙を大いに掻き立てる。いわゆる味方の番⇒敵の番と言った交互にターンを繰り返していくタイプのターン制を採用せず、代わりに『ウェイトターン制』なるものを今作では導入し、個々のユニットの装備重量と『WT値』によって敵味方を問わず、行動順を制御するという画期的なゲーム展開を表現しているのだ。故に今作では、必要以上にユニットの行動順序に気を配る必要があり、その順序に則した行動を取っていく事が、効率的な戦闘を進める事と勝利への鍵となってくるという、全く新しい戦略性を実現。タクティクスの名に恥じない、知略勝負の妙を味わえるのである。また、このターン制はユニットの装備品によって制御されるという事もあり、如何に重さとしてもバランスの良い装備をユニットに施し、行動順を速めるかというユニット編成の面白さを演出している点もまた見逃せない。それもあって、編成画面にもマップ並の戦略性の高さが盛り込まれてしまってるのには、「何処まで影響させてんねん!」の一言だ。
第三の属性システムも非常に面白い。自らが信仰しているエレメント如何によって、攻撃相性と地形パネルの効果が変化するという、これまたディープな要素が盛り込まれている。しかも、信仰するエレメントの特徴は自らゲーム開始前に設定でき、それによって常に違ったゲーム展開と戦略性を生み出せる辺りもまた、深い。これだけでも今作が、かなりやり込み甲斐のあるゲームだという事は目に見えたも同然だろう。
天候の変化に伴うマップの変化、ユニットの戦術の幅とマップ攻略の奥深さを広げるクラスチェンジシステム、主人公に対する忠誠心如何によっては敵側に裏切りかねない味方ユニットなど、まだまだ他のシミュレーションRPGと一線を欠く斬新なシステム、並びに要素はある。だがこれまでの三つ、立体的なマップとユニットの重量によって変化するウェイトターン制、そして属性システムだけでも、今作がシミュレーションRPGとしては極めて新しく、それでいて攻略し甲斐のある奥深さを秘めた作品だという事は想像に難くないだろう。それぐらいまでに、今作はプレイヤーの好奇心を煽る、画期的な戦術要素とゲームシステムが沢山盛り込まれた、ボリューム・やり応え共にトップクラスのゲームに仕上がっているのだ。
しかも、それでいてこれらのシステムが、破綻無くまとまっているのも凄い。マップ構成にしても、敵配置から何まで全てが絶妙のバランスで構築されているだけでなく、ストーリー上での主人公達の立場(追われる身、追う身)を高低差によって表現しているなど、全てが上手い。いや、あまりに自然に溶け込んでしまっているのだ。

そんなマップ上にさえも影響を与えるストーリーの出来も、先ほどのシステムに負けず劣らずの凄いクオリティだ。民族紛争という思想の異なる者同士が対立し合う惨劇を背景に置いた、重く、それでいて救われない展開が画面いっぱいに繰り広げられていく。時にストーリーは、プレイヤーに決断を迫ってくる事もあり、その内容は「その人に対してどう自分は反応するか?」と言った基本的なものから、自らの運命のみならず世界の運命をも揺れ動かすものまで、実に多種多様なものが用意されている。中でも、世界の運命と自らの運命を左右する選択肢はいずれも衝撃的なものが多く、その内容のエグさには誰もがコントローラを触っている手を止め、考え込んでしまうほどだ。ネタバレになるが、第一章終盤での「蜂起の為の住民虐殺」を迫る選択肢は、そんな今作で用意されているものの中でも、屈指の重さと言えよう。
しかも、この選択肢一つ一つに決して答えは無い。全てが正解であり、それでいて間違いでもあるのだ。結局、信じるは自らの正義感だけ。まさに、人間の業の深さみたいなものを感じてしまうような、実に深いストーリーになっているのだ。
また、所々で炸裂する、カッコイイ台詞回しの数々も見逃せない。第一章の章題でもある『ぼくにその手を汚せというのか』や誰の台詞かは全て伏せるが…、

