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≫パイロットウィングス
■発売元 任天堂
■ジャンル スカイスポーツシミュレーション
■CERO B(12歳以上対象) ※犯罪、薬物描写あり
■定価 スーパーファミコン版:8085円(税込)
バーチャルコンソール版(Wii):800Wiiポイント
■公式サイト ≫スーパーファミコン版 / ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンテニュー形式)
■その他 DSPチップ搭載
■総説明書ページ数 紛失している為、不明
■推定クリア時間 7〜20時間
☆フライトクラブ:入会案内☆
貴方も今すぐ、鳥になって空高く舞ってみませんか。
当クラブでは、各種スカイスポーツを用意して、お待ちしております。
まずは当クラブで、ライセンスを取ってから…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆「大空を自由に舞ってみませんか?」の謳い文句に相応しい、自由なゲーム内容(各ミッションごとに目標特典を達成しなければならないという、一応の縛りがあったりするが)
◆目標得点を達成しながらエリアを攻略していく、分かり易いゲーム進行システム
◆独特の浮遊感と凝りに凝った操作性が光る、全4種類+αのスカイスポーツ
◆ゲームならではの強みと空を自由に飛びまわる面白さが詰まった『ロケットベルト』
◆『鳥人間コンテスト』等、本編とはかけ離れた”くだらなさ”全開のボーナスゲーム
◆あらゆる面でツッコミどころ満載の極秘指令『ヘリミッション』(スカイスポーツを習う為に入ったはずが…!?)
◆砂漠から草原、リゾート地などとロケーションに富んだ4つ以上ものフライトエリア
◆鋭いツッコミにおかしなリアクションまで、個性がよく出てる4人の教官達
◆操作説明機能からヒントメッセージまで、豊富に用意されたサポート機能群
◆上級者向けのスペシャルエリアなど、思いのほか充実したボリュームとやり込み要素
◆緩やかながらも、徐々に人を突き放していくシビアさが秀逸なゲームバランス
◆粗めながらも、土地の立体感を上手く描いているグラフィック
◆スーパーファミコンの拡大・縮小・回転性能をフルに活かした、3D空間とカメラワーク
◆空を舞台にしたゲームならではの心地良さが全面に表現されている音楽
◆空を飛んでいる雰囲気を煽る、過度にうるさい風の効果音(けど耳障りにならない)
◆パラシュートを開かずに地面に激突すると。人型の穴が空いたりなど、無駄に笑わせてくれる失敗時の演出
◆名台詞「ワシは単車の免許しか持っていないんだ!」

--- Bad Point ---
◆高度な操作を要求されるが故の厳しめなゲームバランス(特にフライトエリア4からの急激な難易度の上昇は…)
◆バランスと同じく、初心者には取っ付きの悪い操作性(硬い上にやや複雑)
◆難易度的に他のフライトエリア以上にぶっ飛び過ぎてる『ヘリミッション』(特に二番目のミッションは、絶望的な難しさ)
◆着地時のタイミングを掴むまでが難しいスカイスポーツ『ライトプレーン』
◆無意味に長く、覚え難いパスワード(メモ必須)
◆教官の顔が目と口だけになる、謎のバグの存在(怖い…)
▼Review ≪Last Update : 12/8/2007≫
「わざとやってませんか」

