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≫ソウルブレイダー
■発売元 エニックス(現:スクウェア・エニックス)
■開発元 クインテット
■ジャンル アクションRPG
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 9240円(税込)
■公式サイト ≫スクウェア・エニックス:紹介ページ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 4つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 44ページ
■推定クリア時間 8〜15時間(エンディング目的)、10〜20時間(完全攻略目的)
フレイル王国を統治するマグリット王は、物欲の激しい男だった。
ある日、天才発明家のレオを噂を耳にした王は、彼を監禁し悪魔を召還する機械を作らせた。

そして王はその完成した機械を使い、魔王デストールを召還。
地上のあらゆる命と引き換えに莫大な黄金を受け取る取引を行い、その日から一本の花、一羽の鳥と言った命が一つずつ消えてゆき、遂には王を含めた人間までもが消え、世界は滅亡した。

そんな地上を見つめていた神は、地上の生物達を蘇らせ、魔王デストールを倒す為、愛弟子の天空人を遣わした。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆人間や動物、更には植物の魂を解放していく、斬新且つユニークなゲームシステム
◆アクション重視を貫いているからこその、スピード感溢れるゲーム展開
◆そのアクション重視姿勢故に実現した、抜群のゲームテンポ(とにかくサクサクと進む)
◆自らの手で命を解放し、世界中の大地を復活させるという圧倒的な使命感
◆輪廻転生による巡り合い等、道徳性溢れる描写が秀逸なストーリー
◆一人一人の生活感と復興へのやる気を促進させる、キャラクターごとの心に染み渡ってくる素晴らしい台詞群
◆プレイヤーの周囲を回るソウルで敵に狙いを定めてから行う、狙い撃ちの快感が癖になる独特の魔法システム
◆装備するだけで体力回復が行えたりなど、個性的な性能が満載の武器・防具群
◆再開時における面倒な手数を踏ませない工夫が素晴らしい、各ダンジョンの構成
◆アクションゲームばりのダイレクト且つ快適な操作性
◆細やかな動きと素早い動作が(色んな意味で)印象に残る、プレイヤーのアクション
◆ゲーム初心者にも優しい『温さ』が印象的な低めのゲームバランス
◆地味ながらも滝やコンベア等の滑らかなスクロールが目を見張るグラフィック
◆切なくも、何処か力強い旋律が印象的な音楽
◆世界各地をしらみ潰しに調べる探索が面白い、やり応え満点の『神のエムブレム集め』
◆人間と人間でないものとの関係について深く考えさせられる、記憶に残るエンディング

--- Bad Point ---
◆使い勝手に欠ける、ソウルの魔法攻撃(常に狙いを定めなければならないのが辛い)
◆狭い攻撃範囲(もう少し広くても良かった気が…)
◆ノーヒント故に分かり難い、ゲーム終盤の三種の神器集め
◆地味さの拭い去れないグラフィック
◆簡素且つ見栄えの悪いゲームパッケージ(もう少し派手にしても…)
▼Review ≪Last Update : 10/20/2007≫
蘇る命、蘇る大地。

そして、蘇る罪人…。


地上とその生命達を蘇らせる使命を背負った天空人の戦いを描いた、完全新作アクションRPG。制作は『アクトレイザー』で世に衝撃を与えたソフトハウス、クインテットが担当。音楽はゴダイゴのタケカワユキヒデ氏が作曲している。

