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≫WiZman's World(ワイズマンズワールド)
■発売元 ジャレコ
■開発元 ランカース
■ジャンル ロールプレイング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4980円(税別)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 36ページ
■推定クリア時間 30〜35時間(エンディング目的)、70〜80時間(完全攻略目的)
外界との交流が絶たれた街『ウィザレスト』。今を遡る事百数十年前、人々は自分達が魔法使いである事以外の記憶を失ったまま、この街で目を覚ました。街の周りには、恐ろしい悪獣や異形の怪物が棲む、険しきダンジョンによって外界との一切の繋がりを遮断されており、人々は、知恵と魔法を駆使し驚異の魔窟へと挑む事になった。

だが、望みは叶わぬまま時が流れ、希望よりも諦めが勝り始めた頃、世界の崩壊という新たな絶望が彼らを襲う。危険と隣り合わせの世界から抜け出す為の努力に、迫り来る世界の崩壊から逃げ出す為の徒労が加わり、状況はまさに四面楚歌。そんな中、突如消息を絶った師匠を探し出すべく、一人の若き魔法使いがダンジョンへと潜っていく…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆拠点を経由してダンジョンを順に攻略していく事に特化した、シンプルで分かり易い本編構成
◆王道のターン制コマンド選択型ながら、属性の相性に強く依存したバランスと連続戦闘(エンカウント)を始めとする独特の工夫が光るバトルシステム
◆属性に則った背景と地形の構成、敵の編成と言った工夫を凝らした作り込みが光るダンジョン
◆三人の従者『ホムンクルス』をダンジョンに応じた形態に変身させ、困難を乗り越えていくという編成を組む楽しさと分かり易い仕組みが特色の『アニマフュージョンシステム』
◆属性の相性を付いていく戦術が常に要求される、力押し厳禁の手応え抜群の戦闘バランス
◆行動順を読み取って相手の弱点を付く事で、連続攻撃が可能になるという戦略通りに言った際の高揚感と攻撃を決める爽快感を演出する『チェインアタック』
◆いつでも拠点に戻れるほか、中断もどこでも可能という痒い所に手の届いたインターフェース
◆優れたインターフェースの使い勝手の良さを引き立てる良好な操作性(移動速度も早め)
◆本編だけでも30時間以上と、充実したボリューム(サブクエスト等のやり込みも充実)
◆職人芸のドット絵で彩られたグラフィック(特にキャラクタードットの完成度はピカイチ)
◆何処となく懐かしい曲調と少し落ち着きのある作風が異彩を放つ音楽
◆魔法をフル活用して戦う作品としてのツボを抑えたエフェクト演出
◆閉鎖世界からの脱出を目指すという、単純ながらもミステリアスな魅力に秀でたストーリー

--- Bad Point ---
◆販売元のジャレコが考案した、最低な企画によって捻じ込まれた隠しボスキャラクターの存在(世界観に場違い過ぎる上、見た目からして不快)
◆その存在によってゲーム全体から漂う下劣な”匂い”(この所為で、完成度の高いゲームなのに安易に薦められないという理不尽な矛盾が生じている)
◆探索に障害が出る訳でもない為、ほぼ空気に等しい『崩壊・再生システム』
◆終盤の展開を考慮すると、入れる必然性が無かったように感じてしまうダンジョンクリア後の選択イベント(詳細はネタバレにつき伏せるが…)
◆連戦が当たり前になる為、戦闘にプレイ時間を割かれがちになる後半のダンジョン
◆非常に素っ気ないエンディング(もう少しイベントがあっても良かったような)
▼Review ≪Last Update : 5/1/2016≫
どうして、そんなものを仕込んだのか。

それさえ無ければ、堂々と薦められたのに…!(怒)


『ジャレコ再生プロジェクト』なる企画の第一弾として製作された、完全新作のロールプレイングゲーム。開発は世界樹の迷宮シリーズや『影之伝説 THE LEGEND OF KAGE 2』、『スペースパズルボブル』などで知られるランカースが担当。

