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  4. がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス
≫がんばれゴエモン2 奇天烈将軍マッギネス
■発売元 コナミ(現:コナミデジタルエンタテインメント)
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 9800円(税別) / バーチャルコンソール版:823円(税込)
■公式サイト ≫VC版(Wii) / ≫VC版(WiiU)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 紛失している為、不明
■推定クリア時間 4〜5時間(エンディング目的)、6〜7時間(完全攻略目的)
はぐれ町の福引きで当たった旅行券でゴエモンとエビス丸は、南の楽園『琉球リゾート』でのんびりとリゾート気分に浸っていた。すると、そこに突然小さな『からくり忍者』が現れた。
そのからくり忍者の名は『サスケ』。伊賀の物知り爺さんによって開発されたからくりメカであり、かつてゴエモン達と対峙した事のある者だった。彼はリゾート気分に浸っていたゴエモン達に、新天守閣完成記念祭りで賑わっていた大江戸城が突然浮かび上がって祭りの見物人共々、何処かへと飛んで行ってしまった急報を伝えるべく、ゴエモン達の所へとやってきた。更に話によると、この事件の首謀者はマッギネス将軍と呼ばれる人物で、天守閣の改造と見せかけて飛空要塞への改造計画を進めていたという。

マッギネスの名を聞いたゴエモン達は驚いた。彼は今回の旅行の招待券を提供した福引き屋だったからだ!しかも、大江戸城には新天守閣特別ご招待券を当て、祭りに参加していたおみっちゃんがいる!危機を察したゴエモンは、サスケと共に伊賀の物知りじいさんの家へと向かった。そして、取り残されたエビス丸も二人の後を追うのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前作の旧作準拠から一転、横スクロール特化のスタンダードで取っ付き易いアクションゲームへと大きく変貌を遂げたゲームシステム周り(若干、マリオチック)
◆短めながらも、多種多様なネタと絶妙な地形、敵配置でプレイヤーを楽しませる、完成度の高いステージ構成(特に背景周りのネタで魅せる城ステージは必見)
◆ロボットの登場によって更にカオスな色彩を強めた、和風のようでそうではない奇抜な世界観
◆拡大・縮小機能を活用した疑似3D表現と迫力溢れる演出が光る、白熱必至の巨大ボス戦
◆改良が施された『おんぶシステム』により、更に魅力的なものへと進化を遂げた二人同時プレイ
◆エビス丸で本編が楽しめるようになるなど、遊び方の幅を広げた新要素『キャラクターセレクト』
◆当たり判定の拡大、最強武器の威力調整など、前作の欠点を解消して使い勝手が増した各キャラクターの近接武器(特にゴエモンは非常に使い易くなった)
◆新たにチャージ攻撃が追加され、更に威力・使い勝手共にパワーアップを遂げた『サブウェポン』
◆当たり判定の修正に挙動の一新により、より動かす楽しさと気持ちよさが向上した珠玉の操作性
◆優し過ぎず難し過ぎずの絶妙なバランスでまとめられた難易度(理不尽さも皆無)
◆キャラクターのサイズが大きめに改められるなど、より見栄えが良くなったグラフィック全般
◆前作に負けず劣らずの名曲揃いの音楽(楽曲数もステージ数増加でボリュームアップ)
◆個性豊かなキャラクターと終盤のユニークな伏線回収で楽しませてくれるストーリー
◆和風の魂斗羅と言わんばかりのド派手な演出周り(特に爆発系の演出はかなりのもの)

--- Bad Point ---
◆旧作の面影皆無なゲームシステム(旧作のノリが好きだったプレイヤーには好みが分かれる)
◆ステージ数の割に短めな総計ボリューム(クリア後の要素を含んでも前作を下回る)
◆操作の解説が一切無く、やや不親切感が否めない巨大ボス戦
◆設定は面白いが減り方の速さと体力ゲージとしての兼ね合いもあり、ストレス要因になってしまっている巨大からくりメカ『ゴエモン・いんぱくと』の燃料漏れシステム
◆会話の早送りが不可能となる仕様がやや煩わしい、マーブル五人衆との遭遇イベント
◆クリアしてしまうとその後、再戦不可となるボス戦(巨大ボス戦含む)
◆一人プレイ時の相手キャラクターの強さが理不尽も同然なミニゲーム『対戦バズーカ』
▼Review ≪Last Update : 7/12/2015≫
福引き屋…許さん…

巨大ロボットでお仕置きしてやろうぜ!


