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≫ファーランドストーリー
■発売元 バンプレスト(現:バンダイナムコゲームズ)
■開発元 TGL
■ジャンル シミュレーションRPG
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 11340円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ((※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 スーパーファミコンマウス対応(※通常のコントローラでも遊べます)
■総説明書ページ数 37ページ
■推定クリア時間 20〜25時間
遥か古のこと、「魔王」と称するものが現れ、配下の魔物を率いてこの世の征服を目論んだ。
魔王は魔界との扉を開き、次々と魔物を送り込み、世界を破滅へと導こうとしたが、その国の人々は力を合わせ、魔王に立ち向かい、壮絶な戦いの末にこれを退け、彼らを魔界に封印する事に成功。そして、封印に使われた鍵は4つに分けられ、この地に住む4つの種族に託された。

そして、封印を見守る為、『フェルサリア王国』が建国された。以降、平和な時代が数百年に渡って続いたのだが、その静寂は魔界の力を欲し、封印を解き放った女王の手によって打ち砕かれる。封印の鍵が揃っていなかった為、魔王の復活こそならなかったが、女王は魔界より次々と魔物を召喚し、各地に侵略の手を伸ばし始めた。
その魔の手は辺境の村にまで迫り、村の若き司祭である少女フェリオが魔王復活の為の生贄として誘拐されてしまう。彼女の幼馴染である剣士アークは、彼らからフェリオを助け出す為、仲間達と共に追撃出る。
果たして、アークはフェリオを無事に救出できるのか。そして、彼を待ち受ける運命とは。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆出撃ユニット編成等の要素を廃し、RPG周りの要素と遊び易さを全面に押し出した、ライトなゲームシステム
◆RPG色溢れる本編の展開とフィールド探索的な仕掛けも凝らされたマップ構成
◆個々のユニットの能力を活かす采配が求められつつも、力押しも少し許された、優しくも程好く手強いゲームバランス
◆飛び抜けて強くなるユニットが一人が居ないなど、丁寧に調整されたユニット間の能力バランス
◆毎ターンごとのセーブを始めとする、良心的なオプション機能の数々
◆1対1の一撃勝負という単純明快さとテンポの良さ、キャラの可愛らしさが光る戦闘シーン
◆見た目こそ四角形でありながら、上下部分二方向から攻撃を受ける変わった仕組みでデザインされたマップのマス目
◆倒れても回復魔法で回復すれば即座に復活可能な、緩過ぎるユニットロスのペナルティ
◆ファンタジーの王道を突き詰めた、ベタながら安定感のあるストーリー(二部構成と、ボリュームもそこそこ)
◆ボス戦時にマップ上の曲を変化させるなど、地味ながらもツボは抑えた演出周り
◆チョコマカとした動きと可愛らしいデザインが印象的な戦闘シーンのグラフィック
◆抑え気味ながらも、盛り上げる所では徹底的に盛り上げる音楽(特にボス戦系全般)

--- Bad Point ---
◆遠回りな進行を強いる、苦痛な構成の第一部のマップデザイン(そのせいで1マップに2時間以上かかる所も…)
◆第一部よりも悪くないが、逆にテンポが良くなって素っ気無さが目立つ第二部のマップデザイン
◆移動速度の遅さ、レスポンスの悪さなど、お世辞にも快適とは言い難い操作性
◆編成が無い故に全員強制出撃となり、その数が増えれば増えるほど移動操作の煩わしさが増していくユニット
◆実質、第一部が全体の6〜7割を占めていると言っても良い、バランスの悪い総計ボリューム
◆個性的ではあるが、仕組みを理解するまでは配置間違いを起こし易いマップのマス目
◆一部、セーブのタイミングを間違えると詰み状態になる場面の存在(ボス戦など)
◆ステータスからして跳ね上がり過ぎな感が否めない最終ボス(強さが一線を超え過ぎてる)
◆悪く言えば、先が読め易いストーリー
▼Review ≪Last Update : 5/26/2013≫
謎の黒騎士、その正体は…。

大体、想像した通りです。


1993年にPC9801向けソフトとしてTGLより発売され、好評を博したシミュレーションRPG、『ファーランドストーリー』シリーズの第一作『ファーランドストーリー』と第二作『ファーランドストーリー伝記』を一本にまとめた、リメイク作品。