ジャレコ発案の企画さえなければ自信を持って薦められた、非常に残念な良作RPGだ。

ゲーム内容は、ダンジョン攻略特化型のロールプレイングゲーム。魔法使いである主人公、三体の『ホムンクルス』と呼ばれる従者達と共に危険なダンジョンに挑み、崩壊が進む世界からの脱出を目指すというものだ。その概要の通り、本編はダンジョン攻略を主軸に展開。拠点となる『ウィザレストの街』から各ダンジョンへと直接移動し、ストーリーに沿って探索を進めていく事になる。各ダンジョンの最終的な目的は、最深部で待ち構えるボスを討伐する事。ボスと倒すとダンジョンクリアとなり、幾つかのイベントを挟んだ後、次のダンジョンへの道が開く。そして再びダンジョンを探索し、イベントをこなしながら最深部で待ち構えるボスの撃破を目指す事になる。基本的にこれらの繰り返しで進行。如何にもダンジョン攻略特化型らしい、シンプルで分かり易い構成になっている。
ただ、システム周りは少し独特で、ダンジョン、戦闘システムと言った部分において、独自の試みが成されている。第一にダンジョンだが、『崩壊・再生システム』なるものを実装。今作で登場するダンジョンには『属性』が予め設定されており、これに相反する属性の魔法を戦闘で乱用してしまうと、ダンジョンの崩壊が発生。現在居るマップ全体の地形が一変してしまうのである。逆に設定された属性に何ら影響を与えない魔法を戦闘で乱用すれば、ダンジョンが再生。崩壊前の地形へと戻す事ができる。更に相反しない魔法を使い続ける事でも地形変化を起こせるのだが、その詳細はストーリーのネタバレに抵触するので自粛。ともかく、このような戦闘で使った魔法の属性により、ダンジョン全体が歪な形へ変貌を遂げたり、逆に通行し易くなる環境変化の要素が取り入れられているのだ。当然ながら、各ダンジョンではこの仕掛けを駆使した展開も多数登場。わざと崩壊を起こし、新たなルートを見つけ出す事もあれば、逆に崩壊を起こしてしまう事で遠回りを強いられるハメになったりと、単調になり易いダンジョン探索に奥行きを与えている。勿論、崩壊・再生時には地形だけではなく、周囲の背景も一変するなど、演出・ビジュアル面でも凝った試みが成されている。そんな見た目の面で楽しませてくれる部分があるのも大きな見所。シンプルだが、侮り難い奥深さと手強さを秘めたシステムに作り込まれている。
第二の戦闘システムもターン制によるコマンド選択方式で、素早さのステータスが高い方から順に行動していく王道のものなのだが、先に紹介した『属性』による相性を考慮した攻撃が勝負の結果に強く影響してくるなど、戦略的な作りとなっている。それ故、難易度も高め。ボスは勿論、雑魚敵ですら安易なレベル差を利用したボタン連打による力押しが効き難い、歯応えのあるバランスになっている。一応、戦闘が終了する度に体力、魔力(MP)が全回復する親切な要素があり、消耗を気にせず好きなだけ魔法を放つ事ができるという緩いところもあるのだが、裏を返せばそれだけ、今作の戦闘は常に全力で挑まなければならないという事。舐めてかかると火傷する、如何にもな調整が施されている。
更に『属性』と関連する要素として、『アニマフュージョン』なるシステムを実装。今作の戦闘には、主人公以外に3人の『ホムンクルス』と呼ばれる従者(妖精?)が参加するのだが、このホムンクルス達は素の姿では戦闘には参加できない。参加させるには、モンスターの魂と融合させ、戦闘能力を行使できるようにしなければならないのだ。そのホムンクルスとモンスターの魂を融合させる行為が『アニマフュージョン』。いわゆる合体システムだ。RPGに詳しいプレイヤーに向けて例えるなら、『真・女神転生』シリーズの悪魔合体に似たシステムというと分かり易いだろうか。モンスターの魂を回収し、合体させて戦闘能力を習得させ、独自のパーティを編成していく要素が盛り込まれているのだ。合体というと、何処となく複雑そうなイメージがあるが、仕組みは非常に単純。戦闘で敵がドロップする魂を手に入れた後、拠点『ウィザレストの街』の主人公自宅内にある魔法陣をチェックし、後は好きなホムンクルスと魂を選び、決定するだけ。驚くほど簡単で理解し易い作りになっている。また、合体した後に別の魂と合体する事もでき、その際には以前の形態で習得した『スキル』を継承させる事もできる。ただ、引き継げる数には限度があるなど、いい意味で頭を悩ます要素も。更に属性と関連すると先に申した通り、イタズラに合体すれば良い訳でもない。ダンジョンで登場する敵の属性と相性は良いか、悪いかなど、後の展開を見越した魂の選択も求められてくる。そして、その選択によって難易度が急激に下がったり、上がったりするなんて事も。良くも悪くも、既視感の強い作りではあるが、そう言った悩み易い選択が多いのもあり、底は結構深い。更に魂を合体する事で見た目が大きく変わるなど、ビジュアル面にもこだわっていて、奥深さだけに留まらない魅力を持っている辺りも地味に見逃せないところだ。なかなか侮り難いものに完成されている。
他にも、戦闘には味方の行動を連続発生する事で強力な攻撃を繰り出せるようになる『チェインアタック』、フィールドの敵と接触した際、周囲に別の敵が居た時に連戦が発生し、通常よりも大量の経験値を得る事ができる『連続戦闘』なる独特の要素を実装。また、そのようなシステムを実装している事から、今作ではマップ上に敵が表示されるシンボルエンカウント方式を取り入れている。無論、そのシステム特有の方向の概念もあり、接触した方向によっては戦闘がプレイヤー有利で始まったり、敵有利で始まったりと言ったことも。更にマップ上に居る敵の数を念頭に置きながら仕掛けていかないと、先の『連続戦闘』が始まってしまい、十分な準備を整えていないまま厳しい戦いを強いられるなんて事態に見舞われたりもする。ランダムエンカウントでない故、敵にいつ遭遇するかと言ったドキドキ感は薄めではあるが、そう言った様々な要素によって今作は独自の緊張感とゲームバランスを演出。使い古されたシステムでありながらも、独自の味わいを引き出す作り込みが成されている。
そう多彩な要素が詰め込まれているが、基本的にどのシステム作りはもシンプルで、複雑さは皆無。本編にしても、ダンジョン探索とその踏破だけに集中すればいいなど、今時珍しいほど、一つの目的に特化したものになっており、プレイヤーを露骨に選ばない作りになっている。まさにシンプル・イズ・ザ・ベスト、RPGの王道を突き詰めたかのようなゲームデザイン。それでいて、何処となく、スーパーファミコン時代のRPGを髣髴とさせるような懐かしさと匂いに満ち溢れた、当時の世代のノスタルジーを喚起させる、魅惑的なRPGに仕上げられている。キャッチコピーに「あの頃のRPG」とあるが、それに偽り無し。かつて、RPGをやり込んだ世代のハートを直撃する懐かしさと確かな手応えが満載の内容となっている。