旧作準拠のフリースクロールと新要素の横スクロール二本立てという贅沢な作りとパワーアップしたグラフィック、音楽、そして二人同時プレイの盛り上がりっぷりで好評を博したスーパーファミコン向けがんばれゴエモンシリーズ第一弾『がんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻』の続編。前作から2年以上のブランクを経て発売された。

劇的に変化したゲームシステムとカオスな世界観で送る、チャレンジ精神溢れる衝撃の続編だ。

その言葉の通り、ゲーム内容も前作とは180度異なるものになった。簡単に解説すると、横スクロールで展開するステージクリア型アクションゲーム。ゴエモン、エビス丸、サスケのいずれかを操作し、各エリアごとに用意されたステージを攻略しながら、空中要塞に改造された大江戸城とその首謀者マッギネス将軍の行方を追っていくものとなっている。
前作は『がんばれゴエモン からくり道中』、『がんばれゴエモン2』を踏襲しつつ、新たに横スクロールステージ『拠点エリア』を実装した、二種類のアクションゲームが一本で楽しめる贅沢なゲームデザインを持ち味とする内容であったが、今作ではそのゲームデザインを完全に破棄。旧作の面影も、前作の面影までも一切感じさせないアクションゲームへと、根元の部分から改めてしまっている。まさに『フルモデルチェンジ』と言わんばかりの変わりっぷりだ。
そうもアクションゲームとしての基本的な作りが変わったので、ゲーム性自体も別物と化している。前作は旧二作準拠、アーケードスタイルの一本道構成で進行する内容だったが、今作ではエリアごとに用意されたステージを順番に攻略していくという、任天堂の『スーパーマリオワールド』を髣髴とさせる構成の内容へと完全一新。加えて本編で用意されたステージも前作で言う所の『拠点エリア』こと、横スクロールに特化された。それに伴い、ステージのクリア条件もゴールに到達するというシンプル且つ、アクションゲームの王道に則ったものへと一新。ステージ最深部で待ち受けるボスを倒す、或いは目的地に到達すると言った探索要素も盛り込んでいた前作をまるで感じさせない化けっぷりとなっている。その内容たるや、もはやコナミ版『スーパーマリオワールド』。実際に今回はボス戦も各エリアの最後に登場する『城ステージ』で登場するなど、随所において『スーパーマリオワールド』、そしてその前作に当たる『スーパーマリオブラザーズ3』を意識したシチュエーションが盛り込まれているほどの意識っぷりだ。なので、その二作のプレイ経験があるプレイヤーが遊べば、「あれ?これ…マリオじゃ…」と既視感を抱かせる内容になっているのは、もはや言うまでもない。ただ、完全にマリオという訳では無く、特徴の異なるステージを攻略していくという流れは今作独自の特徴。純粋にゴールを目指す『道中ステージ』、前作の街エリアのように情報収集、アイテムの購入と言ったサポート要素や町民との会話と言ったイベントが盛り込まれた『町ステージ』、ボスとの戦闘が用意された『城ステージ』と、全部で三種類の性質の異なるステージを交互に攻略しながら進行していくので、非常に起伏に富んだ遊びを楽しめる作りとなっている。
更に今作からの新要素として、『強制横スクロール高速アクションステージ』と『巨大からくりメカ戦闘ステージ』という二つのステージも用意されている。その名の通り、前者は高速スクロールで展開していくステージ、後者はゴエモン達の実に5倍以上もの大きさのボスとの戦闘を行うステージである。そして、後者の概略の通り、この二つのステージはゴエモン達を操作してプレイするものではない。これまた新要素にして、初登場キャラクターである巨大からくりロボ『ゴエモン・いんぱくと』を操作してプレイするステージとなっている。その名の通り、ゴエモンの姿をした巨大なロボットであり、これで前者のステージでは迫り来る敵を踏み潰したり、時には武器の巨大キセルで叩き落としたり、後者では自身と同じサイズの敵ロボットと激しい格闘戦に挑む事になるのだ。