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≫がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻
■発売元 コナミ(現:コナミデジタルエンタテインメント)
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 スーパーファミコン版:8800円(税別)
バーチャルコンソール版:823円(税込)
■公式サイト ≫VC版(Wii) / ≫VC版(WiiU)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー形式)
■総説明書ページ数 VC版所持の為、不明
■推定クリア時間 7〜10時間
いつも平和な江戸外れのはぐれ町、ここにはゴエモン達の住み家がある。いつの間にやら近所に住み着いた自称『忍者』のエビス丸も、今ではすっかりはぐれ町の住人である。
このところ、北のはずれの『ほろほろ寺』に美人の幽霊が出るとの噂があった。その幽霊が人を襲ったとの話をエビス丸から聞いたゴエモンは、彼と一緒に『ほろほろ寺』へと出向く。

こうしてまた、三度目の旅が始まろうとはこの時、二人は考えてもいなかった。
根っからの江戸っ子気質も手伝い、次第に二人は大江戸城のゆき姫失踪事件に巻き込まれることに。果たして、ゆき姫は何処に?!そして、行く手を阻む謎のお面軍団の正体とは?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆旧作準拠のオールレンジ型スクロールの『町エリア』、新要素『拠点エリア』こと正統派横スクロールの二種類のアクションを盛り込んだ、贅沢でサービス精神旺盛なゲームデザイン
◆二種類のアクションが展開されるが故の起伏の激しさと密度の濃さで魅せまくるレベルデザイン
◆ボスを倒すか、或いは指定された目的地に到達するかのシンプルな目的になり、より純粋にアクションだけを楽しめるように改められたステージのクリア条件
◆回転する足場と立体的なトラップなど、より仰々しくなったステージギミック(主に拠点エリア)
◆スーパーファミコンのハード性能を(良い意味で)悪用した作り込みが光るボス戦
◆遠距離から攻撃できる利便性と所持金を消費するという制約のバランスの良さが光る第二の武器『サブウェポン』(これの追加で戦闘周りの戦術性も大幅にアップ)
◆新たに『おんぶ』なる分担プレイも可能になり、より遊びの幅が広がった二人同時プレイ
◆『グラディウス』のダイジェスト版まで収録するなど、異様な作り込みが炸裂したミニゲーム
◆過度に長過ぎず、短過ぎずの丁度良い量に収まった総計ボリューム
◆当たり判定周りに問題があるが、全体的にはレスポンス良好な操作性
◆より一層、和の雰囲気が強化され、世界観の魅力がグッと高まったグラフィック(特に背景周り)
◆和の雰囲気に満ちたグラフィックを大いに引き立てる、名曲揃いの音楽
◆行方不明の姫を探す珍道中と思わせて、終盤にどんでん返しを見せるストーリー
◆過剰なまでの拡大縮小描写に地味に凝った作りのデモシーンなど、気合の入った演出周り

--- Bad Point ---
◆やたら狭く、理不尽さすら感じる近接系武器の当たり判定(相当近くで攻撃しないと当たらない)
◆ステージ進行に必須なアイテムを購入する為の金を集めるという、作業プレイを要するステージの存在(特に後半において、このようなステージが登場する)
◆もはやサポートアイテム無しでは攻略困難とも言える高難易度化を遂げる後半ステージ
◆長過ぎるパスワード(メモ必須)
◆クリア条件緩和に伴い、やや薄くなってしまったフィールドマップの探索要素
◆パワーアップの一つなのに、前段階のよりも攻撃速度が落ちて隙が大きくなるという、あり得ない劣化を遂げてしまうゴエモンの武器『ヨーヨー』
