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≫不思議のダンジョン2 風来のシレン
■発売元 チュンソフト
■ジャンル ダンジョンRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 10800円(税別) / バーチャルコンソール版:823円(税込)
■公式サイト ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ+中断1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 44ページ
■推定クリア時間 2時間〜40時間(エンディング目的)、100時間以上(完全攻略目的)
『こばみ谷』の中央、天をも支えるかのようにそびえ立つ『テーブルマウンテン』。
その頂上にあるとされる、『太陽の大地』から溢れ出る滝は、あまりの高さに地上まで辿り着く事無く、霧となって消えてしまう…。その人知を超えた存在は多くの噂を呼び、人々の好奇心を駆り立てた。

そして今日も一人の風来人が、この地を訪れた。
男の名はシレン、風来のシレン。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆恐ろしくシビアながらも、何度も遊びたくなる強烈極まりない中毒性
◆一度も倒れずに最終目的地を目指していく、緊張感に満ちたゲーム展開
◆遊ぶ度に地形が変わる、自動生成機能を取り入れた斬新なダンジョン構成
◆高速移動にやや癖があるが、説明書要らずのシンプルさが見事な操作性
◆不確定要素が多いが、説得力のある理不尽さなる異様な手応えを醸し出している、異質且つ絶妙のゲームバランス
◆道中の間に挿入し、緊張感を和らげる中和剤として機能している新要素『村(町)』
◆『村(町)』の挿入に寄り、一層厚みが増したストーリー(というよりはサブイベント)
◆アイテムの収納から武器の強化・合成と言った事もできる、ユニークな新アイテム『壷』(特に武器の合成は面白い)
◆自らモンスターに変身し、その能力で局面を突破して行く試みが面白い『肉システム』
◆陰湿だけど何処か憎めない、個性的な敵モンスター達
◆反して陰湿で憎さ満点のダンジョン内に仕掛けられた罠(だが今回はこれを操れる!)
◆隠しダンジョン、隠し武器など…あまりに充実した総計ボリューム
◆芸術的なドット絵と派手なアニメデモが光る、美し過ぎるグラフィック
◆和の世界観に程よくマッチした、心に染みる音楽
◆個性的で濃い、登場キャラクター達(特にガイバラは必見)

--- Bad Point ---
◆瞬時に移動する特徴を掴まないとなかなか上手く操れない高速移動
◆人によっては耐え難い、不確定要素によって生じてくる嫌らしさ
◆腕輪アイテムの呪縛率が異様に高い(手に入れるものの大半が呪われてる…)
◆発想は面白いが、ゲーム展開の単調さも生んでしまっている『シャッフルダンジョン』
▼Review ≪Last Update : 9/22/2007≫
もう、止めた!

と心で決意したにも関わらず、翌日に再開する自分…。


シビアなゲームシステムと凶悪な中毒性で大好評を博した『1000回遊べるRPG』こと、『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』の続編。前作とは違う、オリジナルの世界観で展開する完全新作と言ってもおかしくない作品である。

前作を超越する、圧倒的なボリュームと強烈極まりない中毒性、そして洗練されたゲームシステム。1000回どころか10000回は余裕で遊べる、ダンジョンRPGの傑作だ。

