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  4. がんばれゴエモン3 獅子重禄兵衛のからくり卍固め
≫がんばれゴエモン3 獅子重禄兵衛のからくり卍固め
■発売元 コナミ(現:コナミデジタルエンタテインメント)
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 スーパーファミコン版:9800円(税別)
バーチャルコンソール版:823円(税込)
■公式サイト ≫VC版(Wii) / ≫VC版(WiiU)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 VC版所持の為、不明
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、15〜18時間(完全攻略目的)
自称天才からくり発明家、伊賀の物知りじいさんが何とタイムマシンを開発した!じいさんはからくり忍者のサスケに屋敷の留守を任せ、さっそく大江戸はぐれ町のゴエモンの家で、タイムマシンの実験を始める。

手始めに未来のギャルの様子を見に行くと言ったじいさんはタイムマシンに搭乗した後、ゴエモンの前から姿を消してしまった。それからしばらくして、じいさんが残していったモニターには未来のギャルに狂喜乱舞しているじいさんの姿が映った。呆れるゴエモン達だったが、その時、一緒にモニターを見ていたおみっちゃんが叫んだ。何とモニターの中で、じいさんが何者かに囚われ、もがいている!更にそこに現れたのは、エビス丸そっくりの謎の人物!その者はシスター・ビスマルと名乗り、タイムマシンを作り出す技術力を持つじいさんを重禄兵衛なる者の元に連れていくと言い、そのままモニターからじいさんと共に消え失せてしまった。
だが、じいさんはモニターが切れる寸前、ゴエモン達に伊賀へ、サスケの元に向かえと言い残した。

かくして、未来でビスマルなる人物に誘拐されてしまったじいさん。ゴエモン達は捕らわれたじいさんを救出すべく、伊賀の屋敷へと向かうのだった。だが、未来に行ってしまったじいさんを助けるにはどうすればいいのか?そして、ビスマルなる人物とそのボスと思しき重禄兵衛とは何者なのか?数々な謎を残しつつ、ゴエモン達の新たな旅が始まった!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ゼルダの伝説風の作りへと変貌を遂げた、挑戦的且つ野心的な試みが光るゲームデザイン
◆ゲーム中にいつでも切り替えが可能になったほか、状況に応じた使い分けが求められるなど、前作のキャラクターセレクトシステムを更に発展・昇華させた『キャラクターチェンジシステム』
◆キャラクターチェンジシステム導入と使い分けが求められる構成の採用に伴い、より一層の個性の強化が図られたゴエモンを始めとする各仲間キャラクター達
◆前々作から復活を遂げ、性能面、使い勝手、個性共に劇的な改善が図られた術システム
◆疑似3Dの高速スクロールとド派手な演出で魅せる新要素『ウォーカーステージ』
◆前作から打って変わってスローテンポになり、さながら巨大な怪獣を操作しているかのような演出とその暴れっぷりが楽しめるようになった『激震ゴエモンインパクトステージ』
◆燃料漏れの撤廃、戦闘総数の増強、コマンド技の実装で更なる進化を遂げた巨大ボス戦
◆アクションアドベンチャーを名乗るが故の頭を使う展開が新鮮なダンジョンごとのボス戦
◆フィールドマップでのイベントにダンジョン攻略、更には巨大ボス戦等、至れり尽くせりでプレイヤーを飽きさせない工夫が徹底された珠玉のレベルデザイン
◆前作譲りの軽快なレスポンスと適切なボタン配置が光る、秀逸な操作性
◆ジャンルの変更に伴って大幅に増強且つ、密度も相当に濃くなった総計ボリューム
◆前作以上に優し過ぎず、難し過ぎずの絶妙な加減に調整されたゲームバランス
◆全面刷新され、更に見易く、鮮明になったグラフィック
◆過去の二作に負けず劣らず、シリーズの伝統もバッチリ踏襲した名曲揃いの音楽
◆少し勢いの落ちるところがあれど、アクションアドベンチャーなりの濃い作り込みが成されたストーリー