仮にも安土桃山〜江戸時代をモチーフとした世界観のゲームでロボットに登場して戦うのって…と、思わず突っ込みたくなってしまうものがあるが、本当に今作ではそれをやる事になる。まさに時代考証完全無視!面白ければそれが正義!…そう言わんばかりのやりたい放題っぷりが炸裂した新要素になっている。しかも、巨大ボス戦に関してはコックピット視点による3Dスタイルで行われる豪快な作りになっているのも大きな特徴。戦闘時のアクションもパンチ、小判弾、ガード、そして必殺技のキセルボムと言ったロボットならではのダイナミックなものが満載で、これらを駆使して敵ロボットに攻撃していく事になる。その臨場感と迫力は横スクロール視点のボス戦とは桁違いな上、対するボスも拡大・縮小描写を最大限に生かして圧倒的な巨大感を演出するなど、スーパーファミコンのハード性能を舐め回すと言わんばかりのハチャメチャっぷり。前作も拡大・縮小描写を活かした演出は幾つか見受けられたが、今作は更にその上を行っている。『魂斗羅スピリッツ』、『悪魔城ドラキュラ』等の他のゲームの開発実績が刺激を与えたのか。真相は関係者のみぞ知るところだが、その技術の蓄積が現れた仕上がりになっているという点でも、この巨大ボス戦が如何に注目に値するものかは言うまでもないだろう。まさにコナミのセンスと技術力が炸裂した仕上がりになっている。
また、新要素は巨大ロボットだけにあらず。今作からキャラクターセレクトシステムが実装され、前作では二人同時プレイ時の2P側専用キャラクターであったエビス丸をシングルプレイ時でも使えるようになった。更に第三のキャラクターとして、既に紹介しているがからくり忍者の『サスケ』が追加。前作をプレイした方ならお分かりの通り、ステージ5のボスとして登場したあのサスケ本人。彼がプレイヤーキャラクターとして今回あ、参戦する事になった。そして、キャラクターの選択が可能になったのに伴い、性能面にも多少差別化が図られ、ゴエモンはスタンダードな性能に対し、エビス丸は移動がやや遅い、サスケは機敏な動きを特徴とするなど、それぞれ異なるアクションと操作感を楽しめるようになっている。また、ゴエモンは前作同様にキセル、エビス丸は笛から一転してハリセン、サスケは前作でも使用していたクナイと、武器にも差別化が図られており、戦闘面でも微かな違いを感じ取れるようになっている。前作は完全に二人プレイ専用キャラクターに特化してしまっていて、どうせなら一人プレイでもエビス丸を使ってみたいのに…と仕様の煩わしさを覚えていたプレイヤーには待望とも言える進化。更にこのようなシステムが実装された事により、二人同時プレイもより多彩な攻略が楽しめる作りへとパワーアップ。そちらの要素にしても、前作からの大幅な強化が図られている。
他にも『サブウェポン』にチャージ攻撃を追加、『おんぶ』もパートナーキャラとの組み合わせによって攻撃が変化するなど、前作から見違えるほど派手になったシステムは幾つか。細かい所でも台詞の文字フォントとキャラクターのグラフィックサイズが大きめになったほか、前作の欠点でもあった近接攻撃武器の当たり判定を拡大、ゴエモンの最強武器を『チェーンキセル』というリーチが長く、攻撃速度も速いものへと改める、バッテリーバックアップ形式によるセーブ機能を実装するなど、続編としてのらしさを感じられる進化もそれなりにある。
とは言え、その変わりっぷりは続編と言って良いのか、困るほど。過去のシリーズを遊んできたプレイヤーにしてみれば、もはやこれはゴエモンでは無いと断言されても仕方がない内容となっている。だが、各種新要素から滲み出るサービス精神、演出周りのハチャメチャさ、前作のシステム継承と改善と、その中身は紛れも無くあの『ゆき姫救出絵巻』の続編と言い切れる部分も多数。見た目は別物ながら、その継承された面も含めて間違いなくがんばれゴエモンと言い切れる仕上がりだ。まさに挑戦的過ぎるフルモデルチェンジ。前作プレイヤーも未経験者もビックリ仰天の続編になっている。

そんな今作の魅力は前作、旧二作にも無い圧倒的な迫力と突っ込み所満載の笑いに満ち溢れたゲーム展開と演出だ。
