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≫Light Fall


■発売・開発元:Bishop Games / ■日本語ローカライズ:架け橋ゲームズ(※翻訳:大島のぞみ)
■ジャンル:アクション / ■CERO:A(全年齢対象) / ■定価:1,600円(税込)

◆公式サイト / ストアページ
≫Light Fall(My Nintendo Store)
≫Light Fall(Steam)

© 2018 Bishop Games. All rights reserved.
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:3つ / ■必要容量:3.3GB /
■プレイモード:TVモード、テーブルモード、携帯モード / ■推定クリア時間:5~6時間


太陽が決して昇らぬ永遠の夜の地「ナンブラ」。
その環境の厳しさから、生き残るのは強き者に限られ、弱者は朽ち果てる運命にあった。

されど、隣接する国が引き起こす戦争に疲弊した小国「カンループス」の民は、この地への移住を諦めようとはしなかった。その執念が実り、彼らは永遠の闇に包まれた安息の地を発見。平和と安定を手に入れたかに思われた。

だが、その希望を圧し折る恐るべき脅威が迫りつつあった。
同時に突如、漆黒の幼子が産まれる。
幼子は何かに導かれるようにナンブラの地を駆ける。



果たして、幼子の正体と目的とは。
▼Pros cons Pick up
--- Good Point ---
◆純粋なステージクリア型ながら、高いストーリー性によって舞台作品のような雰囲気を持ったゲームデザイン
◆足場としての活用に加え、仕掛けの解除に攻撃、防御への応用にも対応した主人公の特殊能力「シャドウコア」
◆アクションゲームの王道「ゴールへの到達」に厳守しつつ、時に意表を突く展開も交えた全16ものステージ
◆イベントシーンに限らず、ステージ本編も含めて日本語吹き替えのフルボイスで語られるストーリー
◆複雑な歴史と神にまつわる設定、そして幕ごとの舞台となる土地の過去など、詳細かつ複雑に作り込まれた世界観
◆挙動に若干の鈍さがありつつも、慣れるほどに小刻みに動く楽しさと気持ちよさが高まってくる独特な操作感
◆操作感および「シャドウコア」を活用・応用する楽しさの深淵に迫れる魅力を持った「スピードランモード」
◆「スピードランモード」のやり込み甲斐を引き立てるオンラインランキング&ゴーストダウンロード機能
◆本編ストーリーに物足りなさを覚えたプレイヤーもゾッとするほどの手ごわさを持つ特別コンテンツ「スピードランエクスクルーシブ」専用のステージ(やりたい放題とも言える壮絶な場面が連続)
◆罠、敵に接触すれば即ミスというシビアさを持つつ、確かな上達を実感できる適切さを兼ね備えた難易度
◆永遠の夜の地「ナンブラ」の幻想的な雰囲気を見事に表現した、独特の色遣いが光るグラフィック
◆各ステージのスリリングな展開とイベントシーンの印象深さを引き立てる、オーケストラ調の力強い音楽
◆豊富なスチル(1枚絵)と躍動感のあるカットで盛り上げるイベントシーン
◆ステージ数の少なさとは裏腹に密度濃いめのボリューム(やり込み要素も豊富で、なかなか長く遊べる)

--- Bad Point ---
◆ストーリーを重点的に楽しみたい欲求には答えてくれない難易度選択機能(低難易度が用意されていない)
◆慣れてくると楽しいのだが、挙動の鈍さもあって好みが分かれやすい操作感およびアクションの挙動
◆全身が真っ黒ということもあって、視認性の面で難を抱えた主人公の幼子(特に演出の関係で彼自身が小さく表示される場面において、その課題が露わになる)
◆アップデートによって改善されたとはいえ、やや展開的な不明瞭さが露わになってしまっている最終決戦
◆「記憶のカケラ」に記されたテキストの小ささ(特に携帯モード時だと、ほぼ読めないレベルで小さくなる)
▼Game Overview
「この幼子は何者か?」



