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≫カービィボウル
■発売元 任天堂
■開発元 HAL研究所
■ジャンル ボールアクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7900円(税別) / バーチャルコンソール版:800円(税別)
■公式サイト ≫スーパーファミコン版 / ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 8つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 52ページ
■推定クリア時間 10〜15時間(エンディング目的)、18〜23時間(完全攻略目的)
小さな星の小さな国、呆れ返るほど平和なプププランド。

ある日、この国の夜を見守る、夜空に輝く無数の美しい星達が、一夜にして消滅する大事件が起きた。
プププランドの人々は次の日になれば星達は戻ってくると信じたが、それ以降もずっと星達は現れず、次第にプププランドの人々は元気を失っていった。

やがて、人々の間で一連の事件の犯人はデデデ大王らしいとの噂が広まり、それは次第に確信へと変わって行った。

これを聞きつけたカービィは、再びデデデ大王を懲らしめる為、長い長い冒険へと出る。
目指すは、天空に浮かぶデデデ大王の城。

多くの困難を乗り越え、カービィは無事、デデデ大王から星を取り戻せるのか?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ゴルフとアクションゲームの要素を合体させた、不思議極まりないゲームシステム
◆不思議なゲームシステムが織り成す、緻密極まりない戦略性
◆見た目の緻密さを思わせないほどシンプルで分かり易い、快適な操作性
◆特殊な操作を要さなくてもあっさり繰り出せてしまう、風変わりなショットアクション
◆あり得ない弾道を描かせてくれる、ユニーク且つ使い勝手の良いコピーアクション
◆メダル集め、やり込み要素共に大幅に充実したメインとなる『一人プレイモード』
◆緻密な調整と作り込みが光る、一人プレイに登場する全8ホール64ホール
◆1回のプレイが長い為に気軽さが無いのがタマにキズだが、なかなか面白い試みが張り巡らされた対戦プレイ
◆お絵かきによるプレイヤー登録が面白い、一人プレイモードのファイル作成手順
◆立体的でカービィの世界観を上手く表現した、美しいグラフィック
◆同じくインパクトに欠けるが、シリーズらしさが香る秀逸な音楽
◆カービィらしさに欠けるが、戦略面同様に緻密にまとめられたゲームバランス
◆それまでのストレスを発散するのにピッタリな内容のラスボス戦

--- Bad Point ---
◆カービィシリーズらしからぬシビアさ(ゲームオーバーになったら最初のホールからやり直しなど、シビア)
◆初心者への救済処置としても攻略アドバイスとしてもいま一つな『DEMO PLAY』
◆コアユーザーにはやり応え満点だが、初心者にはしんど過ぎるメダル集め
◆シンプルではあるものの、癖が強くて慣れるまで時間がかかる操作感覚
◆蛇足な裏面(表でさえ辛いのに、これは余計…)
◆寂し過ぎるエンディング(あんなのでは、これまでの苦労が報われない)
▼Review ≪Last Update : 9/8/2007≫
それでもカービィは回っているんじゃ…。

By:ガリレオ・ガリレイ(偽物)


ゲームボーイで発売された『カービィのピンボール』に次ぐ、カービィのボールアクションシリーズ第二弾。元々、オリジナルタイトルとして作られていたボールアクションゲームのキャラをカービィに置き換えて製品化したゲームでもある。

