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≫ルドラの秘宝
■発売元 スクウェア(現:スクウェア・エニックス)
■ジャンル ロールプレイング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 8400円(税込)
■公式サイト ≫スクウェア・エニックス:紹介ページ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 2つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 39ページ
■推定クリア時間 17〜32時間
遥か昔、大地がまだ混沌の内に存在した頃、天は大地の混沌をはらうべく、大地に強き力を与えるべく、良き栄えをもたらすべく、大地を治める生命を創造した。
類なき知恵を持つ者『ダナン神族』、海原を自在に渡る力を持つ者『水棲族』、志高き精神を持つ者『爬虫類族』、あらゆる環境に耐え得る肉体を持つ者『巨人族』。

しかし、天が望むほどの力は彼らに無く、時の流れと共に彼らは大地から消えて行った。
そして大地に長き栄えをもたらすべく、天は再び、新たな生命『人間族』を創造した…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆1つのストーリーを異なる視点で体験していく、斬新な同時進行シナリオシステム
◆三つの繋がりを色濃く表現している、感動的な各シナリオのストーリー展開
◆オリジナルを魔法を作り出せる、その仕組みからして超刺激的な『言霊システム』
◆適切なボリュームで構成され、とても遊び易い各三人ごとのシナリオ(大体5〜8時間ぐらいでクリアできる)
◆ストーリー展開のテンポの良さを助長している、適切なボリュームで構成されたダンジョン
◆魔法作成の面白さと奥深さを大幅に助長する、解析し甲斐のある文字の法則性
◆『ケアル』に『ホイミ』等の有名な魔法がそのままになる、お遊びネタの存在(笑)
◆属性の概念による戦略性の高さが異彩を放つ、単純ながらも奥深いバトルシステム
◆ビックリするほどスピーディに展開するバトル本編(もたつかないので快適!)
◆一切のもたつきの無い、レスポンスの良さが光る抜群の操作性
◆戦闘から謎解き、魔法の威力まで丹念に調整された、練られたゲームバランス
◆やたらと動く芸術的且つ圧倒的なドット絵が異彩を放つ、高品質のグラフィック
◆シナリオごとに曲を変える等のこだわりが炸裂した、良質の音楽(名曲も満載)
◆スピーディで見応え満点の演出(特に魔法エフェクトの派手さとスピード感は秀逸)

--- Bad Point ---
◆欠落したサポートシステム(言霊の作成法は最低限、入れるべき。突き放し過ぎ)
◆早送りすると勝手に次の台詞に移行してしまう、じゃじゃ馬な台詞送り機能
◆文字が小さく、ギュウギュウ詰めな感が否めないコマンドインタフェース
◆地味に高い感のあるエンカウント率(ダッシュしている時に遭遇し易いような…)
◆ほとんどおまけな四人目のシナリオ(贅沢だが、もう少し長くして欲しかった)
◆賛否両論なストーリーの結末(決して、バットエンドで終わる訳ではないのだが…)
▼Review ≪Last Update : 6/7/2008≫
今、この瞬間を生きろ。

そして、定められた運命をぶち壊せ。


スーパーファミコン末期にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)よりリリースされた、完全新作RPG。かの迷作、『時空の覇者 Sa・Ga3 完結編』のスタッフが手掛けた作品でもある。

