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≫スヌーピーコンサート
■発売元 三井不動産、電通
■開発元 任天堂、パックスソフト・ニカ
■ジャンル アドベンチャー
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10290円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー形式)
■その他 スーパーファミコンマウス対応(※通常のコントローラでも遊べます)
■総説明書ページ数 14ページ
■推定クリア時間 7〜9時間
今日はコンサートの日。
が、会場に集まるはずの仲間達がやって来ない。
どうやら、彼らには悩み事があって、コンサートどころではないらしい。
スヌーピーは彼らが抱える悩みを解決する為、ウッドストックと共に行動に出る。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆基本操作は共通していながら、独自の個性を持った内容に仕上げられた全4種類のゲーム
◆十字キーとAボタン(マウスの場合はマウス自身の操作と左クリック)だけで手軽にキャラクターを動かせる、シンプルで取っ付き易さ抜群の操作性
◆ボタンを押し、指示を出すだけで行える単純さが秀逸なスヌーピーのアクション操作
◆温めと思いきや、ゲーム好きも思わず唸ること必至の歯応え抜群のゲームバランス(特にリランのゲームの難易度設定には目が点になること請け合い)
◆固定観念を持つ愚かさを思い知らされる、奇想天外な解法と説得力の高さを兼ね備えた絶妙な謎解きの難易度設定(原作付きとは思えぬやり応え)
◆多過ぎず短過ぎずの丁度良い量にまとめられた、遊び易さ抜群の総計ボリューム
◆区切りの良いタイミングで表示されるパスワードなど、痒い所まで手の届いた配慮の数々
◆原作『ピーナッツ』の世界観と雰囲気を忠実に再現した、淡い色彩で描かれた珠玉のグラフィック
◆スヌーピー好きなら悶絶必至のスヌーピーのリアクション(ただ一言。可愛過ぎる。)
◆淡い色彩のグラフィックと絶妙にマッチした、名曲揃いの音楽
◆見た目はほのぼのとしながら、シュールでブラックな味わいも残したデモシーン
◆原作のシュールさなどを強く意識した作風が光る、ユルくて面白いストーリー(洒落の効いた台詞回しも必見)
◆とても可愛くて素敵なエンディング(特に締めのシーンは必見)

--- Bad Point ---
◆歯応え抜群とは言え、スヌーピー好きやゲーム初心者にはやや辛い謎解きの難易度設定(理不尽過ぎる謎解きは皆無だが、結構頭を使う)
◆トライ&エラー必須の難易度調整である為、そこそこゲームに慣れてる人でないと辛い作りのリランのゲーム
◆設計上仕方が無いとはいえ、微妙にぎこちなさが残る通常コントローラでの操作
▼Review ≪Last Update : 12/4/2011≫
貴方のお悩み、ビーグル犬が解決します。

でも、ちょっぴり毒舌です。


アメリカの漫画『ピーナッツ』のキャラクターショップ、『スヌーピータウン』を運営していた三井不動産と電通より、ショップ開店の記念として製作されたアドベンチャーゲーム。開発は故・横井軍平氏が部長を務めていた任天堂の開発一部、『ふぁみこんむかし話 新・鬼ヶ島』や『タイムツイスト』などで知られるデベロッパー、パックスソフト・ニカが担当。

マウスカーソルの遊びを極限まで突き詰めた作り込みが光る、意外な傑作だ。

ゲーム内容は大雑把に言ってしまうと、マウス操作で遊ぶ全部で4つのゲームを収録した、オムニバス方式で展開するバラエティゲーム。スヌーピーが開催しようと考えているコンサートにチャーリー・ブラウンを始めとする仲間達を招待する為、彼らが抱える悩みの解決にウッドストックと共に挑むという内容である。
本編は4つのゲームをそれぞれプレイする形で進行。各ゲームはゲームスタートと同時に表示されるセレクト画面で、好きなものから自由に選んで始める事ができる。また4つのゲームはそれぞれ、チャーリー・ブラウンを始めとするキャラクターごとに割り振られており、対応するキャラクターを選択・決定する事で、そのゲームが遊べる作りとなっている。各キャラクターごとに割り振られたゲームの詳細と特徴は以下の通り。