ゴルフのようでアクションなあまりにアンバランスなゲームシステムとやり応え満点のゲームバランスで送る、カービィシリーズ屈指の意欲作だ。

ゲーム内容は実に奇抜。無理矢理言ってしまえば、ゴルフの要素をミックスしたアクションゲームで、プレイヤーはボールであるカービィを操作し、各コースごとに用意されたホールを順に攻略していく…というものだ。
しかし、ゲームとしての手応えはアクションゲームというよりもむしろゴルフゲームそのもので、舞台となるホールのクリア条件がカップにボールことカービィを入れる事だったり、打数の概念があったりと、明らかにゴルフとしか言い様がない要素がごまんと満ちている。だが、それでも本作は一つのれっきとしたアクションゲームなのである。
そう言い締める理由は、本作独自のゲームシステム(ルール)にある。例えば、カップ。先程、ホールのクリア条件はボールことカービィをカップに入れる事と述べたが、何と本作では、各ホールにカップなど1つも用意されていない。じゃ、どうやってカービィをカップに入れるのかというと、ホール上に徘徊する敵キャラクター達を残り1体になるまでカービィ自身をぶつけて倒すのである。そうする事で、最後に残された敵キャラの1体がカップに変身、ボールを入れられるようになるのだ。まとめると、まずホール内にいる敵キャラを最後の一体になるまでボールをぶつけて倒し、残った一体が変身したカップにボールを入れればホールクリアとなる…という訳だ。
これを聞いただけでも、本作が単なるゴルフゲームでないかはお分かりになるかと思うが、…実はこれだけではない。プレイヤーが操作する事になるボールことカービィには『バイタリティ』なる体力メーターがあり、基本的にショットを一打放つ事で、これが1つずつ減少していく仕組みになっているのである。バイタリティの最大値は4(但し、対戦モード(後述)では6)で、バイタリティは敵を1体倒す事で1つ回復する事ができる。つまり、1打目で敵を1体倒せばバイタリティを保つ事ができ、仮に倒し損ねると敵を2体以上倒さない限り、バイタリティを規定値に戻す事はできなくなる。そして、このバイタリティが0になってしまうとプレイヤーアウト…何と、ミスになってしまうのである。これはOBを犯してしまった際も同じ。本作ではOB=死で、もしOBになってしまったらその時点で一発アウトなのだ。
つまり、やみくもにショットを打って敵を倒して行けば良い…ゴルフのように、例え何打であろうともカップインすればそれで良い、生ぬるいものじゃないという事。バイタリティを無駄に減らしてアウトにならないよう、各打数毎に弾道をきちんと把握した後、正確にショットを決めて敵を倒していかなければならない、極めてシビアなルールが採用されているのだ。
以上が本作がゴルフゲームではないと言い締める、最大の理由である。
このように本作は、敵を倒す・瞬時の判断が要されるアクション要素、そしてこれから想定される行動パターンを考慮する、まるで戦略シミュレーションゲームにも似た緻密な戦略性が秘められた、全く新しい手応えに満ちたゲームとなっているのである。まさにこれこそ正真正銘、奇妙なゲーム。手応えはゴルフなのに、実際はアクション。どっちが本当の姿だ!?…と言いたくなるほど、アンバランスな内容となっているのだ。

ゴルフなのかアクションなのかを混乱させる要素は、実は他にもある。例えばショットなのだが、『がんばれアクション』なるものがある。これはショット時にAボタンをタイミング良く押す事でカービィをバウンドさせ、僅かに飛距離を稼ぐというもので、本作の重要テクニックの一つなのだが…こんなの、ゴルフゲームにあるような機能では無い。更にショット自身も、こちら側が任意でトップスピンやバックスピンをかけられたりする事ができる。高度なテクニックを要す事も無く、サラッと技が出せてしまうのもまた、あまりにアクション的だ。
更に追い討ちをかける形で、カービィシリーズお馴染みのコピー能力の存在。敵を倒すのは勿論の事、障害物も壊せるなど、もはやゴルフの範疇に入ってない。まさにこれぞ、ゲームと言う仮想世界が成せる業とも言うべきか。ベースはゴルフなのだろうが、ここまでそうと思わせない工夫が嫌というほど凝らされているのには、ある種の職人技を感じる。新しい遊び…とはこういう事を言うんじゃないだろうか。とにかく、これにはただアンバランス…としか言葉が出てこない。
反面、収録されてるゲームモード等はしっかりとしたバランスが図られている。遅くなったが本作には2つのゲームモードがあり、『一人プレイモード』と『二人プレイモード』が収録されている。メインとなるのは『一人プレイモード』で、全部で8コース64ホールを順に攻略していく。ここまで解説して来たものは全てこのモードを前提としている。ボリューム共に申し分が無く、各コースごとで定の打数を達成する事で金・銀・銅のメダルをもらう事ができ、それに応じてオープンとなるおまけがあるなど、やり込みもバッチリ。各コースのどのホールでゲームオーバーになってしまっても、最初からやり直しとなるシビアな要素がタマにキズでカービィらしさに欠けるが、きちんと遊べる内容に仕上がっている。
もう片方の『二人プレイモード』はシリーズ初となる対戦プレイが楽しめるモード。こちらではバイタリティが0になると一回休みとなる、バイタリティの最大値が6であるなどと一人プレイとルールが大幅に異なっており、一人プレイではできなかったハチャメチャな操作によるプレイを満喫する事が可能。非常に大らかな内容となっている。だが残念ながらこの対戦、一人プレイモードとは違ってお世辞にも良いとは言えず、特に一回のプレイで8ホールを連続でこなさねばならないというのはテンポが悪い。せめて、1ホールだけでも楽しめるモードとかがあればもっと気軽に楽しめたのだが…。
他にも『DEMO PLAY』なるゲームプレイのヒントと解説を行ってくれるモードが実装されているなど、サポート面に関してもバッチリ。システム面はかなりアンバランスだが、周りの要素群はこのように堅く守られており、抜群の遊び易さと面白さを提供してくれている。この遊びの深さを追求した作りは、カービィならではと言った所だろうか。