特に巨大ボス戦はまさにその象徴と言い切れる箇所であり、前作からの演出面の進化を強く実感させられる仕上がりになっている。何よりも、この戦闘が全て疑似的な3Dで違和感なく、且つスピーディに表現されているのは圧巻の一言。相手となる敵ロボットに戦闘フィールドと、基本的には全て2Dのドット絵によって表現されている為、見た目こそ平面なのだが、そこを今作はスーパーファミコンの拡大・縮小機能を活かし、ボスが接近してきた際にはボス自体をズームアップ、距離を取った際にはボス自体をフェードアウトするなどして、あたかも立体的なフィールドで巨大なボスと戦っているかのように表現。そのような工夫の数々により、全くと言って良いほど違和感を感じさせない3D戦闘として描かれているのである。実際に最初の巨大ボスとして登場する横綱ロボ『千秋楽』の『ス●リートフ●イターII』のエドモ●ド本田を髣髴とさせる頭突き攻撃を見れば、その違和感の無さというものをとくと思い知らされるだろう。また、コナミのゲームで疑似3Dというと、今作の前に発売されたシューティングゲーム『アクスレイ』があるが、そのノウハウが活かされた戦闘もあり、前作の時とは異なる製作者側の技術面の蓄積、スーパーファミコンというハード性能の理解の深まりというものを実感させられるのも興味深いものがある。色々無茶をしたのか、戦闘自体はそれほど用意されていないのだが、前作からの技術面の向上、2Dのドット絵という表現的に限られた手法で3Dの戦闘を自然に描写したセンス溢れる画面作りと演出は見応え十分。前作以上の演出を、という以上にやり過ぎだと突っ込まざるを得ないその仕上がりは必見も必見だ。
また、今回は敵がからくりメカというロボットなので、当然のように倒せば爆発する。なので、ボスクラスとなれば仰々しいぐらいに大爆発。巨大ロボとなればそれ以上、もはやロボットアニメレベルだ。前作の妖怪が「ポワッ」と消滅する程度だったのを考えると、これが如何に派手なものになったのかは想像に難くないだろう。そんな感じにエフェクト周りの進化っぷりも巨大ボス戦に並ぶ見所。プレイヤーによっては、その過剰なまでの爆発っぷりに「何処の魂斗羅だ…!?」…とボヤいてしまうかもしれない。実際、今作は色々魂斗羅めいていたりするので、間違いじゃないのだが。
逆にボス戦の迫力が増した反動で、アクションステージに関しては前作の立体的に回転する足場、上下が反転する部屋等の仰々しいギミックは鳴りを潜めた。だが、完成度は底上げされており、特に今回はマリオ形式という事でゴールへの到達を目指す王道ステージ登場によって一つ当たりのスケールが小さくなり、非常にテンポ良く遊べるようになったのは大きな改善点。また、ロケーションにしても南の島の海岸、田舎風景溢れる畑、怪しげな森、熱気を帯びた地下道など、バリエーションを大幅に増強したほか、初見殺し的なギミックは予備動作等の演出を仕込んでプレイヤーに危険を知らせるようにする工夫を凝らすなど、非常にバランスの取れた作りになっている。その気を遣った作りには何処となく、マリオチックというか任天堂臭い。多少、マリオっぽい作りになった今作だが、製作時には本当に過去のマリオの何かを意識したんだなと思わせてしまう、そんな作り込みが散見されるのもある意味、見所と言えるかもしれない。無論、後半になると高い難易度のステージが登場するなど、マリオとは別次元の方向性になるが。また、迫力は衰えたとは言え、1ステージだけ…具体的にはエリア5にとんでもないネタが仕込まれたステージが用意されている。その迫力とシュールさ、狙い済ました笑い所には誰もがやっぱりコナミは変態だと賞賛の言葉を送りたくなってしまうこと間違いなし。どんなステージかは是非、自分の眼で見て頂きたい。きっと、嫌でも記憶に残ってしまうだろう。
更にボス戦がある城ステージも、派手さは無いものの、何処も彼処も強烈な個性を持ち合わせたステージになっているのは見逃せない。ある城では背景で相撲の力士達が『三役揃い踏み』を実施していたり、またある城では背景自体が歌舞伎の舞台になっていたり、和太鼓のジャンプ台が登場するなど、何処も彼処もプレイした誰もが「…城?」と呆気に取られること必至のとんでもないビジュアルになっている。中でも注目なのは本編中盤に登場する『和食城』。もう名前からしてどんな城なのか大体察せると思うので詳細は伏せるが、プレイすれば誰もが爆笑の渦に巻き込まれること間違いなし。同時に今作の製作を手掛けたスタッフの挑戦を恐れぬ姿勢の凄味を思い知らされるだろう。
