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  4. スーパーファミリーゲレンデ
≫スーパーファミリーゲレンデ
■発売元 ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)
■ジャンル スキー
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 ニンテンドウパワー版 :3000円(税別)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■SFメモリ消費数 Fブロック:4 Bブロック:4
■推定クリア時間 5時間〜10時間(エンディング目的)、30〜40時間(完全攻略目的)
それほど昔でもない、ごく最近の話。 人間とスキーにたまらなく憧れている、一匹の動物が居ました。
楽しそうにスキーをしている人間を見に行くも、出るのはため息ばかり。

どうしても我慢できなくなった動物は、ある日、山の仙人様の所へ相談に行きました。
人間になる方法は無いのか。動物から相談された仙人様は短い間だけ、動物を人間にすることができると言いました。更に人間の姿で8つの人助けをすれば、ずっと人間のままでいられるとのことです。

話を聞いた動物は早速、仙人様に人間にしてもらい、与えられたスキーの道具を身に着け、ゲレンデで困っている人を探し出すのでした。果たして、動物は8つの人助けを成し遂げて、人間になる願いを叶えることができるのでしょうか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆十字キーを左足、ABXYボタンを右足と見立て、スキー板を制御するという実際のスキーをそのままゲームに落とし込んだ独自の調整とボタン配置が見事な操作性
◆独自の操作性によって、現実味のある手応えを醸し出しているスキーアクションの数々
◆ゲームオーバーの危険はない反面、プレイヤーに失敗の恐ろしさと痛々しさを見せつける、ファミリーの名に相応しい工夫を凝らしたミス時の演出(リアクション)
◆本当にゲレンデを滑っているかのような手応えを演出する、質感抜群の効果音
◆レースからタイムアタック、お話に沿った遊びまで、少なめながらも独特の個性を発揮した三つのゲームモード
◆癖の強い操作性だからこその極め甲斐の高さと高い中毒性を誇るゲームモード『タイムアタック』
◆ロールプレイングとアドベンチャーを織り交ぜた独特の作りが光るゲームモード『ストーリー』
◆動物の主人公が人間の願いを叶える為に奔走する、童話のような設定とギャグ要素の強さが光るストーリー
◆ストーリーを盛り上げる、強烈な個性を持った登場キャラクター達(特に雪女はインパクト抜群)
◆秀逸な台詞回しと愉快なカット割り、音楽の挿入で楽しませてくれるイベントデモ
◆地形構成に施設の配置、スキーヤーの動きに至るまで丁寧な個性付けがなされたゲレンデの構成
◆プレイヤーの習熟度がものを言う、スキー特有の難しさを反映させた難易度
◆スポーツを題材にしたゲームとしては珍しい長さ、豊富なやり込み要素が光る総計ボリューム
◆少し簡素なデザインではあるが、細かな動きまでしっかりと描き込まれたグラフィック
◆ストーリーの世界観にマッチした、ほのぼのとした音楽(時々、激しいロックが流れたりも…)
◆往年のプレイヤーの琴線を刺激する、一部のナムコ作品ネタ(『ナムコドーム』なるゲレンデは必見)

--- Bad Point ---
◆裏を返せば癖が強すぎる為、人を選ぶ操作性
◆独立したゲームモードとして切り離されたチュートリアルの『スキースクール』(この為、いきなり本番に挑んで散々な目に遭わされるという、プレイヤーに悪い印象を持たせるサイクルが出来上がってしまっている)
◆やけに暗い音楽が鳴り響くイベントデモ(ちょっとテンションが下がる)
◆障害物との当たり判定がない、転倒しないと言った理不尽なコンピュータ側のハンデ
◆その理不尽なハンデによって演出された、レースイベントにおける苛烈な難易度
◆プレイヤーの着せ替えを行うだけの、名称に反した作りの『スキーショップ』(お金を集めてアイテムを買う…と思いきや、そんな要素自体がない。見掛け倒し過ぎないか…?)
◆悪く言えば、濃過ぎるが故に好みが分かれ易い登場キャラクター達
▼Review ≪Last Update : 3/19/2017≫
動物だってスキーがしたい。

(スノーボードやソリの選択肢は無いのだろうか…)


初代『ファミスタ(プロ野球ファミリースタジアム)』などに代表される、ナムコのファミリーシリーズの系譜に連なる新作として、ニンテンドウパワー専用タイトルとしてリリースされたスキーゲーム。元々は1995年頃、パッケージタイトルとしての発売が予定されていたが、何らかの事情によってお蔵入りしてしまった曰く付きの作品でもある。