◆使用機会に恵まれないのに加え、取得条件もシビアな『術』
▼Review ≪Last Update : 5/31/2015≫
あれ?そのエビス丸って確か…

細かい事は考えるな。


ファミコンでシリーズ二作が発売され、圧倒的なボリュームと歯応えのある難易度、二人同時プレイで好評を博した『がんばれゴエモン』シリーズのスーパーファミコン初進出作。シリーズとしてはファミコンの『がんばれゴエモン2』から連なる第三作目となる。

やや粗削りな所もあるが、和風アクションゲームとしての礎を確かなものにした秀作だ。

ゲーム内容は見下ろしと横スクロール二つの視点で展開する、ステージクリア型アクションゲーム。ゴエモンとエビス丸(2P側専用)を操作し、失踪したゆき姫の消息を掴むべく、日本各地の様々なステージを攻略していくというものだ。
基本的なゲームシステムは、初代ゴエモンこと『がんばれゴエモン からくり道中』とその続編『がんばれゴエモン2』を踏襲。一度クリアしたステージは再プレイできない、アーケードスタイルの一本道構成、見た目こそ横スクロールながら、360度自由に動き回れる特徴的なオールレンジ型フィールドデザイン、二人同時プレイと言った要素は今作にも継承されている。ただ、細かな面において改良と変更が施され、基本こそ初代ベースながら、中身はほとんど別物。
まず第一にステージ構成。従来のオールレンジステージにして、敵との戦闘以外に情報収集、体力回復、アイテムの購入などが行える『町エリア』に加え、2D横スクロールで展開する『拠点エリア』がステージの後半部分として追加され、二つのスクロールスタイルの異なるアクションゲームを楽しめる、贅沢な構成へと改めた。これにより、1ステージ単位の密度が大幅にアップ。更にアクションゲームの王道とも言えるステージが追加された事で、ステージ上のギミックも豊富になり、フリースクロールでは到底味わえない、起伏に富んだステージの攻略を楽しめるようになり、やり応えも相応に強化されている。第二のエリア追加で、ステージ1つに要する攻略時間も増してテンポが悪くなったんじゃ…と懸念する所もあるが、そこに関してもバッチリ。それぞれのパートで必要以上に時間を持っていかれないよう、気を遣ったレベルデザインが図られている。一部、街エリアが長めで構成されたステージもあったりするのだが、そこもミニゲームを始めとするイベントを挟むなどして工夫しており、これと言ってそれほどダレる事も、飽きる事も無く楽しめるようになっている。
また、各ステージのクリア条件も『拠点エリア』の最後で待ち構えるボスを倒す、目的地に到達するという単純明快なものへと改められ、『通行手形』を三枚揃えるという初代準拠の条件は今作にて撤廃。既に『がんばれゴエモン2』の時点で、ボスを倒すのを目的としたステージが存在したが、今作は全てがそのような構成になった感じである。これもまたテンポの向上に一役買っている。何よりも、アイテムを集める為にマップを動き回るという冗長化を招く要因が取っ払われ、気軽にアクション本編のみに集中して楽しめるようになったのは大きな進歩と言えるだろう。逆にその手直しの反動で、マップを細部まで調べ尽す探索要素が薄れてしまっていたりするが、ちゃんと各ステージに隠し部屋が設けられているなど、抑えるべき所はしっかりと抑えている。それでも全体的には似ているようで違う、新しいものになってしまっているが、ステージの密度の濃さ、より多彩になったギミック、クリア条件の緩和によって飛躍的に向上したテンポ周りなど、その仕上がりは新しい『がんばれゴエモン』を名乗るに相応しいインパクトを備えた仕上がり。より遊び易く、遊び応えのある方向性を突き詰めた、ユニークなアレンジになっている。