◆チャーリー・ブラウン:『チャーリー・ブラウンの野球大好き!』
物々交換を繰り返しながら、無くした野球道具を探し出すサイドビュー形式のアドベンチャーゲーム。移動の要素があるが、アクション要素はほとんど無い。基本的に謎解きが中心で、街中を歩き回りながら情報収集を行っていく。コマンド選択型のアドベンチャーゲームを横スクロールのアクションゲーム風にしてみたような作り。

◆シュローダー:『シューローダーの楽譜はどこ?』
様々な謎やイベントが用意されたステージを突破し、無くした楽譜を集めていくアクションアドベンチャー。一本道進行で、クリアしたステージには戻れない。障害物の突破や仕掛けの解除と言った謎解きが中心の構成。ステージによってはパズルゲームも用意されている。

◆ライナス:『ライナスのラブラブ大作戦』
愛しのリディアに花を贈る為、全三ステージの攻略に挑むアクションレースゲーム。各ステージには決まって、スヌーピーと争うライバルキャラクター(※人外も含む)が登場。彼らよりもいち早くゴールに辿り着けばステージクリア、逆に彼らが先にゴールへ着いてしまうとミスになる。

◆リラン:『リランの乗り物大好き!』
高速で突き進む乳母車の先に現れる、様々な障害物を手の形をしたアイコンで排除していく、強制スクロール型のアクションゲーム。1ステージ構成で、他の三人と比べてボリュームは短め。ほぼおまけに近い作りとなっている。しかし反面、難易度は他の三人以上に高めに設定されている。

基本的に今作ではこの4人のゲームを主軸に展開。各ゲームのメインキャラクター達の悩みを解決するのが、プレイヤーが目指す最終的な目的となる。この他にもメニュー画面で選べるキャラクターとしてペパーミント、スヌーピーがいるが、この二名にゲームは割り振られておらず。いずれもオプションモード的な存在(ペパーミントは進行状況確認、スヌーピーは独り言とアドバイス)という扱いである。ただ、本編を決着させるに当たり、スヌーピーは後々重要な意味を持つ存在となる。それがどういう事なのかはゲームをプレイしてのお楽しみという事で。
なお、4人ごとに設けられたゲームの操作は全て『スーパーファミコンマウス』で行う。プレイヤーが操作するのはスヌーピーの相棒であるウッドストックで、これをカーソル代わりにしてスヌーピーに移動などを指示。彼を誘導しながら、各ゲームを進行していく。指示の与え方は簡単で、スヌーピーを移動させたい所までウッドストックをマウス操作で動かし、左ボタンをクリックするだけ。これでスヌーピーがウッドストックの所まで移動する。また左ボタンを二回押す(ダブルクリックを行う)とウッドストックが大声で叫び、スヌーピーがダッシュ移動を行う。更にスヌーピーよりも気持ち高い地点でボタンを押すと、スヌーピーがジャンプ。このように細かいアクションも、簡単なボタン操作で行う事が可能で、ゲーム初心者でも取っ付き易い設計となっている。少々タイミングを計るなどでコツが必要となる所もあるが、これと言って複雑な操作は一切なし。マウスゲームならではの直感的で気持ちいい操作体系となっている。また、通常のコントローラでも遊ぶ事ができ、マウスを持ってない方にも対応。そちらも基本、ワンボタン操作で遊べるので、取っ付き易さは上々だ。更にこの操作は必要とされるアクションの違いこそあれど、4つのゲーム全てで共通している為、1つのゲームで操作に慣れれば他も同じ感覚で遊べるという応用性の広さも大きな見所だ。無論、ゲームごとにルールが違う為、それを覚える必要は生じるが。
しかし、ほぼ同じ操作で全く別ルールのゲームが遊べてしまうのは実に衝撃的。そのルールも前述の通り似通ってなく、全てが独自の個性を確立している。操作は同じ、だが遊べるゲームはどれも違う上に手応えも別物。複数のゲームを収録した内容としては王道と言える作りだが、その背後には卓越したゲームデザインのセンスが炸裂している。スヌーピーという有名なキャラクターを使った、俗に言うキャラゲーでこの作り込み様は、脅威と言っても過言ではないだろう。
このように原作付きのゲームという体裁を持ちながら、それに一切捉われない徹底した作り込みが随所において炸裂。全てにおいて、手の抜いた形跡が全く見られない、非常に完成度の高いバラエティーゲームとして仕上げられている。

