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≫ドナルドダックのマウイマラード
■発売元 カプコン
■開発元 Eurocom Entertainment Software
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7875円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンテニュー形式)
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 4〜6時間
タイムリミットは3日。
島が”消滅”しない前に、何者かに盗まれた魔像シャブーム・シャブームを奪い返せ。

島やその施設を荒らしてでも奪い返せ。
忍者に変身してでも奪い返せ。
生贄にされても奪い返せ。

何が何でも奪い返せ!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ステージを順に攻略していく、シンプルで分かり易いゲーム内容
◆オーソドックスなものから謎解きを盛り込んだものまで、多種多様なステージ構成
◆学校に訓練所、火山に泥沼、更には死の世界とぶっ飛びまくりのステージロケーション
◆迫り来る剣山、暗闇地帯、宙に漂う海などあまりに変則的なステージギミック
◆プレイヤーの収集意欲を刺激させる、宝物の回収要素(100%を狙ってプレイすると熱い)
◆3種の弾丸を使い分ける、シンプルな戦略要素が秀逸なノーマルマウイのアクション
◆ツッコミどころ満載、棒を振り回す面白さ満載のニンジャマウイのアクション
◆ボタン一発で切り替えられる、スムーズさが秀逸な各マウイのチェンジ操作
◆感触こそやや重いが、ボタン配置等が適切で取っ付き易い、直感的な操作性
◆プレイヤーの実力がそのまま結果に反映される、適切且つ絶妙なゲームバランス
◆アクション初心者向けと上級者向けの棲み分けが上手く成されている、全三種類の難易度
◆スーパーファミコンとは思えぬ、滑らかなアニメーションが秀逸なグラフィック
◆南国の島らしい、重厚な雰囲気が印象的な音楽(名曲も盛り沢山)
◆全難易度コンプリート、全ラウンド回収率100%達成など意外と充実したやり込み要素
◆独特のテキストと映像表現が秀逸な、各ラウンド開始前のオープニングデモ

--- Bad Point ---
◆シビアでやや不親切な印象が否めない、パスワード入手条件
◆全体的に長めの構成で、後半になるほどかったるくなる、ボーナスステージ
◆ほとんどノーヒントで何をすれば良いのか、パッと見では分からない課題が課せられたエリア(説明書に解法が載っているのだが、これはずる過ぎる気が…)
◆主にニンジャマウイにおける攻撃アクションの爽快感を殺いでしまっている感じが否めない、極端に狭い攻撃の有効範囲(もう少し、広くしても…)
◆複雑さこそ無いが、海外ゲーム特有の重さがやや不快な操作性
◆銃を撃った際の反動で移動する、あまりに癖あり過ぎな泳ぎのアクション
◆地味な演出(特にボス戦の曲が無いのは…。ラスボスはあるのだが)
▼Review ≪Last Update : 5/24/2008≫
この華麗なる棒術を見よ!

だが何故、忍者で棒術なのか?


ディズニーの人気キャラクター、ドナルドダック主演のアクションゲーム。開発はイギリスのソフトハウス、Eurocom Entertainment Softwareが担当。