◆質感、重量感抜群の効果音(特に『スパークスター』から拝借された爆発系の音が秀逸)
◆過去の二作を経験したプレイヤーをニヤリとさせるファンサービスの数々

--- Bad Point ---
◆中盤以降から連発する息切れダンジョン(ボス戦しか存在しないなど、異様に浅い構成のダンジョンが連続する)
◆やたらシビアなやり込み要素『銀の招き猫』集め(一度、チャンスを逃したら以降、二度と手に入れる事ができなくなるなど、取りこぼしが絶対に許されないという厳しさ)
◆アクションとバランス周りこそ改善されたが、逆にこちらの攻撃バリエーションが増えて一方的な展開を作り易くなってしまった巨大ボス戦(百裂パンチが便利過ぎる)
◆性能と使用機会の差が極端過ぎる各キャラクターの術(特にゴエモンとサスケ)
◆陰鬱な気持ちにさせるダンジョン『からくりウォーカー工場』と『からくりタワー』の後半パートの音楽
◆スケール的に行き過ぎな感が否めないダンジョン『からくりタワー』(しかも、このダンジョン攻略中にゲームオーバーになれば、問答無用で最初からやり直しになる)
◆体力表記の分かり難さなど、前作からやや劣化した点が目立つ二人同時プレイ
▼Review ≪Last Update : 7/19/2015≫
喰らうがいい!これが必殺ッ…

続きは最終決戦で。


前々作の旧作準拠から一転し、横スクロール特化のステージクリア型アクションへと大変貌を遂げたゲームデザインとコミカルでカオスな世界観で話題を呼んだ『がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス』に連なる続編にして、スーパーファミコン向けゴエモンシリーズ第三作目。前作とは異なり、今回は1年弱のブランクを経て発売された。

前作に続いて、またもゲームシステム大刷新!
コナミ版『ゼルダの伝説』と言わんばかりの密度濃い目、野心的過ぎるシリーズ第三弾だ。

先述の通りだが、ゲーム内容は前作どころか、前々作とも180度異なる別物。横スクロールと見下ろし型(トップビュー)の二つの視点で展開するアクションアドベンチャーゲームで、ゴエモンを始めとする四人の仲間達を操作し、ダンジョンや街中で発生するイベントを攻略しながらストーリーを進めていくというものである。
平たく言えば、これまた先に挙げている通りだが『ゼルダの伝説』。前作のステージクリア型アクションゲームとはまるで異なる、RPG色濃い目の内容へと変貌を遂げている。更にジャンル変更に伴い、ゲームシステム全般も一新。当然ではあるが、ステージクリア型アクションゲームでは無くなったので、ワールドマップ、ステージ、そしてステージごとのゴールと言った要素は軒並み撤廃。代わりとして情報収集、アイテムの購入、イベントの攻略などが発生する見下ろし視点のフィールドマップ、探索、ボスとの戦闘と言ったストーリーの根幹に絡むイベント等が繰り広げられるダンジョンステージが登場し、これら二つを交互に行き来しながら本編を進めていく仕組みへと一新されている。また、RPG要素濃い目とは言ったが、経験値によるレベルアップ等の概念は無し。但し、特定のアイテムを獲得する事によってキャラクターの能力全般が強化される成長要素はあり、ゲームが進むにつれ、よりアクションの幅が広がっていくシステムとなっている。そのシステムを聞いて、ゼルダの伝説シリーズ経験者ならば「まんま過ぎじゃないか?」と思ったかもしれない。断言してしまおう、まんまである。ゼルダの伝説と例えたのは本当にその通りで、実際にゲームデザインのベースはゼルダそのものなのである。しかも、それだけに留まらず、本編には4つ集める事で体力ゲージの最大値が増えるという、明らかにゼルダから拝借しただろうと突っ込みたくなるアイテムまで登場。更にプレイヤーの体力(ライフ)の表示にしても、今作ではハートで描かれていたりと、あからさまに意識していると思しき箇所が幾つかある。なので、ゼルダシリーズ経験者ならばそれほど抵抗なく入って行けるのに加え、その露骨なまでの真似っぷりに苦笑いしてしまうこと必至。最初に述べたコナミ版、或いは和風のゼルダの伝説と言われるのも、これでは致し方が無いと大いに納得してしまうだろう。