そんな今作の魅力は、王道のゲームデザインが醸し出すテンポの良さと懐かしい香りに満ちたゲームバランスの二つ。
前者はダンジョン攻略主体のゲーム展開だが、目的が終始一貫しているのもあり、変に右往左往する事も無く、サクサクと本編を進めていけるのが気持ち良い。ダンジョン自体にも意地悪な謎解きはそれほど無く、基本的には敵との戦闘や最深部へと繋がる道を探していく事に特化した構成になっているので、変に頭を悩ませる事もなく、気軽に楽しめる作りになっているのが秀逸だ。かと言って、どのダンジョンも似たりよったりという訳ではなく、敵配置、ギミックなど、レベルデザインは万全。先に紹介した地形変動もダンジョン毎に違うものになっている上、全てが固有のものになっているなど、細かいこだわりが炸裂している。
更にプレイヤーへの配慮は、探索する目的に特化した構成だけに留まらず。各ダンジョンは基本的に何処も結構広いのだが、中間ポイントが複数設置されており、到達できれば以降はそこから続きが進められるようになる為、意外と探索していて苦にならない。また、秀逸なのが、拠点の街へはいつでも自由に戻れるという事。特別なアイテムを手に入れる必要も無く、単純にメニュー画面から街へ戻るコマンドを選べば、一瞬で戻れてしまうのだ。なので、パーティの体力などが疲弊してお手上げな状況に陥っても、そこで手詰まりになる事は皆無。自分のペースに合わせてダンジョン探索を進めていく事ができるのである。勿論、中盤以降になると戦闘が長引いて戻ろうにも戻れない場面が増えるのだが、それでも終了後は即座に撤退できるので、快適さは失われない。戻った際のペナルティにしても、入口、或いは中間ポイントから再開となる程度。それで良いのか、と逆に心配になるほど良心的な設計になっている。古き良きスタイルをテーマとしたゲームなら、途中離脱は不可能、できてもアイテムを手に入れる必要があるなど、厳しい制約を設けがち。だが、今作はそういうのは一切無く、逆に今風の遊び易さを重要視している。この辺り、少し古き良きスタイルをテーマとしたゲームとしては矛盾する所があるが、不親切さ以上にプレイヤーが気持ち良くゲーム本編に集中できる事を最優先としたのはとても好感が持てる。逆にそういうのは探索、戦闘の方に集中させるという配分も見事だ。昔っぽいと言って、インターフェースにまでそれを反映させるのはやり過ぎ。今作の作りからは、そんな昔ながらを謳うゲームに対するアンチテーゼみたいなものを思い知らされるばかりだ。それほど、今作の快適性に対するこだわりはずば抜けたものになっている。
そう快適性周りでプレイヤーを大事にする一方、戦闘では高難易度で容赦なく殺しにかかるというギャップの激しいゲームバランスもユニーク。しかし、属性間の相性を考えて攻めれば強敵が簡単に倒せてしまうなど、決して理不尽な難易度という訳ではないのがミソ。今作のシステムや要素を最大限に駆使して戦う事が求められる、非常に理に適った絶妙なゲームバランスになっているのだ。何より、今作が秀逸なのは属性間相性を攻める戦術でも、決して一方的な展開にはならないという事。ボス戦など、それを考えて攻めれば有利に事は運ぶのだが、それでも僅かな間違いが致命傷に繋がるなど、有効な戦術でさえ容易に瓦解する危険性を孕んでいる。しかも、これがどんなにレベルを上げようがキープされる。幾らプレイヤー側がレベルアップで強くなったとしても、それによって得られる恩恵はパーティ瓦解に至るまでの時間が「ほんのちょっとだけ」延びる程度。相手の攻撃が蚊の一撃同然になるほど軽くなることは決して起こり得ない。どんなに上げようが致命的なダメージを受ける危険性は残り、プレイヤーに状況を見据えた戦術とその後を見越した戦略の二つが要求されてくるのである。そして、この戦闘バランスは本編の序盤から中盤だけでは無く、終盤においても維持される。よく終盤になると沢山のスキルや魔法を覚え、プレイヤー側有利で戦闘に運び易くなるというのが難易度の高さを持ち味とするRPG唯一の穴であったりするが、今作ではちゃんとそれを見据えた上で全体のバランスを調整。幾ら終盤で強くなろうが、そこで出てくる敵はそれを前提とした巧み且つ、苛烈な攻撃でプレイヤーを翻弄してくるのである。
それだけでも、今作のゲームバランスが如何に芸術的なものであるかは容易に想像できるだろう。悪く言えば、プレイヤー自身が強くなったと感じ取れる手応えが弱いのに加え、緊張感のある展開が終始続くので、気楽に遊べないのであるが、色々な戦術を駆使し、強敵を倒した際の達成感、いつ状況が崩れるか分からない緊張感は格別。また、その辺の緊張感にはオールドスタイルのRPGとしての味わいがタップリ。当時のRPGを触り倒したプレイヤーなら、懐かし過ぎて顔がニヤけるほど至福の時間を堪能することができるだろう。何より、こう言った高難易度を売りとするRPGで最後の最後まで崩れないバランスを実現させているというだけでもかなりの評価に値するところ。先の繰り返しになるが、何かとそういうRPGというのは後半にかけて軟化する傾向がある。だとしても、気の抜けない戦いが展開されたりするケースも中にはあったりするが、序盤から中盤にて感じたヒリヒリとした手応えが薄くなるのは否定できない。だが、今作は終盤になっても崩れる事が無い。それどころか、理不尽に高くなる事も無い。序盤から中盤にかけてのギリギリの状況下で戦いが続くという絶妙過ぎるバランスが堅持されるのだ。正直、これを聞いても半信半疑に感じてしまうところがあるかもしれない。実際にそういうパターンのRPGを経験した事のあるプレイヤーほど、そう思ってしまうだろう。だが、それでも今作は崩れない。最後の最後まで、属性相関を考慮しながらの緊張感のある戦いが繰り広げられていくのだ。それでも不思議に感じる方は実際にプレイして確かめてみて頂きたい。本当に最後の最後まで堅持される事を存分に思い知らされるだろう。
とは言え、基本的に本編はダンジョン探索が主体。それ故に後半にかけ、似たり寄ったりな展開が増えて単調さ増していくなど、作り込みが甘いと感じるところも少なからずある。しかしながら、「あの頃のRPG」というキャッチコピーは伊達ではない。ここまで昔ながらのRPGとして美しく、且つ面白くまとめられた作品も珍しい。何より、歯応えのある戦闘バランスが終盤まで維持されるというだけでも特筆に値するものがある。それほどまでに、今作の出来はずば抜けたレベル。まさに正真正銘、「あの頃のRPG」と胸を張って断言できる魅力と面白さを兼ね備えているのだ。

