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≫世界樹の迷宮II 諸王の聖杯
■発売元 アトラス
■ジャンル 3DダンジョンRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5229円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 44ページ
■推定クリア時間 40〜50時間(エンディング目的)、120〜150時間(完全攻略目的)
大陸の遥か北方に広がる高地。
そこに巨大な木を街の神木と崇める『ハイ・ラガード公国』があった。

その公国の神木は『世界樹』と呼ばれ、その天高く伸びる木は空飛ぶ城へと繋がっているという伝説があった。そんな伝説の樹の中に、あるとき謎の遺跡群と未知の動植物を内包した巨大な自然の迷宮が見つかった。
その地を治める大公は、その迷宮を調べ空飛ぶ城の伝説の真偽を確かめる為、大陸全土に触れを出す。そして、多くの冒険者がこの地に訪れたのだが、その迷宮を踏破して伝説を解明するものは現れなかった。

そして今日もまた、公国の布令に応じた、新たな冒険者が街を訪れる…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シリーズの持ち味である、迷宮の最上部を目指す面白さにこだわったゲームシステム
◆迷宮の最上階を目指す目的の鮮明さ、想像力をかき立てる淡白な世界設定が秀逸なメインストーリー
◆視点固定移動『カニ歩き』が実装されるなど、格段に動かし易さが増した操作性
◆忙しいプレイヤーにとっては大いに重宝する新サポート機能『中断セーブ』
◆サブクエスト、隠し階層、図鑑完成など今回も無駄に充実しまくりのやり込み要素
◆それぞれの個性を尊重した、露骨な色分けが目を見張るダンジョン内の各階層
◆シミュレーションゲームさながらの駆け引きの面白さを演出した、新型『F.O.E』
◆前作にも増して「危なさ」が強調された、ダンジョン内部に凝らされたトラップ群
◆遊び易くなっても根本的な厳しさに変化無しの『世界樹』らしい硬派なゲームバランス
◆基本能力やスキル周りに調整が図られ、前作とは別の印象を強めた全12種類の職業
◆プレイヤーオリジナルのマップが作れる魅力はさる事ながら、セットできるアイコンが増えたことによって更に洗練されたものへと進化したマップ作成機能
◆より鮮明に且つ、鮮やかなものへと生まれ変わったグラフィック
◆前作でも馴染みだった古臭い旋律が秀逸な、FM音源で仕上げられた音楽
◆カドゥケウスの月森とアンジュが出てくるなど、盛り沢山の小ネタ

--- Bad Point ---
◆一部、致命的なバグの存在(特にレンジャーのプレイヤー側でなく、敵ステータスを上昇させてしまうフォーススキル)
◆『カースメイカー』など、一部能力的にひいきされてる感のある職業の存在
◆新しい遊びを演出しながらも、単なる邪魔物に成り下がった感もある『F.O.E』
◆回復ポイントの消滅により、地味にやり難くなったダンジョン探索(一応、『磁軸の柱』と呼ばれるショートカットはある)
◆最終ボスよりも強い感が否めない、前座のボス(あれがラスボスで良い気が…)
◆衝撃度が下がった今回の第五階層(冷静に見れば突っ込みどころ満載なのだが)
◆ややプレイヤーを見下すような表現が強まった感のあるテキスト
▼Review ≪Last Update : 2/1/2009≫
そして発売から1ヶ月後、

第五階層の元ネタの原作を手掛けた方は、この世を去るのだった…。


『3DダンジョンRPG再生計画』の名の下にリリースされ、今時珍しい硬派な難易度と古臭い演出で好評を博したアトラスの新作3DダンジョンRPG『世界樹の迷宮』の続編。

