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≫ピノキオ
■発売元 カプコン
■開発元 ヴァージン・インタラクティブ・エンターテインメント
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7875円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※バックアップ機能・パスワードコンテニュー無し)
■総説明書ページ数 36ページ
■推定クリア時間 40分〜1時間
昔々のある夜のこと。
コオロギのジミニー・クリケットは、明かりのついた一軒の家に入り込んだ。
人形作りのゼペットじいさんの家だ。
家の中ではゼペットじいさんがせっせと木の人形を作っていた。
その木の人形こそ『ピノキオ』。…この物語の主人公である。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ステージを順番に攻略するシンプルさに富んだ、取っ付き易いゲームシステム
◆ベースとなった映画の展開と雰囲気を忠実に順守した、全10ステージ
◆スーパーファミコンとは思えぬ滑らかなアニメーションが見る者をくぎ付けにさせる、職人技全開の美麗なグラフィック
◆原作を徹底的に再現しようとするこだわりが炸裂した音楽(テーマ曲でもある『星に願いを』も収録)
◆如何にも絵本を読んでいる雰囲気に富んだ、ステージクリア後の寸劇シーン
◆暇つぶし程度に楽しめる気軽さが秀逸な総計ボリューム(10ステージだが意外に短い)
◆暇つぶし程度に楽しめる気軽さを更に演出した、温さ満点のゲームバランス
◆アクションゲーム初心者に優しい、ひたすらにシンプルなピノキオのアクション

--- Bad Point ---
◆気軽に楽しめる反面、アクションゲーマーには物足りなさ過ぎる総計ボリューム(クリアまで40分もかからないので、やり甲斐は皆無に等しい)
◆同じくアクションゲーマーには物足りなさ過ぎる温過ぎるゲームバランス
◆如何にも海外のゲームらしい、もっさりとした感触が気持ち悪い操作性
◆個別の違いが薄く、存在感を出せていないオプションの難易度選択機能(結局、どの難易度で遊んでも根本的な温さと素っ気無さは変わらない)
◆原作の雰囲気を逆に守り過ぎた全10ステージ(地形周りとかの起伏が無く、酷い出来)
◆同じく原作の雰囲気を逆に守り過ぎた音楽(アクションゲーム的に盛り上がらない)
◆歩いて僅か数秒で終了する素っ気無さが衝撃的なステージ1(つまらな過ぎ!)
◆操作方法の解説がない為、いきなりぶっつけ本番で始まるステージ3のダンスチャレンジ(しかもその操作方法が説明書にしか書いてないというからなお最悪)
◆原作の雰囲気を徹底した割りには難易度が高い感が否めないステージ5とステージ7
◆アイテムを集めるという作業染みた構成が酷い終盤のステージ9
◆できる事が少な過ぎて、動かす面白さがまるで無いピノキオのアクション
◆絵本を読んでる雰囲気は秀逸だが、地味過ぎる感も否めない寸劇シーン
▼Review ≪Last Update : 12/31/2008≫
やり応えがありそうだなぁ…

……とか思ってたら、45分で終わっちゃったよ!(実話)


イタリアの作家、カルロ・コッローディの代表作で100年以上に渡り読み続けられている名作童話。そして、ディズニー映画の名作としても名高い『ピノキオ』をベースとしたアクションゲーム。販売は多くのディズニーゲームを手掛けてきたカプコン、開発は海外の『ヴァージン・インタラクティブ・エンターテインメント』が担当。

