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≫ミッキーマニア
■発売元 カプコン
■開発元 Sony Imagesoft(現:ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ)
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10290円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※バックアップ機能・パスワードコンテニュー無し)
■総説明書ページ数 20ページ
■推定クリア時間 3〜6時間
今回のミッキーの冒険は、今までに彼が活躍した6つのアニメーションの世界。
冒険には、彼の忠実な愛犬のプルートも一緒だから安心安心。
行く手に立ちはばかる沢山の謎と危険を乗り越え、どんどん時間を進んでいこう。
そして、最後にミッキーを待ち構える大悪党ピートを倒すんだ!

不思議な時間旅行の始まり、始まり…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆マジカルアドベンチャーシリーズの流れを組む、シンプルで分かり易いステージクリア型のゲームデザイン
◆説明書をそれほど読まなくても、直に覚える事ができるシンプルな操作性
◆ミッキーマウスのイメージからはとても想像のできない、シビアなゲーム内容(ある意味、悪い要素でもあるが…)
◆シビアなゲーム内容を演出している、クレジット制システムの存在(マジカル以上の手応えを演出している)
◆多種多様な仕掛けと、美しいグラフィックが特徴的な全6ステージ+1ステージ
◆スーパーファミコンとは思えない位、恐ろしい位に美麗なグラフィック
◆気持ち悪いぐらいに作り込まれた、キャラクターのモーション
◆楽しげな雰囲気と硬派な雰囲気を程よく織り交ぜた、秀逸な音楽
◆キャラクターのモーションと同じ位、凝りに凝った演出
◆初心者から上級者まで幅広く楽しめるように導入された、難易度選択システム(しかし、肝心の難易度バランスは…)
◆可愛いキャラからグロいキャラまで、デザインが豊富に用意された登場キャラクター達
◆一応の救済処置として機能している、裏モード

--- Bad Point ---
◆統一感が何処にも感じられない酷い難易度バランス(理不尽…)
◆ウザ過ぎるローディング(ロムメディアのゲームなのに、何でこんなのが?)
◆敵と仕掛け配置に、若干の適当さが見受けられるステージ構成
◆一見では、ちょっと分かり難いライフ表示(もう少し、大きめに描かれていれば…)
◆倒した時の悪あがきが残酷すぎる、骸骨の敵(あの骨の多さは反則っす…)
◆弾幕シューティングばりに激薬入りフラスコを投げてくる、ステージ2のボス・マッドドクター(回避はほとんど不可能…)
◆滑らかな動きは見事だが、若干…もっさりした感じもあるキャラのモーション
▼Review ≪Last Update : 10/6/2007≫
沢山投げても、池にはならないミステリー…。

いや、池どころじゃないかも。


カプコン制作のミッキーシリーズ(ディズニーシリーズ)番外編としてリリースされた作品。制作は海外のSony Imagesoft(現ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ)担当。アニメーション制作には、本家ディズニーが関与している。