ゲーム内容は、前作に当たる『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』と同じ。一度でも敵などに倒されてしまうと所持品(金も含む)を全て失い、レベル1の状態で最初のスタート地点まで戻されてしまう『不思議のダンジョン』の階層を次々と攻略しながら、最終目的地『太陽の大地』を目指していく、ダンジョン攻略に特化したロールプレイングゲームである。
ロールプレイング…と言っても、いわゆる『ドラクエ』タイプのものではなく、ゲーム進行並びに敵との戦闘は全てリアルタイムで行われるようになっている為、ドラクエと言うよりは『ゼルダの伝説』に近い。だが、まんまゼルダという訳ではなく、リアルタイムと言ってもこちらが一歩マップ上で行動すると、敵もこちら側と同じく一歩動く…というようにターン制による行動方式が採用されていたり、また経験値取得によるレベルアップの概念があったりと、実質的にはあらゆる要素を簡略化させたロールプレイング…と言うべき作りとなっている。
また、本作で舞台となるダンジョンこと『不思議のダンジョン』には『自動生成機能』が備えられており、毎回、入る度に新しい地形のダンジョンが楽しめるという画期的な試みが成されている。一定の地形パターンはあるにせよ、敵配置等はほぼ無限である為に、いわゆる死んで覚える…的な戦略は全く通用せず。プレイヤーは常にその時、その時の状況に合わせた行動を取ってダンジョンを乗り越えていかなければならなくなってくる。まさに、アドリブによるゲーム展開。何度かやれば必ず突破口が見えてくる、このゲームにはそのようなゲームバランス調整が成されていないのである。
あらかた基本となるシステム等を解説したが、ここまで聞いて本作が如何に他のRPG以上にシビアで厳しいものであるかはお分かりになっただろうか。一度でもやられれば全てを失って最初からやり直し、ダンジョンが自動生成方式、攻略パターンの皆無…とにかく、これまでの攻略の文法が通用しないゲームとなっているのだ。
とにかく、あらゆる面において不確定要素が多い。予想だにしない所から敵の攻撃を受けたり、罠にはまったりなど、ゲーム中ではこれでもかと言わんばかりに不測の事態が生じる。そして、その事態に対処しきれず、プレイヤーはそこで失敗…最初からやり直しとなってしまう。
このような事を繰り返しながら、プレイヤーは最後の目的地を目指さねばならない。はっきり言って、辛い。あまりにも辛い。しかし、実際に遊んでみると、その辛さが実はとてつもなく”面白い”のだ。不確定要素が多いと言うばかりにゲームバランスが理不尽…ロクな調整が成されてないと思われがちなのだが、これが実はかなり細かく調整されており、説得力のある”理不尽さ”なるものを醸しだしているのである。つまり、失敗しても対処法が見つかる。その為に、例え最初からやり直しになっても、またやる気が沸き起こってくるのである。
流石に貴重なアイテムを失った時は、やる気が消失するのは避けられないが…それでもこのやる気を促すバランスというのは見事としか表現の仕様が無い。そのバランス故に再プレイ性と中毒性が助長されているのも凄い所である。
このように、シビアでありながらも、何度も遊びたくなってしまう…麻薬的な面白さが満ちた風変わりなゲームとなっているのだ。遊び始めたら最後。抜け出すのは容易ではない。

また本作、基本は『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』と一緒ではあるが、続編だけに様々な新要素も盛り込まれており、アイテムを一時的に保管する『倉庫』、アイテムを収納する『壷』、『シャッフルダンジョン』なる自動生成ではなく予め定まった形がランダムで登場する自然地形のダンジョン、ダンジョン道中に用意された『村(町)』、プレイヤーをサポートする仲間キャラ、三段階(種類によっては99段階)に進化するようになった敵モンスターなどが初登場している。注目は『倉庫』と『壷』のアイテム登場だろう。倉庫に関しては、ダンジョンで拾ったアイテムを保管できるようになり、これまで以上にダンジョン攻略がグッとやり易くなったのは大きい。特に強化した武器を保管する事で、最初から優位な展開でダンジョン攻略を進められるようになったのは前作を遊んだ方、それから初心者の方にとっても嬉しい改善点だ。
壷の登場も大きい。数種類のアイテムを中に保存し、最大所持数以上のアイテムが持てるようになったので、安心してダンジョン攻略に挑める。保存する機能を持った壷だけでなく、一つの武器に複数の武器の特殊能力を備え付ける『合成の壷』や階層を登って行く事に武器が強化される『強化の壷』など、奇想天外な壷が沢山用意されているのも実に面白い。特に『合成の壷』による武器合成は、ダンジョン攻略と肩を並べるほどに奥が深く、中毒性が強い。ある意味、これが本作の全てと言ってもおかしくないかもしれない。
また、ゲームの進行も、ダンジョン⇒村(町)⇒ダンジョン…と言った感じに小休止が挟む構成になるなど、前作よりもメリハリの効いた構成となり、如何にも「冒険している」感覚が増強されている。ひたすら、延々と地下を目指して潜っていく…という地味な展開に寂しさを感じていた方にとって、この進化は嬉しいところだろう。
この他、村(町)の登場によりストーリー性に厚みが増した事、そして前代未聞…とあるアイテムを手に入れる事で、ダンジョン内に張り巡らされた『罠』を自らで操れるという恐ろしい付加能力が追加された事、『肉』なるアイテムを食べる事で敵モンスターに変身するという新要素が盛り込まれているのも見逃せない。
シンプルな部分はそのままに、周囲を固める要素を劇的に進化、尚且つボリュームアップさせて驚異的な濃さを抽出…。幾ら続編だから前作以上のものを目指さなければならないという課題があるにしても、この進化ぶりはやり過ぎの域だ。ここまでの進化を遂げた続編が今まであっただろうか。しかも、ここまでの新要素を追加しながら複雑な印象は全く無く、手軽に本編が楽しめてしまうのだから凄い。かなり深々とバランス調整が行われた事を伺わさせられる。

