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≫ホーリーアンブレラ ドンデラの無謀!!
■発売元 ナグザット
■開発元 アースリーソフト、モト企画
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10290円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 4つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 紛失している為、不明
■推定クリア時間 5〜6時間(エンディング目的)、12〜17時間(完全攻略目的)
小学生のケンイチは一人で下校する途中、突然の雷雨に見舞われる。
大急ぎで家を目指すケンイチだったが、雨の量は徐々に増す一方。
やがてケンイチは電柱の近くに落ちている1本の傘を発見。
わらにもすがる思いでケンイチはそれを拾い、突然の雨をしのごうとした。

だが傘を広げようとしたその時!傘から不思議な光が発せられる。
そしてケンイチが気が付くと、目の前には見た事の無い世界が広がっていた…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆アクションはアクション、RPGはRPGの潔い棲み分けが成されたメインシステム
◆安易な発想を全く感じさせない職人的な作り込みが見事な主人公の『傘アクション』
◆氷のブロックを作り出したり、攻撃弾を作り出したりといった個性豊かな特殊能力を兼ね備えた、数種類の傘(それらを使い分けて戦う、戦略性の高さも見事)
◆個々の特技を活かして進む、戦略的な面白さが秀逸なキャラクターチェンジシステム
◆傘アクションのみならず、成長する度にどんどん強くなる快感に秀でた主人公ケンイチ
◆短過ぎず、長過ぎずの丁度良いバランスで構築されたアクションステージ
◆「本当にそこに人が住んでる」かのような高い生活感が素晴らしい、街ステージのマップ(特定のオブジェクトを調べるとアイテムが手に入ると言った、RPGのお約束ネタもバッチリ)
◆能力強化アイテムの回収など、地味ながらもちゃんと盛り込まれたやり込み要素
◆真剣に一騎打ちをする面白さとRPG的な戦略性に優れた、火傷必至の熱過ぎるボス戦
◆純粋にキャラを動かす面白さにこだわった、優れた操作性
◆ごり押しもOK、真剣プレイもOKの幅広さと丁度良い難しさが絶妙過ぎるゲームバランス
◆ガイド看板にステージの常時脱出機能など、痒い所にまで手の届いたサポート機能
◆抑えた色使いと丁寧なドット絵が見事なグラフィック
◆各種場面に上手くマッチした、軽快な音楽(ボス戦の曲がお見事!)
◆ギャグはスベってるが、二転三転する展開が見事な作り込まれたシナリオ

--- Bad Point ---
◆蛇足な感が否めない『毒』などの状態異常要素(薬と使わないと治せない仕様も×)
◆あまりに強くなり過ぎる主人公ケンイチ(終盤になると他の仲間の存在感が薄くなる)
◆デフォルトでないダッシュのアクション(途中から加わる仕様はちょっと…)
◆文字通りの見掛け倒しなラスボス(完全な雑魚。しかも戦闘も面白くないなどと散々)
◆賛否両論なスベったギャグセンス(人によっては嫌気すら感じかねない)
◆やや地味な演出(敵を倒したエフェクトとか、もう少し凝っても良かった)
▼Review ≪Last Update : 11/22/2008≫
聖なるアンブレラを駆使して、悪の野望を打ち砕け!

何故、傘だけ英語なの…?


『どらぼっちゃん超魔界大戦!』などの傑作をリリースしてきたソフトメーカー・ナグザットが送る、完全新作のRPG要素を盛り込んだアクションゲーム。企画・開発はアースリーソフト&モト企画、キャラクターデザインを『まじかる☆タルるートくん』、『東京大学物語』などで有名な漫画家・江川達也氏が担当。

安易な発想に反した職人的な作り込みが見事な、スーファミの隠れた名作だ!