しかしながら、全てがゼルダという訳ではあらず。これまた最初に述べた通り、今作は前々作『ゆき姫救出絵巻』のように視点が二種類あり、フィールドはゼルダライクの見下ろし視点なのに対し、ダンジョン内は横スクロール視点と、アドベンチャーとアクションのパートを明確に切り分けたレベルデザインが成されている。ある意味、『ゆき姫救出絵巻』への回帰で、前々作を楽しんだプレイヤーにはニヤリとしてしまう作りである。ただ、前々作と趣が異なり、探索要素濃い目な上、謎解きも幾つか登場したりと、純粋なアクションを追求した作りにはなっていない。加えて、一つ一つのボリュームも大きめ。如何にもアクションアドベンチャーを謳うだけにある、骨太な内容に仕上げられている。また、横スクロールでの謎解きという事で、手応えはゼルダというより、メトロイド。任天堂が誇る二大謎解き系タイトル二つを統合したハイブリッドな作りというだけでも、このダンジョンが一筋縄では行かない作りというのが容易に察せるだろう。
また、詳細なシステム周りも、前作にて初登場したキャラクターセレクトを実装。但し、その仕様は前作から大きく変わり、ゲーム中、セレクトボタンを押す事で一瞬で仲間を切り替えられるものへと一新された。これにより、今作ではゴエモン以外のエビス丸、サスケと言った仲間キャラクターで本編を自由に楽しめるように。加えて、各キャラクターの能力を活かして進んで行くシチュエーションも増えるなど、より一層彼らの存在意義が増した作りへと改められている。それに伴い、今作では前々作の術システムも復活。術自体もイベントの攻略で自動的に取得され、以降は自由に発動可能になるなど、大幅に改善されている。そして、それを使った謎解きも登場するなど、前々作の必然性の無さを一層強める作り込みも成されている。その変わりっぷりには、前々作の経験者なら「そういうのを見たかった…」と、感慨深いものを感じてしまうかもしれない。そして、キャラクター絡みではもう一つ、第四のキャラクターとして、これまでのシリーズに脇役として登場していた女忍者の『ヤエ』が参戦。刀を使った攻撃、水中を潜れる術など、前作、前々作には無かったアクションが楽しめる個性の強いキャラクターになっている。特に術の通り、今作では水中主体のステージが初登場しており、地上メインだった前作とは異なるアクションの妙味が炸裂しているのは地味な注目点。その水中に潜る際、彼女自身が人魚に変身するというのも、紳士的な方々から見れば色々思ってしまう…かも。そんなキャラクターを使い分ける要素が存在するのも、今作ならではの個性。システム的にも前作とは味付けが異なっているなど、大胆な刷新が行われているのも見所である。ゲーム自体が別物になったとは言え、前作や前々作のシステムは健在。ちゃんと続編だと言い切れる作り込みは、前作譲りと言ったところだ。他に前作からは巨大メカ『ゴエモン・インパクト』による強制スクロールステージと巨大ボス戦、チャージ性能が付与された『サブウェポン』、二人同時プレイ限定の『おんぶ』が継承。特に前者は巨大ボス戦こそ、前作と仕組みは一緒だが、燃料漏れの概念が無くなってゲームバランスが改善されたほか、戦闘も前作の倍以上になるなど、大幅なボリュームアップが図られている。更にコマンド技も追加され、より多彩な戦術を繰り出せるようになったのも大きな見所。順当な進化を遂げており、前作の戦闘に魅了されたプレイヤーならば、大満足間違いなしの作りになっている。また、強制スクロールステージもずっしりゆったりと進むスローテンポのステージへと大きく改められた。スローテンポという事で劣化したように見えてしまうが、実際はそうでもなく、前作以上にインパクト自身のグラフィックが大きくなり、まるで怪獣であるかのような存在感を醸し出した圧巻の仕上がりになっている。少し横スクロールシューティングの要素が強くなったのも特徴で、方向性は前作と真逆ながら、新しくもおかしな面白さを推し出した作りになっているので必見だ。