◇カナダに拠点を置くインディーディベロッパー「Bishop Games」制作の横スクロールアクションゲーム。2014年から制作が始まったタイトルで、2018年の発売前から東京ゲームショウ、BitSummitといった国内のゲームイベントにも出展され、その頃から日本国内での発売が予告されていた。日本語版のローカライズは架け橋ゲームズが担当している。
プレイヤーは主人公である「漆黒の幼子」(以下、幼子)を操作し、不吉なクリスタルが種示現し始めた「ナンブラ」の地を駆ける。本編はステージクリア方式で進行。各ステージ(レベル)のクリア条件はゴールへの到達と、アクションゲームとしては定番寄りの作りになっている。なお、本編は全4つの幕で構成されており、一定数のステージをクリアすると次の幕へと移る。また、幼子は敵、トラップなどに1回でも触れたり、穴に落ちたりすると消滅してミスとなる。ミスとなった場合は最後に通過した「チェックポイント」からやり直し。残機、ゲームオーバーのシステムは存在しないので、何度でもリトライ可能。

◇幼子の基本アクションは移動、走る(ダッシュ)、ジャンプ、壁蹴り、そして「シャドウコア」の5種類となる。最も重要かつ本作の特色にもなっているのが「シャドウコア」と呼ばれる不思議な箱を出現させる能力。箱は足場としての利用のほか、攻撃、防御、仕掛けの作動などへの応用が可能。生成に対応したボタンはABXYボタンとそれぞれに割り振られているのが、いずれも効果が異なる。Bボタンの場合は足場の生成。具体的にはジャンプ後、Bボタンを押すことによって幼子の真下にシャドウコアが生成され、足場になる。その状態から再びジャンプし、Bボタンを押してもシャドウコアは生成。ただし、4つ以上は生成できない縛りがある。もし、生成できる限界に達してしまった場合は、陸地などの足場に着地すればいい。そうすることで制限がリセットされ、再び足場が作れるようになる。このBボタンによる足場生成は、シャドウコアの特徴の中では最も基本的なものになる。

◇Aボタンの場合は幼子の前面にシャドウコアを生成。Aボタンを長押しするとコアが幼子の前方に固定され、盾代わりとして使うことができる。また、ジャンプ中にAボタンを押すと、幼子がシャドウコアに張り付くため、そのままBボタンを押せば壁蹴りへと繋げられる。そのまま連続して生成&壁蹴りを決めていけば、高い所まで登るようなことも可能だ。Xボタンの場合は幼子の真上にシャドウコアを生成。その後、左スティックを倒せばシャドウコアを360度自由に動かすことができる。ただし、動かせるのは一定時間に限られているのに加え、シャドウコアを動かしている間は幼子がその場に固定され、無防備状態になってしまう。主にレーザーといった罠を塞いだり、シャドウコアをはめ込むことで起動する特殊な仕掛けに対応するに当たって活用する形。残るYボタンは攻撃で、直線状にシャドウコアを射出する。主に行く手を阻むクリスタルを破壊したり、敵を倒すに当たって用いる。

◇本作は本編とは別に「スピードランモード」なるゲームモードも用意されている。内容としては、各ステージの最速タイムを競うというもの。プレイできるステージは、本編でクリア済みのステージに限定される。
また、タイムには「Any%」と「100%」の2つのカテゴリがある。前者は純粋にゴール到達までの最速タイムを競うもの。後者はステージごとに隠された「記憶のカケラ」と「カンループスの民」をすべて回収&救出してゴールに到達できるまでの最速タイムを競うものとなっている。なお、クリアした時のタイムはオンラインランキングへとアップロードされる。オンラインランキングからは、各種タイムを達成したプレイヤーごとのデータを「ゴースト」としてダウンロード可能。対象のステージにゴーストを出現させ、一緒に競い合いながらタイムアタックを楽しめるようになる。 また、このモード独自の要素として本編の全ステージ攻略のタイムを競う「フルスピードラン」、本編には登場しない特別なステージに挑める「スピードランエクスクルーシブ」も用意されている。後者は本編の全ステージで「記憶のカケラ」を回収しないとプレイ不可。

◇生成されるシャドウコアの形状が四角形ということもあって、アクションゲームとしてはパズル性の高い内容を想像するかもしれない。しかし、本編にパズル要素はほんの少し存在するぐらいで、基本的には走って跳んでのアクションゲームの王道に準拠した作り。いい意味で見た目とのギャップが大きいと同時に、プレイヤーの意表を突く内容にまとめられている。
▼Review ≪Latest Update :11/10/2024 | First Publication Date:11/10/2024≫
アクション性の高さが魅力……と見せかけて、実はストーリー性強めの内容が売りの力作アクション。
攻撃に防御、果ては足場の確保まで多岐にわたって活躍する「シャドウコア」と、それを駆使することが試されるステージの作りも十分に魅力(売り)と言ってもいい完成度を誇る。ただ、初見時に最も強い印象を残すのはストーリー性の高さだったりする。