操作性に関しても良好。キーレスポンス、ボタン配置など、全くストレスを感じさせない作りになっている。また、移動に関してもスピーディで、ダッシュ専用ボタンを押さずとも適度に速く移動してくれるので快適。インターフェース周りに関しても先に触れた拠点への離脱を始め、痒い所に手の届く作りでまとめられている。更にセーブに関しても特定ポイントで実施するもののほか、いつでもどこでも可能な中断タイプも完備。携帯機のゲームである事を意識した配慮もちゃんと成すなど、その隙の無さには感服する。
ボリュームもかなりのもの。エンディングを目指すだけでも30時間は余裕で超過するほか、サブクエストなどの寄り道要素も揃っており、それらを極めるだけでも80時間ほどはかかる。更に難易度の高さもあり、満足感と手応えも抜群。難易度の高いRPGに慣れたプレイヤーでも、納得する事間違いなしの手応えを堪能できるだろう。
グラフィックも素晴らしい出来だ。特に背景、キャラクターのグラフィックにはドット絵の芸術とも言うべき職人芸が炸裂している。その素晴らしく活き活きと動く様、鮮やかな色使いは必見だ。音楽の出来も申し分なく、ダンジョンの地形変化に応じて曲調が変化するなど、なかなか凝った作りになっている。曲自体も何処と無く懐かしい曲調のものが多く、スーパーファミコン時代のユーザーならノスタルジーを刺激させられること請け合い。作曲担当もランカース製タイトルでお馴染みの岩崎健一郎氏という事で、その完成度は折り紙付きだ。

