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≫ファイアーエムブレム 聖戦の系譜
■発売元 任天堂
■開発元 インテリジェントシステムズ
■ジャンル シミュレーションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7500円(税別) / バーチャルコンソール版:923円(税込)
■公式サイト ≫スーパーファミコン版 / ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 4つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 68ページ
■推定クリア時間 60〜80時間(エンディング目的)、200時間以上(完全攻略目的)
かつてユグドラル大陸には、『十二聖戦士』と呼ばれる者がいた。
その聖戦士達は神から授かった武器を用い、大陸を支配していた闇を打ち砕いたという。そして時は流れ、今、その聖戦士の血と、彼らが用いた伝説の武器を受け継いだ者達がいる…。

大陸中央に位置するグランベル王国のシアルフィ公国も、そんな聖戦士の血を受け継いだ者達の中の一つだった。そして広大な領地と、それぞれ軍隊を持つ一つの公国として、グランベル王国に従属しつつも、独自性を保っていた。

シアルフィ公国の当主バイロン郷は、グランベル王家からの信任も厚く、東方の国『イザーク』で巻き起こった戦乱を静める為に、王家や、他の諸公達と遠征中だった。バイロン郷の息子シグルドは、シアルフィ公国の居城『シアルフィ城』の留守を任されていた。
そんなおり、同盟国であったはずの南西のヴェルダン王国の大軍が突然、国境を突破。王国内に攻め入って来た。
最初に包囲されたのは、シグルドの幼なじみ、エーディンのいるユングヴィの城。ヴェルダン軍からエーディンを守る為、すぐさま出陣の決意をしたシグルド。
これが元となり、彼は、後に恐ろしい運命の渦に巻き込まれていくのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆一つの大陸を舞台にした戦乱を嘘偽りなく描いた、壮大且つ広大なマップ構成
◆広大なマップを舞台にした事による煩わしさを除く為、豊富に盛り込まれた親切要素群
◆子供の能力の組み合わせを考えるのが面白い、斬新且つ奇抜な『恋愛システム』
◆個々のユニットの個性を色濃く抽出した新要素『スキル』
◆騎兵ユニットの特性と新たな戦略性を打ち出した新要素『再行動』
◆新要素『指揮官レベル』により、行動パターンが更にトリッキーになった敵ユニット
◆武器ごとの相性により命中率が左右する、ユニークな発想が面白い『武器の三すくみ』
◆敵のマップの移動スピードが統一化された事により、劇的に良くなったゲームテンポ
◆一度のめり込むと止め時を失ってしまうほど強烈な中毒性
◆一回のプレイでは味わい尽くせないほど膨大なボリューム(隠し要素なども満載)
◆子供ユニットによる快適なゲームプレイと代理ユニットによる戦略的なゲームプレイ双方を実現させた、二通りの遊び方を提示した作りが面白い第二部
◆動きがダイナミックになり、より迫力が増した戦闘シーン
◆成熟期ならではの技が光る、深々と描き込まれたグラフィック
◆鬼気迫る完成度を誇る音楽(サウンドテストが用意されて無いのが勿体無い)
◆王道ながらもエグい展開満載の親子に世代に渡る、壮大且つ深いストーリー
◆確かな達成感を提供してくれる、絶妙な手強さが見事なゲームバランス

--- Bad Point ---
◆有利な能力を持つ者と持たない者との差が露骨に開いてしまってる『スキルシステム』の能力バランス
◆厄介で面倒な武器の交換システム(中古屋を介して渡すというのは…。)
◆反則的な威力の伝説の武器(特にフォルセティは強過ぎ…)
◆賛否両論なランクシステム(自由なゲームプレイを束縛してる印象が…)
◆毎ターンセーブによる生じ易い、プレイ時のハマり(故に、セーブファイルを巧みに使いこなさないとクリアは厳しい…)
◆少し嫌らし過ぎる、第三章『獅子王エルトシャン』の中盤にあるエルトシャンの説得イベント(部下の騎兵達が陰湿)
▼Review ≪Last Update : 9/29/2007≫
彼らの戦いが、一体なんであったのか…。

ねぇ…、なんだったんでしょうねぇ。(Cv.千葉繁)


手強くも癖になる難易度と重厚なストーリーで多くのユーザーを魅了した、シミュレーションRPGの金字塔『ファイアーエムブレム』シリーズの最新作にて第四作目。開発はこれまでのシリーズ同様にインテリジェントシステムズが担当。