実際のスキーの良いも悪いも完璧に再現した操作性と破天荒なストーリーが光る、唯一無二の良作だ。

ゲーム内容は2Dの見下ろし視点(トップビュー)で展開されるスキーゲーム。様々なゲレンデを舞台に、ライバルとのレースを始めとするイベントに挑んでいくというものである。本編は全部で5つのゲームモードを軸に展開。それらの内、ゲームモードと言えるのは『ゲレンデバトル』、『タイムアタック』、『ストーリー』の三つで、残る『スキースクール』、『ショップ』の二つはサポート的な位置付けのモードとなっている。簡単に各モードについて解説すると、『ゲレンデバトル』はその名の通りにライバルとの一対一のレースに挑むモード、『タイムアタック』はゲレンデを滑り終えるまでの最速タイムを競い合うモード、『ストーリー』は物語に沿って様々なイベントをこなしていくモード。そして『スキースクール』は操作の練習が行えるいわばチュートリアル、『ショップ』はプレイヤーの衣装などのカスタマイズが行えるモードと言った感じだ。ゲームモードと言えるのが三つに限られているのも、この解説だけで大体、察することができるだろう。このように用意された複数のモード(…の内の三つ)において、スキーを楽しんでいくのが、今作の基本スタイルだ。
三つの中でメインに当たるのは『ストーリー』。人間になってスキーを楽しみたい夢を持つ動物の主人公になり、エピソードごとに変わるゲレンデを舞台に繰り広げられるイベントに挑み、悩みを抱えた人間達を助ける為に奔走していく。概略だけでも明らかだが、ロールプレイングゲーム(RPG)とアドベンチャーゲームの要素を盛り込むゲームデザインが成されたゲームモードで、スキーゲームという体裁から著しく脱線した展開が繰り広げられる内容になっている。イベントもそれを体現するかのように、ゲレンデに配置されている施設を巡って聞き込みをしたり、コース外のエリアを探索したりする奇抜なものが盛り沢山。モード名通りにストーリー性も強く、ある場面には分岐要素まで仕込んでいたりと、まさに「なんじゃこりゃ」と言いたくなること必至の作り。あらゆる意味で、プレイヤーに新鮮な驚きを提供するモードに仕上げられている。今作屈指の見所であり、唯一無二の四字熟語が似合うモードである。
しかし、それ以上に今作で唯一無二と言えるものがゲームシステム全般、具体的には操作周りだ。これがまた非常に個性的なものになっている。何と、十字キーとABXYボタン全てをフル活用。十字キーで右足、ABXYボタンで左足を動かし、片足ごとの力加減を調整しながらゲレンデを滑っていく、実際のスキーさながらの本格的なものになっているのである。分かり易く例えると、左にカーブしたい際は右足側の十字キーでエッジを立てて実施する、という感じ。要は左右が逆で、右に行きたい時は左足側のボタン、左に行きたい時は右足側のボタンという、実際のスキーと同じ操作をコントローラのボタンを使って行っていくのだ。勿論、カーブだけでなく、滑り降りる際も同様に現実準拠の操作で実施。左右のパワーバランスを調整せず、直線で滑ればそのまま直滑降となり、速度が増していくようになっている。更に滑っている際に十字キーの左とAボタンを同時に押せば『ボーゲン(ハの字状態)』になり、滑降速度を落とすことができる。そして、双方を同時に押し続けるとブレーキとなり、プレイヤーキャラクターが静止。そのまま、上下左右に歩行できるようになる。そこで左向きに止まっている際は十字キーの下、右向きで止まっている際はBボタンを押して足を動かせば、また滑り出す…という具合だ。このような操作で今作はゲレンデを滑っていく。非常に個性的で、癖のある操作というのも、この概略だけで簡単に想像が付くだろう。とてもゲームを始めたと同時にすぐ身に付くようなものでもなければ、プレイヤーの思うがままに動かせる直感的なものでもない。実際のスキー同様、練習必須のあまりにもリアルな操作系を起用しているのである。
その為、ゲーム開始直後は『スキースクール』での練習が必須。むしろ、それをやらずに『ストーリー』や『ゲレンデバトル』に挑んだりすれば、火傷どころでは済まされない地獄の苦しみを味わう羽目になる設計となっている。更に『スキースクール』をプレイすれば、瞬時に操作の癖が身につく訳でもない。力加減の調整、カーブ時の逆転設定など、一般的な感覚が通用しない要素が取り揃っているのもあり、何度も練習を重ねないと癖を掴む事はできない。十字キーとABXYボタンを押す際に手としてではなく、足として認識しなければならないのもその難しさを助長。正直、説明書を一通り読んで仕組みを理解したとしても、自分自身の感覚がものを言うので解決とならない、大変にシビアな設計となっているのだ。
しかしながら、これが意外と理に適った仕上がりで、スキー板で雪原を滑るという設定特有の手応えを演出している。そして、こうも難しい作りであるが故に自分の思うがままに滑れるようになった時の快感は凄い。そう言った上手く滑れるようになった時の嬉しさも、実際のスキーを完璧に再現しており、経験者であれば「そりゃこういう気持ちになるよなぁ」と納得してしまう手応えになっているのも注目すべき所である。そんな具合に癖が強いが、スキーゲームとしての操作性としては完璧というほどに忠実。これ以上に良い操作が思い付くだろうかと疑問に思ってしまう仕上がりになっている。
また、モードによっては異なるが、舞台となるゲレンデは自由に移動する事が可能。一通り滑り終えた後にリフトに乗って再度、頂上へと向かって再度滑り降りるなど、実際のスキー同様に楽しむ事ができる。リフト以外にも中腹ポイントにはレストランなどの施設があり、そこに入る事で他のプレイヤーや店長と会話することができるほか、ゲレンデ上には自分以外のスキーヤーも滑っていたり、場所によっては仲間と談笑していたりもする。勿論、それらに突っ込んでしまうと双方共に転倒。そう言った滑る以外の要素も今作はしっかりと盛り込んでおり、ただのスキーを題材にしたスポーツゲームで終わらせない作り込みが炸裂している。特に先に紹介した『ストーリー』ではこのシステムを最大限に活かした遊びが描かれているので、プレイすれば今作がただのスキーゲームで無い事を存分に痛感させられるだろう。
こんな具合に操作性からマップデザイン(ゲレンデ)に至るまで、徹底して『スキー』を題材にした遊びと特色を盛り込んだ内容。タイトルのファミリーという名を考慮すると、本格的にやり過ぎているきらいもるが、真の意味でのスキーというものを突き詰めた操作周りはまさに唯一無二な出来。強烈な異彩を放つスポーツゲームになっている。