そして、『からくりウォーカー』なる乗り物とそのウォーカーにまたがって展開する高速3Dスクロールステージも新規に追加。ウォーカーはロックマンXにおけるライドアーマーのようなもので、搭乗する事でパンチ、火炎放射、凍結弾と言った攻撃ができるようになる。これらを利用し、道を切り開いていく謎解きも登場しており、これまでのシリーズに無い新しい遊び応えを演出している。また、高速スクロールステージは巨大ボス戦と同様、イベントとして登場。画面奥から迫ってくる敵の猛攻を回避し、一定距離逃げ切るというものになっている。更に操作対象はゴエモン、エビス丸、サスケ、ヤエの全キャラクターとなる。基本的にプレイヤーが行うのはジャンプ、ダッシュの二種類だけで、キャラクターごとの下に表示されたカーソルを動かし、敵の動きを見て操作対象を切り替え、回避に専念していく。シンプルなステージだが、異様なスピード感と巨大ボス戦ばりに拡大・縮小機能を活かした敵のド派手な攻撃は圧巻の一言。イベント自体はそんなにある訳ではないのだが、そのインパクトたるや、かなりのもので、プレイすれば、嫌でも記憶に刻み込まれるだろう。
それら以外に街中の人々と自由に会話できるようになるなど、刷新された箇所は多数あるのだが割愛。こんな具合に基本こそゼルダまんまだが、ゴエモンらしい味付け、続編としての継承箇所も盛り込まれた作りになっている。だが、その内容が前作同様、続編と言うには怪しいレベルなのは言うまでも無く。基本的なアクション部分こそ、前作から変わりは無いが、肝心のゲーム性からバランスは全てが別物だ。ある意味、その変貌ぶりは前作以上と言っても過言では無いクラス。それはここまでのシステム周りの詳細からも察せるだろう。まさに変わり過ぎたがんばれゴエモン。前作と同等か、それ以上とも言える挑戦的過ぎる続編にして、ほとんど別のゲームと言わんばかりの内容に仕上げられている。

そして、そんな今作の魅力は別物ながら、更なる昇華が成されて魅力が大幅に増したゲームシステムの数々であったりする。特にキャラクター周りの刷新は、前作にて実現したゴエモン以外のキャラクターも操作できる魅力をより一層深めたものになっている。前作も前作で、武器の違い、運動性能で微かな差別化が図られていたが、実際の所は申し訳程度で、基本的にはどのキャラクターでも難易度に極端な差は生まれないなど、公平さを意識したゲームバランス調整が心掛けられていた。更に言うなら、そんな調整であったが故にキャラクターごとの個性が薄く、違うキャラクターを操作しているという手応えがやや弱かった。
今作はそこにメスを入れ、ゴエモンでは絶対に通れない道を設け、他のキャラクターが存在するかの意義を深めた。そして、ゴエモン一人ではなく、複数のキャラクターが冒険しているという演出もイベント等で積極的に見せるようにした。これにより、今作は前作以上に四人で冒険しているという手応えを強く感じ取れる仕上がりになり、仲間と協力して難局を突破していくアクションの手応えがより一層味わえるようになっている。表現上の限界もあって、ゲーム中にに表示されるキャラクターは一人のみで、二人同時プレイで遊んだとしても最大二人までしか表示されないが、今のキャラクターでは明らかに突破できない壁にぶち当たり、そこで別のキャラクターを駆使して突破した時における仲間の存在感は結構なもの。ある意味、今作にて『ゴエモン御一行』という設定がやっとはっきり描かれたと言っても過言ではないだろう。厳密にシリーズの歴史を遡るのなら、RPGの作品等ではそれが描かれていたが、アクションゲームのシリーズで同様の描写を実現させた点ではとても意義深い。とは言え、今作はアクションアドベンチャーなので、厳密にはアクションとは言えないところがあるが、何故、今回このようなゼルダ的な内容へと改めたのか。その意図がゴエモン御一行の冒険を明確に味わえるものにする為、だとしたら大いに納得するところである。単純に前作からの化けっぷりでプレイヤーに驚いてもらう為、ジャンル変更に打って出ただけの可能性も無きにしも非ずだが、そうとは思えない余地を残している辺り、製作スタッフの職人魂というものを実感させられる。前作同様に別のゲームへと改めてしまうその度胸の大きさに関してもまた然り。守りに徹しないそのスタンスには、改めて漢(おとこ)の姿というものを感じさせられる次第だ。