ディズニーらしからぬハードなテイスト漂う、隠れた傑作だ。

ゲーム内容は、オーソドックスな横スクロールのステージクリア型アクションゲーム。プレイヤーはドナルドダック扮する探偵『マウイマラード』を操作し、様々な敵やトラップが待ち構える、全部で8つものラウンドを順に攻略していく。
舞台となる各ラウンドは、基本的に複数のエリアで構成されており、このエリア全部を攻略する事で、ラウンドクリアとなる。無理矢理言ってしまえば、『ミッキーのマジカルアドベンチャー』シリーズと同じである。だが、あくまでも同じである箇所のはそれぐらいで、実質的なゲーム展開そのものに関しては、本作独自の味付けが凝らされている。
まずその一つとして、今作ではラウンド全体に『宝物の回収率』なるものが設定されている。これは、各ラウンドのエリア内に落ちているダイヤやルビーなどの『宝物』をどれ位、集められたかを示すもので、集めれば集めるほどそのパーセンテージが上がっていく。そして、最終的にラウンド全体で予め設定された『目標回収率』を達成すると、ラウンドクリア後に特別な『ボーナスステージ』を楽しむ事ができるのだ。逆に達成し損ねると、ボーナスステージはプレイできず、そのまま次のラウンドへと進む事となる。
要は『おまけ要素』という事で、集めれば後の展開が有利になるサービス…にしか見えないが、実はこれにはとんでもない罠が仕込まれている。と言うのも、今作では『パスワード』によるコンティニューシステムを採用しており、これを入力する事でそれまでに進んだステージからの再開と言った事ができるようになっているのだが、このパスワードと言うのが何と『ボーナスステージ』を攻略しないと入手できない仕様となっているのである。普通に、宝物を回収せずにラウンドをクリアしてしまうと、パスワードは入手不能。更に言うと、ボーナスステージそのものの攻略に失敗してもパスワードは手に入らないのだ。だから、今作では安心してゲームを進ませたいのなら、宝物の回収とボーナスステージの攻略は必至。
二つ目の、舞台となるエリアの構成も文字通りに罠だらけだ。一般的なアクションエリアのみならず、謎解きや人助けと言った課題が設定された特殊なエリアも用意されているから、指先のテクニックのみでは決して乗り越えられない。肝となるアクションエリアにて凝らされたギミックも、巨大パイプオルガンを模したジャンプ台に床下からプレイヤーを追いかけてくる剣山、小人化エリアなど変則的なものが満載で、プレイヤーを大いに苦しめる。
これらの事柄から、今作が如何に一筋縄でいかないゲームになっているかは想像に難くないだろう。しかし実際の所、ゲーム自体の作りは親切且つ丁寧だ。例の宝物の回収は、エリア内の至る所に宝物が「たっぷり」散らばっているので、何も考えずにエリアを進めていけば自然と集まっていくし、目標回収率もそんな悪戯に高く設定されてないので、達成自体は簡単。宝物の回収と言われると、何処となく作業的な物をイメージしがちであるが、今作はそれをなるべく自然にする為の調整が図られているので、そう言った印象は皆無。驚くほど自然に、アクションと宝物回収の遊びを並行して楽しめるようになっている。また、件のボーナスステージ自体も難易度は低めに設定されているから、そんな苦戦する事もない。やや冗長な作りとなっているのは気になるが、ボーナスの名に相応しい特典が随所に散りばめられているので、これもさほど苦を感じずに楽しめる。
エリアの構成も、特殊エリアがノーヒント(説明書を見ないとクリアの方法が掴めない)なのがちと残念だが、全体的には冷静に観察すれば分かる作りとなっているし、アクションエリアも仕掛けがトリッキーとは言え、比較的バランス良く配置されているのでストレスを感じる事もない。むしろ、そのあまりに巧妙な配置に、唸らされてしまうだろう。ロケーションに富んだステージの舞台も、プレイヤーの好奇心を大いに刺激すること、間違いなし。このようにややハードで意地悪な所も見られるが、配慮は完璧。全体的に気持ち良く、ハードで骨太なアクションを楽しめる内容に仕上がっている。