例によって、今作の魅力は『スキー』という題材を完璧に表現し切った操作性、『ストーリー』モードの奇抜さの二つだ。
前者に関しては、癖が強いなりの「スキーをしている」という手応えが特に素晴らしく、ゲームである事を忘れさせるほどのインパクトがある。正直なところ、プレイ当初はどんなにゲームが上手いプレイヤーであれ、その癖の強いキー配置と挙動に悩まされるのは避けられない。左右の逆転、手ではなく足を見立てた設計なのもあり、どうしても認識違いによるミスが繰り返される。主にカーブ、ブレーキ時における力の制御は本当に緻密で、練習を重ねていく以外にマスターする近道はない。少し押せば良いのかと思ったら大して曲がらなかったり、長く押し続ければいいと思ったら転倒してしまうじゃじゃ馬っぷりには、思わずコントローラを床に叩きつけたくなるほどの苛立ちを覚えてしまうだろう。
しかし、だからこそミス無く滑れるようになった時の快感は格別で、自らの華麗なコントロールに酔いしれてしまうほどの感動がある。そして、それを再び味わいたいが為に何度もゲレンデを滑りたくなる衝動に駆られるようになる。そこが実際のスキーとほとんど一緒で、ゲームという架空世界において完璧なレベルで描いてしまっているのが凄い。同時に癖の強い操作の起用も、単にプレイヤーを選別する為ではなく、スキーを体験させる為という意図を込めたものとしているところに、制作者のスキーに対するこだわりと愛を実感させられるのだ。実際のところ、スキーというのは難しい。初心者でも始めた初日からゲレンデ上を自在に滑れるほど、甘いスポーツではない。その難しさは、中学生時代などにスキー林間に参加し、そこで人生で初めてスキーを体験した人であればよく分かるはずだ。あのスキー板と足が一体化した感覚とそれによる制御の難しさ。そして、少し動いたつもりが勝手に滑り出し、下手すればコースアウトに見舞われかねない危険性。その異様な難しさに四苦八苦し、オリンピックなどで自在に滑るプロ選手の凄さと雪の恐ろしさというものを思い知った人というのは少なからずいるはずだ。そして、連日の練習が実った最後の日、インストラクターの先生のサポートもなくボーゲンを使いこなせるようになり、自分でコントロールできるようになった時が如何に気持ちの良いものだったかも。
今作の操作性は、まさにそれと全く同じ難しさと感動を描いており、家に居ながらスキーの醍醐味を存分に味わえるのだ。繰り返しになるが、プレイヤーを狭める為に癖を強くしているのではない。スキーの良いも悪いも描く意図でそうしている。明確な意図を持った癖のある操作となっているのだ。その確固たるこだわりと説得力の高さには、生半可な気持ちで今作を作ったのではない製作者の熱過ぎる意気込みとスキーに対する愛情を思い知らされるだろう。
また、現実のように怪我の心配もなく、その独特の難しさと上達の快感を味わえるゲームならではの強みが上手く活かされているのも素晴らしい。それでいて転倒すると痛々しいアクションと効果音が鳴り響いたり、酷い時ならレスキュー隊員まで現れる演出を仕込むなりして、プレイヤーに失敗する事の恐怖を見せつけることも欠かさず。基本、ダメージの概念は無いので、ミスした所でゲームオーバーにまではならないのだが、ゲームだからと言って何でも大丈夫とは見せず、加減を誤ればこういう事になるんだよと表現している辺りには、実在するスポーツを題材にしたゲームだからこそ、現実も見せなければならないというこだわりを感じさせらるし、ファミリーと名付けたゲームだからこそ親御さんと一緒になってその怖さを考えて欲しいというプレイヤーに対する配慮としても見て取られる。癖の強さから、難しいゲームとみられてしまうのも致し方が無い。だが、そんな安直な言葉で締め括られる程度に今作の操作は終わってなく、やり込む度にスキーという題材に対するこだわりが見えてくる。プレイした当初は本当、何で思い通りに動いてくれないんだよと苛立ってしまうだろう。初めてゲームを遊ぶ人に何一つ配慮してない、最低のゲームだとも。それでも、強く主張したい。そのままやり続けてマスターしてくれ、と。何故、そこまで言うのか、上達した時に見ればその意味が思い知らされると同時に今作の凄味というものも知る事になるだろう。それほどまでに今作の操作の作り込み、こだわりは凄く、唯一無二のものがある。ゲームという架空世界で、生々しいほどにスキーを体験させるものに完成されているのだ。
同様に後者、『ストーリー』も唯一無二のものが詰まった出来。そもそも、スキーゲームにロールプレイングとアドベンチャーを織り交ぜた内容だけで既に面白い。完全にやったもの勝ちの作りになっている。肝心の内容も凝っていて、ゲレンデ上を滑ったり、登ったりしながらRPGのようにイベントを進めていったりと盛り沢山。ストーリーもスキーを楽しめる人間になれる事を強く願う動物が完全な人間になる為、ゲレンデ上で悩みを抱えている人達を助けていくという、まるで童話のような世界観と設定が印象的。だが、実の所はギャグ全開で、終始、楽しげな雰囲気で物語が紡がれていく。その展開もまた破天荒の極みで、結末知りたさにどんどん先に進めて行ってしまう面白さがある。更にこのモードはチュートリアルの更なる発展系の位置付けにもなっていて、一通り遊び終える頃にはスキー操作が完全に身に付くようになっているなど、レベルデザインの面でも丁寧な作り込みが炸裂。何故、スキーゲームで人助けをするのか?そんな突っ込み所もあるが、スポーツを題材にしたゲームとしては珍し過ぎるにもあるその内容は必見も必見。特にエンディングは非常に味のあるものになっている。プレイすれば、嫌でも今作の事が忘れられない作品として記憶に残ってしまうだろう。
その他、『ゲレンデバトル』と『タイムアタック』も白熱必至の作りとなっていて、極め甲斐抜群。舞台となるゲレンデも実在のスキー場を題材にしたもののほか、ナムコ作品のキャラクターがスキーヤーで登場する特殊なゲレンデもあったりと盛り沢山。操作性以外の面でも丁寧な作り込みが炸裂している。
だが、それだけに難易度が腑に落ちない調整になってしまっているのが残念。正直、欠点としては致命的な類だが、プレイヤー側とコンピュータ側に理不尽なハンデがある。主にゲレンデバトルで顕在化するのだが、コンピュータ側にゲレンデ上の客との当たり判定が無いのだ。その為、こちら側は当たると転倒してしまうのに相手は転倒しない。このせいで必要以上に難易度が高くなってしまっており、理不尽さが現れてしまっている。『ストーリー』でも最終話でのバトルはその問題のせいで異様なまでに難易度が高くなってしまっており、只でさえ個性的な作りの本編の出来を損ねてしまっている。技術的な限界があったのかもしれないが、この辺は公平にして欲しかったところだ。
そんなミスが悔やまれるが、スキーの面白さも難しさも余すことなく表現した操作と破天荒なストーリーが放つ魅力は相当なものがある。少し人を選ぶ所があるのも否定はしないが、本物のスキーさながらの手応えは今作以外では到底味わえるものでは無い。せめてその操作性だけでも一度では良いから確かめてみて頂きたいところだ。