というのも、アクションゲームにしては珍しく登場人物から舞台となる土地「ナンブラ」に至るまで、過去の歴史を含めた設定が非常に細かく組まれており、それらを読み解いていく楽しさを兼ね備えている。

それでいて、ストーリーにちなんだイベントシーンも豊富。そもそも、ステージの攻略中であっても、日本語吹き替えによるフルボイスでストーリーが語られるという手の込んだ作りをしている。本作のストーリーは、基本的に幼子の冒険に付き添う老フクロウ「ストリクス」によって語られていくようになっている。このストリクスの台詞というのが非常に多く、ステージ攻略中はほとんど喋りっぱなし。おかげでどこのステージも賑やかな調子で展開されていく。かと言って、うっとおしいと感じてしまう程度ではなく、ミスによってやり直しが生じた際には自動的にカットされたり、長い語りが挿入されるのは決まって高度なアクションが必要とされない平坦な場所に限定されているなど、遊びやすさを踏まえた配慮は凝らされている。

また、日本語吹き替え仕様にした判断がお見事。本作はカナダのインディーディベロッパーが作ったゲームということで、オリジナル音声は英語となっている。ただ、基本的に慌ただしい展開が続くアクションゲームの場合、英語音声にしてしまうと字幕のテキストを読む手間が生じてしまう都合、ストーリーのことに集中しにくい。
とりわけ本作の場合、ゲームスピード(ゲームテンポ)も早めで、ステージによっては目まぐるしく状況が切り替わる場面もあり、それに合わせてストーリーも矢継ぎ早に描かれているだけあって、英語のままだときつい。

そうしたストーリーを伝えたり、表現するに当たっての課題を踏まえ、日本語吹き替え仕様にしたのは極めて良い判断だったと言える。おかげでストーリーもきちんと楽しめて、その内容も頭に入ってきやすくなっている。こうした海外のインディーゲームを日本語にローカライズするに当たっては、基本的にはテキスト周りの翻訳に留めて、音声周りは原語のままにするケースが多い。

実際、本作のローカライズ全般を担当した架け橋ゲームズが手がけた過去作にも、そうしたケースがいくつか見られたが、本作はその例にならわず、元のゲームプレイを踏まえて完全な形での日本語ローカライズを実施している。実施に当たっては、色々と乗り越える必要のある壁もあったものと思われるが、オリジナルの魅力をそのまま提供するため、ボイスも含めてローカライズすることを決断したのには素直に拍手したい。おかげでアクションゲームとしての手応えに留まらず、ストーリーも楽しめる元来の魅力も味わえる見事な日本語版が生まれた。

また、語り部であるストリクスの声を担当された声優の山内健嗣氏の演技も、口うるさくておせっかいな老フクロウという設定と見事にマッチした素晴らしいものになっている。
ちなみに本編にはもうひとり、喋るキャラクターが存在するのだが、そちらも対峙する場面の難易度の高さも相まって、よくも悪くも印象に残ること請け合い。人によってはストリクス以上に印象が残るかもしれない。

肝心のストーリーも幼子の正体に迫る展開、ナンブラを統治していたとある神と幼子の関係性やストリクスが過去に味わったトラウマなどが各ステージやイベントシーンでドラマティックに語られる。演出面でも豊富なスチル(1枚絵)の活用や、ステージの展開と連動したカットを挿入するなど、盛り上げるための工夫が事細かに成されている。
肝心の日本語翻訳も違和感は皆無。ただ、そこそこ設定が豊富だけあって、登場人物の相関や歴史など、複雑なところも散見される。中盤の終わりから終盤においても、唐突な展開が続くといった若干の制作都合を感じられる場面があるのだが、このアクションゲームらしからぬ作り込まれた内容は一見の価値あり。その特色からも本作はストーリー性の高いアクションゲームが好きな人ほど琴線が刺激されやすく、非常に魅力的な作品になっていると言った感じだ。