1つのストーリーを複数の視点で体験する同時進行シナリオ、オリジナルの魔法が作れる『言霊システム』が最高に面白い、スーパーファミコン末期の隠れた名作だ。

基本的なゲーム内容は、至ってオーソドックスな作りのイベントクリア型ロールプレイングゲーム。しかし、本作はゲーム進行の仕組みから全体を構成するゲームシステムまで、従来のRPGとは一線を欠く試みが成されている。
代表的なものとしてまず、ゲーム進行の仕組みだが、今作では『同時進行シナリオ』と言う、1つの軸となるストーリーを三人の主人公それぞれの視点で体験していく、極めて特殊なシステムを取り入れている。唐突に紹介してしまったが、今作ではシオン、サーレント、リザの三人の主人公がいて、プレイヤーはこの三人の主人公ごとに用意されたシナリオを本編ではそれぞれ攻略していく事となる。各シナリオは、ゲーム開始の時点で三つ全てが選べ、どのシナリオからも自由に始める事ができる。また、一つのシナリオをプレイしている途中で、他のシナリオの攻略を始めると言った並行プレイもでき、プレイヤーの好きなスタイルで本編を進めていく事が可能だ。そして、三人のシナリオを全てを攻略すると、隠された四人目の主人公のシナリオが出現。ストーリーの真相へと迫っていく事になる。
少々、はしょって解説してきたが、これが今作の基本的な進行の仕組み。もう見るからにしてそうだが、斬新。従来のロールプレイングゲームではあまり見受けられなかった、随分と複雑に入り組んだ構成となっているのだ。何よりも、1つのストーリーを別々の視点で体験していく、その仕組みそのものが大変面白い。特にある主人公のシナリオで起きたイベントが、実は他のシナリオの主人公の活躍によってもたらされたものだった…など、見方を変える事によって、それまで謎だと思われていた事柄が続々と解き明かされていくのはとても刺激的で、「そうか、そんな風に繋がっていたんだ!」と思わず感激してしまうほどの衝撃を味える。しかも、いずれのイベントにも一つも矛盾している所がなく、三つがちゃんと共有していると言うのも素直に驚きだ。本作のシナリオを手掛けたライターの手腕の高さをヒシヒシと実感させられる。
また、三つの異なるシナリオを攻略していくという事からして、クリアするのにかなり時間がかかりそうなイメージがあるが、個々のシナリオは大体、5〜8時間程度で攻略できる(四人目のみ、3〜5時間程度)、適切なボリュームとなっているので、そんなクリアまでに無駄に長い時間がかかる訳でもない、気軽に楽しめる作りとなっているのもお見事。道中のイベントでも、そんな複雑な謎解きとかも用意されてなく、テンポ良くストーリーを進めて行けるので、早解き派のプレイヤーに優しい作りとなっているのが有り難い。シナリオにて立ちはばかるダンジョン内部の構造もまた、全体的に短過ぎず、長過ぎずの丁度良いバランスで構成されているのも流石。気持ち良くゲームを進めて行って欲しいと言う作り手の細やかな配慮が凝らされており、遊んでいて全くストレスを感じる事が無い。
まさに、オーソドックスながらも斬新、且つプレイヤー思いだという抜け目の無さ。従来のRPGの面白さを残しながらも、「謎を解いていく面白さ」という斬新な遊びとプレイヤーへの想いが両立した、実に刺激的なものとして成立しているのだ。この入り組んだシナリオを体験するだけでも、本作を遊んでみる価値は五万とある。

だが、本作にはそんな『同時進行シナリオ』以上に魅力的なシステムが存在する。それが満を持して紹介する『言霊(ことだま)システム』。単刀直入に言おう。何と今作では、ウィンドウメニュー画面にある『さくせい』という項目で、6文字以内の任意の言葉を入力する事で、プレイヤーオリジナルの魔法が作れてしまうのである!「ニョロニョロ」だとか「ケロケロ」、更には「ゴロゴロ」など、適当に思いついた言葉がそのまま、魔法となる!まさに、RPGの革命と言っても過言ではない、実に衝撃的なシステムが今作には積まれているのだ。
これを聞いただけでも、「何て面白いものを!」と興奮してしまうのは必至。実際、このシステムは抜群に面白い。自分なりの魔法が作成できるという事もあり、否が応にもプレイヤーの創作意欲が刺激させられる。
しかも、秀逸なのがオリジナルの魔法は一度入力してみないと、どんなものになるのか分からない事。基本的に文字を入力して完成する魔法がどんなものかは、予め一文字一文字に設定された法則に従って自動的に処理される仕組みとなっているので、一度、作ってみないと何ができるのかすら、確認できないのである。だから、どう言った言葉を入力すれば、理想通りの魔法が出来上がるのか、そして適当に思いついた言葉がどんな魔法として誕生するのか、そう言った事を繰り返し実験していく面白さ、奥深さがある。特に文字ごとに定められた『法則』は、最強の魔法を創造するに当たって重要で、この深奥を解析していくだけでも時間を忘れてのめり込んでしまう、強烈な中毒性がある。そもそも、言葉の組み合わせ自体があまりに膨大なのだから、極めるだけでも一苦労なのは目に見えている事。まさに、やり込み派プレイヤーにとっては、心底たまらないシステムであると言えるだろう。極めれば本当、ほぼ一生モノである。
また、他にもこのシステムには面白い所があり、「世間一般で有名な魔法は、その通りの効果となる」と言うのがある。つまり、スクウェアで言うならば『ファイナルファンタジー』のケアルやブリザド、サンダガと言った魔法は、原作そのままの魔法となってしまうのだ。更に面白いのが何と、『ドラゴンクエスト』の魔法まで成立する事!何を狙ってなのか、そんなメーカーの枠を超えた危ない遊びも凝らされているのだ。しかも、この当時…1996年の時点では、ドラクエのエニックスとFFのスクウェアはまだ、独立した会社だった。その二社は現在では合併して、一つの会社…スクウェア・エニックスとして活動している。…ひょっとしたら、今作で『ドラクエ』の魔法が作れてしまうのは、6年後のそれを想定した、あまりにも壮大な伏線だった…のかもしれない。憶測の域を出ないけど。
そんなスクエニのルーツ(?)が楽しめるだけでも、ファンはやっとくべきだろう(笑)。
いずれにしても、このシステムが如何に革新的なものであるかはもう、見ての通り。まさに、ありそうでなかった遊びがここにある。RPG好きならば、このシステムは何が何でも…体験しておくべきだろう。それ位に価値がある。
そして、本作の面白さの全ては、ここに集約されると言っても過言ではないだろう。