それまでとは毛色の異なるゲームシステムと親子に世代に渡る壮大なストーリー。
より遊び易く、そしてより毒々しくなったシリーズ屈指の異色作だ。

ゲーム内容は、ストーリーに沿いながら様々なマップを攻略していく『シナリオキャンペーン方式』を取り入れた、ターン制のシミュレーションRPG。基本的なプレイスタイルは前作とほぼ同じで、今作でもプレイヤーはユニット(駒)をカーソルを使って動かしながら、マップ上を徘徊する敵を倒していく。だが、あくまでも前作と同じなのはプレイスタイルだけであり、ゲーム全体を装飾するシステム群はその面影すら感じさせない位の別物となっている。
特にマップ構成。前作までは、マップ内にある『制圧地点』(玉座など)を主人公のユニットで制圧すればクリアとなる局地的且つシンプルな構成だったが、今作では1つのマップに複数の制圧拠点が存在する、広大且つ複雑な構成に変更。それに伴い、1つ1つのマップのボリュームが大幅に増している。また、今作では城や建物と言った、いわゆる内部マップも無くなり、全ての戦闘が野外で展開。その為、前作までにあった馬に乗って戦う騎兵ユニットの『乗り降り』が排除され、歩行ユニットとの明確な差別化が成されている。他にも、今作ではプレイヤーに自軍の拠点とも言える『城』が設けられ、ここが敵に制圧されてしまうと主人公が生きていようともゲームオーバーとなる『防衛』の概念が設けられるなど、前作の面影を感じさせない要素は盛り沢山。総じて、一つの大陸を舞台にした戦乱を嘘偽り無く描いた、非常にリアルな作りとなっているのである。それまで、本当は戦争のストーリーなのに、ゲームでは「戦闘」としてのイメージが伝わってこなかったシリーズの印象を根底から覆す、実に革新的な試みだ。これにより、今作では過去のシリーズ以上に、リアルな戦場の匂いをプレイを通じて実感する事ができる。また、その匂いを一層強める配慮として、今作では敵の勢力も1つではなく、2つ以上登場するほか、新たにプレイヤーの味方として一緒に戦ってくれる同盟軍、どっちにも付かず自由な行動を取る中立軍も登場。戦場の混迷振りを一層、引き立てる。
これらの複数の勢力を相手に、どのように戦局を乗り越えて勝利を手にするか…、今作ではこのような多角的な視点があらゆる場面でプレイヤーに問われてくる。
前作までのシンプルな戦略が好きだった方には賛否が分かれるかもしれないが、この試み自体は成功しており、結果としてシミュレーションRPGの新しい戦略性を打ち出している、と言っても過言ではない。
また、広大なマップが舞台となる事を考慮して、章の数を極力控えめとし、尚且つシリーズとしては初となる、毎ターンごとのセーブシステムを取り入れるなど、プレイ時の負担を軽減する為の配慮が盛り込まれているのもお見事。
遊び手に気持ちよく遊んでもらう事を何よりも重視している姿勢が伺える。

それと並行して、遊び手に新たな手応えを提供する姿勢を重視しているのも流石の一言。今作ではシステム面においても挑戦的な試みが行われている。中でも面白いのが『ユニット同士の恋愛システム』だ。
その名の通り、今作ではユニット同士が恋に落ちるという、何とも人間臭い要素が取り入れられており、これを成す事で親の能力を共に受け継いだ子供を生み出す事ができてしまうのである。しかもその子供はゲーム後半の第二部(後述)に成長した姿で登場し、新たなユニットとして活躍する。一部、カップリングが規定されている為、全てが自由という訳ではないのだが、相異なる能力を持つもの同士を結婚させ、そしてその能力を共に持ったユニットを創造させるその面白さには麻薬的なものが秘められている。本作を遊ぶにおいて、是非とも体験してみて頂きたいシステムだ。なお、カップルの作り方はシンプルで、組み合わせたいユニットを隣り合わせにするだけ。但し、ターンによっては恋が成就しない事もあるので、細心の注意が必要だ。
また、カップルが作れなかった場合は子供の変わりに、代理ユニットが参戦するよう、救済処置も図られている。しかし、代理ユニットの大半は能力的に優れておらず、子供に劣る。その分、戦術ゲームとしての面白味が増す側面もあるのだが、気軽にゲームを楽しみたいという方はなるべく子供を作った方がベストだ。
しかし、代理ユニットで二部をプレイするのも面白いので、腕に自信のあるユーザーは一度試してみる事をお薦めする。改めて本作の奥深さを実感できるだろう。
また、本作では特殊な技を繰り出す能力『スキル』を追加。スキルはユニットごとに必ず1つが割り当てられており、効果も5連続で攻撃する技や敵から体力を奪い、こちらの体力を回復させる技などバリエーション豊か。この要素の導入に寄り、一層ユニットごとの個性が増強され、戦術面においてもぶっ飛んだ方法が試せるようになったのは、1つのシミュレーションRPGとして劇的な進化と言える。だが、スキル自体はお世辞にもまとまっているとは言えず、有利な能力を持つ者と持たない者との差が露骨に開いてしまっているのは痛い。特に2回攻撃を行う『追撃』スキルは、正直な所、要らなかったのではとも思うほど。できれば、あると有利ではなく、あっても無くても差は生まれないバランスを実現して欲しかった。これでは結果として格差を作り出してしまってるとしか言い様が無い。
だが、システム的な試みとしては面白いことに間違いはない。 この他にも武器ごとの相性を表した『武器の三すくみ』、騎馬系ユニットに新たに追加された新アクション『再行動』、軍のリーダーキャラクターの能力を表した『指揮官レベル』など目立つ新要素は多い。
一部、バランス崩壊を招いてしまってるものや、練り込み不足なものなど荒削りな所があるのがタマにキズではあるが、いずれの要素も新鮮味満点で、制作スタッフが如何に『新しいファイアーエムブレム』を作り出そうとしていたか、という熱意をひしひしと痛感する事ができる。こういうチャレンジ精神は成功しているしないにせよ、評価に値する。