前半の冗長なマップデザインがタマにキズだが、初心者に優しいライトなゲームシステムと王道故の安心感が光る、良作シミュレーションRPGだ。

ゲーム内容はターン方式で展開するシミュレーションRPG。主人公のアークを始めとする仲間達をカーソルで移動させ、マップ上を徘徊する敵ユニット達を倒しながら、勝利条件の達成を目指すというものである。本編はオーソドックスなキャンペーン(ステージクリア)方式で展開。基本的にはボスの撃破、情報収集などの条件達成を目指し、ユニットを動かし、敵との戦いなどを繰り広げていく。
システム周りもプレイヤーと敵の番(フェイズ)を交互に繰り返すターン制、ユニットのクラスチェンジなど、シミュレーションRPGとしては極めて王道な作り。特徴的なものとしてはマップのマス目があり、見た目はスクエア(四角形)ながら、上下部分に限定して二方向からの攻撃が可能という、ヘクス(六角形)風の変わった作りになっている。この為、特定のユニット及び場所を守る為の壁が構築し難いなど、少々癖のある戦術が至る所で求められてくる。見た目はスクエアなのにヘクスであるというその作りも、スクエア式のシミュレーションRPGに慣れ親しんだ方なら、戸惑いを覚えるかもしれない。
また、もう一つ珍しい仕様として、今作には出撃準備(編成)画面がない。基本的に各マップをクリアすると、即座に次のマップが始まる仕組みになっている。更に編成がないので、仲間になっている全ユニットはどのマップでも問答無用で強制出撃となる。仲間と言っても別に任天堂のファイアーエムブレムシリーズのように50人以上も登場する訳ではなく、全体的にはやや少なめ。ただ、裏を返せばあらゆるマップで全てのユニットを活かした戦いが求められてくるので、効率的な育成を心掛ける事が攻略の大きなカギとなってくる。編成が無い為に誰を出撃させるかと言った試行錯誤の楽しさは皆無。その辺の醍醐味を求める方にとっては非常に素っ気無い作りではあるが、その分、戦略とユニットの育成というシミュレーションRPGの肝とも言える部分は思う存分に満喫できる。まさにジャンルの旨みだけを抽出したゲームデザインと言ったところ。シンプルなやり応えと面白さを追求した作りとなっている。
その特徴は戦闘システム、ユニット管理、環境周りにも反映されている。戦闘システムはまさにシンプルの極致とも言える、1対1の一撃勝負。基本的に先に攻撃を仕掛けた者から行動し、剣や魔法による攻撃を”一発だけ”行う、スピーディで分かり易いものになっている。更にいわゆるダメージ計算、命中率、武器の耐久値と言った緻密な数値表示も無し。あまり難しく考えずに攻撃を仕掛けていける、敷居の低い設計とされている。それでいて、単に攻撃を仕掛けていけば良いというほど甘いバランスではないのがミソ。ユニット同士の相性、地形効果による能力上昇など、この手のジャンルではお馴染みの要素は健在なので、その辺をよく検討した上での戦術も求められてくる。
ユニット周りでも、体力がゼロになると戦闘不能になる、シミュレーションRPG特有とも言えるシビアなシステムが存在。だが、戦闘不能と言っても行動ができなくなるだけで、マップからは撤退しないというのが最大の特徴。しかも、その場で回復魔法をかける処置を施せば、即座に戦線復帰ができてしまうのだ。だが、戦闘不能のユニットを放置した状態でステージをクリアすると、そのユニットはロスト扱いになってしまうので、雑なユニット管理をしているときついしっぺ返しを喰らう。ロスト周りが緩い為、初心者でも抵抗無く遊べる強みがありながら、舐めると痛い目に遭うデメリットも完備という容赦の無さ。こんな所にもシンプル故の良さと損ねてはならぬ売りを強く意識した作り込みが徹底されており、今作が単に遊び易いシミュレーションRPGではない事をまざまざと見せつけている。
他の毎ターンのセーブが行えるなど、気軽に遊べる為のシステムも搭載。しかし、迂闊なセーブを行うと厳しい局面に立たされるなど、タイミングを見計らったプレイも求められるなど、単に親切なだけに終わってないのが侮れない。
こんな具合に、全てにおいてシンプル故の魅力を突き詰めた作り込みを徹底。それでいて、ヌルいゲームにしない為のシビアな要素も盛り込むなど、ただシンプルなだけで終わらせない設計も施されている。スクエア風なヘクスマップなど、やや癖のある部分もあるが、細かい数値を気にせずに遊べるので、シミュレーションRPG初心者には打って付け。それでいて、ちゃんとジャンル特有のやり応えも残された、非常に良質な入門編作品として仕上げられている。