本家が関与しているが故の映像美。しかし、その一方で無慈悲なゲームバランスと過剰なローディングが尾を引く、まさにマニア向けとしか評しようの無い問題作である。

ゲーム内容は、ステージクリア型の2Dアクションゲーム。プレイヤーはミッキーマウスを操作して多種多様なステージを駆け巡り、最後のステージを目指して突き進んでいく。
プレイヤーが挑む事になる各ステージの構成は、同社制作の『ミッキーのマジカルアドベンチャー』シリーズに準じた作りで、幾つかの細かいエリアに区分されたものとなっている。また、これもまたマジカルアドベンチャーと同様、ステージの最後にはボス戦が用意されており、彼らに打ち勝つ事でそのステージはクリアとなる。但し、中にはただゴールを目指すだけのボスが登場しないステージ、特別なイベントが最後に仕掛けられているステージ等もあるなど、他とは型の異なった趣も数多くスタンバイ。そのあまりにバラエティー豊かな展開はプレイヤーの心を揺さぶる事、間違いなし。マジカルアドベンチャーとは大いに異なる、流動的な冒険とその醍醐味を味わう事ができる。
また、今作でプレイヤーが挑む事になるステージの舞台は、最後の1つを除く全てが過去に上映されたミッキー名作映画がベースの世界となっている。本作において収録されている映画(のステージ)は『蒸気船ウィリー』(1928年)、『ミッキーのお化け屋敷』(1933年)、『ミッキーの猛獣狩』(1937年)、『ミッキーのお化け退治』(1937年)、『ミッキーと豆の木』(1947年)、『ミッキーの王子と少年』(1990年)といずれも往年の世代には馴染み深いものばかり。ミッキーファン、そして過去にそれらのミッキーの映画を観た往年の方にとっては、まさに心踊る冒険を味わう事ができる。しかし反面、そんな過去を知らない若いユーザーにはまるでピンとこないものとなってしまってるのも事実。その点では格差が生まれてしまってるのが寂しい所ではある。
だが、別に映画を観てない人はお断りな作りにはなってない。基本的に本作ではストーリーなんていうものは全く無く、淡々と展開して行く、いわゆる昔懐かしいストレートなアクションゲームとなってるので、別に過去の映画を知らないと分からない展開があったりとか、そういう事は一切無い。それにステージの地形や世界観も映画に準じているとは言え、全体的にはゲームオリジナルなので、事前知識は一切不要だ。
このように過去の映画をベースとしながらも、あくまでもゲームとしては誰もが楽しめる為の設計を徹底しており、往年のユーザーから若いユーザーまで広く対応したゲームに仕上がっているのである。マニアだけにしか分からないなんて理不尽な表現は一切無し。誰もが心行くまで、過去の映画世界に浸れるのだ。この辺のユーザー層を限ろうとしない姿勢には、制作側の誰もが安心して触れるアクションゲームを造ろうとする強きこだわりを感じる事ができる。しかし、実際は誰もが触れる…というのは立派な筋違いなのだが、それは後ほど。

そんな本作最大の売りは、思わず見とれてしまうほど美しいグラフィック。…これに尽きるだろう。
本作はアニメーションのパートにおいて、あの本家ディズニーが関与しており、その影響もあってかゲーム全体を彩るグラフィックの完成度があり得ないものとなっている。とにかく、背景は質感満点且つ細かい所まで綺麗に描き込まれており、キャラクターの動きも一つ一つが細かく、驚くほど滑らかな動作をするなどと…全てが尋常でない出来なのである。特に凄いのはキャラクターの動作で、本当に生きているかのような実に生々しい動きを披露してくる。そのあまりの滑らかな動きに、多くのプレイヤーは思わず目が点になってしまうこと、間違いなしだ。しかもただ滑らかなだけでなく、中には3D効果をかけたかのような酷く気持ち悪い(良い意味で)動きをするキャラクターもいたりなどと、スーパーファミコンというハードを思わせない(というよりも、ハード性能を凌駕した)描写もあるほど。これが3D効果を取り入れているかに見せかけて、実は普通にアニメーションさせているだけというのだからなお驚き。どんだけこだわってるんだよ、と返って呆れる。
勿論、背景においても本作は無茶をしており、あるステージではフルポリゴンで描かれた地形が登場するほど。おまけにこの描写を本作は特殊チップ無しで実現しているのだから凄い。どんだけこだわってるんだよ…としかコメントのしようがない。流石にこの辺は、ディズニーが関与している故に…と言った所だろうか。とにかく、このグラフィックの出来は、スーパーファミコンのゲームの中では1,2を争う凄さだと断言できる。冗談抜きに、この美麗なグラフィックを見るだけでも、本作をプレイする価値は十分にあると言えよう。本当、とんでもない無茶をしてしまっているのだ。
更に、この美しいグラフィックを引き立てる音楽の出来も大変素晴らしい。特に良いのが、ミッキーマウスの可愛さに反したハードな曲が満載である事。マジカルアドベンチャーとは酷くかけ離れたテイストに仕上がっているのだ。しかも、このカッコ良さを出す上でしっかりとミッキーらしい「可愛さ」を出しているのだから凄い。流石、ディズニーが関与しているだけの貫禄を実感できる。曲自体も聴き応えのある名曲ばかりで、その中でもボス戦の曲は秀逸の一言。明るめなのだけど何処か緊迫感に満ちており、ボス戦をより盛り立たせてくれる。また、最初の『蒸気船ウィリー』全般で流れる、可愛らしい音楽も必聴の価値ありだ。
この他、演出面においても美しい映像ならではのド派手且つぶっ飛んだエフェクトが満載で、プレイヤーの目を釘付けにさせる。本家が関与しているとなっては、次に出る者は無い…とも言うべきか。このように表面を覆う要素の完成度は群を抜いており、スーパーファミコンとは思えない無茶を仕出かしてしまっているのだ。繰り返しになるがこれらを堪能するだけでも、本作をプレイする価値は十分にある。

