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≫はじまりの森
■発売元 任天堂
■開発元 パックスソフト・ニカ
■ジャンル アドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 ニンテンドウパワー版 : 2100円(税込)
バーチャルコンソール版(Wii) : 800Wiiポイント
■公式サイト ≫スーパーファミコン版 / ≫VC版(Wii)
▼Informationなのだ
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■SFメモリ消費数 Fブロック:8 Bブロック:4
■推定クリア時間 8〜10時間
ぼくは今日、いなかのおじいちゃんがすむ『くずの木むら』に、ひとりで遊びに来たのだ。
そのおじいちゃんの住む村にある森で、ぼくは不思議な女の子に出会ったのだ。
あの子はいったい誰なんだろう?

もう一度会って約束をはたしたいのだ。
▼Points Checkなのだ
--- Good Point ---
◆ストーリーとミニゲームの双方を順にこなしていく、斬新なゲームシステム
◆川の岩渡りや記憶力ゲームに障害物回避など、個性豊かなストーリー上のミニゲーム
◆多彩なイベントの存在もあって終始気が抜けない、起伏のあるゲーム展開
◆アドベンチャーゲームとしては史上稀な敵との戦闘シーン(マップ探索もある)
◆ゲームが苦手な方でも軽々と突破できるバランスに抑えられた、各ミニゲームの難易度
◆個性豊かなキャラクターと田舎らしさ溢れる世界観が異彩を放つ、上質のストーリー
◆「〜のだ」という特徴的な言い回しが印象深い、可愛らしい主人公
◆40代から50代の方ならば思わず「ニヤリ」としてしまう、懐かしい描写の数々
◆如何にも『ひと夏の出来事』らしい雰囲気が秀逸な、各話ラストの日記シーン
◆操作やコマンドに関する解説など、NP専用タイトルらしい充実したヘルプ機能
◆触る面白さに徹底的にこだわった、シンプル且つ取っ付き易い操作性
◆展開が起伏ながらも、アドベンチャーゲームらしい緩さが活きてるゲームバランス(基本的にコマンド総当たりしていけば進めていける感じの難易度に抑えられている)
◆田舎らしさ溢れる世界観に絶妙にマッチした、高品質のグラフィック
◆同じく田舎らしさ溢れる世界観にマッチした、感動的且つ秀逸な音楽
◆女の子の方を見るとアップで表示されたりなど、細部までこだわった演出

--- Bad Point ---
◆抑えられてるとは言え、やや高めに設定し過ぎてる感のある終盤のミニゲーム(特に障害物回避はやり過ぎかも…)
◆同じく、ややゲームテンポを殺いでる感のある終盤の迷路マップ
◆また同じく、ヒントが少なくて詰まり易い、終盤のお使いイベント
◆あまりに冗長過ぎる、かくれんぼのミニゲームにおけるミス演出
▼Reviewなのだ ≪Last Update : 4/26/2008≫
懐中電灯が、ぼく一番のたからものなのだ。

昔、そういうものがありませんでしたか?


ファミコンディスクシステムではつばいされた『タイムツイスト 歴史のかたすみで…』いらいとなる、任天堂のしんさくアドベンチャーゲームなのだ。かいはつはさっきの『タイムツイスト』、『新・鬼ヶ島』シリーズや『モグラーニャ』などのめいさくをつくってきたパックスソフト・ニカが担当してるのだ。