ストーリーも今作では、先述で軽く語ったが親の代と子供の代の二部構成で展開する壮大な内容となっており、一つの歴史を感じられる作りとなっている。本編も非常に面白く、基本は王道モノながらも戦争の愚かさやかなりエグいテーマをストレートに描いており、プレイヤーの心を大いに揺さぶる。特に禁断の血縁者結婚とその悲劇、子供の生贄のテーマを扱った場面のエグさは常軌を逸する凄さ。「こんなのやって良いのかよ…」と逆に不安を覚えてしまう事間違いなしだ。また、5章クリア後の展開も衝撃的。恐らく、大半の人はそのあまりの凄さに頭の中が真っ白になってしまうだろう。
ゲーム本編並びにストーリーを彩るグラフィックと音楽の出来も素晴らしい。流石に成熟期に発売されたゲームだけに、どれもレベルが桁違い。中でも音楽は鬼気迫る完成度で、サウンドテストが用意されていないのが勿体無いと感じるくらい。これだけでも十分に元は取れる。特に2章『アグストリアの動乱』、5章のエンディングの2つは必聴の価値ありだ。
また、ゲームバランスもスキルの件もあってやや大味な面がありもするが、全体的には従来通りの絶妙な手強さを維持。確かな達成感と心地良い疲弊感を提供してくれる。今回はセーブが毎ターン行われるようになった事もあり、全体的に難易度の敷居が下がっており、初心者でも取っ付き易くなったのもナイスな改善点だ。

この他、オプションにゲーム進行スピードの調整が追加されたり、プレイヤーの腕前を評価するランクシステム(これは賛否が分かれる)と隠しオープニングが導入され、やり込み甲斐が大幅に増したなど、進化並びにアレンジが施された点は数知れず。スキルのバランスに武器の交換が無意味に嫌らしいものとなってしまった事、そして毎ターンのセーブで詰まりが生じ易くなってしまったなど、目に余る欠点もチラホラとあるが、ゲームとしての完成度は十分に名作に値する。
しかし、そう言い張っても本作、万人には薦められない。確かに、意欲的な新要素の数々や戦乱をリアルに描いたマップ構成とゲーム展開など見所は満載だ。それにストーリーの毒々しさも特筆に価する。しかし、システム的な癖があまりに強い為にかなり好き嫌いが出る。特に前作までを遊んだ方には、あまりのシステム的な違いっぷりにアレルギー反応すら起こすかもしれない。でも、名作に値するゲームである事は確か。それだけは言い切れる。
とにかく、食わず嫌いしないと自負するシリーズファンの方、そしてやり応えがあり、ボリュームも申し分が無いシミュレーションゲームが遊んでみたいという方ならば、是非とも遊んでみるべき価値のある逸品だ。シリーズ未経験の初心者の方も、今作はある程度、取っ付き易い作りとなっているので、やってみる価値はある。
但し、恐ろしく毒々しい内容なので、その辺は注意されたし。気分を悪くしても、こちらは一切の責任を負いません。
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