ゲーム展開のみならず、肝心のプレイヤーアクションも面白い&ツッコミどころ満載。
今作では『ノーマルマウイ』と『ニンジャマウイ』の二つのフォームがあり、これを状況に応じて使い分けていくのだが、この『ニンジャマウイ』のフォームが最高に面白い。
文字通りに忍者のドナルドで、棒術を主としたあまりに多彩なアクションを堪能できるのだ。「忍者で棒術!?忍者と言ったら手裏剣か、刀だろ!」…と、日本国民ならば誰もが先の事を聞いて思うかもしれないが、念の為、言っておくが今作の忍者には手裏剣や刀と言ったものはない。ついでに、隠れ身の術や水とんの術と言った特殊技も無い。更に言うと、変身や攻撃の際に消費&扱うアイテムは『太極が描かれたコイン』。
そんな感じに、所々「KANCHIGAI」していたりもするが、本題に戻って…このニンジャによるアクションは先の通りに、実に多彩だ。棒を振っての攻撃は勿論の事、回転アタックに4連続攻撃(コンボ)、壁の隙間に棒を引っ掛けてのよじ登り、特殊な球体に棒の先を入れて行うワイヤーアクションなどと、とにかくできる事が多い。特に『よじ登り』のアクションは地味ながらもなかなか爽快で、思わず物真似してみたくなる衝動に駆られる、実に印象深いものになっている。隙間に棒を挟んだ時に鳴る、「カツッ!」と言う効果音もアクションの気持ち良さと生々しさを上手く表現していて良い感じだ。また、肝心の攻撃アクションの方も、効果音と爽快感に対するこだわりは勿論の事、純粋に振り回すだけでも気持ちの良い、操作の面白さを表現しているのもお見事だ。
ニンジャのみならず、ノーマルマウイの方もできるアクションは少ないが、『虫ガン』を使った銃撃アクションがなかなか面白い。一般的な弾からホーミング弾、拡散する弾など色々な種類が用意されていて、フォームと同様に状況に応じて使い分ける戦略性が滲み出ていて素晴らしい。発射した際の銃の効果音、そして敵に弾が命中した際の効果音も如何にも「虫らしい」、生々しさが表現されているのも秀逸。ニンジャの手応えを煽るものもそうだが、今作を手掛けたスタッフが如何に手応えにこだわって作ったかを感じさせられる。
そして、何よりも今作が優れているのは、そのフォームのチェンジをワンボタン(Xボタン)一発で行えること。これは非常に便利。しかも、チェンジする際に待たされる事もなく、本当に「あっ」という間に切り替えられるのだからなおの事。フォームを切り替えるシステムの元となった『マジカルアドベンチャー』のコスチュームチェンジを、より発展・昇華させた好例と言うに相応しい。しかも、選べるフォームの数が少ない為にそれぞれの特徴が一発で分かる、使い分ける際の戦略性も簡単で分かり易いと言った利点が出ているのも流石だ。
やや攻撃の当たり判定が狭い(ニンジャ)のが地味に気になるが、全体的にはどのフォームも綺麗にまとまっており、アクションゲーム特有の動かす気持ち良さがある。システム自体の真新しさはないが、それを可能な限り簡略化させ、より使い易く、そして楽しいものに仕立て上げたその手腕には驚くばかり。海外メーカー特有のアレンジ力が活かされた好例とはまさにこの事だ。この素晴らしく爽快なアクションを体験してみるだけでも、今作をプレイする価値はある。

肝心の操作性も、如何にも海外ゲームらしく多少、もっさりとして重いところもあるが、ボタン配置などはシンプルにまとめられており、直感的に動かせるのがお見事。
ゲームバランスもどんな局面も実力で突破できるレベルで統一されており、当時の海外制作ゲームを思わせない、実に丁寧な仕事が光っている。また、今作ではオプションにて難易度を変更する事もでき、様々なユーザーの腕に合わせたプレイが楽しめるようになっているのも素晴らしい。難易度別の個性分けもよく出来ていて、特に最高難易度の鬼のような難しさ(ゲームオーバー後のコンティニューが不可能!)は圧倒的だ。
更に、ゲームを彩るグラフィックも圧倒的で、スーパーファミコンとは思えぬ滑らかなキャラクターアニメーションと映像美が全編において炸裂する。『ミッキーマニア』のポリゴンのような、凝った表現こそ無いが、今作も見ているだけでも楽しいゲーム展開を大いに堪能する事ができる。これはディズニー好きのみならず、グラフィック通も要チェックだ。
また、音楽も大変素晴らしい。如何にも南国の島らしい雰囲気満点の曲が満載で、ゲームプレイを大いに盛り上げてくれる。名曲も多く、特にラウンド1とラウンド2で流れる曲は必聴の価値ありである。ただ、強いて言うならば曲数が少ないのが残念。特にボス戦用の音楽とかは最低限、用意して欲しかった所だ。勿体無い…。

演出周りも、グラフィックこそ素晴らしいが音楽の種類の少なさもあり、イマイチ弱い。ただ、最後の最後はちゃんと盛り上げてくれるので、その点がせめてもの救いだ。
やや劣悪なパスワード入手条件やノーヒント徹底の特殊エリア、当たり判定の狭さなど細かな粗も多いが、作り自体はとても丁寧で、(ツッコミどころ満載の)ニンジャマウイによるアクションにロケーションに富んだ全8ラウンド、ハードで骨太なゲーム展開、絶妙且つ幅広いゲームバランス、美麗なグラフィックと重厚な音楽など、見所盛り沢山の今作。
アクションゲーム好きは勿論の事、ディズニーファンも要プレイのハードな魅力たっぷりの、隠れた傑作アクションゲームだ。これは地味にお薦め。ひたすら暴れて、魔像を奪い返せ!何が何でも奪い返せ!
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