演出周りも戦闘時における魔法、スキルを始めとした派手なエフェクトなど、ツボを抑えた作り。ストーリーも閉鎖世界からの脱出を目指すというシンプルながらも、様々な謎が張り巡らされた興味深い内容になっていて安定した面白さがある。所々にその後の展開を決定付けるような分岐もあるなど、一本道で終わらぬ構成になっているのもユニークだ。
そう高い完成度を誇る今作なのだが、残念ながら、作品全体のイメージはすこぶる悪い。知る人ぞ知る通りであるが、発売元のジャレコが販売戦略面において凄まじく下劣で、吐き気を催す企画を発端にして制作が進められた作品である為だ。そして、その企画で誕生したキャラクターが隠しボスとして登場するのだが、はっきり言って、とてつもなく場違いで、入れた意義も皆無であれば、腹の底からジャレコに対する憤りが湧いてくるほどに不要な存在となっている。冗談抜きに今作の完成度の高さにミソを付けてるに等しい。一体、どういうものなのか、その詳細は書くだけでも吐き気を覚えるし、それに絡んだ連中を助長させるだけにしかならないので伏せるが、そんなな方法を販売元のジャレコは恥を知れの一言に尽きる。あんなネタを仕込んで誰が喜ぶのか?ゲームが魅力的になるのか?ならないだろう。むしろ、壊滅的に悪くなる。少なくとも、筆者はその要素の存在には強烈な不快感を覚えた。RPGとしての総合的な完成度が高かっただけに通常の三倍以上に、だ。こんなよく出来たゲームに世間的にも烈火の如く嫌われている要素を入れて何がしたかったのか?売る目的なのだとしても最低の所業だ。そういう目的を持つ事自体はメーカーとして当然だから理解できなくはないが、それを最も嫌われる方向に走らせたジャレコの所業は微塵も評価に値するものではない。このやり方のせいもあり、今作は自信を持ってお薦めできる逸品とは言えないのが本当にもどかしい。面白く、完成度の高いゲームなのだが、イメージの悪さが尋常でなく、それを気にせずやれとも言えないのが残念でならない。本当、余計な事をしてくれたものだ。冗談抜きに販売元のジャレコでこの一連の企画を立てた者は二度とゲームの世界に入ってくるなと言いたいところである。まあ、2016年現在、ジャレコは消滅しているが。自業自得である。
そんな訳で全体的には良作以上と言えるゲームなのだが、お薦めとは言い難い困った作品というのが総評だ。正直、ジャレコ以外のメーカーが売っていればこんな事にはならなかったと思うだけに、余計にもどかしい。恐らく、ニンテンドーDS史上、最も損をしているゲームと言っても過言ではないだろう。故にあまりお薦めはできない。だが、別にそんな要素があっても気にならないというのなら、迷わず突撃してみて欲しい。とても良く出来たゲームである事に間違いはないので、遊んで後悔する事は決してない。それは断言しよう。
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