Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo Switch>
  4. 深世海 Into the Depths
≫深世海 Into the Depths


■発売元:カプコン / ■ジャンル:潜水探検アクション /
■CERO:B(12歳以上対象) ※暴力・犯罪表現あり / ■定価:1,990円(税込)

◆公式サイト / ストアページ
≫『深世海 Into the Depths』(カプコン公式サイト)
≫深世海 Into the Depths(My Nintendo Store)

©CAPCOM CO., LTD. 2019, 2020 ALL RIGHTS RESERVED.
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:5つ+オートセーブ1つ / ■必要容量:2.2GB /
■プレイモード:TVモード、テーブルモード、携帯モード / ■推定クリア時間:5~6時間


地表が氷に覆われ、人々が海中での生活を余儀なくされた世界。
長き年月が過ぎ去った今も、氷は広がり続けており、文明は崩壊の一途を辿っている。

そんな氷の脅威にさらされながらも、海中で生き続けていた「潜海者(せんかいしゃ)はある日、偶然にも未知の機械「潜導(せんどう)」と出会う。そして、彼はその出会いを機に広く深い海の底を目指すことになる。その先に待つ、彼の運命とは。
▼Pros cons Pick up
--- Good Point ---
◆全編、水中(海底)という思い切った舞台設定と神秘的な世界観をバックに展開されていく本編
◆体力と制限時間、2つの役割を持つと同時に損傷を与えないようにする独特の管理が試される「酸素ボンベ」
◆神秘的な世界観の印象を一層際立たせる、文字情報皆無の意味深で考察意欲を刺激するストーリー
◆常に水の抵抗がかかり続けるなりの重々しさと、無重力空間に近い浮遊感が異彩を放つアクション
◆見事に“じゃじゃ馬”な癖の強さを持ちながら、相応に上達するほどに大胆な行動が取れるようになっていくカプコン往年のアクションゲームを思い起こさせる極める面白さ
◆それぞれ異なる特徴を持ちつつ、戦闘から探索まで幅広く活躍する見所を持った「銛」を放つ武器
◆癖のあるアクションとは裏腹に複雑な組み合わせは皆無で、直感的に動かせる作りにまとまった操作
◆個性の強い作りに適応できるよう、マップ構造まで神経を配って設計された序盤のチュートリアル
◆探索型アクション特有の新装備、追加能力、乗り物(!)の入手と共に行動範囲が広がっていく楽しさ
◆世界観の神秘性と海中が舞台であるなりの美しさが見事に表現されたグラフィック
◆本当に水中(海底)の中にいるかのような臨場感に満ちた音楽と効果音(ヘッドホン装着推奨!)
◆所々にさりげなく仕込まれた往年のカプコン名作ネタの数々(なんとあの“青き英雄”のものも……)

--- Bad Point ---
◆チュートリアルは万全ながら、癖が強いなりにそれなりの慣れが求められるアクション全般
◆ボタン配置的に違和感が否めない「銛」の切り替え操作(LボタンではなくてRボタンが良かったのでは)
◆「銛」の切り替え操作へのもどかしさを助長するキーコンフィグ機能の未実装
◆一部、スキップに対応していないイベントデモの存在(オープニングの氷が浸食してくるシーンなど)
◆酸素ボンベの仕組み上、弱点を発見するまで一方的に追い詰められる展開になりがちな大型ボス戦
◆厄介なトラップの存在と倒し方における作業感の強さがタマにキズなラスボス
▼Game Overview
海の底には、カプコン伝統の全回復の赤いヤツも眠る……?



◇2019年9月、Appleのゲームサブスクリプションサービス「Apple Arcade」向けに配信されたカプコンの完全新規タイトル。「Team 深海」なるカプコン内部の小規模チームが開発。Nintendo Switch版は、Apple Arcade版の配信から年を跨いで数ヶ月後となる2020年3月26日に発売された。こちらは買い切り型となっている。内容としては迷路のように入り組んだ広大なフィールドを舞台に繰り広げられる、横スクロールの探索型アクションゲーム。プレイヤーは主人公「潜海者(せんかいしゃ)」となって作中の舞台となる海底世界、「世海(せかい)」を途中で出会う未知の機械「潜導(せんどう)」と共に冒険を繰り広げていく。最終目標は「世海」の最深部へと到達すること。要は海の底を目指して、どんどん潜っていくというもの。

◇言うまでもないが、最終目的地たる世海の最深部へはそう易々とは到達できない。その途中で「世海」全体を蝕む「氷」の脅威に直面したリ、危険な海洋生物が立ちはだかる。また、潜水を続けていくと血のように赤く染まった区域も現れる。赤い境界面は高水圧の「水圧限界エリア」で、ここに侵入すると主人公がまとう潜水服と酸素ボンベ(後述)が徐々に消耗。ゆくゆくはすべてが失われ、ゲームオーバーになってしまう。しかし、最深部を目指すに当たっては、この水圧限界エリアの突破が不可避。そのために地面に埋まった「資源」を回収し、潜水服を水圧に耐えられる状態に強化させていくことが求められる。本作は潜水服の強化を都度図りながら、海底を探索していくのが基本的な流れ(遊び方)となる。