ご、ごめんなさい…、わざとでした…。


スーパーファミコン発売から1ヵ月後にリリースされた、ハードの拡大・縮小・回転機能をフルに反映させた、新感覚スカイスポーツシミュレーションゲーム。

あの、私は空を舞いたいが為にこのクラブに入ったんですけど…?
浮遊感たっぷりの操作性と立体的な演出が光る、ハチャメチャさ全開の新感覚シミュレーションゲームだ。

ゲーム内容は、4つのフライトエリアごとに用意された各スカイスポーツに挑戦し、課題を攻略しながらそのエリアの目標総合得点を達成し、フライトライセンスをゲットしていく(更新していく?)スカイスポーツシミュレーションゲーム。
基本は一本道のステージクリア方式で、プレイヤーはフライトエリア1から順に各種スカイスポーツを攻略しながら、次のエリア、そのまた次のエリアと言った感じに進めていく。一本道な構成でありながらも、一度クリアしたフライトエリアは、次のエリアからメニュー画面で『やり直し』を選択する事で、再プレイする事ができるようになっており、それなりにプレイヤーの自由は効くように作られている。ゲーム冒頭でデカデカと流れる、「大空を自由に舞ってみませんか?」とい謳い文句に適した気配りと言える。
各フライトエリアに用意されたスカイスポーツも、一応、各エリアで課せられる目標総合得点達成を目指す『縛り』がありながらも、どんな感じに総合得点を目指すかは全てプレイヤーの自由で、得意な種目で高得点を出し、他の種目では適当な得点を出しておくと言う、好き勝手な遊び方も普通にOK。「大空の遊び場」とも言うべき雰囲気が滲み出た、緩いバランス調整が施されているのもまた、面白い配慮だ。
ただ、それはあくまでもゲーム序盤から中盤辺りまでの事で、後半に突入すると、正確且つ慎重なプレイを常に心掛けていかなければ、その先のエリアをクリアするのは困難なものとなっていく。あくまでも今作の舞台となる場所は、『フライトクラブ』という名の架空の教習所。教習所らしく、それなりの腕をつけた者は、更に上の段階へとステップアップしていかなければならないのだ。まさに、実力をつけてしまった者の定め。如何にも現実の学校を髣髴とさせるような、説得力ある展開が仕掛けられているのである。
この教習所っぽさを煽る、4つのフライトエリアを取り仕切る教官達も個性的。プレイヤーがわざと失敗すると、すかさず評価の場面で「わざとやってませんか。」と鋭いツッコミを入れてきたり、そのスポーツでの最高得点を獲得すると目を回してしまったりなどと、見ているだけでも楽しい動作を披露してくれる。特に、ゲーム後半のフライトエリア4を取り仕切る、世界のク○サワ似の黒田教官は、4人の教官の中でも屈指のキャラクター性を持ち、ある意味で本作の顔とも言える存在。彼のスパルタな台詞と意外な一面を見るだけでも、本作を最後まで遊んでみる価値は十分にあると言える。
舞台となる4つのフライトエリアも、砂漠地帯から草原、リゾート地などとバリエーション豊か。全てが平面で描かれていながらも、本当にそれらの建造物が実在しているかのような匂いが出ているのも何とも味わい深い。
「大空を自由に舞ってみませんか?」という謳い文句に相応しい自由度の高さを兼ね備えながら、『教習所』らしい説得力に満ちた展開をも用意。このように今作は、自由と束縛が絶妙のバランスで織り交ざった構成になっているのだ。