例によって、今作の魅力はシミュレーションRPG初心者に優しいライトなゲームシステム、甘そうに見えて全然甘くない、絶妙な味わいに富んだゲームバランスの二つだ。
システムに関してはRPGとほぼ同じ感覚で楽しめる、手軽さを強く意識した作りが秀逸。細かい数値情報に目を配る必要もなく、気楽にマップ攻略の醍醐味を楽しめるというのがジャンル未経験の初心者、そしてRPG経験者には嬉しい。何かとシビアなイメージを思い描き易いユニットの生死に関しても、仮にやられてしまっても回復魔法をかけるだけで即座に復活させる事ができるなどと非常に緩く、気難しく考えなくていい配慮が施されているのが見事。毎ターン、セーブが可能であるなど、腰を据えてプレイする必要も無く、自分のペースに合わせて進めていける設計になっているのも初心者、時間に追われるプレイヤーには有り難いところだ。
それでいて、回復処置を施さずに放置したままステージをクリアしてしまうとロスト扱いになるなど、ちゃんとバランス周りでシビアな所を残しているのが上手い。別にそのような放置事故、ユニットの現在位置把握に神経を配れば防げるものでは…と思うかもしれないが、意外とこれが油断ならない。というのも、戦闘の状況によっては、この仕様が大きな脅威となってくるのだ。特に復活のカギたる回復役ユニットが戦闘不能になった時、専用アイテムが尽きてしまった時にはその恐怖を嫌というほど思い知らされること間違いなし。下手に強敵に挑んでみたら負けてしまったので、回復で復活させよう…と思ったら、回復役がやられてる!なら、アイテムで…と思ったらストックが無い!復活できない!他のユニットで強敵を仕留めたいと思っても、対抗できる者が居ない!まさにどん詰まり!緩いからと言って、無鉄砲な戦術が許されている訳ではなく、ちゃんと状況に応じた行動を心掛けていかないと、絶望のどん底に叩き落されるのだ。念の為、そんな状況に陥るのは極端に無計画な行動を取った時ぐらい。普通にアイテムの確保やユニットの適切な配置、無闇なセーブをしない事を心掛けていけばほとんど防げるようにはなっている。しかし、裏を返せばそれは、今作では悪戯且つ適当な戦術を許していないという事。幾ら初心者向けとは言え、その辺には一切の妥協無し。シミュレーションRPG特有の醍醐味とゲーム性を残す作り込みは徹底されているのである。
更にそれは敵との戦闘も然り。ある程度単騎プレイに持ち込める所はあるものの、基本的には他の仲間を上手に活かして戦っていく事が求められるので、力押しはやり難い。初心者向けだから物理任せのプレイでゴリゴリ進めていける、なんて思ってプレイすれば返り討ちに遭うのは必至。そんな所にしても、徹底したチューニングが施されている。
他にも仲間こと、個々のユニットにしても優れた火力を持ちながらも魔法にはてんで駄目な者、回復専門だけど戦闘には弱い者等、個性の分け方がしっかりしており、誰一人、成長させた所で完全無欠の最強ユニットになる訳ではあらず。そう言った個性豊かな能力を持った者達を状況に応じて動かしていくゲーム性にしても、今作は一切疎かにしていない。
何かとシミュレーションRPGというジャンルはマニアックなゲームとしてのイメージを抱かれ易い。そのイメージを払拭すべく、分かり易いシステム等を売りとした作品で徳間書店インターメディアのリトルマスターシリーズがあるが、今作もまた、そんなイメージ払拭の為に作られた作品の一つとしてカテゴライズされる資格を持っていると言ってもいいだろう。
リトルマスターシリーズと比べてしまうと、緩めとは言えユニットロストの概念がある為、こちらの方が難易度的には高いが、それでも取っ付き易さと敷居の低さ負けず劣らず。それでいて、程好い緊張感も味わえたりと、初心者だけでなく上級者も十分な満足感と手応えを堪能できる内容に仕上げられている。ゲームデザイン的にはRPG部分の色が強いが、個性豊かなユニットを動かして勝利条件達成を目指すなど、特有のゲーム性は健在で、シミュレーションとしての遊び応えも申し分ない。遊び易くもあり、手応えも十分堪能できる。まさにシミュレーションRPG入門編として適した作品なのは言うまでも無いだろう。少々、素っ気無いところもあるが、敷居の低さが際立った作品に完成されている。