◇迷路のように広大なフィールドを舞台する探索型は、行き先が分からなくなって迷ったり、右往左往してしまうことに直面しやすい。本作は常時、目的地がマーカーで表示される仕組みになっているため、そのような事態には見舞われにくくなっている。また、水圧限界エリアによって行動範囲にも縛りが生じることから、過剰に道を外して行き先がさらに分からなくなってしまうような詰みに等しい状態にもなりにくい。

◇言うまでもなく、本作の舞台は海の中、水中なので行動の際には常時、水の抵抗がかかるようになっている。そのため、ジャンプにせよ、武器による攻撃にせよ、挙動が重い。特にジャンプに関しては、まるで無重力空間にいるかに等しい“フワッ”とした浮遊感がある。また、これらの行動を取る度に「酸素」が減っていくようになっている。もし、酸素を全部失ったりでもしたらどうなるのかは語るまでもなく。よって、本作は酸素の残量にも気を配っていくことが求められる。
酸素の残量は、前述した「酸素ボンベ」を回収すると最大値を上昇させられる。ただ、ボンベは敵の攻撃を受けたり、高所から飛び降りる行動を取るとヒビが入る。そのまま何回か、いずれかの行動を取るとボンベは大破して最大値も減ってしまう。再びボンベを回収できれば最大値を上げられるほか、採掘を通して手に入れた資源を消費すればヒビも直せる。だが、頻繁に実施できる訳ではないので、極力、破損させないように行動することが求められる。システム的にも主人公自身の体力であり、生命線(制限時間)でもあるという、他の体力制(ダメージ制)を採用したアクションゲームとは異なる二面性を持った作りになっている。

◇海の中での冒険を続けていくと、主人公の能力上昇や追加アクションを可能にするアイテムも手に入ることがある。それによって行動範囲が広がるといった、探索型アクションゲームらしい展開もバッチリ押さえられている。
ある程度、ゲーム本編が進むと「潜水艦」も使えるようになり、それまで以上に広い範囲を探索可能に。また、内蔵された「ドリル」で穴を開け、新たな道を作り出すようなこともできるようになる。
▼Review ≪Latest Update :10/13/2024 | First Publication Date:10/13/2024≫
海底という舞台設定を巧みに活かしたアクションとゲームデザインが光る傑作。
カプコンらしい“トガった”個性も健在であり、ホドホドの塩梅に留まっている。
正直、カプコンの探索型アクションゲームには、よくも悪くも鋭くトガった特徴があるように思う。また、探索面での配慮が足りていなかったり、他の要素との絡み方が不十分で、余計なストレスを感じやすいゲームバランスが組み上がってしまっている傾向も見られる。なんのタイトルのことを指しているのかは書かないでおくが。

本作も、そうしたカプコン特有のトガった部分が存在する。海底が舞台ゆえの重々しいアクションの手触りと浮遊感、酸素周りの管理とボンベの仕組みが最も象徴的なトガったところである。ただ、本作は最も個性が際立っているアクション以外の部分は遊びやすさに注力していて、余計なストレスを感じにくいものに仕立て上げている。途中経過の記録(セーブ)と酸素の補充が可能なチェックポイントを豊富に設けたり、マーカーで次の目的地を指したり、操作説明を兼ねたイベントを豊富に用意するなどがその一例。おかげで、本作は最もトガっている部分たるアクションを集中的かつ、素直に楽しめる。

また、アクション自体のいい意味での”じゃじゃ馬”ぶりも光る。舞台設定が舞台設定だけに、本作ではどんな行動においても水の抵抗を受け続けるので、思い通りにキャラクターが動いてくれず、それによる”間”を挟んでしまう。そういったハンデを背負って探索と戦闘をこなしていくのが、まさに本作ならではの手応えを表現していて、いい意味でも悪い意味でも記憶に残る体験の数々を作り出してくれる。

操作自体がそんなに入り組んでいないのも魅力。スティックからボタンまで広範に使いはするものの、複雑な組み合わせなどはなく、直感的に動かせる。チュートリアルも豊富で、段階的に各種アクションを覚えていけるので、動かし方が分からなくて行き詰まるようなこともない。

アクション自体も意外に多彩。移動とジャンプのほか、「ブースト」による高速移動と水中内の浮遊、そして壁などをつかんで登るといった縦横無尽な行動が取れる。戦闘などで用いることになる武器も、本編の進行に応じて異なる特徴を持った銃が手に入るようになっていて、それと共にさまざまな攻撃が可能になっていく。
しかも、銃は戦闘のみならず、スイッチに引っ掛けて起動させるといった探索面でも活躍。その中には天井に銛を突き刺して宙吊り状態になった後、身体を動かして勢いをつけ横方向に飛ぶという、とてもバイオニックなアクションも。古くからのカプコンファンに限らず、バイオニックな魂を宿す人ならば、ニヤニヤが止まらなくなるだろう。