基本システム以外にも、前作でも健在だった0%になると体力が減り始め、直に回復アイテムを食べないと気絶して倒れてしまう『空腹度』、隠しダンジョンと言ったシステムと要素は今作でも健在。特に隠しダンジョンは前作以上にボリュームがパワーアップしており、一筋縄では行かない作りになっている。勿論、難易度も相当なもので、最後の方で登場するダンジョンはまさに『鬼畜』と言わんばかりの凄さ。一度攻略し始めてしまったら、眠れぬ夜が長期間に渡って続くかもしれない…。隠しダンジョンの他にも隠し武器、更には隠しアイテムなどのコアユーザーをくすぐる要素は満載。一度、エンディングを迎えたからと言ってそこでお終いにはさせない…というこの徹底振りは、流石はチュンソフトと言ったところだ。
グラフィック、音楽周りの出来もシステムに負けず劣らず素晴らしい。グラフィックについては容量がアップした事も受けてか、一枚絵による美麗なデモシーンを多く挿入するなど随所においてこだわりが炸裂している。中でもエンディングの鬼気迫る美しさは必見。これを見るだけに本作をプレイする価値はごまんとある。
音楽も今作は和の世界観という事もあり、和楽器を使った曲が豊富に用意されている。勿論、名曲も満載で『天馬峠』、ゲーム終盤のダンジョンで流れる物静かな曲(曲名不明の為にこんな表現)、そしてスタッフロールは必聴の価値ありだ。
なお、音楽は前作と同様、すぎやま こういち氏が手掛けている。前作とは大分テイストこそ異なるが、今作でも氏のセンス溢れる、素晴らしい楽曲の数々を堪能できる。

ストーリーの面に関しても基本はそこまで濃くは無いのだが、キャラクター描写が非常に上手く、特にガイバラなるキャラの濃さは驚異的の一言に尽きる。また、続編と名乗っていながらも、前作との繋がりが全くないので、未プレイの方でもすんなりと溶け込める敷居の低さを実現しているのも見事な所だ。操作性に関しても、高速移動(ダッシュ)にちょっと癖があるが、全体的には良好で、説明書を読まなくてもほぼ把握できる敷居の低さを実現している。
他にも、再プレイ性を大いに煽るランキング機能やダンジョン攻略のヒントとしてもミニゲームとしても秀逸な『フェイの問題』等、見所は盛りだくさん。欠点らしい欠点も少なく、あるとしたら高速移動の癖の強さと嫌らしさを含んだバランス、腕輪のアイテムの呪縛率が高いぐらい。
総じて、前作『トルネコの大冒険』続編としても、そして一つのダンジョンRPGとしても優秀…いや、優秀過ぎる完成度を誇るこの『不思議のダンジョン2 風来のシレン』。前作のユーザーのみならず、スーパーファミコンを持ってるユーザーならば、是非プレイすべきダンジョンRPGの傑作だ。ダンジョンRPGの頂点がここにある。文句無しにお薦めの逸品だ。
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