Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Super Famicom>
  4. スラップスティック
≫スラップスティック
■発売元 エニックス(現:スクウェア・エニックス)
■開発元 クインテット
■ジャンル ロールプレイング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10080円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 42ページ
■推定クリア時間 10〜15時間
無限に広がる大宇宙の何処かにある小さな星『極楽星』。
この星にある『ロココ町』はそれなりに文明の進んだ町で、人々はここで幸せなひと時を過ごしていた。だが、その平和も長くは続かなかった。 町に悪の軍団『ハッカー』が姿を現れ、盗みや破壊と言った悪行を重ね始めたのである。しかも彼らに何処からやってくるのか、そして真の狙いが何なのかも分からず。人々の不安は増すばかりだった。

そんなロココ町に発明家の父を持つ少年は引っ越してきた…。
父のような立派な発明家になる為に…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆RPGの王道に乗っ取った、親しみ易さ溢れるイベントクリア型のメインゲームシステム
◆武器や道具、更にはロボットを自分で開発する、独特の中毒性に富んだ『発明システム』
◆プレイヤー好みの味付けが加えられる、想像力を大いに刺激させられるロボット開発
◆自分だけの必殺技を考案できる、ロボット好きにはたまらない連続技作成システム
◆方向によるダメージの変化にボタン連打による待機ターン短縮など、一見ありがちながらも独自のアイディアが凝らされたバトルシステム
◆やり込み派プレイヤーなら思わず夢中になる中毒性に優れた『ボーナスタイムシステム』
◆洞窟にお化け屋敷、更には巨大要塞とロケーションに富んだフィールドマップ
◆ギャグ満載ながらも終盤には重いテーマを取り扱った、珠玉のシナリオ
◆レスポンスがよく、キャラが思うがままに動いてくれる気持ち良さが見事な操作性
◆RPGが初めてな方でもすんなり進めていける、適度な温さが秀逸なメインゲームバランス
◆サクッとRPGが楽しみたい方には打って付けのコンパクトな総計ボリューム
◆常時セーブシステムに進行ヒント機能など、徹底した親切さが異彩を放つサポート周り
◆職人的な色使いが見事な、鮮やかで見栄えの良いグラフィック
◆地味ではあるが、盛り上げる所はきちんと盛り上げる適切さが見事な演出

--- Bad Point ---
◆異様な当たり判定の広さが理不尽極まりないフィールド上を歩く敵達(脇を通り抜けようとしただけでも当たった判定にされる。腹立たしい…)
◆一部、ボス並に強い敵がいるなどの調整の悪さが垣間見える戦闘バランス
◆その時点でのレベルを無視した敵が配置された一部ダンジョン(ここも調整の悪さが…)
◆便利ではあるが、先のバランスの問題もあって詰まりも起こし易い常時セーブシステム
◆ボリュームを求めるユーザーには物足りない感が否めない総計ボリューム
◆デザインが統一されてしまっている為、ワンパターンさのある開発ロボット
▼Review ≪Last Update : 10/18/2008≫
あ、モ●スター●ールがあるぞ!

ちっ、違う!あれは宝箱だ!