無論、アレンジされたのはステージ構成だけに留まらず。ゴエモン、エビス丸のアクション、アイテムと言った部分においても旧作からの変更とアレンジが施されている。その第二の象徴的な変更点とも言えるアクションでは、新たに『サブウェポン』を追加。旧作では武器は近接系の一種類だけだったが、今回から遠距離系の第二の武器が追加された。これにより、遠く離れた位置にある厄介な敵を安全な所から遠距離武器で攻撃するなど、より幅広い戦術が取れるようになった。特にボス戦においてはその真価が発揮されており、使うか使わないかで難易度が一変するほど、存在感のある武器として活躍するほどだ。但し、その万能さ故、サブウェポンは使用する度に所持金を消費するという制約が設けられており、下手に使い続けると、無一文の状態になってしまう。そうしたが為、『よろずや』でアイテムが買えない、『宿屋』と言った施設が使えないと言った他、最悪の場合だと、ステージを進めるのに必要なアイテムが金欠故に購入できず、立ち往生の憂き目に遭ってしまったりも。中でも重要なアイテムが購入できないケースになると、町エリアの敵達を倒して金稼ぎに徹したり、ミニゲームをひたすら遊んで好スコアを獲得し続けなければならないという、地獄の苦行に徹さざるを得なくなってしまう。まさに上手い話には裏があると言わんばかりの(良い意味で)嫌らしい仕様。プレイヤーの判断力が問われてくる、非常に戦略的な様相の強いウェポンとなっている。
ちなみに二人に共通したサブウェポンで『かんしゃく玉』なるものもあり、これは『よろずや』にて購入可能。そこそこ強力だが、店で買えるサブウェポンという事で回数制限があるので、使いどころが求められるものになっている。また、『がんばれゴエモン2』にて初実装された二人同時プレイにも改良が施され、拠点エリアの横スクロールステージにおいて、片側がしゃがみ、もう片方がジャンプしてその上に乗ると『おんぶ』状態になり、持ち手が移動、背負われた方が攻撃と言った分担プレイができるようになった。更に拠点エリアのスタート直前には、ここから先一人で進むか、二人で進むかの選択もでき、途中で二人同時プレイを打ち切る事もできるようになっている。とは言え、そこで一人を選択すると以降、参加不能になるという制限はかけられず、その後も好きなタイミングでステージ攻略に参加可能。そんないつでも、好きなタイミングで気楽に参加できてしまうという自由度に関しても、旧作にも増してパワーアップしている。
そして、アイテム絡みでも刷新されたものがあり、旧作で歩行速度を速めるのに必要だった『わらじ』は、町エリアの『よろずや』でしか手に入らないアイテムに。これにより、自由なタイミングでの強化が図れるようになった反面、有料方式になったので、小判を集めて資金に余裕を持たせる事の重要性が増している。また、『これぞうくん』も仕様が一新され、拠点エリアにおける中間ポイントとしてその役割を大きく改めている。基本的に登場するアイテムのラインナップは旧作からほとんど変わらないが、前述の二つのように特徴を改めたものもあるので、変に以前の知識のままで行くと痛い目を見たりする事も。そんな経験者を罠にハメつつ、新鮮な驚きを提供する試みに関しても、ひっそりとではあるが施されている。
他に象徴的な変更点としては演出とストーリー性の強化があり、ステージをクリアする度に幕間のデモシーンが流れたり、随所にキャラクター同士の掛け合いが繰り広げられるイベントが仕込まれるなど、ファミコンからスーパーファミコンへの進化を実感させられる仕上がりになっている。イベント周りだけでなく、主に拠点エリアのアクション周りにおいても、半透明、拡大縮小、回転と言ったスーパーファミコンのハード性能を活かした演出がふんだんに盛り込まれており、見た目の派手さが増しているのも見所だ。
その基本的な作りこそ、旧二作に準じてはいるが、ステージが二部構成になったり、アイテムの一部が刷新、アクション周りにおいても『サブウェポン』追加で戦術面が変わるなど、似ているようで全く違うの一言を体現するかのような作り。過去のシリーズ経験者を良い意味で裏切り、シリーズ初心者に新鮮な驚きを提供する。まさに新シリーズの始まり、リブート版と称しても違和感が無い、挑戦的で新しい刺激に満ちた新生『がんばれゴエモン』となっている。