そして、今作最大の魅力はその丁寧且つ職人的な作り込みの数々だ。バラエティゲームとしての至れり尽くせり感、原作付きゲームとしての雰囲気や作風を再現しようとする姿勢。どのパートも今作は一切手を抜かず丁寧に作り込み、ゲームとしての確かな面白さと原作を知るプレイヤーが満足するレベルのサービスを実現させている。
特に今作の根幹である4つのゲームの作り込みの深さは、原作付きゲームでここまでやるかと感心させられてしまうほどだ。ステージ(フィールド)構成、謎解きのネタ、ゲームバランスと、いずれも原作無しの単品でも十分勝負できるレベルのものに完成されている。中でもチャーリー・ブラウンとシュローダーのゲームにおける謎解きのネタ、ゲームバランスは秀逸の一言。奇想天外な解法とその説得力の高さは、あらゆるゲームに慣れたプレイヤーですら「チクショウ!」と叫びたくなってしまうほどのものになっている。ネタバレになるので詳しくは言えないが、固定観念を持つ事の愚かさを思い知らされる感じだ。たかがスヌーピーのゲームで謎解きに圧倒されるとかそんな馬鹿な話があるものかと、ここまでの文章を読んで思った方ほど、実際に体験してみて欲しい。きっと「すみませんでした!」と土下座して謝りたくなるレベルの衝撃を受けるだろう。そして、ゲームのお約束に慣れてしまう事の愚かさみたいなのも思い知らされるかもしれない。
また、ゲームバランスも原作付きのゲームとは思えないほど歯応えのあるものになっているのも注目に値する点だ。先の謎解きもそうだが、ゲームに慣れたプレイヤーですら唸ってしまうような難易度となっている。しかし、決して理不尽という訳でなく、練習を重ねる事で確実に攻略できるようになる理に適った調整。謎解きにしても固定観念に縛られたりしなければ、難なく解けるものが大半を占めている。正直、原作付きのゲームでこの調整はスヌーピーのキャラクターに惹かれて買ったプレイヤーにとっては酷とも言えるが、原作付きだからと言って生温くするつもりは毛頭無いというその姿勢は、ゲームとして面白く、満足度の高いものを作ろうとするスタッフのこだわりの現われと言えるだろう。それでも、リランの強制スクロールステージにおける「死んで覚える」な調整はやり過ぎな感は否めないが、ゲームを作る事に何の妥協も許さないその姿勢はまさにゲーム職人としての意地。その熱き思いには溜息が出るばかりだ。
ゲーム部分のみならず、原作付きゲームとしての世界観の良さや魅力を表現する部分の作り込み具合も相当なものだ。特に原作である『ピーナッツ』の世界観や雰囲気を見事に再現した淡い色彩で描かれたグラフィックは圧巻の一言。まさに唯一無二、これこそ『ピーナッツ』ことスヌーピーのゲームだと断言できる、大変説得力の高いものに仕上げられている。各キャラクターごとのドット絵も非常に質が高く、特に主人公たるスヌーピーの可愛らしい動きは単に見るだけでも楽しい。アイテムの入手やステージをクリアした際ににやけたり、ウッドストックの位置に合わせて首をちょこまかと動かしたりする仕草の数々には、スヌーピー好きならば「ズドン」と心を撃ち抜かれる衝撃を受けるだろう。とにかくスヌーピーを可愛らしく描こうとした、デザイナーの素晴らしいこだわりが炸裂している。
また、細かい部分でもメッセージのフォントや洒落の効いた台詞など、これこそ『ピーナッツ』だと言える表現の数々も目が離せない。中でも台詞はどれもこれも印象的な上、原作にあっても違和感がないものばかり。その徹底した再現ぶりも、スヌーピー及びピーナッツファン納得の仕上がりだ。他にもジャズテイストの音楽、可愛らしい効果音なども世界観にマッチしているのみならず、原作の雰囲気が見事に再現されたものに完成されている。
ゲーム部分も原作付きとしての再現部分も、何処も彼処も本気。妥協も何もない。バランス調整の部分に関し、行き過ぎな所はあるが、ここまでゲーム部分も原作部分も完璧と言えるレベルにまで仕立て上げた制作手腕は本当、驚きの一言に尽きる。まさにこれこそ、任天堂の本気と言ったところだろうか。原作付きだからと言って、どの部分も一切手を抜かない。そして、原作付きでも本当に面白いゲームは作れる。今作は世に溢れる様々な原作付きのゲームの中で、頂点に君臨するタイトルであると同時に教科書的な存在と言っても決して不思議ではないだろう。これこそ真のキャラクターゲームと自信を持って断言できるほど、高い完成度を誇っているのだ。