『アクトレイザー』や『ソウルブレイダー』などの神話をベースとした名作をリリースしてきたソフトハウス『クインテット』が送る、異色のSFロールプレイングゲーム。

地味な粗はあれど子供から大人まで安心して楽しめる、万人向けRPGの決定版だ。

ゲーム内容はイベントクリア型ロールプレイングゲーム。発明家見習いの少年を操り、作中の舞台となる『極楽星』の各地で発生する事件を解決していくというものだ。まさにRPGの基本に乗っ取った作り…だが、そう言えるのは本編進行の仕組みだけ。実際の中身…システム周りは本作独自のアイディアが光る、実に個性的なものに仕上げられている。
その個性的なシステムと言うのが、本作の売りでもある『発明システム』。武器や防具などのアイテムを自分自身で発明して作り上げるという、如何にも発明家見習いの少年が主人公の今作らしいシステムが盛り込まれているのである。しかも、その作る過程も発明家らしさ満点。材料となる『道具』を道具屋やダンジョンマップ等でかき集め、それを『開発室』と呼ばれる自宅などにある部屋にある装置を使って『合成』させるという、なかなか凝ったものとなっている。更に各アイテムや武器を作る際には、そのアイテムの作り方が掲載された『本』を読む必要もあり。この『本』もプレイヤー自身の『発明家としてのレベル』が低いと読む事(理解する事)はできないという、ちょっとした縛りがある。「知識なくして新たな物の創造は不可能」とでも言うべき、発明家としての性も表現されたなかなかニクい仕上がりにもなっているのだ。
しかし、このシステム最大の見所は何と言ってもアイテム類の発明ではなくて、自分だけのオリジナルのロボットの開発・改造が行えることに尽きるだろう。実は今作、主人公自身は敵との戦闘には全く参加しない。代わりとして、主人公が開発したロボットが戦うという、これまた発明家らしさ溢れる独特の作りとなっているのである。その戦闘に参加させるロボットも、武器やアイテムと同じように『開発室』にて作る必要があるのだが、このロボットを作る過程がまたプレイヤーの想像力を刺激させる、実に奥深いものとなっている。というのも、作ったロボットの攻撃力から防御力と言った基本ステータス、連続技(必殺技)の流れと言ったものをプレイヤー自身がそれぞれ、自由にカスタマイズする事ができる。攻撃重視タイプにしたり、平均的だけど強力な連続技を所持した『羊の皮を被った狼』的なものにするなど、全てがプレイヤーの思うがままに設定できてしまうのだ。また、ロボットのカスタマイズは基本的に『開発室』に入ればいつでも行なう事も可能。本編進行中に苦しくなったらステータスを微調整し、攻撃力に特化したタイプにチェンジしたり、連続技の組み合わせを変えたりして再挑戦する事も軽々と行えてしまう。プレイヤーの創意工夫で多彩なゲーム展開を演出できる、幼い子供心と好奇心を刺激させる、大変刺激的且つ発明家らしさ溢れる仕上がりとなっているのだ。
自分だけのロボットが造れ、自分だけのゲーム展開が味わえる。これこそ今作の真骨頂であり、他のRPGとは一線を欠く要素。プラモデルが好きな方から小学生の男の子にとってはまさに、目が思わずキラキラしてしまうほど魅力的なシステムと言っても過言ではないだろう。従来のRPGに手馴れたユーザーの方々にも、このシステムは新鮮な手応えを提供してくれる。何よりも基本ステータスに連続技の攻撃パターンなどに自分なりのアレンジが加えられ、他のプレイヤーとの個性が顕著に出るというのは、システム上で覚えられる技が固定されてしまっている一般のRPGには無い圧倒的な自由度があるし、何度も遊んで色んなパターンを試してみると言うやり込み甲斐もある。
造れるロボットのデザインが固定で、違いを出せるのは色しか無いのが寂しいが、基本的な『発明する』面白味はしっかりしているので、遊んでいてそんなに気になる事は無い。その辺の売りを魅せる工夫は、流石『ソウルブレイダー』などの名作を世に送り出してきたクインテットと言ったところ。発明家としての楽しさを前面に押し出した仕上がりとなっている。

更に今作の売りは、そのロボットやアイテム類の発明だけに留まらない。素早い行動と攻撃パターンがものを言う戦闘システムも、それと同等の独自性を醸し出している。
今作の戦闘システムは(良い意味で)アクの強い作りだ。基本はバトルフィールド上を移動しながら敵に近づき攻撃を行っていく、ややアクションRPGっぽさ溢れるものとなっている。しかしプレイヤー側が参加できるキャラクター(ロボット)は最大一体まで、プレイヤーと敵も含めて各キャラクターが向いている方向によって攻撃で受けた際のダメージが変化、そして戦闘の展開は先に待機ターンが終了した者から順に行動するアクティブ方式であるなど、厳密なルール周りには独自の工夫が凝らされており、シンプルながらも一筋縄ではいかないものに仕上げられている。
特にこのシステムにおいて注目すべきは、行動の仕組みだろう。まるで『ファイナルファンタジー』シリーズのアクティブタイムバトルシステム(ATB)をベースにしたかのような、オマージュ色溢れる仕組みとなっており、単なる雑魚戦であっても適度な緊張感が堪能できる、実に個性的なものに仕上げられている。何よりも面白いのがATBとは違い、待機ターンの終了はプレイヤー側でコントロールできること。Bボタンを連打する事で待機ターンのゲージ減少を早める事ができるアクション要素が盛り込まれており、プレイヤーの腕の差によっては戦略パターンも劇的に変化させる事ができる、なかなか奥の深い仕様が凝らされているのだ。だから今作の戦闘ではコントローラから手を離すことが許されない。適当にボタンを連打するだけの戦闘システムとは一線を欠く高い臨場感を兼ね備えた、実に魅力溢れるものとなっているのだ。
常にコントローラを握ってなければならない故、同じように画面から目を逸らす事も許されず。もはや退屈という言葉すら無い徹底振り。アクションRPGを得意としてきたクインテットとしてのらしさが色濃く現れている。
また、今作の戦闘には開始直後の数秒間『ボーナスタイム』と言ったものも設定されており、この時間内に敵を倒すとボーナス経験値やアイテムが得られるという要素もなかなか熱い。無理して時間内に倒す必要もなく、まったり敵を倒しても何ら支障は無いようにバランスは調整されているのだが、「時間内に倒すといい事がありますよ〜」と言った煽り(厳密には時間の経過によって消滅するアイテムなど)がまた強烈で、幾ら支障がないとは言っても、つい狙いたくなってしまう中毒性がある。戦闘タイムを極力縮める事でちょっとしたメリットが得られるというのも、やり込みゲーマーにはとても魅力的な要素。端から遊んだゲームは極めようとする方ならば、思わず時間を忘れてのめり込んでしまうだろう。
他にも先に紹介したが、発明したロボットで敵を駆逐する爽快感と楽しさも格別だ。我が子が果敢に活躍するその姿には、繰り返しになるが思わず後方支援者として思わず感情移入してしまうだろう。カスタマイズ如何によって戦闘の流れが変化し、違った味わいが楽しめるのも大きな魅力。発明した武器や新たに考案した連続技を組み入れる事で、その戦いを乗り切る楽しさと奥深さが倍増していくのも適度な刺激を与えてくれるだろう。
とにかく独自性の高さは勿論のこと、基本システムとの絡み具合もバッチリ。PGとしての新しさと発明家としてのらしさが適切なバランスで融合されており、このゲームにしてこのシステムありとも言える、大変独創性溢れるものに仕上げられている。全面において発明家らしさが一貫された、こだわり全開の内容となっているのだ。この辺のテーマ性へのこだわりは流石、クインテットと言ったところか。相変わらず、優れたセンスを持ったソフトハウスだな…の一言に尽きる。