また、システム面やモード以外にも本作では面白いチャレンジが行われており、特に一人プレイモードにおけるファイル作成の手順で、手書きでオリジナルのサインを記述してファイル名を決めるというのは実にユニークだ。何気に手書きの操作性も見事で、こだわればそれなりに凝ったサインもかけてしまうほど。既にお絵かきソフトとして『マリオペイント』が出てた事もあり、僅かにインパクトは薄いが、この試み自体は凄く面白い。
そうシステム面や付加要素が頑張る反面でグラフィック、音楽は意外にも普通。高低差を鮮明に描いたマップやほんわかとしたコースの曲など、それなりに頑張ってはいるのだが、どうにも他のカービィシリーズと比較するとインパクトにかける。斬新且つアンバランスなゲームシステムに食われでもしてしまったのだろうか。 正直な所、ファンにとってはここの部分は物足りなさを感じてしまうかもしれない。
操作性、ゲームバランスも及第点の域とは言え、少し慣れが必要だったり、シビアであったりとカービィらしくないところがあるのが惜しい。特に操作性は、ゴルフゲームとは一味も二味も違う上、できる事があまりに多い為に複雑な印象が濃く出てしまってるのが残念な所だ。この辺はシステムの都合上、止むを得ないものがあったのかもしれないが…。
ゲームバランスもゲームバランスで、上記の一人プレイモードの記述で語った事だが、ゲームオーバーになったら1ホール目からやり直しとなる仕組みも、できればミスしたホールからやり直せるものにして欲しかった。ゲーム初心者でも安心して楽しめる…がモットーでもある、カービィの理念を考えると、これはあまりに筋違いだし、何よりも優しくない。とりあえず、辛うじて理に適ったバランスを実現してるのが幸いではあるが…。

他にも少し語ったが二人モードのいま一つさなど、チラホラと欠点もある本作だが、ゴルフのようでゴルフでない斬新なゲームシステムとシビアだが実は結構精微なバランスなど、その出来自体は十分に名作に値するレベルにある。
正直、かなり遊び手を選ぶ一本だ。操作性はもとより、とにかくルール周りが独特なので、あまりの異質さに人によっては拒否反応すら覚えてしまうかもしれない。だが、この斬新なゲームシステムと手応えはスーパーファミコンを持ってる人間やカービィファンのみならず、是非とも多くの方が体験してみるべき価値がある。
新しいゲームを求めている人、そして手応えを求めている人にはこの上ないほどお薦めの新感覚でアンバランスなボールアクションゲームの名作だ。是非とも本作の異質な手応えに酔いしれてみて欲しい。勿論、カービィファンもお薦め。凄く手強いゲームではあるが、まさに意欲作というに相応しい手応えをその手で味わってみて欲しい。
…くれぐれも、コントローラをぶん投げる衝動に駆られない程度に…。
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