そんな今作の魅力は、より遊び易く、それでいて遊び応えとハチャメチャさが増した本編の構成(レベルデザイン)だ。具体的には、ステージ構成及びその道中に仕掛けられたギミック全般。いずれも旧二作以上に洗練されたものになり、バラエティ豊かな遊びを詰め込んだアクションゲームとして、より深みの増したものへと進化を遂げている。
特にステージに関しては、手形を集めるという従来の遊びを廃してステージのボスを倒す、目的地に到達するのシンプルな目的に改めた事で、より直感的にアクションゲームとしての手応えを楽しめるようになった。手形集めに作業的且つ、面倒臭いイメージを抱いていた旧作のプレイヤーにとって、これは嬉しい改善点と言えるだろう。ただ先の通り、探索要素が薄れてしまい、旧シリーズの個性が薄れてしまった所があるのも否定できない。一応、隠し通路と言ったネタも盛り込まれてはいるのだが、あの役人達等の敵の襲撃を避けながら、突破口を探していくスリリングなゲーム展開に魅了されたプレイヤーにしてみれば、物足りなさを感じてしまうかもしれない。だが、今作はその薄れた箇所をねじ伏せるが如く、レベルデザインと世界観でプレイヤーに押し迫る作り込みを徹底。事実上のゴリ押しとも言わんばかりの手法で、シリーズの新しい魅力を引き出している。
そのレベルデザインの完成度の高さに関しては、先述のステージ一つの構成からしても明らか。何せ、一つのステージに旧作準拠のフリースクロールと2D横スクロールの二つのアクションゲームが盛り込まれているので、密度が非常に濃い。しかも、それぞれのパートごとにしっかりとネタやイベントを仕込み、プレイヤーを飽きさせない作り込みも万全に成されているので、片方だけが空気と言った偏りも見受けられない。双方合わさってのアクションゲームという、こだわりが炸裂した仕上がりになっている。
しかし、総じてプレイヤーに最も強烈なインパクトを提供するのは、新要素の横スクロールステージこと『拠点エリア』であったりする。横スクロールだけあって、このエリアにおける地形やギミックは町エリア以上に大胆。どのステージのエリアもプレイヤーに対して高度且つ、驚きの体験を提供する作りになっている。特に見所はスーパーファミコンのハード性能を活かしきったシチュエーションの数々。回転する柱とそこに取り付けられた3Dの足場とトラップ、開放感のある大広間で豪快に動き回る鉄球など、スーパーファミコンという上位ハードへ移行したからこその見応え、手強さ共に抜群の仕掛けがこれでもかと言わんばかりに登場する。しかも、どのステージにおいても同じネタはほとんど使い回されていないという徹底した作り込みが成されており、一つ一つのステージが独立した個性を確立しているのも特筆に値する。単にハード性能を活かした印象的なシーンのみを作り出すだけで終わらせていないのには、製作者のプレイヤーを飽きさせないアクションゲームに対する熱意とこだわりを実感させられる所だ。
だが、それらの仕掛け以上にインパクト抜群なのがボス戦だ。これがまた、スーパーファミコンのハード性能お披露目会と言わんばかりのラインナップ。半透明の女幽霊、画面を覆い尽くすほどに拡大縮小を繰り返し、なまめかしい動きでプレイヤーを翻弄するおたふく仮面など、どれもこれも一度見たら目に焼き付いてしまうこと必至の面々がプレイヤーに襲い掛かってくる。特におたふく仮面のインパクトは驚異的の一言で、良い意味で拡大縮小機能を悪用したボスキャラクターとして完成されている。その無駄にダイナミックな姿には、見た誰もが抱腹絶倒の渦に巻き込まれるか、或いは一生忘れられないトラウマになるかのどちらかだ。登場するのはゲーム中盤辺りと、ワリと早い段階で出てくるので、是非とも、プレイした暁には頑張ってそこまで辿り着いて欲しい。正直、このボスキャラクターを拝むだけでも、今作を遊んだ価値はあったと確かな手応えを感じる事ができるだろう。