ゲーム内容はRPGのスタイルを取り入れた、シナリオクリア型アクションゲーム。主人公のケンイチ(ゲーム開始時に名前の変更は可能)とその仲間達を操り、舞台となる世界『マージェンス』に点在する様々なステージ、イベントを攻略していくというものである。RPGスタイルの通り、本編は基本、フラグ立て(イベントの進行)によって展開。『街ステージ』⇒『アクションステージ』の交互をプレイしながら進めていく、大変独自色溢れる仕組みとなっている。
また『アクションステージ』は正統派の横スクロールアクションゲームスタイル、『街ステージ』は見下ろし視点のRPGスタイルと、各ステージは共に容姿が異なっていて、明確な個性付けが成されているのも大きな特徴。しかも、アクションステージはアクション一本勝負、街ステージはイベント一本勝負と、個々の持ち味を活かした棲み分けも行われている。なので、アクションステージで謎解きが出てきたり、街ステージでアクションテクニックが要求されたりする事は皆無。RPGとアクションが混ざった内容と聞いて、煩わしいものと危惧した方もいるだろうと思うが、ご心配無用。各ジャンルの面白いところを十二分に活かした、絶妙なゲームデザインが成されているのである。だから、プレイ中に「アクションはアクション、RPGはRPGで遊ばせて欲しい」と違和感を覚える事も無し。驚くほど自然に楽しめる作りとなっている。
更に秀逸なのが、どのパートも丁寧に作り込まれていること。アクションステージはアクションステージで、純粋に動かす面白さと難所を突破する爽快感を全面に出した構成を徹底。RPGの街ステージでは、街の中にある様々なオブジェクト(物)を調べ尽くす、探索の面白さを重視した構成を徹底と、各自の魅力を惜しみ無く抽出した、職人的な作り込みが成されている。特に『街ステージ』のマップの完成度の高さはかなりのもので、正直言って世間一般のRPGよりも良く出来てると言ってもおかしくないほど。具体的に言うと、民家の内部なのだが…これがまた、ビックリするほど『生活感』が滲み出ている。ちゃんとトイレやお風呂の部屋があったりなどと、「本当にそこで人が暮らしている」と思わせる雰囲気作りが、もの凄くしっかりしているのだ。だから、どの家にもいわゆる「ゲームっぽい」(作りもの)と言った冷たさが無い。むしろ、そこには人がそこで実際に住んでる「暖かさ」がある。これでもまだ、あまりピンと来ないかもしれないが、実際に遊んでみればきっと、その凄さが分かるだろう。正直、このマップを見る目的で今作を遊んでも、決して損はしないと言っても良い。更に『生活感』のみならず、タンスを調べるとお金が出てきたり、ツボを調べると貴重品が出てくると言ったRPGの『お約束』が活きてるのも秀逸。その調べ甲斐のある作りには、思わず熱が入ってしまうだろう。勿論、アクションもアクションで短過ぎず長過ぎずの丁度良さなど魅力全開だ。
二つの異なるジャンルが同時に介在するゲーム内容(システム)と、それだけでも危ない匂いがするが、これまでの通りに実際の中身は驚くほど自然な作り。まさに『RPGとアクションの共演』とも言うべき、非常に楽しくてやり甲斐のあるゲームに仕上げられている。 それでいて、二つが絡み合わないゲームデザインも斬新。アクションRPGとは別のスタイルを貫いたそのスタンスには、きっと遊ぶ誰もが新たな手応えを感じるだろう。