ただ、今作を入門編とお薦めするには非常に厳しい点が一箇所ある。それがマップデザイン。これがまたプレイヤーに遠回りを強いる、非常に冗長でダルい作りになってしまっているのだ。特にこの拙さが炸裂しているのが第一部。冒頭の紹介通り、今作は二部構成のストーリーになっているのだが、この第一部で登場するマップというのがどれも酷い出来。変に遠回りを強いられる場面が多く、何処もクリアに1時間以上かかるのが普通という内容になってしまっている。しかも、最悪なのが冗長にする必然性が何処にもない事。あからさまな水増しになってしまっているのである。そんなマップが第一部では終始続くという構成。これが如何に苦痛なものかは大体想像が付くだろう。とにかく、センス皆無。攻略していても楽しさ以上にダルさが勝るという、非常に残念な出来になってしまっているのだ。
幸い、その後の第二部は水増し皆無の良好なマップで構成された内容になっているのだが、だったら何故、その路線を第一部で追求しなかったのか。一応、リメイクというのなら、修正ぐらいしても良かっただろう。結果的にそれを行わず、ベタに引き継いでしまったのが残念でならない。少し出来を検証した上で修正を決断して欲しかったところだ。この問題点が存在する為、今作はシミュレーションRPG入門編として進めるのが難しい作品になってしまっている。入門に適した作りなのは揺るぎの無い事実なのだが、この問題点一つの為にお薦めができないというのが何とももどかしい限りだ。
また、操作性も難あり。特にカーソルの移動スピードの遅さがきつく、マップデザインに問題のある第一部でその拙さが余計に際立ってしまっている。メニュー回りにしても少しもたつくところがあり、イマイチ快適に動かせないのが煩わしい。せめてカーソルのスピードはオプションで調整できたりすればまだ良かったのだが、そのような配慮も無く、デフォルト以外の設定で使えないというのが残念でならない。
全体のボリュームにしてもエンディングまで大体20〜25時間ほどだが、その内の12時間近くは第一部で消化されるなど、マップデザインの悪さの為にバランスの悪い内容になってしまっているのが引っ掛かるところ。逆にこれで第一部が第二部並にテンポの良い内容であれば短くなっていた可能性すら考えられる訳だが、冗長なプレイをやるよりかはテンポ良く遊んだ方が気持ちいいのは明らかなこと。可能なら、その路線で突き詰めて欲しかったところだ。

その他、グラフィックはマップこそ質素だが、キャラクターの顔、戦闘シーンのアニメーションは非常に良い出来。特にコミカルなドット絵が懸命に動く戦闘シーンは必見だ。
音楽も第一部のクライマックスを始め、印象深い楽曲が満載。ストーリーもベタ過ぎるほどにファンタジーの王道を突き詰めた内容で、凄まじいありがち感が漂うが、悪い出来ではない。盛り上げるシーンでは演出も含めて徹底的に盛り上げるなど、ツボをしっかりと抑えた作りになっている。その演出もボス戦に突入するとマップ曲まで変化するなど、地味な見た目をカバーする作り込みが成されているのが秀逸だ。
それだけにマップデザインの問題があまりに大きいのが惜しい。マップデザイン以外でも、一部にセーブのタイミングを間違えると詰みが発生する場面がある事、最終ボスのステータスがやや突き抜け過ぎであるなど、粗が散見される。そんな致命的にも等しい欠点の存在があまりにも残念だが、シミュレーションRPGの入門編としての作りは悪くない。むしろ、かなり良質だ。それでも、水増しの酷さもあり、プレイ前にある程度の覚悟と腰を据える余裕が求められるのが何とももどかしい。入門編としては申し分無し、だけど褒められない部分が沢山あるという困った作りの今作。
良作ではあるが、遊ぶ際に少し覚悟が要る一品だ。繰り返しになるが悪い作品ではない。シミュレーションRPG未経験者から上級者まで手軽に楽しめる内容になっている。ただ、結構なパワーが求められるので、その点だけ要注意だ。
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