ボリュームも『ストーリー』単体で見れば、大体8〜10時間程度と、長過ぎず難し過ぎずの丁度良い物量でまとめられている。ただ、タイムアタック等のやり込みが豊富なので、そちらを踏まえるとプレイ時間は一気に倍増。特にタイムアタックは操作性の癖もあって、非常に極め甲斐がある。ほぼ全ての操作を身に着けた方なら是非、チャレンジしてみて欲しい。
グラフィックに関してもアニメ風にデザインされたキャラクター達が個性豊かな動きを見せるイベントデモなど、スーパーファミコン後期の作品らしい成熟した技術が光る出来。ただ、ゲレンデ上のグラフィックは最低限の色数と簡素なデザインでまとめられている為、お世辞にも綺麗とは言い難い仕上がりだ。とは言え、細かい所までよく動くドット絵など、決して手を抜いている訳では無い。特に固有の名前が付けられたキャラクターの動きは、凝った作りになっているので必見だ。
音楽もスキーを題材にした作品なりの爽やかで疾走感のある曲が揃っている。ただ、イベントデモシーンではそんな雰囲気とは一転した暗いものになっていて、変にテンションが下がる。全てのデモシーン用の曲がそんな作風という訳ではなく、中にはやたらロックな曲もあったりするのだが、気になる人は気になってしまうかもしれない。
演出周りに関しては、先のイベントシーンのグラフィックも併せてなかなか凝ったものになっている。先の通り、ストーリーのノリがギャグ全開とだけあってぶっ飛んだカット割りも多く、中でも雪女のストーリーは要チェックだ。当初の予想を良い意味で裏切る展開と演出には「ええ〜…」と声を出してしまうだろう。人によってはドン引きしちゃうかも。