また、ジャンル変更に伴うボリューム全般の強化も見逃せない。前作はその気になれば一日でエンディングまで到達できる程度だったが、今回は謎解き要素の強いゲームになった事で、そうサクサクとは行かないやり応え抜群の内容へと進化を遂げている。逆に謎解きが入った事で、ゲーム全体のテンポは悪化したかというとそうではなく。基本的にはどのダンジョンも探索要素はあれど、腐っても前作『奇天烈将軍マッギネス』の続編という事で、謎解きの難易度は控え目にする等、テンポを大事にした作り込みが成されている。なので、多少変わったとは言え、前作のノリは健在。実際にシビアなアクションが求められる場面もあるほか、オープニングのダンジョンステージからしていきなりアクション全開なので、突然のジャンル変更に戸惑う前作経験者も、そこをプレイすれば「あ、続編だ…」と納得の手応えを得られるだろう。
また、プレイヤーを退屈させまいとするこだわりの数々も見物。突然挟まれる高速スクロールのウォーカーステージ、変則的なトラップ、奇抜な攻撃手段に出るボスなど、起伏に富んだレベルデザインは前作、前々作から何ら変わっていないどころか、全体のボリューム増強で一層濃いものになっており、プレイヤーを大いに魅了させる。その遊び応えと満足度が前作以上なのは、もはや言うまでも無く。まさにあらゆる意味で濃くなった続編と言わんばかりの仕上がりとなっている。そして、ロケーションにしても、今回は未来の世界が舞台となるだけあって、前作以上にカオス。森や洞窟等の自然地形に加え、近代的な雰囲気漂う工場、高層タワーと言った変わり種が登場し、ますます持って何でもありな世界観になっている。その未来世界にしても、単に現代という訳では無く、何処となく和の雰囲気を残しているなど、海外の人が想像する日本というKANCHIGAIテイストになっているのもユニーク。そんな突っ込み所満載且つ、和の雰囲気を尊重しているのも、如何にも前作の続編と言った感じで、妙な安心感を抱いてしまうだろう。
その他、随所にて前々作を意識したネタが散りばめられているのも見所。前作でアクション一辺倒に偏った事に対するお詫びなのか、探索要素の復活など、前々作が好きだったプレイヤーほど楽しめる要素が豊富なのも面白い。
ただ、ジャンル変更の弊害も幾つか。特に体力などの表示情報欄が非常にゴテゴテしてしまっているのは初見プレイ時は少し戸惑うかもしれない。また、レベルデザインにしても作り込まれていると見せかけて実は作り込みが足りていないという惜しい出来だったりする。特に中盤にかけて登場するダンジョンは何処も彼処も「製作途中で力尽きた」と言わんばかりに素っ気ないものが多い。酷いところでは、少し進んだらもうボス戦…と言った手抜きとしか言いようがないところもあるなど、とにかく雑。それでも、ストーリー展開とボス戦の個性付けによって一定の面白さを演出できてはいるが、もう少し頑張れたんじゃないのかと言いたくなるのも事実。初めてのアクションアドベンチャー故の難しさもあったのかもしれないが、それならそれでダンジョンの数を絞り込むなど、量より質の方向性でまとめて欲しかったところである。折角、システム周りの発展が目立つ中、こういう所で落としてしまっているのは惜しい。発売までのブランクが前作からそんなに空いていないので、単純に製作時間が足りなかったのかもしれないが、それがこうも露骨に現れてしまっているのはモヤっとするところだ。これではがんばれゴエモンじゃなくて、つかれたゴエモンだ。
他に収集品アイテムの中で一度、取り逃してストーリーを進めてしまうと二度と手に入らなくなってしまうものが幾つかあったり、一部、ノーヒントで攻略の根幹に絡むイベントがあるなど、配慮が欠けている所が目立つのも残念。キャラクターそれぞれの存在感やゲームとしての遊び応えを高める事にこそ成功はしているが、密度の濃いゲームなりの弊害も現れてしまっており、ある意味、ジャンル変更は一長一短だったと言える感じだ。とは言え、前作のシステムを昇華させ、新たなゲーム性を演出した点で見れば、間違いなく今作は正統進化と言い切れる。確かに作り込みが足りてない箇所もあり、ジャンルも別物になってしまっているとは言え、今後のゴエモンのスタンダードとも言える仕組みが完成された点では、意義のある内容だと言えるだろう。シリーズのアクションアドベンチャーというジャンルとの相性の良さを示した点でもまた然り。可能性を広げた部分でも、今作はまさに野心的な続編と言うに相応しいだろう。色んな意味で、前作のスタッフらしい作風と挑戦を恐れぬスタンスが現れた仕上がりだ。