その他、バトルシステムもシンプルなコマンド選択型ながらも、敵味方を含む全てのキャラ、武器、防具等に属性の概念があり、常に相手との相性を考慮しながら戦っていかねばならないという戦略性の高い作りとなっていて面白い。また、戦闘における驚異的なテンポの良さも秀逸で、スピーディに様々な行動が展開されていくのが滅茶苦茶気持ち良い。しかも、スピーディながらもしっかりと、魔法のエフェクトでは『魅せてくれる』のだから最高だ。これもまた、先の言霊システムと並行して、RPG好きならばチェックしておくべき価値がある。
そんなテンポの良さを煽る操作性、ゲームバランスも素晴らしい。特にバランスは絶妙で、序盤から最強魔法が作れる言霊システムのデメリットを、キャラのレベルや消費MPなどで上手くカバーしているのがお見事。終始、破綻する事無く適度な手応えと面白さを味わう事ができる。まさに、職人技と言っても過言ではないだろう。
グラフィックもスクウェアらしい、センス溢れる仕上がり。特に戦闘におけるキャラクターアニメーションの(良い意味で)無駄な豊富さと滑らかさは圧倒的で、誰もがその恐るべきドット絵の芸術に魅了されてしまうこと、間違いなしだ。
音楽も素晴らしい。各シナリオごとにボス戦の曲を異なるものにするなど、これまた異様なこだわりが炸裂している。曲自体もノリノリのプレイを盛り上げる曲が盛り沢山で、特に先のボス戦を含めた戦闘絡みの曲は必聴の価値アリだ。
そして演出、シナリオもお見事。シナリオは最初にも話したが、一切の破綻(矛盾)が無く、しっかりと一つのストーリーとして確立しているのが本当に素晴らしい。世界設定なども細かく、ストーリー重視のプレイヤーを意識した配慮が成されているのも流石だ。ただ、結末に関しては正直、賛否が分かれるかもしれない…。

強いて言うならば、言霊システムにおけるチュートリアルの不備(具体的な作り方等の解説が無い)があるのと、コマンドインタフェースの文字フォントが小さくギュウギュウ詰めな事、台詞を早送りすると途中で止まらずに次の台詞に移行してしまう事、地味にエンカウント率(マップで敵と遭遇する確率)が高いのがちょっと残念ではあるが、全体的にはRPGの世界に新たな一石を投じた、革命的一作と言うに相応しい完成度を誇っており、それまでのRPGには無い、新しい遊びと面白さが今作にはこれでもかと言わんばかりに詰まっている。
一つのストーリーを別々の視点で体験する同時進行シナリオに自分だけの魔法が生み出せる言霊システム、そして戦略性が高く、驚異的なテンポの良さを誇る戦闘、隙の無いストーリーに素晴らしいグラフィック、カッコイイ音楽と、随所においてRPGメーカー『スクウェア』ならではの職人技が炸裂している、この『ルドラの秘宝』。
RPG好きやスクウェアファンなら絶対に遊んでおくべき、スーパーファミコン末期の隠れた名作だ。これは文句無しに面白い。RPG初心者に未経験者も是非ともプレイして頂きたい。
あのファイナルファンタジーのスクウェアが放った『奇跡』をその目と手で体験すべし。
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