他に細かいところだが、ステージをクリアする度に流れるデモシーンにもプレイヤーを飽きさせない工夫が成されており、ステージごとに固有のデモを用意しつつ、突っ込み所満載の描写とテキストで笑わせてくれたりなど、プレイヤーにステージをクリアする事の意義というものを強く実感させられるものに完成されているのが見事。ステージの中身のみならず、細かいギミックにボス、そしてデモシーンに至るまで飽きの来ない工夫を凝らすその作り込みたるや、まさにおもてなしの心の表れ。最後の最後まで、新鮮さと刺激が薄れる事無く楽しめてこそアクションゲームは面白くなり、同時に記憶に残り易くもなるものだが、今作はその抑えて然るべき箇所を確実に抑えた一本と言っても過言では無い。プレイヤーへのサービス精神を示す事こそ、アクションゲームをより面白く、印象深いものにする。今作はまさにその肝を突き詰めた、教科書的な作品。それほどまでに作り込まれた仕上がりになっているのだ。
しかし、スーパーファミコン向けに初めて製作した作品故の不慣れな箇所も幾つか。特にゲームバランス周りは、ダイナミックなステージの構築に力を割き過ぎてしまったのか、全体的に粗削りになってしまっている。主にストレスフルなのは、攻撃の当たり判定全般で、やたらと範囲が狭く設定されてしまっている為、近接攻撃の場合、敵にギリギリ近付かなければ当てる事ができないというのは結構しんどい。一応、武器のパワーアップの中にリーチが伸びるものもあるのだが、それでも明らかに当たっていると思しき所で当たっていない判定が出されたりと、理不尽に感じてしまう所がある。操作のレスポンスに関しては概ね良好で、アクションゲームの動かす楽しさを厳守した仕上がりになっているというのに、反応を受ける側だけ調整不足が目立ってしまっているのは残念。過剰に広くしてもそれはそれで理不尽になりかねないので、もう少し…数ミリ程度は範囲を広げて欲しかったところである。また、後半における敵の苛烈さ、お金集めを要するステージが多数登場してくる点も難あり。特に後者はこれに時間を取られる所為で拠点エリアの攻略が差し迫ったものになると言った弊害が現れている。一応、ミニゲームで大量のお金を稼げるフォローはされているが、純粋にアクションだけを楽しみたプレイヤーにしてみれば、この構成は苦痛。街エリアの存在感を出す意図によるものとも言えるが、もう少し作業プレイを緩和させる為にもアイテムの値段を安くすると言った調整を施して頂きたかった。
他に各ステージで一度だけ使える『術』の使用条件が有料というのもあり、使い勝手が悪過ぎる上に使用機会に恵まれない、ゴエモンのフルパワー時の装備『ヨーヨー』が明らかな劣化武器であるなど、調整不足と思しき箇所は幾つか。折角、レベルデザイン周りの完成度が高いのに、こういう所で落としてしまっているのは無念としか言い様がない。
とは言え、全体的なまとまり具合は良好。新しい『がんばれゴエモン』を見事に確立させており、インパクト抜群の拠点エリアにボス戦等、飽きの来ないアクションゲームを目指した作り込みの数々は、自然と魅了されてしまうものがある。旧作のノリが薄くなってはいるが、やり応えのある難易度と秀逸なレベルデザイン等が放つ魅力はシリーズに新風を吹き込むほどの威力。好みによるが、旧作プレイヤーも「これは有り」と頷くほどの説得力があり、新生『がんばれゴエモン』と称すのも無理無しと言い切れる出来栄え。そういう意味でも、理想的な大幅進化系タイトルと言えるかもしれない。

ゲームを彩る要素の数々の出来栄えも総じて高い。先に当たり判定の問題点を挙げはしたが、操作性自体はそれほど悪くは無く、キー配置の自然さ、レスポンスの良さなど、アクションゲームの醍醐味とも言えるキャラクターを動かす楽しさはしっかりと抑えた仕上がりになっている。