ボリュームも多過ぎず短過ぎずの丁度良い量で、非常に遊び易い。ゲームごとに量的な差もあるが、いずれも確かな手応えと満足度を得られる内容。特にチャーリー・ブラウンとシュローダーの二つはゲーム好きも思わず納得する事、間違いなし。短めだが、アーケードゲームっぽい手応えと無茶苦茶な展開で魅せるリランのゲームも要チェックだ。
その他、控え目ながらもサポート周りも行き届いていた作り。このパスワードが頻繁に表示される為、止め時が作り易かったり、謎解きで長時間詰まった際には大きなヒントが表示されたりなど、そこそこ歯応えのある内容でありながら、配慮が効いている。何気ない台詞の中にヒントを混ぜるなど、如何にもキャラクターゲームらしい原作の雰囲気を大事にするこだわりが炸裂しているのも見事である。
地味ながらストーリーもなかなかの出来。原作『ピーナッツ』のシュールさやのんびりとした作風を強く意識した、思わずクスリと笑ってしまうような展開が充実している。また、先にも触れた台詞回しも洒落が効いていて、所々に心に刺さってくるようなものも多い。そして、全てのゲームをクリアした後に訪れるエンディングでの締めはとても可愛くて素敵。少しネタバレになるが、「おしまい」と直接的な表現をしないやり方は、まさに『ピーナッツ』と言ったところ。必見だ。

演出周りもほのぼのとしながらも、色々ぶっ飛んだエフェクトもあり、結構魅せてくれる。そして、音楽も世界観と見事にマッチしているだけでなく名曲も充実。特にピーナッツのテーマをジャズ風にアレンジしたタイトル画面の曲は秀逸。また、今作の音楽は『MOTHER2 ギーグの逆襲』などで多くの名曲を世に送り出してきた田中宏和氏が作曲。それ故にか、一部『MOTHER2』っぽい曲や効果音もある。さりげなく、マザーファンも今作は要チェック…かもしれない。
リランのゲームにおける「死んで覚えろ」な難易度調整など、原作の雰囲気を楽しみたい方にとって厳しい部分があるのがタマにキズだが、独立したゲームとしても、原作付きのゲームとしても隙のない、職人的な作り込みの数々は圧巻の一言。原作『ピーナッツ』の魅力を余す事無く表現したグラフィックと演出、そして確かな手応えと満足感を提供するゲームバランス、優れた操作性と秀逸なゲームデザインと、キャラクターゲームとしても、一つのゲームとしても高い完成度を誇る今作。スヌーピー好き以上にゲーム好きにこそプレイしてみて欲しい、意外過ぎる傑作だ。任天堂がキャラクターゲームを作るとどうなるのか。その答えがここにある!
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