「どうせ、貴様もそのうちに『汚れる』さ。」

「私には、「父さん」と呼ぶ子を手放すことが出来なかったのだ…。」

「民に自分の夢を求めてはならない。支配者は与えるだけでよい。」

などとその全てが、遊んだ物と見る者の心に深々と突き刺さってくる。このような台詞を喋る、登場キャラクター達も皆、人間臭さが溢れており、実に生き生きとしている。
はっきり言って、このストーリーだけでも今作が名作だと言っても、おかしくはない。嘘偽りの無い戦争という名の悲劇、そして不明瞭な正義感と理想論、そんな重々しいテーマをこうも美しく、且つ壮大に描いた内容は、間違いなく今日に至るゲームのストーリーの中でも最高クラスに値すると言っても過言ではないだろう。「ゲームのストーリーなんて所詮、子供だましだろ」という先入観を持つ方にこそ、是非ともこの物語は味わってみてもらいたい。その先入観が過ちであった事を、嫌と言うほど痛感させられるはずだ。
勿論、ストーリーには内容のみならず、ゲームへの直結も上手く成されており、選んだ選択肢によっては後のストーリー内容も大きく変化し、相手となる敵が変わったり、プレイできるマップが変わったりと、選んだなりの違った遊びもちゃんと用意されている。こんなちゃんと遊びを忘れずに盛り込む気配りになってるのも、今作ならではと言えよう。
システムとしての面白さと新しさ、そして戦略性の高さにこだわるだけでなく、ゲームプレイを大いに盛り上げるストーリーにも強烈なこだわりを反映させた本作は、まさに究極というに相応しい。普通ならば、どちらか片方に肩入れするものを、どちら共に肩入れし、尚且つ水準以上のクオリティを実現したそのこだわりは、正直言って…良い意味で異常だ。
何処まで、こだわったらここまで深いものが作れてしまうのか。まさにこれぞ、正真正銘の”鬼気迫る作り込み”である。

鬼気迫る作り込みが見受けられるのは、システムやストーリーのみに留まらない。シミュレーションRPG初心者を考慮した丁寧なチュートリアルにオンラインヘルプ、そしてストーリーの整理に一役買ってくれる『ウォーレンレポート』など、サポートシステムも豊富に仕込まれており、誰でも気軽に楽しめる工夫が随所に凝らされているのだ。
操作性、ゲームバランスも申し分無く、いずれもこの手のゲームとしては快適な物を実現している。ただ、バランスに至っては『ペトロクラウド』なる強力過ぎる魔法があり、それを手に入れて”ハボリム”なるキャラに持たせてしまうと、どのマップも軽々とクリアできるようになってしまうのは少々、致命的。それ無しでは絶妙なバランスを維持しているだけに、ちょっと残念だ。だが、これも初心者対策の一つと考えれば、概ね納得できるが…。
そしてグラフィック、音楽の完成度もお見事。グラフィックに関しては、マップ上のキャラドットから顔グラフィックまで、いずれも細部まで丁寧に描かれており、まさに職人技の域。スーファミ成熟期の力というものをひしひしと思い知らされる。
音楽も世界観にマッチした、重厚で時に悲しく語りかける名曲が満載。その割には、裏技で出せるサウンドテストモードでは、曲ごとにおちゃらけた題名が振られていたりして、本編とはかけ離れたギャップがあるのが面白い。作曲担当が、かの崎元 仁、岩田 匡治のゴールデンコンビによるものだというのも、ゲーム音楽ファンにはたまらないところだ。
ほんとにつくづく、どれもこれも豪華に作るのにも程がある。

他にも、普通にプレイしたならば300時間は余裕で超えるほど膨大なやり込み要素と隠しマップ、無駄にこだわったマップの地形パネルの解説文など、上記の他にも文字通りな鬼気迫る作り込みが成されている箇所はまだまだ存在。
それらを語るとなると長くなるので、この辺で打ち止めするが、とにかく本当に、完璧としか表現の仕様が無い作品なのである。バランスの崩壊やトレーニングモードでのテンポの悪さ、最終マップの過剰な長さなど、ちょっとした欠点もあるにしてはあるが、それ以外の所があまりに面白いが為に、ほとんど些細なレベルに落ち着いてしまっているほど。
シミュレーションRPGとしての戦略性の高さと新しさ、そして充実したやり込み要素とサポートシステムの数々、そして骨太なストーリーとゲーム全体を構成する要素の大半が、飛びぬけた完成度を維持しているこの『タクティクスオウガ』。
シミュレーションRPG好きは勿論の事、ゲーム初心者から上級者まで、幅広いプレイヤー層にお薦めできる、スーパーファミコン史上最大の超大作だ。これをやらずとして、シミュレーションRPGとスーパーファミコンは語れない。是非、機会があったらプレイすべし。但し、はまり過ぎにはご用心を。
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