スーパーファミコンのかくれためいさく…なのだ。

……
……って、そろそろ、普通の文体に戻るのだ(汗)。

改めまして…もう一度。

遊び満載のゲーム展開と上質なストーリーで送る、スーパーファミコンの隠れた名作だ。

ゲーム内容はコマンド選択型のアドベンチャーゲーム。プレイヤーは主人公となって、各話ごとに展開するイベントやミニゲームなどを攻略していく。基本的なシステム周りは、任天堂が過去にリリースしてきた『新・鬼ヶ島』や『ファミコン探偵倶楽部』シリーズに準じた作り。ただ、開発を手掛けたのが『新・鬼ヶ島』を手掛けたスタッフという事もあり、実質的なゲームの手応えは鬼ヶ島に近いものとなっている。それを体現するものとして、今作はただ、ひたすらストーリーを追っていくだけの単純なアドベンチャーゲームになっていない事が挙げられる。
先のゲーム内容紹介の所でも触れたが、今作ではストーリーを追うだけに留まらず、各所において展開される様々なミニゲームも一緒に乗り越えていかねばならない。アドベンチャーゲームとしては珍しく、随所において指先のテクニックや瞬時の判断力、記憶力と言ったものが問われてくる場面が多々、用意されているのだ。
川に点在する岩を最初の見本通りの順番で、ジャンプして進んでいかなければならなかったり、悪ガキに奪われた宝物を取り戻す為に記憶力ゲームに挑まねばならなかったり、的確にジャンプをしながら障害物を回避していかねばならない場面があったり等と、アドベンチャーらしからぬ遊びがストーリー中、次々とプレイヤーの前に立ちはばかってくるのである。また、今作ではプレイヤー自身がキャラを移動させる場面も多々あり、これでマップの探索を行う…なんて事まである。更に一部のマップには敵が配置されており、これに遭遇するとRPG風の戦闘シーンに移行し、戦うハメになってしまう事までも。もはや、ここまで来るとアドベンチャーゲームとか言っている所の騒ぎではないのは言うまでも無いだろう。
とにかく、至る所に遊びが盛り沢山。アドベンチャーの肝とも言えるストーリーだけの一本勝負にはせず、色々な遊びでプレイヤーを楽しませてくれる、斬新なアドベンチャーゲームとなっているのだ。単純にストーリーだけの内容にせず、個性豊かな遊びを随所に盛り込んで奥行きのあるものに仕立て上げようとしたその姿勢は、如何にも「遊び」に対しては尋常ならぬこだわりを持つ任天堂らしく、それでいて『鬼ヶ島』のスタッフらしい…と言った所だ。
このような遊びが豊富に取り入れられた構成という事もあり、全体的なゲーム展開も凄くバラエティーに富んでおり、終始、プレイヤーを飽きさせない作りとなっているのもお見事だ。ストーリーだけを延々と追っていくアドベンチャーゲームには無い、手応えを演出している。
それでいて、ちゃんとコマンド選択型アドベンチャーゲームならではの味…基本的に、コマンドを総当りしていけば、サクサク進めるテンポの良さを維持しているのだから凄い。各種ミニゲームの難易度も適度なレベルに抑えられており、基本的にアクションゲームとかが苦手な方でもサラッと突破できるバランスになっているのも流石の一言だ。
まさにこれぞ、『遊べるアドベンチャーゲーム』と言うに相応しい出来栄え。ストーリーと一緒に遊びも十分に満喫できる、実に贅沢で斬新な内容に仕上がっているのだ。

勿論、素晴らしいのはそんな遊びの要素ばかりではない。アドベンチャーゲームの根幹とも言えるストーリーの完成度も相当なものだ。いわゆる『ひと夏の出来事』を描いた、ジュブナイル系の王道ストーリーなのだが、とにかく田舎らしさ溢れる、ほのぼのとした世界観が実に素晴らしい。40代から50代の方ならまず間違いなく、鳥肌モノの衝撃を受けるのは必至だ。しかも、そう言った世代の方ならば思わずニヤリとしてしまうような描写…古めかしい駅にディーゼル機関車、夏休みの日記に物知りおばあちゃん、メンコ、そして蓋の宝物と言ったものも続々と登場するので、個々のノスタルジーを大いに喚起させられること、間違い無しだ。あまりに懐かしいあまり、「もう一度、あの頃に戻りたい…」等と思ってしまう可能性も無きにしも非ず。そういう意味では、その世代の方は、はまり過ぎにご用心…である。一歩間違えれば、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶオトナ帝国の逆襲』みたいな事にもなりかねぬ…かどうかは分からない。
懐かしい描写のみならず、ゆったりとほのぼのと展開していく作りも秀逸。そして、ストーリーを彩る登場人物達も個性豊かな面々が盛り沢山だ。特に、プレイヤーの分身となる「ぼく」こと主人公はお世辞抜きにとても可愛い。最初のストーリー紹介の通りだが、言い回しが独特で決まって「〜のだ」と台詞の最後に付けるのが実にユニーク。また、ストーリーの途中には自身の独白とも言うべき場面も多々あり、コマンドを選択してヒロインとして登場する女の子を見つめると、「か、可愛くて照れるのだ…」と言ったりなど、思わず感情移入してしまうような一面があるのも秀逸だ。しかも、ちょっと話がずれるが、この女の子を見つめた際、ちゃんと画面が女の子のアップに切り替わるという演出も強烈にニクい。主人公はプレイヤーの分身だという事を鮮明に現した、スタッフのこだわりが感じられて好印象だ。
そんなヒロインの女の子も実に魅力的。彼女も彼女なりに主人公と同じく言い回しが独特で、見るものに強烈なインパクトを与えること、間違い無しだ。地味ながらもヒロインらしく、可愛らしいデザインが成されているのも必見である。
他にも50代の方ならば絶対に昔、近くにいただろう、何処か憎めない悪ガキ四人組や物知りおばあちゃん、いつも扇子を持った村長さんなど、個性的な面々は沢山おり、先の主人公達と一緒にこのほのぼのとしたストーリーを大いに盛り上げてくれる。あまりに急展開がなく、インパクトに欠ける所もあるが(それでも終盤は結構、盛り上がってくる)、そこを今作は先ほどに紹介した遊びの要素が補ってくれるので、さほど進めていく過程でダレる事はほとんど無い。
遊びのみならず、根幹となるストーリーも作り込む徹底振り。何処からも一切の妥協を感じさせない、仕事ぶりが光っているのである。双方の要素を恥じないものにしようとした、この丁寧な作り込みには感心せざるを得ない。