ボリュームに関しても、多過ぎず短過ぎずの丁度良さ。旧『からくり道中』ほどのスケールは無いが、テンポの良さと歯応えのあるアクションで高い充実感が得られる内容にまとめられている。また、今作からパスワードコンティニューシステムが実装され、攻略途中からの再開も可能になった。しかし、全体的にパスワードとなる『日記の内容』というのがまた非常に長く、メモを取るのは必至となる。加えて、一字一字間違いなく入力していかなければならないので、誤って入力して一からやり直しになった際のショックは計り知れないものがある。プレイヤーによっては、『ドラゴンクエストII』が脳裏に過ぎるほど。もう少し、絵柄で表示したスタイルにするなり、分かり易い手法を取って頂きたかったところである。
グラフィックに関しては、スーパーファミコン初期の作品ながらも、細部まで丁寧に描き込まれた仕上がり。特に先も紹介した、スーパーファミコンのハード性能を効果的に活かしたビジュアルはインパクト抜群。デモシーンにおける、アニメのように描かれたゴエモンとエビス丸が見せるリアクションも素晴らしく、上位ハード移行の恩恵をしみじみと実感させられる。また、グラフィック全般の強化に伴い、世界観全体の和の雰囲気も大幅に強化。主に町エリアの雰囲気には、日本人なら誰もが思わず「ホッ」としてしまう安心感を抱いてしまうかもしれない。
そんな和の雰囲気を引き立てる音楽も名曲揃い。ステージ曲、ボス戦の曲共に文句の付け所が一切無いほどにクオリティが高い。特にステージ曲全般は圧巻の出来で、山城エリア、最終ステージ拠点エリアの二曲は要チェック。中でも後者はシチュエーション的に嫌でも盛り上がるほど熱過ぎるものになっているので、ステージと併せて記憶に深く刻み込まれてしまうこと請け合い。これも先に紹介したボス、おたふく仮面に匹敵する今作の見所だ。

ストーリー、演出周りにしても完成度が高い。ストーリーは基本的に、失踪したゆき姫の行方を探る珍道中と言った具合に進行していくのだが、終盤にて驚きのどんでん返しが用意されており、プレイヤーをグッと引き込ませる。それでいて、先に紹介した通りに拠点エリアでは強烈な演出と音楽が流れるので、自然とテンションもアゲアゲになる確信犯過ぎる仕上がりなっている。正直、そこまで到達するまでは苦難の道だったりするのだが、到達した時にはそれ相応の感動と熱さを堪能できるので、是非、プレイした暁には頑張ってプレイしてみて頂きたい。
他に本編には多数のミニゲームが用意されており、そのどれもが異様に作り込まれているのも必見。しかも、その中にはあのコナミの看板シューティングゲーム『グラディウス』まで収録!ステージ1しか遊べないダイジェスト版ではあるのだが、その再現度は極めて高く、当作を知るプレイヤーからしてみれば笑ってしまうこと間違いなし。何で江戸時代にグラディウスがあるんだよ!…という突っ込み所も含めて、要チェックも要チェックだ。
そんな具合に至れり尽くせりと言わんばかりの充実した内容になっている今作。ゲームバランス周りの粗、パスワードが長くて煩わしい等、厳しい欠点も散見されるが、サービス精神溢れるレベルデザインと圧巻の演出周り、和の雰囲気が滲み出たグラフィックと良質の音楽と、素晴らしい部部分も多く存在する。シリーズの新作らしい新しい試みもあり、続編としても順当なパワーアップを遂げた仕上がりになっているこの『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』。
まさにこれぞスーパーファミコン初期を代表する良作アクションゲームである。多少粗削りではあるが、ハード性能の恩恵を受けてより和風になったゴエモンがここにある。アクションゲーム好きからシリーズファンまで、要チェックの一本にして、後の『悪魔城ドラキュラ』や『魂斗羅スピリッツ』と言った名作の基点となった逸品。お薦めです。
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