壮絶なまでに薄味な問題作だ。

仮にも世界的な名作童話を題材にしたゲームで、なんて失礼な一言を…とか思った方がいるかもしれないが、実際…そうとしか言い様がないんすよ、これ。「名作はゲームに姿を変えても名作だった」とは到底言い難いものに終始してしまっているのです。まさに、『ミッキーのマジカルアドベンチャー』シリーズなどのディズニー系ゲームの傑作を多く手掛けてきたカプコンが唯一にして犯してしまった失敗と言ってもおかしくないほど。
そんな今作が薄味だと呼ばれる真相をこれからつらつらとご紹介しくとしよう…。
まず基本的なゲーム内容は、至ってオーソドックスな横スクロールで展開するステージクリア型アクションゲーム。ピノキオを操作し、原作の世界観を再現した全部で10ものステージを攻略していくというもので、過去に同じカプコンが手掛けた『ミッキーのマジカルアドベンチャー』シリーズなどの作品と同路線のシステムを起用したゲームとなっている。 ただ、過去にカプコンが関与してきたディズニー系のゲームとはコンセプトが決定的に異なる。というのも、今作はディズニーの世界観の雰囲気のみを再現するのではなく、それ以上に原作(ベース)である映画の雰囲気まで再現する事を徹底している。
つまり、従来のような世界観を元にして作ったゲームではなくて、原作そのものをゲームにしたとでも言うべき作りとなっているのである。それ故に作中で展開されるストーリー、そしてステージのロケーションも全て原作順序。ピノキオが他人の誘惑に乗せられたり、コオロギのジミニー・クリケットが活躍したり、そしてゼペットさんと一緒にいかだに乗ってクジラから逃げたりと言った、映画での名シーンの数々が今作でも「そのまま」繰り広げられる。しかもゲームオリジナルのストーリー展開やステージも皆無で、唯一ゲームらしい要素と言えば、ピノキオが動かせることぐらい。本当に原作の再現、ただその事だけにこだわり尽くした内容に仕上げられてしまっている。
しかも、それのみならず、ゲームを彩るグラフィックもベースである映画の雰囲気を忠実に再現する為、背景からキャラクターの動きまで徹底追及。スーパーファミコン成熟期だからこそ成し遂げた、驚異的とも言わんばかりの美麗な映像美を実現している。特にピノキオを初めとするキャラクターの動きは驚くほど滑らか、且つ映画でも見受けられたリアクションを取るなど細部へのこだわりが尋常でなく、開発スタッフがピノキオの再現に何処まで力を費やしたかの苦労がうかがえるほどのインパクトを秘めたものに仕上げられている。同じくカプコンからリリースされた『ミッキーマニア』と同じく、本家ディズニーの監修も行われているので、その出来の良さも納得。そのスーパーファミコンだとは到底思えない滑らかなアニメーションには、プレイした誰もが目を奪われてしまうだろう。
更に音楽もメインテーマである『星に願いを』を流すなど、原作を徹底的に再現しようとするこだわりが炸裂している。各ステージで流れる音楽もゲームとして…ではなく「ピノキオの映画」としての姿勢を一貫した雰囲気重視のものが多く、いかにも自分で映画を操っているかのような独特の味わいを醸し出している。
その他、演出周りでも各ステージの合間には原作である童話の内容をそのまま書き起こした、絵本の寸劇を入れるなど、ピノキオらしさを出そうとするこだわりは炸裂。絵本を読んでいる雰囲気を出す為に、その場面に限って音楽は一切流さないという工夫まで凝らされているほどであり、この辺もまた先のアニメーションと同じく、スタッフの原作を徹底的に再現しようとする執念深さを痛感させられるだろう。
とにかく、何処も彼処もピノキオらしさを出す為のこだわりが全開。元となったディズニー映画版の『ピノキオ』が大好きな方ならまさに至福のひと時が楽しめると言っても過言ではないほど、何処からどう見てもピノキオとしか言い様の無いゲームに仕上げられているのだ。自分自身がピノキオになり、彼が経験した様々な楽しい事から辛い事が味わえてしまう。まさに、ファン向けのアイテムとしてはこの上ない至上品と言ってもおかしくはないだろう。