プレイヤーが各フライトエリアで挑戦することになる、スカイスポーツも教官に負けず劣らず個性的。『ライトプレーン(小型飛行機)』、『スカイダイビング』、『ハンググライダー』、『ロケットベルト』と言ったお馴染みのものから、現実離れしたものまで、実に多彩な空の遊びを満喫する事ができる。特に面白いのが『ロケットベルト』で、現実では開発は行われながらも未だ実用化にすら至ってないものを使った空のスポーツと言うだけに、他のスポーツとは比べ物にならないインパクトを醸し出している。まさにこれぞ、ゲームだからこそ実現したスポーツとも言うべきか。実際の内容そのものも非常に面白く、ロケットを噴射しながらの前進と方向転換、そして自らの体が一瞬だけ宙で静止した際の気持ち良さには、他のスカイスポーツには無い爽快感と自由度の高さがある。残念ながら、ゲーム序盤からこの種目を遊ぶ事はできないようになっているのだが(フライトエリア2から遊べるようになる)、何が何でもこれだけはプレイしてみる価値大だ。改めて、ゲームの強みと、好き勝手に空を飛ぶ事の気持ち良さを思い知らされるだろう。この4つのスカイスポーツの他にも、ボーナスゲームとして『鳥人間コンテスト』、『ペンギンダイビング』、そして『トランポリンジャンプ』と言ったものを収録。いずれも、スカイスポーツとは大きくかけ離れた、くだらないものばかりで、ただ見ているだけでも面白い。
だが、そんなボーナスゲーム以上に誰もが「はいぃぃっ!?」と思ってしまうのが、フライトエリア4をクリアした後に発生する、極秘指令こと『軍用ヘリミッション』だ。麻薬シンジケートに捕まった、3人の教官達を救出する為、彼らが占拠する島へと突入すると言うのが大まかな内容なのだが、もうこの時点でツッコミ所、ありまくりなのは言うまでも無い。そもそも、我々…プレイヤーは空を自由に舞いたいが為にこのフライトクラブに入ったはず。なのに、何故、麻薬シンジケートと戦わなきゃならんのか!?どうして軍用ヘリに乗らなきゃならんのか!?そもそもここは、軍の養成所だったのか!?…と、パニック必至なトンデモ展開が、繰り広げられるのである。もう、滅茶苦茶もいい所。しかも、この軍用ヘリミッションでは、舞台となるマップ上に大量のAAA(対空火器)が配置されており、それがあろう事かプレイヤーを狙ってくる!当然ながら、それが被弾すればその時点で一発ゲームオーバー。まさに、死と隣り合わせ。超が付くほど緊張感満点のミッションになっているのだ。ここまで来るとなると、流石にぶっ飛び過ぎどころの騒ぎじゃない。「何のジョークだよ、これは…」と、逆に呆れてしまうほどだ。挙句、このヘリミッションの難易度はやたらと高く、上級者でさえも苦戦するほどなのだからたまったものじゃない。何で、こんな散々な目に遭わなきゃならんのか、と。
しかしながら、シューティング風な要素がある(対空火器への対抗策として、ミサイルが撃てるようになってる)事や、他のスカイスポーツに比べて緩やかな操作性など、見所はあり、意外としっかり作り込まれているのには逆に溜息が出る。ミッション開始冒頭の黒田教官との掛け合いも、爆笑必至だ。
空を舞うどころか、おかしなチャレンジから、空で死ぬ事までできてしまう幅の広さ。この時点で本作が、あらゆる意味で名作の域に入ってる事は言うまでもない…。とにかく、ぶっ飛び過ぎているのだ。アンバランスもアンバランスである。

同じようにゲームバランスも少々、ぶっ飛んでいる。というのも、思いのほか…難しいのだ。ヘリもさる事ながら、他のスポーツも特に後半だが、少しのミスが失敗に繋がってしまったりなどと、かなりシビアなバランス調整が施されている。操作性も若干堅く、やや複雑な所があるだけに、もう少し抑えて欲しかったところだ。しかし、それを考慮してか、所々にヒントメッセージや操作ガイドを用意したのは、ナイスな配慮と言える。多少、物足りない所もあるが。
また、ゲームプレイを盛り上げる音楽も秀逸。空を舞台にしたゲームならではの心地よい曲が盛り沢山で、雰囲気を大いに盛り立てる。空を飛んでると言う事を大いに煽る、過度にうるさい(けど耳障りにはならない)風の効果音も良い感じだ。
演出も素晴らしい仕上がり。スーパーファミコンの拡大・縮小・回転機能を活かした、ダイナミックなものが多数用意されており、プレイヤーを飽きさせない。中でも『スカイダイビング』の高さを感じるカメラワークは秀逸だ。
そして、無駄に失敗した際の演出が凝ってるのも面白い。『スカイダイビング』でパラシュートを開かずに地面に激突すると、人型の穴がくっきりと空いたり、ロケットベルトで落下すると黒コゲになった人が出てきたりなどと、無駄に笑わせてくれる。その演出の面白さによる、わざと失敗するだけでも楽しめる懐の広さが実現されてるのも凄い所だ。

総じて難易度がかなり高い為、あまり万人受けするバランスになってない事やヘリミッションの難しさ、操作性の堅さなど、全体的にタマにキズな点も数多く散見される本作だが、空を自由に舞うことにこだわったゲーム構成とハチャメチャなストーリー展開、そして拡大・縮小・回転機能を効果的に反映させた演出などは非常に見応えがあって、面白い。
「鳥になれる」…かどうかは、ゲームでもあるし先述の展開通りに怪しいものがあるが、「大空を自由に舞う」事の面白さに関しては、しっかりとしたものを秘めている、この『パイロットウィングス』。手応えのあるゲームを求めている方や自由にゲーム内の世界に浸ってみたい方には、文句なしにお薦めの逸品だ。
初心者プレイヤーの方も、一度でも良いのでお試しあれ。
但し、「私は単車の免許しか持ってないんです!」…という言い訳は無しの方向で。
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