そんなクインテットとしてのらしさが発揮されたシナリオも秀逸な出来。『ソウルブレイダー』を始めとする三部作とは異なり、スラップスティックこと喜劇の名に則った、楽しげな内容となってるのだが、終盤辺りから『発明家と発明品の在り方』をテーマとした重い展開が中心となっていく。可愛い世界観を思わせないその化けっぷりには、遊んでいた誰もがかなりのショックを受けてしまうだろう。これを味わってみるだけでも、今作を体験してみる価値は十分にある。
その他、操作性からサポート周りも見事な出来栄え。特にサポート周りは常時セーブ機能、常時表示できる進行ヒント機能と怖いくらいの親切っぷりで、RPG初心者にも大変心強いものとなっている。操作性もキーレスポンス、主にオブジェクトを調べた際の反応が非常に良く、動かす楽しさが滲み出ているのが良い感じだ。
グラフィックと音楽もなかなかの出来。中でもグラフィックは少ない容量を全く思わせない丁寧な描き込みが圧巻。色使いも適切で見栄えが良いなど、ゲームとしての遊び易さを考慮したこだわりが発揮されているのもお見事だ。
だが一方でゲームバランスはお世辞にも絶妙とは言えず、一部のダンジョンに規定レベルを超越した強さの敵が配置されていたりなど、まとまりの悪さが見受けられるのが残念。フィールド上での敵の当たり判定(今作ではフィールド上の敵に触れると戦闘に突入するシンボルエンカウント方式を採用)が無駄に広く、脇を通り抜けて避けようとしたら接触判定とされると言った雑な調整が行われてしまっているのも腹立たしい限りだ。避けようとしたら、避けられないあの仕組みは普通に考えて理不尽極まりない。何故、あのような判定としてしまったのか。正直、調整不足も大概にして欲しいと言ったところである。他の所が優秀なのに、これは勿体無い。

他にもコンパクトなボリューム(最長クリアは12時間程度)も、賛否が分かれる。ただ、コンパクトな分、手軽に楽しめるのも事実で、サクッとRPGが楽しみたいと言う方にとって、今作は打って付けの一本だと言えるだろう。
そんな感じに、結構地味な粗も多い今作ではあるが、RPGとしては十分傑作の域に入るクオリティ。クインテット性のゲームにしては物足りないところもあるが、発明システムに独特のバトルシステム、喜劇のようで喜劇でない特徴的なシナリオと言った箇所は、他のRPGにはない魅力と面白さを醸し出しており、プレイヤーに心地良い感動を提供してくれる。
発明家の少年が主人公であるストーリーの設定を活かした工夫が随所に光る、この『スラップスティック』。普段RPGを遊ばない方から従来のRPGに飽きたという方まで是非、機会があったら遊んでみて頂きたい万人向けRPGの決定版だ。
自分だけのロボットを作って、色々と楽しんでみましょう。お薦めの逸品です。
≫トップに戻る≪