ただ、ストーリーだけを純粋に楽しむみたいな遊び方は許容されていないので、その点は注意が必要。一応、難易度選択機能は備わっているのだが、簡単な難易度が存在しないため、どうしてもアクションゲームの操作技術は試される。加えて一部のステージは、難易度の高さそのものがストーリーと絡んでいたりもするので、低い難易度にしてしまうと色々と台無しになってしまう致し方ない箇所もある。ゆえに、ストーリーだけでも楽しめる内容を求めてプレイすることは控えることを強く推奨する。本作は高難易度のアクションあってこその内容なのだ。

なお、高難易度といってもバランス自体は決して理不尽でもない。一部、「そんな無茶な」と物申したくなる場面もあったりするが、基本的には繰り返し挑み続けることによって自然と腕前が上達していくと同時に、突破の見込みが立つ適切なバランスだ。2018年の発売当初は、最終ステージだけ、難易度が突出して高いという難点もあったのだが、後発のアップデートによって構想そのものから見直された2024年現在は、過去の話になっている。
それもあって、本作は逆に今の段階から遊んだ方が色々得だったりもする。
難易度のバランス以外にも、今からの方が得と言える点ではボリュームもある。
一応、ストーリー本編はステージ総数こそ16と少なめながら、ストーリー性の高さと歯応えのある難易度もあって、十分な密度とやり応えがある。さらにクリア済みステージの最速クリアを目指す「スピードランモード」、「記憶のカケラ」に代表される隠されたアイテムを探し出す収集要素に加え、高難易度のハードモードも用意されている。

ただ、2024年現在はその「スピードランモード」に前述した「スピードランエクスクルーシブ」が追加されたことで、さらにボリューム感のある内容へと進歩している。
この追加コンテンツを楽しむに当たっては、「記憶のカケラ」の全回収が必須になるのだが、まさに本編に物足りなさを覚えた人には打ってつけとも言える、辛口なアクションを楽しめる内容になっている。一部のステージにおいては「そんなのありか!?」となるシャドウコアの使い方も試されたりするので、もし……本編以上の手応えを求めたくなった際は挑んでみて欲しい。

他に発売当時から変わらぬ魅力としては、幻想的なグラフィックとオーケストラ調の音楽がある。特に音楽は世界観との親和性が極めて高く、各ステージやイベントを大いに盛り上げてくれる。全体的に力強さを感じさせられる楽曲が多めなのも見所だ。

操作周りについても基本、ほぼすべてのボタンを駆使する点では少しハードルの高さがあるほか、挙動も主にジャンプがやや鈍い感じになっているのは賛否が分かれるかもしれない。
ただ、制御は効きやすい上、慣れてくるとシャドウコアとの連携で小刻みに動いては、危険なトラップをかいくぐっていく流れに気持ちよさを感じられるようになる。主に「スピードランモード」でタイムアタックに取り組んでみれば、その操作周りに秘められた手触りの良さと動かす楽しさが分かるだろう。人によっては、若干のマリオっぽさを感じるかもしれない。

ストーリー周りの話題を中心にしたが、16あるステージも起伏に富んだ構成に加えて、幕ごとに異なるロケーションも相まって退屈することがない。基本的にはゴールを目指すというのがどのステージも共通しているが、場所によってはボス戦も用意。その戦闘もちょっぴり変わったものになっているので必見だ。

ストーリー重視な作風に加えて、その部分だけを重点的に楽しめる低難易度は用意しない点からも、若干ながら好みが分かれる部分もある。また、ステージによってはプレイヤーキャラクターの表示が演出の関係で極端に小さくなって視認性が悪化する場面もある。そもそも、幼子自身が真っ黒な容姿というのもあり、視認性に難を抱えていたりするのだが。

ただ、アクションゲームらしからぬストーリー性の高さと世界観周りの作り込みの入念さは圧巻。その魅力を余すことなく伝えきった日本語ローカライズも見事だ。単純にアクションゲームとしても「シャドウコア」をさまざまな形で活用し、難所を乗り越えていく点で独自の遊び応えを演出しているという魅力がある。
難易度の高さもあって、アクションゲームが不得意な人にはオススメしにくいが、逆に得意な人ならチャレンジしてみて欲しい力作だ。口うるさくも頼もしい老フクロウと一緒に幻想的な大地を駆け抜けよう。
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