そう言ったロボット、無茶苦茶な城の登場により、世界観も全体的にカオスな色彩を強め、『石川五右衛門』をベースに生み出された作品としてのイメージを何ら守る気の無いゲームへと変貌を遂げてしまったのもある意味、見所だ。しかも、組み合わせ的に無茶なのにその時代に溶け込ませようとデザインから、空気感まで徹底して作り込んでいるのだから凄い。デザイナーのセンスの高さ、そして和の雰囲気こそシリーズの真骨頂として失わせないという確固たる意志を感じさせられる。単にロボットを出すだけなら、現代的なデザインのものを放り込むだけでも相当なインパクトは出る。だが、今作の場合はそれだけで終わらせず、基本的なデザインから細かな描写に至るまで、世界観を尊重した作り込みを施し、本当にあるんじゃ?という現実味を作り出しているのが凄いところ。和の世界観を特色とする今シリーズならではのカオス感を事細かに描いているのだ。そして、その試みによりシリーズの更なる可能性を広げてもいる。言葉だけだと無計画且つ、好き放題にやっているように見えるが、実際にプレイしてみると、その計算され尽した作り込みに感服させられるはず。その職人技の数々もステージ構成同様に必見だ。
ただ、そう前作にも増して変貌した事の弊害として、失われてしまった部分もある。探索要素が薄れたのに加え、マリオ的なゲームデザインになった事でゲームシステムの個性が希薄化、敵に舞台となる時代を意識させる現実味が無くなった…など。特に探索要素は今作、ほとんど無くなってしまっており、その代わりとも言える町ステージは多少のイベントはあれど、只の通過点兼装備の購入ができる救済ポイントに過ぎないレベルで探索要素が無くなり、前作まで継承されてきた旧作の味が無くなってしまっている。ステージの作りにしてもフリースクロールとは言え、横スクロールを強く意識した作りになっている為、かつてのゴエモンシリーズである事を捨てたと言わんばかりに変貌。挙句の果てにステージ一つ一つの攻略にかかる時間も短くなったので、一つのステージに長く浸れるなんて事もできない。旧作のあの探索要素、密度の濃いステージ構成こそがシリーズの醍醐味というこだわりを持つプレイヤーにしてみれば、今作の内容刷新は暴挙と捉えられても仕方がないかもしれない。
だが、それでも「プレイヤーを楽しませて釘付けにさせる」という前作のサービス精神は何ら失われていないのに加え、アクションゲームとしてしっかり楽しめて、しっかりと歯応えが感じ取れる内容にまで作り込んでいる辺りには別物にしようと、楽しんでもらえるゲームを作るという熱き意志が込められている。あえてシリーズのお約束を打ち破り、前作経験者も未経験者も新鮮な気持ちで楽しめる作りを目指すというのも恐れ知らずなのに加え、よくぞここまで思い切れたと逆に圧倒させられるものがある。
旧作の味こそ薄くなったが、高いサービス精神と飽きの来ない面白さ、和の雰囲気はそのままの作りはまさしく前作『ゆき姫救出絵巻』の続編と言うに相応しい仕上がり。攻めに走ってシリーズの新境地を切り開く。今作はその誰もが恐れるであろう道へと突き進み、面白いゲームとして仕立て上げた究極的な一例と言っても良いだろう。別物ではあるけど、その楽しさと和の雰囲気は間違いなくゴエモン。何もかもが思い切り過ぎた仕上がりになっている。

その他、操作性も前作の良い所を引き継ぎつつ、欠点を潰した仕上がりになっている。特に先も挙げた、近接武器の当たり判定が広くなったのは有り難いところだ。また、新たにYボタン押しっぱなしで高速移動が可能になったほか、挙動も軽快になるなど、アクションゲームとしての気持ちよさを高める作り込みが成されている。その出来の良さたるや、今作でシリーズのスタンダードが確立されたと言っても良いほど。普通に前作に戻り難くなるレベルにまで進化している。