ストーリーに関連する所では、キャラクターもやたらと個性的且つ、突っ込み所満載の面子が揃っている。先の雪女なんて序の口も序の口。本編では思わず開いた口が塞がらなくなってしまう、強烈な個性を持ったキャラクター達がこれでもかと言わんばかりに登場する。そんな強烈過ぎるキャラクターと共に描かれるストーリーがどんなものなのかは推して察するべし。一通り遊べば記憶に残るかもしれない、そんな風に先ほど述べた理由も大いに思い知らされるだろう。
そんな演出的な部分の作り込みも光るが、それ以上にスキーの良いも悪いも描き切った操作性とゲームバランス、個性的過ぎるゲームモードが光る内容。コンピュータ側の理不尽なハンデなど、難易度調整を誤った所があるのが惜しいが、その意欲的なゲームデザインには決して見過ごせない独自性が溢れている。人を選ぶ所はあるが、スキーという題材を完璧に描き切った作り込みの深さが光る今作。スーパーファミコンをお持ちの方ならば一度は体験してみる価値のある意欲作にして、唯一無二の魅力を持つ記憶に残る良作だ。
ただ、残念ながら今作はローソンの書き換え専用タイトルにして、2017年現在もバーチャルコンソールなどで復刻されていない為、遊ぶ手段が皆無も同然。どうしても遊んでみたい…という方は是非、発売元であるバンダイナムコエンターテインメントにバーチャルコンソール化の要望を送ってみよう。そして、復刻された暁には是非、お試しの程を!
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