魔物を倒し、街や人を復活させていく奇抜なゲーム展開と道徳性に満ちたストーリー。
遊んだ者の心に深々と染み渡る、スーファミ屈指の名作アクションRPGだ。

ゲーム内容は、ステージクリア方式を採用したアクションRPG。神の遣いである少年を操作して各エリアごとに設けられたダンジョン内に潜む魔物達を倒し、大地に封じられた人間や植物、そして動物達の魂(ソウル)を解放していく、どちらかと言うとアクションゲームとしての味が濃い目の内容となっている。
プレイヤーが挑む事になるエリアは全部で6+1種類。いずれのエリアも基本的に町ステージ(フィールド)と魔物が待ち受けるダンジョンの2つで成り立っており、ゲームは片方のダンジョンの攻略を介して進行していくようになっている。アクションゲームとしての味が濃い目と先程、述べた理由はこれだ。実際、各ダンジョンの攻略条件である『最深部で待ち受けるボスを倒す事』、ダンジョンを攻略する事で次のエリアへの道が開くシステム自体は、まさにアクションゲームそのもの。見方を変えれば、見下ろし視点で展開するアクションゲームと言ってもおかしくないぐらいだ。しかし、かと言ってアクションゲームのように1つの目的(ダンジョン攻略)だけに集中する、いわゆる一本道のゲームにはなっておらず、時には町でイベントをこなしたり、アイテム集めをしたりなど、RPGらしい展開もしっかりと用意。また、剣や防具と言った装備品と経験値とレベルアップの存在など、RPGでは馴染み深い要素も多数導入されており、本作がアクション要素を絡めたRPGであるという事を主張している。
それでも基本的にアクションゲームの要素が強めな事に変わりは無いのだが、そちらの要素を前面に出してRPGの要素を極力抑え目にし、結果として非常に分かり易く、尚且つ起伏に富んだテンポの良いゲーム展開を実現させたのは見事な判断。アクションゲームは好きだけどRPGはちょっと…という初心者や苦手な方でもすんなりと溶け込め、尚且つ作品世界を堪能できる。勿論、RPGが好きだと言う方にも捻りの効いた展開やダンジョンのトラップなど、確かな手応えと満足感を得られるものも完備。
幅広いユーザーに適応した優しさに満ちたバランス調整が光る、珍しいタイプのアクションRPGとなっているのだ。この辺りの優しさへの徹底は、かつて日本ファルコムで『イース』シリーズを手掛けたクリエイターが所属するクインテットならではと言った所だろうか。操作の面で、ややこしいアクションを一切要していない所からも、その名残を感じさせられる。

そんな本作における最大の売りは、やはり人間や動物、更には植物の魂を解放していく独自性に富んだゲーム展開と、それを引き立てる道徳性溢れるストーリーに尽きるだろう。
魂の解放はダンジョンを攻略するにおいて決して避けられぬ作業であり、基本的にダンジョンでプレイヤーの前に立ちはばかるモンスター達の大半は『巣』を持っており、この『巣』に生き物の魂が封印されている。つまり、この巣を潰す事によって魂が解放されるのである。では、どのようにして巣を潰すのかと言うと、その方法は極めてシンプル。巣か出てくる魔物達を全滅させれば良いのだ。全滅させると巣は『プレート』に変化。そしてこれを踏む事で封印されていた魂が解放され、人間や動物、植物が町ステージに復活する。これを繰り返しながらプレイヤーは大地を復活させていくのである。
自分が行った結果の反動で、かつては廃墟であった大地に町や人が蘇っていくその光景は実に圧巻で、それでいてとても微笑ましい。如何にも「自分がこの世界を救っているんだ!」という事を思い知らされる、ゲームでしか味わえない手応えと感動を限りなく追及したシステムであると言える。この発想は実にユニークだ。
また、プレートを踏んだ時に起こるイベントは生き物達の復活だけではなく、ダンジョン内で閉ざされていた進路が開いたり、次の階層への階段が現れたり、アイテムが入った宝箱が現れたりなどと色々なパターンが用意されている。中には踏む事で新しい巣が現れたりなど、意表を付くイベントもあり、プレイヤーを飽きさせない。そして魂を解放するに当たって行う巣潰しも、個性的なモンスターを多数用意する事で作業感を極力排除。それでいて、パズル的な面白さ(ある区画で待機して攻撃を行うと、安全にモンスターを倒せる)を打ち出すなど、見た目の地味さを逆手に取った試みを行っているのもなかなか上手い。一歩間違えれば単なる作業となり、ゲームとしても酷くつまらなくなってしまうものをこうまで面白く、尚且つ確かな達成感と使命感を表現したその手腕にはひたすら頭が下がる。それほどにまで、遊んでいて気持ちの良いゲーム展開を本作では実現しているのである。
そして、その魂を解放した際の達成感と使命感を一層煽る、道徳性に満ちたストーリーの素晴らしさも語らずには要られない。とにかく誰もが「生きている」。人間から動物、更には植物までもがしっかりとした台詞を喋り、命があるのは生き物ばかりではないという事を嫌というほどに思い知らされるのだ。さながら、その感覚は故・手塚治虫氏の名作『火の鳥』に通じるものがある。そしてその台詞自体も非常に素晴らしく、聞くだけ優しい気持ちになるものが盛り沢山。特にゲーム序盤のエリア2に登場する小鳥が言い放つ、木と鳥の関係を語った台詞はあまりに秀逸。正直、子供の教育材料としても十分に使えると思わせられるぐらいの素晴らしさなのである。これらの素晴らしい台詞を拝むだけでも、本作を遊んで見る価値は十分にあると言える。しかも、このような良い台詞を用意した事で「もっと人や植物を復活させて、その話を聞いてみたい」というプレイヤーのやる気を促す心理的作用が発揮されている点もさすがと言わざるを得ない。まさに、ゲームシステムとストーリーの華麗なる結合と言っても過言ではないだろう。
勿論、ストーリーそのものもかなり良い。特に終盤にかけてのレオ博士とその娘・リーサの悲劇、物語の根源とも言えるマグリッド王の苦しみ、そしてエンディングにおける主人公の末路は必見。中でもエンディングにおける主人公の末路は、誰もがその顛末について考えさせられる、実に印象的なものとなっている。所々で語られる、輪廻転生をモチーフとした展開も秀逸だ。この辺もまた、台詞と同じ位に見てみる価値があると言える。
シンプルで一歩間違えば作業になってしまうシステムを面白いものに昇華させ、そこにゲームとしての魅力を引き立てるための素晴らしい台詞と切ないストーリーを加味させる…。これも全ては「魂を解放する」という基本を最後まで貫き通した故のこだわりとも言える。結果として、シンプルながらも深みのあるゲームに仕上がった本作は、まさにシンプルなアイディアでも人の記憶に残るものは作れるという事を高らかに主張した一本と言えよう。
このように本作は基礎は簡単でありながらもゲーム、そしてストーリー共にもの凄く深い一本になっているのである。この深さは今考えてみればかなり異端だ。