そして今作の肝、主人公ケンイチの特技『傘アクション』も最高の面白さ。『アンブレラ』の名の通り、今作においてプレイヤーは日常生活でお馴染みの『傘』を使い、迫り来る敵を倒し、難所を突破していくのが主となる。
はっきり言って、『傘を使って敵を倒す』というこの発想自体、幼稚過ぎるのは否めない。小学生の発想丸出しで、思わずドン引きしたくなってしまうのも止むを得ないだろう。
だがこれがまた超意外!
この傘を使ったアクション、メチャクチャ面白いのである!
「そんなアホな!?」と思うかもしれないが、マジで!
と言うのも、できる事がどれも大変面白い。メインの振り回す以外にも、ジャンプ中に傘を開いて滑空すると言った多彩なアクションができるようになっていて、傘だからこそ実現した「動かす面白さ」が全面的に推し出されているのだ。
特に秀逸なのが、傘には複数の種類が用意されている事。主となる普通の傘の他、倒した敵を氷の塊にしてしまう『氷の傘』、倒した敵を攻撃球にし、それによる遠距離攻撃ができるようになる『雷の傘』と言ったユニークなものが多数、用意されているのである。しかも状況に応じてこれらの傘を使い分けるRPG風味の戦略的要素も搭載。単に傘を振りまくれば良いのではない。時に上手く切り替えながら、敵を対処していく「考える面白さ」までも備えられているのだ。RPGを絡めたゲームだけにあるこの要素はまさに「絶妙」の一言。知略を尽くして戦う、心地良い爽快感を味わうことができる。そして極め付けは、いずれの傘も使い勝手が良くてダメなものが一つも無いこと。特定のギミックに対処するのを除いて、どの場面でどの傘を使おうともきちんと突破できるよう、大変理に適った調整が徹底されているのである。その気になれば、最弱の傘である普通の傘での突破ですら可能!
ここまで来ると…この傘アクションが如何に凄いものなのかはお分かりになっただろう。とにかく発想は幼稚だが、肝心の作りはプロ級。職人技が炸裂した仕上がりになっているのだ。安易な発想から、適当な作りを想像する方も決して少なくはないと思う。だが、実際に触ればそのような発想を持って挑んだ事に、一種の罪悪感すら覚えてしまうだろう。
本当、こんなにも幼稚な発想をプロの技で面白いものに仕上げたスタッフには驚かされる。
更に付加要素として『キャラクターチェンジシステム』なるものもあるのだが、これもすこぶる出来が良い。二段ジャンプを特技とする不思議な生物『ポント』、壁蹴りとスライディングを特技とするヒロイン『サキ』を地形の状況に応じて切り替えるその面白さは、如何にも今作がRPG要素を絡めたアクションゲームだけにある楽しさに満ち溢れている。アクションゲームのテンポを損なわない為、チェンジはLかRボタンを押すと一瞬で変更できるという「間の無さ」が徹底されているのにも、かなりのこだわりを感じさせられるほどだ。その他にもRPGらしい『(体力、攻撃力、防御力の)成長要素』、主人公のケンイチ特有の追加アクションと言った要素も見事に華を咲かせている。
とにかく…繰り返しになるが、発想は安易ながらも作り込みが凄い!正真正銘の『プロの技』とはどういうものか、それを思い知らされるほど素晴らしい仕上がりとなっているのである。先ほどの二つが絡み合わないゲームデザインも凄いが、こっちも凄い!何処も彼処も今作、魅力だらけなのだ。

そしてもう一つ、今作で非常に素晴らしいのがボス戦だ。これがまた、アクションゲームのテンポの良さとRPGの戦略性が絶妙に絡み合った作りになっていて、火傷するほどに熱い!ボスも個性豊かな面子揃いで、その多彩な攻撃パターンと躍動感溢れる動きには思わず魅了されてしまうこと、間違いなし。手に汗握る、本当の真剣勝負を堪能できる。
また操作性、ゲームバランスも完璧。特にバランスは街で購入できる薬の回復アイテムを溜め込んでごり押しOK、買わずに真剣勝負OKとプレイスタイルの幅の広さを演出していて素晴らしい。クリア後のやりこみ要素もアイテム回収など、スケールは小さいがちゃんと用意されていて、それなりのフォローが行われているのもお見事の一言に尽きる。
グラフィック、音楽も及第点の出来。特に音楽は先のボス戦の曲が最高に熱く、雰囲気にマッチした作りになってるのが凄い。他にも塔ステージや水上列車などの曲も良い感じなので要チェックだ。
シナリオもよく出来ていて、二転三転する展開があって飽きない。ただ、ギャグが全体的にスベり気味、まるでふかわりょうのネタが終始展開されるような感じになってしまってるのは好みが分かれるところだ。でも、それを抜きにしても出来は良好。中でも中盤にある回想シーンの表現方法はあまりに斬新なので、是非ともチェックしてみて欲しいところだ。

ゲームオーバーが無かったり、どのステージも自由に抜け出せることができて止め時が付け易い、そしてアクション初心者を考慮した序盤のゆっくりとした展開のも大きな売り。
ダッシュのアクションが追加アクション扱い(途中から加わる仕様)だったり、その追加アクションが強力過ぎて、ゲーム終盤になると他の仲間たちの存在意義が薄くなる調整が凝らされてしまっている、そしてラスボス戦があまりに味気ない作りであるのが残念なところだが、全体的な作りの素晴らしさと熱さには一切のブレは無し。
発想は安易であるのは否定の余地無し。だが、その安易さを「あれ?」と忘れてしまうほどのプロの職人技が随所にて炸裂している、この『ホーリーアンブレラ ドンデラの無謀!!』。
スーパーファミコンのアクションゲームの中では、三本の指に入る名作と言っても過言ではない一本だ。これは文句無しにオススメ!ライトユーザーにコアユーザーの方共々、未プレイの方は是非、機会があったら遊んでみて頂きたい。
安易な発想が貴方に衝撃と感動をもたらします!
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