操作周りも前作のものを継承。僅かながら挙動も軽くなり、より気持ちよくキャラクターを動かせるようになっている。ゲームバランスも、基本高めながらも前作を髣髴とさせる適切な調整。巨大ボス戦など、システム刷新でやや大味な感じになった所もあるが、今回も全編を通して楽しくも歯応えのあるアクションが楽しめる作りだ。
また、ストーリーも強化。ただ、これもダンジョン同様に後半から失速気味になるのが難点。とは言え、内容自体はよく出来ており、特に終盤には前作経験者ならば思わず唸る展開が用意されている。エンディングも素晴らしく、今回の悪役である獅子重禄兵衛の個性の強さ、意外な正体発覚とその後の顛末には思わず穏やかな気分に浸ってしまうだろう。更にストーリーには収集アイテム『銀の招き猫』を全て集めたか否かで最後の展開が変化するという仕掛けも盛り込まれている。この展開がまた熱く、前々作『ゆき姫救出絵巻』経験者なら見逃せないものになっている。重禄兵衛に対しての印象もより良くなるので尚のこと必見だ。多少厳しいが、これを見るだけでも集める価値はある!
その他、グラフィックも全面的に刷新。キャラクターの頭身は少し下がってしまったが、全体的にバランスの良いサイズにまとまり、見栄えが更に良くなった。また、背景周りとキャラクターと言ったドット絵の質も総じて高め。特にインパクト戦、ウォーカーステージで暴れ回るボスのグラフィックは、前作にも増してスーパーファミコンのハード性能を活かそうとするコナミ特有の変態技術力が炸裂した仕上がりになっているので要チェックだ。それに並行して演出周りも更にパワーアップ。疑似3Dで描かれた巨大ボス戦は勿論のこと、ウォーカーステージもスピード感溢れるスクロールと立体的なギミックで大いに魅せる仕上がりになっている。加えて今作では、効果音全般も一新。そのほとんどは今作の前に発売された『スパークスター』からの流用なのだが、元々優れた出来だった効果音を継承した事によって、ゲーム全体の迫力と臨場感は大幅にアップ!特に爆発全般の迫力はシリーズ最高クラスと言っても過言では無い派手さ。インパクト戦ではそれを大いに堪能できるので、是非とも要チェックである。

そして、シリーズの代名詞、音楽に関しては今回も素晴らしい出来。オープニングのダンジョンから非常に熱い曲が炸裂するほか、曲の作風も未来が舞台という事で和とテクノ、メタルが絶妙に織り交ざった仕上がりになっている。数ある曲の中でも『からくりウォーカー工場』、『からくりタワー』の二曲はかなりの名曲なので要チェックだ。
そんな具合にゲーム以外の箇所でも魅力が盛り沢山な今作。ただ、先の力尽きた中盤以降の展開のほか、やや極端過ぎる差異が出ている感も否めない各キャラクターの性能周り、フィールドマップの自由度の低さと制限の多さ、一部の極端なまでに長いダンジョンの存在など、欠点もあり、スケール故に作り込みが追い付いてない所が見受けられるのは残念だ。それ故、何処となく実験作的な面も垣間見えるのだが、シリーズモノの御約束に則らず、新しい方向性を示したゲームデザインとキャラクターの存在感を一掃感じ取れるようになったシステム周りの刷新は実に秀逸。作り込みの足りてない箇所はあれど、その面白さは前作以上で、傑作だと自信を持って言い張れる出来だ。
王道の横スクロールアクションを求めるプレイヤーには見た目から賛否分かれるかもしれないが、中身はまさに正統進化系。シリーズファンは勿論のこと、アクション好きからゼルダのようなアクションアドベンチャーが好きなプレイヤーまで広くお薦めできる逸品だ。変化球という言葉がこの上なく似合うその内容、是非お試しあれ。お薦め!
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