その他、システムなどの基本となる部分以外でも、プレイヤーが挑む事になるダンジョンでは、再開後のプレイで面倒な手数を踏まない為に豊富にショートカットを用意していたり、操作性においては迅速な反応を追及して全てのアクションがスピーディに行われるようになっていたりなどと、丁寧な仕事が随所において炸裂。特に操作性はかなり良く、動かしているだけでも楽しい、アクションゲームばりの快適性を実現してるのは圧巻の一言。
やや、剣を振った際の反応が軽すぎるのと攻撃範囲が若干狭いのが気になる所ではあるが、遊んでいけば全く気にならなくなるレベル。操作自体も複雑なコマンド等はなく、一貫してシンプルである事が通されているのが実に潔い。如何に本作の製作スタッフが、シンプルである事を追求したかをうかがい知れる。
グラフィックと音楽もなかなかの出来。グラフィックは流石にスーファミ初期という事もあってかなり地味ではあるのだが、半透明機能を効果的に活用した表現や滑らかなベルトコンベアと滝のスクロールは見応えがある。キャラクターのドット絵も気合いが入っており、特に動物絡みのグラフィックは必見だ。
そして、音楽も音源の貧弱さが少し尾を引くが、どれも名曲揃い。中でもエンディング並びに終盤の一部で流れる『恋人のいない夜』は必聴の価値アリだ。
なお、本作の音楽は冒頭でも話したが、ゴダイゴのタケカワユキヒデ氏が作曲。いずれの曲も氏のテイストが満ち溢れており、切ない力強さを感じる事ができる。氏のファンの方ならば、これを聴くだけでも本作をプレイする価値はある。

ゲームバランスもシステムと絡んでか極力低めに設定されており、それなりのレベルと全回復アイテムを装備していれば力押しでも突破できる温さ。その為、物足りなさを感じる方もいるかもしれないが、逆にレベルなどの縛りをかけてみればかなり歯応えのあるゲームプレイを味わえる。一周が物足りなく感じた方にお薦めの方法だ。改めて、本作の奥深さとゲームバランスの意外な緻密さを実感できるだろう。
これらの他にもプレイヤーの周囲を回転する『ソウル』を用いて行う独特の魔法攻撃、個性的な武器・防具群、やり込み甲斐満点の神のエムブレム集めなど見所は盛り沢山。
先述の攻撃範囲の狭さのほか、古い時代のゲーム故の演出の地味さ、魔法攻撃の使い難さ、そして終盤の三種の神器集めが少し分かり難い等の地味に気になる不満点もボチボチとあるが、シンプルなシステムと奇抜なゲーム展開、そして素晴らしいストーリーが際立ってるのもあり、返って目立つ事もない。シンプルで分かり易く、それでいて遊び易く、尚且つ深いゲーム性とストーリー性を兼ね備えたこの『ソウルブレイダー』。アクションRPG好きのみならず、ゲーム初心者から上級者の方まで是非とも遊んでみて欲しい、名作アクションRPGだ。人間から動物、更には植物が織り成す賛美歌をその目でご覧あれ。きっと心に「何か」が残るはずだ。
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