ゲームバランスも大幅に改善。回復等の補助アイテムが無いと厳しかった終盤が無しでも突破できるようになったほか、当たり判定の改善でボス戦も適切な難易度になり、理不尽さの無い手応えを感じ取れるバランスでまとめられている。ただ、巨大ボス戦における『燃料漏れ』の概念は正直、蛇足。これの影響で戦闘を気長にプレイする事はできず、燃料が尽きるまでの内にボスを倒さなければならないという制約を課せられた状況での戦闘を余儀なくされる為、操作に慣れない序盤は苦しい展開を味わう事になる。この辺の事はゲーム中に理由付けもされているほか、システム自体は緊迫感を演出していて面白いのだが、燃料の漏れる速度がやたら早い(1秒で2エネルギー近く減る)のはさすがに調整ミスと言わざるを得ない。せめて1秒に1エネルギー減る程度で良かったのではないのだろうか。この調整ミスにより、折角魅力的な巨大ボス戦が極端にシビアな戦闘になってしまっているのは勿体ないところだ。
また、ボリュームもステージ一つ一つが短めの作りになった影響でか、エンディングまでの所要時間が短くなってしまった。二人同時プレイなら一日で攻略可能なほどだ。それなりに厳しい局面もあるほか、クリア後の隠しステージも用意されているが、前作の密度に魅了されたプレイヤーには正直、物足りなさを覚えるかもしれない。
ゲーム以外の箇所、グラフィックに関しては全面的に一新され、元のイラストと同様の色遣いとキャラクターデザインが成されたものへと大きく進化。質は非常に高く、特に背景周りでは前作からの進化っぷりを存分に堪能できる。巨大ボス戦のグラフィックも圧巻の一言で、巨体ながら軽快に動き回るその様には技術屋コナミの意地を見るかもしれない。
そして、音楽は前作にも負けず劣らずのクオリティ。容量の増大に伴って楽曲数も増える等、ボリュームアップも図られていてより魅力的に進化している。例によって、今作も『因幡峠』、『紀州峠』、『陸奥街道』等、名曲が盛り沢山。中でも『陸奥街道』は、日本っていいですなぁ…と思わず心に染みる名曲になっているので要チェックだ。

演出周りも巨大ボス戦以外でも、各エリアをクリアした際にアニメチックな一枚絵と共に寸劇が繰り広げられるなど、大幅なパワーアップを遂げている。ストーリーも悪役のマッギネスが良い味を出しているほか、展開にも少し一捻りを加えたシチュエーションが満載。中でも終盤のとある演出が実はラスボス戦の伏線だった、という驚きの展開は要チェックだ。
また、前作で話題を呼んだ異様に作り込まれたミニゲームもバッチリ収録。ただ、収録数が減少し、前作からパワーダウンしてしまっている。とは言え、『グラディウス』に次ぐ新たなシューティングゲームとして『ゼクセクス』が収録されていたり、『スーパーマ●オカート』めいたレースゲーム的な何かまで収録されていたりなど、一つ一つのインパクトは十分。二人同時プレイ時には対戦も楽しめたりなど、接待ゲームとしても楽しめる作りになっているので必見だ。
そんな感じに至れり尽くせりな今作だが、あまりにも前作から別物になってしまっている為、旧作経験者には賛否が分かれる。また、城クリア時の会話イベントで文字送りのスピードを変更できない、ボスとの再戦が不可能、ボリュームがやや薄めであるなど、欠点が散見される。しかし、前作以上にバラエティー豊かになったステージに改善された操作性、優れたゲームバランス、圧巻の巨大ボス戦、素晴らしい音楽等、その完成度は極めて高い。別物へと変貌は遂げたものの、歯応えのあるアクションとサービス精神旺盛なネタの数々は健在で、新しいがんばれゴエモンというに申し分のない出来となっている。正統進化というよりは、究極進化と言っても不思議では無い魅力を多く秘めた今作。旧作経験者には受け入れがたい所はあるが、シリーズ未経験者からアクションゲーム好きは勿論、スーパーファミコンを持っているプレイヤーなら遊ぶ価値大いにアリの傑作だ。前作の面影が全く感じられない脅威の化けっぷり、そしてプレイヤーを楽しませる事にこだわり尽し、爆発に次ぐ爆発を注ぎ込んだその内容を括目せよ!お薦めです!
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