とは言え、一連のアクションは水の抵抗を受けることもあって、微調整や操作感の重さにはストレスを抱くかもしれない。だが、逆に言えば慣れればなれるほど、縦横無尽に海底世界を駆け巡れるようになっていく。
そして、“じゃじゃ馬”だからこそ上達の具合も分かりやすい形で現れる。戦闘時、ブーストを駆使した俊敏な回避ができた時が最たる一例だ。こうした上達による変化が露骨だからこそ2周目以降の周回プレイへの関心も刺激させられやすく、実際に遊んでみると、1周目との決定的な違いに感動すら覚えたりする。

この手のアクションを極める楽しさが盤石なのが素晴らしい。何よりも、古きよき時代のカプコンのアクションゲームらしさがある。前述したバイオニックなアクションが楽しめた作品がいい例だが、カプコンのゲームには動きに癖のある作品も多々存在した。基本的に高度な操作技術が試される硬派な内容だったが、やりこんでいくたびに大胆な動きで立ち回れるようになる魅力があり、それが独自の中毒性と記憶に残る体験を作り上げてもいた。本作には、そんな往年のカプコンのアクションゲームが持っていた魅力が海底という舞台設定を用いる形で描かれている。

最初はどうしても癖の強さに難儀するだろうが、最終的には見違えるほど海の中をスムーズに動けるようになる。そのため、本作はアクションゲームに極める楽しさを求める人ほど刺さりやすい。
逆にアクションゲームが苦手な人は、一連の特徴から「厳しそう」との印象を抱くかもしれないが、前述の通り操作は難しくない。また、序盤は操作に慣れることに集中してもらうため、マップの構成や敵の配置なども神経を尖らせて設計されている。セーブポイントも道中には豊富に設置されているので、自分なりのペースで進めていける。

癖はあるものの、手触りと極め甲斐は唯一無二。陸地を舞台にしたアクションゲームでは味わえない面白さがあるので、興味を持ったのならばぜひ、挑戦いただきたいところだ。アクションゲーム屋としてのカプコンの底力を実感させられるはずである。
地表が氷に覆われ続けているとの過酷な世界観が象徴するように、ストーリーも考察意欲を刺激する作りになっている。しかも、ストーリーにちなんだイベントでは基本的に台詞などの文字情報がない。キャラクターたちの動作、探索中に手に入る資料アイテムなどから推測する形になっている。大筋そのものも、海の底を目指すという分かりやすいものなのだが、最深部へと迫る終盤には意表を突く展開が待っていて、そのまま驚きのエンディングに向けて進んでいく。どんな展開かは見てのお楽しみだが、おそらく、本編の始まりからは想像もつかなかったスケールの大きさが色んな意味で印象に残ってしまうかもしれない。

ストーリーにちなんだ部分ではグラフィック、音楽も世界観にマッチした神秘的な雰囲気漂うものに仕上げられている。中でも音楽は楽曲に限らず、効果音まで本当に水中にいるかのような籠った感じに仕上げられている。それもあってか、ヘッドホンを装着してプレイすれば、さらに臨場感の高まった海中探検が楽しめるようになる。実際にゲーム開始前にも「「有線イヤホン、又はヘッドホンを着用して水中サウンドをお楽しみ下さい」と出るほどなので、ぜひヘッドホン用意の上で遊んでみていただきたい。

ボリュームも普通に進めて5~6時間で、探索型アクションゲームとしては丁度いい規模に収まっている。隠された収集物の全回収、高難易度への挑戦、クリア後のタイムアタックなどのやり込みも豊富で、特にタイムアタックは癖のあるアクションも相まって、非常に極め甲斐のあるものになっている。腕に自信があればお試しを。

全体としてよく出来ているが、ゲームオーバーからのリトライでも一部イベントデモのスキップができなかったり、大型ボス戦の冗長な構成と所要時間の長さなどの気がかりな難点もある。中でも大型ボスは適切な倒し方を発見するまでは、システムの都合もあって一方的に追い詰められやすく、ゲームオーバーを連発しやすい。ラスボスは最たる一例に加え、エンディングにまつわるトラップまで仕込まれているだけあって、もう少し緩めに調整できなかったのかと思う。細かい部分でも武器、弾丸である「銛」の切り替えがLボタンというのに違和感が否めない。右スティックで狙いを付ける操作があるのを踏まえれば、Rボタンが良かったように思うのだが。厄介なことにオプションでボタン配置の変更もできず、慣れるしかないのがもどかしい限り。

とは言え、総合的には海底世界の探索とアクションの面白さで頭ひとつ抜けた完成度になっている。カプコンのアクションゲームらしさも一部の武器などで感じられるほか、某青き英雄ネタもあったりと、往年のファンの心をくすぐるネタも満載だ。海底ならではのアクションを独自の体験、そしてストーリーが楽しめる良作。この手の探索型アクションゲーム好きはもちろん、古き良き時代のカプコンの横スクロールアクションゲームを好んだ世代も試してみていただきたい1本だ。
≫トップに戻る≪