だが…。本作において、最も優れてるのはその表面だけ。対する内面は、とてもアクションゲームとしてはかばいきれない位に酷い出来なのである…。これが、先程に少し述べた、誰もが触れるという事が立派な筋違いである理由。
というのも本作、ゲームバランスが凶悪。生半可な腕では無理どころじゃない、相当な気力と根性が無ければ本作、到底クリアは無理なのである。とにかく、理不尽。特にステージ構成がその象徴だが、やたらと一撃死トラップを配置していたり、回避しきれない弾を放ってくる敵を多く用意していたりと陰湿。ボスもボスで、特にステージ2で対決する事になる『マッドドクター』等は最悪の極み。まるで弾幕シューティングとも言わんばかりに劇薬入りのフラスコを大量に投げて攻撃してくるのだ。当然ながら、回避するのは絶対に無理。ごり押しするか、余程の運が無ければ勝つなんて不可抗力。
他にも、倒した瞬間に悪あがきとしてやられると同時に大量の弾を放ってくる敵がいたり、背景と思わせて実はトラップというフェイクがあったり、無限コンテニューができず、クレジットが0になると強制的に最初のステージ1からやり直しとなるゲームオーバーのシステムなどと陰湿なものは数知れず。このような難関と苦痛に耐えなければならないと聞いて、誰が「楽しそう!是非、やってみたい」と思うだろうか。まず、いないだろう…。
海外のソフトハウスが制作したゲームというのは、基本的に難易度が高めに設定されているのがザラと言えばザラだが、本作はちょっと行き過ぎだ。確かに、粘ればクリアできるレベルになってるのは救いではあるけど、それまでの過程に全くアクションゲームの難関を突破する面白さが無くちゃ、意味が無いだろう。
流石にこれに関しては練り込み不足としか言い様が無い。国内向けの調整が足りなさ過ぎる。単にゲーム中に表示される文章を翻訳するだけでなく、もっとゲームとしての面白さを出す為の調整をして頂きたかった。折角、映像の出来が良いのに勿体無さ過ぎる。パスワードコンテニューシステムが導入されて無いのも不親切…の一言だ。
だが、それらを超越する問題点は何と言っても、スーパーファミコンのゲームとしてはあり得ない、ローディングの存在だろう。これがもう、本当に酷い。ステージのエリアを1つ突破する、更にはミスをして復帰する度に本作では40〜45秒ぐらい、ローディングで待たされるのである。これは本当にありえなさ過ぎる。何故、ローディングとは無縁のロムカセットのゲームで、こんな謎のローディングが導入されているのか。映画の雰囲気を出す為か、それとも単純にグラフィックに無茶をし過ぎた為の技術的な問題なのか。 真相は謎ではあるが、これは本当に残念だ。結果として、アクションゲームとしてのテンポの良さは本作にはまるで無く、バランスの悪さと相まって余計に陰湿なゲームとしての印象を強くしてしまっている。これさえなければ、ゲームとしての印象もそこまで悪くはならなかっただろうに…。

他にも、ミッキーのライフ表示が分かり難い、操作感がヌルっとしている、当たり判定が大雑把など細かな欠点もチラホラ。本当、グラフィックと音楽の出来は素晴らしいのに、ゲームの部分の作りがお粗末なのが勿体無い。丁寧に仕上げれば、マジカルアドベンチャーと双璧を成す傑作になっていただろうに、何故…このような事になってしまったのか。
とにもかくにも、総じて駄作云々以前に問題作としか称しようの無い、この『ミッキーマニア』。ここまで来たならばもう結論はまる見えだが、ミッキーファンとゲーム初心者、そしてコアユーザー共にお薦めできないゲームだ。
ただ、ストレスを溜めるだけなので、止しておいた方が良い。
どちらかというと本作は、物好き向け。まさに文字通り、マニア好みのゲームだ…。
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