操作性も秀逸。任天堂らしい、触る面白さを徹底したこだわりが炸裂しており、ただコマンドを選ぶだけでも気持ちの良い感触を実現している。コマンド選択型アドベンチャーゲームらしい、緩いゲームバランスもお見事。イベント等で苦戦する事もしばしばあるが、先も話した通りに基本的にアクションゲームとかが苦手な方でもサラッと突破できるレベルに抑えられているので、ストレスを感じる事はほとんど無い。
ニンテンドウパワー専用タイトルらしい、サポートシステム周りも充実。操作解説など、ストーリーを順に追っていけば自然と身に付く仕組みとなっているので、ほとんど説明書を読まなくても溶け込める敷居の低さを実現している。ほぼ常時に行えるセーブシステムも、忙しい社会人の方には嬉しい。
そしてグラフィック、音楽も上質の出来栄えだ。特に音楽は突出しており、世界観にマッチした如何にも田舎らしい、ほのぼのとした曲がたっぷり収録されている。注目は何と言ってもタイトル画面で流れるメインテーマで、これがまた泣ける!正直、これを聴く為だけに今作をやっても後悔はしないと言っても過言ではないだろう。要チェックである。
その音楽等と共に織り成される演出もニクいものが盛り沢山。先の通りに女の子を見つめると、ちゃんとアップで表示されたり、また各話のラストには夏休みだという事を裏付ける可愛らしい文体の日記が展開されたり等、見る者の心に直接響き渡ってくる。中でも日記の場面はバックに流れる音楽も合間って、凄く印象的なものとなっているので必見だ。

強いて言うならば、終盤のお使いイベントの連続とアクションイベントがしんどい、あとかくれんぼのイベントにおけるミスで流れるデモが長過ぎるのが残念な所ではあるが、全体的な完成度は相当なもので、『新鬼ヶ島』や『ファミコン探偵倶楽部』シリーズに次ぐ、任天堂を代表するアドベンチャーゲームの1本と言っても過言ではない。
遊び満載のゲーム展開と上質なストーリー、そして素晴らしい音楽と演出、優れたゲームバランスと任天堂らしい丁寧な作り込みが異彩を放つ、この『はじまりの森』。
まず間違いなく、スーパーファミコンを代表する名作アドベンチャーゲームだ。アドベンチャー好きは当然ながら、スーパーファミコンを持っているユーザーならば要プレイ。特に40代〜50代の大人の方にこそ、遊んでみてみて欲しい。
昔懐かしい、あの頃の思い出に浸ってみませんか。

ちなみに、WiiとWiiUでも遊べるのだ。(バーチャルコンソールにて配信中)
いま、このゲームをやりたいとおもうひとは、そっちで買うのがおすすめなのだ。
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