しかし、ファンならば至福の時が楽しめるのに対し、ファンでもないゲーム好きに対してはどうなのか?その答えは唯一つ。まるで楽しめない。先述の通りに今作、原作のピノキオを再現したゲームとしては大変素晴らしい出来を誇っている。繰り返しになるが、映画が好きな方にとっては涙モノだと言っても良いほど、素晴らしいまでにピノキオしている。だが、素直に一本のアクションゲームとしてみた場合はダメダメ。
そもそものコンセプトからして見え見えだが、ピノキオの再現だけは完璧なのだがゲームとしての作り込みは壮絶なまでに甘い。いや、薄過ぎだ。ピノキオ自身が出来るアクションは致命的なまでに少ないし、ステージの構成はありえないほど平坦。加えてゲームバランスの面でも、アクションゲームとしての手応えを出そうとする努力が全く成されておらず、原作の雰囲気を再現する事にしか目が行っていないのが如実に現れてしまっている。特に致命的なのは、ステージの構成とその総計ボリューム。今作では全部で10個ものステージが用意されており、それを聞く限りでは「凄くやり応えがありそう!長く遊べそう!」と思うのだが…これがまたとんでもないフェイク。10個もステージがあると言っても、どのステージも開始10〜20秒程度で終わる場所がほとんどであり、総プレイ時間にして1時間はかからない、上手い人ならば30分以内のクリアは余裕なほど、やり応えも中身も皆無なボリュームとなってしまっているのである。
それ故に今作にはアクションゲーム特有のステージを駆け抜ける面白さ、難所を突破していく手応えみたいなものは皆無。そんな本質を味わう直前にステージが終了してしまうのだから、味わう事自体無理なのも当然だ。少し道を歩いただけで終わるステージとか、どうやったらアクションゲームの面白さが感じ取れるのか、逆に教えてもらいたいほどだ。
また、内容量のみならず肝である構成面にも盛り上がりに欠けてしまっているのが辛い。やり甲斐のあるアスレチックも無ければ、ボス戦とかも無いので全く持ってゲームを遊んでいるという気分になれない。唯一、最後の方にあるクジラから逃げるステージはそのらしさが活かされたものに仕上げられてはいるが、結局そんなステージはそこぐらいで、あとはひたすらに地味。地味。JIMI。どうしようもないほど、つまらない作りに終始してしまっている。原作の雰囲気を再現する為と言えば聞こえは良いが、単にそれだけで終わらせてしまったのは本当に手抜きだと言われても致し方が無い。
そもそも、純粋にアクションゲームとして練りこめば面白くなりそうな要素はチラホラあるのだ。ピノキオの唯一の攻撃アクションであるキックとか、ジミニー・クリケットがメインキャラとなるパートとか。後者に至っては、その身体的特徴を活かしたガリバー旅行記的なステージとか、作れたかもしれないのだ。しかし、いずれの要素も完全に「付け加えた程度」で終わってしまっていて、発展させようとする心意義が感じられない出来に終始してしまってるのが残念極まりない。
そんなにやり応えを求めるのなら難易度を上げれば良い!…と言わんばかりにオプションに難易度選択機能も設けられてはいるが、肝心のステージなどの作り自体が弱いのもあり、上げてもそんなに面白いものにならないから話にならない。これで『ドナルドダックのマウイマラード』のように1ステージ1つ1つが作り込まれたものであるならば話は違ってきたのに、本当にゲームとして面白くさせようとする努力をしなかった姿勢には呆れるばかりだ。純粋に原作の雰囲気が味わえるゲームを作る狙いがあったのならば、この出来もしょうがないのかもしれないが。しかし、作り込めば確実に面白くなりそうなネタはチラホラあっただけに、勿体無い事に代わりは無い。ディズニーのファン以外でも楽しめる作品を作る事に定評のあるカプコンの面子もあるだけに本当、ちゃんとゲームとしての作り込みにも力を注いで頂きたかったものだ。これまでカプコンがディズニーのゲームにて残した輝かしい功績に泥を塗ったスタッフの罪は重い。

また、操作性周りも詰めの甘さが露骨。如何にも海外ゲームらしい、もっさりとした感触が強めでアクションゲームの肝とも言える動かす面白さが全く無い。ボタン配置周りは的確であり、そこは言う事なしなのだが、動きにももっと敏感になって頂きたかったところだ。
バランス周りも、辛うじてクリアできる難易度とはなっているのだが、序盤から極端にシビアなステージが出てきたと思ったら、その後は温いステージが続くと言ったように統一性に欠けているのが気になる。原作の雰囲気を味わうゲームとしても、このバランスは正直言って矛盾しているとしか言い様がない。雰囲気を味わうだけならば別に、そんなシビアなステージとか用意しなくて十分だったのに、何で用意したりしたのか。本当にこの辺は中途半端の一言だ。
原作の雰囲気を再現するメインコンセプトがあるなら、そんなアクションゲームの面白さも付けるとかする必要は無かったのに。そう言ったメインコンセプトがあるなら、それを徹底して貫いた方がカッコイイ。正直、こんなしどろもどろでは見っとも無い。まさに、二兎追うものは一兎をも得ずとはこの事か。

他にも、サーカスで踊りを披露するステージでは特殊な操作が要されるのだが、これの解説やボタンの指示を示すようなガイドが説明書にしか掲載されてない為にぶっつけ本番となってしまう、ステージをクリアした際に専用の音楽が流れる訳でもないので、いま一つクリアしたかが分かり難いなど、致命的な不備はチラホラ。
同じ海外のソフトハウスが手掛けたディズニーのゲームでも、『ミッキーマニア』はバランス面に多少問題はあったけどそれなりに遊べる出来には達していたし、『マウイマラード』に至っては『マジカルアドベンチャー』と双璧を成すほどの出来を見せていた。それとは全くの別路線を狙ったと言うのならば、これもこれで良いのだろう。だが、どうひいき目に見ても作り込みが甘いのは否定のしよう無し。純粋なキャラクターゲームとしてはよく出来てるが、アクションゲームとしては本当にどうしようもないほど薄味で面白味にも欠ける今作。
これは冗談抜きに熱心なピノキオファン向けの一本である。アクションゲーム好きにはとても遊び耐えるものではないので、手を出さない事を推奨する。これに触れるぐらいならば、同じ海外製作のディズニーゲームで、完成度の高いマウイマラードの方をお薦めします。世界的名作だから、カプコンだからと安心して手を出したら命取りになりますよ…。
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