遊び易さは大幅に向上しても、厳しさに何ら代わりなし。
素直過ぎる進化に終始した、安定感抜群の続編だ。

基本的なゲーム内容は前作と変わらず。3D主観視点で展開する『ウィザードリィ』風味の3DダンジョンRPGで、『世界樹の迷宮』と呼ばれる迷宮の最上部を黙々と目指していくというものだ。 ゲームシステム周りも、タッチスクリーンに自分だけのマップを書き込める『マップ作成機能』、『スキル』の配分によってプレイヤー好みのキャラにメイキングできる多彩な『職業』など、前作で好評を博したものはそのまま継承。
それらをベースに新しい要素と機能の追加、そして前作でユーザーからの不評を買った箇所の修正を行った、如何にもな『素直さ』が滲み溢れた続編に仕上げられている。
特に今回、最も大きく進化したのが操作性を含めたインターフェース周りと職業バランスの二箇所。前者は、この種の3DダンジョンRPGでは「あって当たり前」と言える『カニ歩き(視点を一方向に固定させて移動する手段)』が無い、店で武器を買う際に現在装備中の武器との性能比較ができなかったなど、前作における最大の欠点であり、最もユーザーからの不評を買った箇所だった。そこが今作では劇的に改善。3DダンジョンRPGお馴染みのカニ歩きの実装、店での装備中の武器との性能比較画面の追加が行われ、全体的な遊び易さが格段に向上した。またそれだけならず、ステータス画面閲覧時でのLRボタンによるキャラクター切り替え、好きな時にダンジョンの探索を止められる『中断セーブ機能』までもが追加。「どうしてこんなにも便利なのを前作で実装しなかったんだ!?」と思わず言いたくなってしまうほど、痒い所への配慮が行き届いた作りとなっている。 必要以上に不便な仕様だった前作を経験したプレイヤーなら、これらの改善には普通に触っただけでもう、相当な衝撃と感動を覚えてしまうだろう。
後者、職業とそのバランス周りについても然り。前作で猛威を振るった一部職業の反則的なスキル(特技)の廃止と能力調整、後出となる職業を少なくする(最初からほぼ全ての職業が使える)と言った修正が行われ、それなりに公平なゲーム展開が楽しめるようになった。前作では、特定の職業がパーティにいなければ間違いなく勝てない敵(ボス)がいるなど、極端なひいきが行われていたが、今回は特定の職業を使わざるをならない展開に陥る事はほとんど無し。基本的にどの職業であっても、スキル配分と育成方針に気を付ければ、最後の最後まで戦い抜けるという適切なバランスでまとめられている。 途中でパーティ変更を余儀なくされた前作と比べれば、結構な進化。変に強制される事も無く、自分の思うがままのパーティで戦い抜けられるようになっただけでも、3DダンジョンRPGとしては理想形の域に達したと言えるだろう。今回は好きなパーティで戦える、それだけでも前作経験者並びにダンジョンRPG経験者は燃える思いを抱いてしまうに違いない。 また、今回は前作の9種類の職業の他に新しい職業として『ガンナー』、『ドクトルマグス』、そして『ペット』の三つも追加。いずれも癖のある性能と特徴を持った面子ばかりで、ダンジョン攻略の幅の広さを大いに演出してくれる。 中でも『ドクトルマグス』は新職業の中でも特に秀逸で、回復要員としても活躍するなど、既にそこを担当すべき『メディック』とのプレイヤー自身の好みを分ける事にも成功している。こんな「どちらを回復要員にさせるか」と言ったように、職業の組み合わせでプレイヤーの嗜好が丸裸にされるというのも、今回の密かな進化と言えるだろう。
この二つ以外にもマップ作成機能でもアイコンが増強され、色々な情報を記入することができるようになったなどの改善点もあるのだが、そこは割愛。このように全体としては前作での欠点の修正、新要素の追加に終始。前作よりも遊び易く、それでいて自由度も高い、まさに理想的な進化を遂げた内容でまとめられている。
極端に言ってしまえば『世界樹の迷宮・完成形』。まさに、前作で見せたかった事を見せた作品と言ったところだ。

だが、今作の魅力はその前作の欠点を修正、新要素を追加した素直過ぎる進化ではない。 そもそも今作、確かにインターフェース周りや職業のバランス周りが調整され、格段に遊び易くなったのにも関わらず、ただ一箇所だけ「そのまま」なところがある。それこそが全滅前提の硬派な難易度。この世界樹の『持ち味』とも言うべきものが、こうもインターフェース等が改善されて遊び易くなったのにも関わらず、全く持って変化していない。それが今作最大の魅力。相変わらず今回も厳しさ満点なのである。というよりもむしろ、今作の難易度は前作以上に凶悪だ。
雑魚敵に陰湿な状態異常をもたらす面子が増えていたり、道中にあった体力全回復ポイントが撤廃されてたりなどと、はっきり言って今作の原点であるウィザードリィに迫る…と言っても決して大げさではない、かなりきつめのバランスでまとめられてしまっている。前作でもダンジョン探索の脅威として大暴れした、肉眼で確認できる強力なモンスター『F.O.E』も強さ、ダンジョン内で登場するその物量共に倍増。新たにタッチスクリーンのマップでは確認できない、その名も『マップに映らないF.O.E(そのまんま)』が登場するなど、種類も増強されており、ますます危ない存在としてのインパクトを高めてしまっている。挙句の果てには、今回は『F.O.E』と戦っても、経験値が得られない。戦えば死を招くだけ。
「前作よりも遊び易くなってるというのなら、やってみよう!」、そんな軽い気持ちで挑むのが如何に危ないか、これらの情報をザッと確認するだけでも嫌というほどお分かりになるだろう。とにかく総じて凶悪。細かい改善点が無意味にされているかの如く、プレイヤー殺しなバランスで統一されてしまっているのである。
正直、その凶悪さは前作をクリアしたプレイヤーでも普通に苦しめられるのは必至。経験者・未経験者の差なんてもはや無いも同然と言っても良いほどだ。でも、ただ単に凶悪なものにして終わりとさせてないのが今作の凄い所。確かに苦汁を飲まされる場面が増えてるのは事実だが、その凶悪さの強化による新たな遊びを実現したシチュエーションも多々あり、新しいダンジョン探索の手応えというのもきちんと表現しているのである。
中でも面白いのが先の『F.O.E』との駆け引きだ。先の通り、今回はダンジョン内に徘徊する量が増えているのみならず、戦っても何のメリットが無いなど、前作よりも性質が悪くなってしまっているのだが、その性質の悪さを今作は逆利用。「F.O.Eの行動パターンを読み、ぶつからないように歩く」という新たな遊びを提案し、まるで詰め将棋のような探索の緊張感を堪能できるようになったのだ。この『F.O.E』の動きを熟知し、避けていくその手応えはさながら、ダンジョンRPGと言うよりはシミュレーションそのもの。別のゲームをやっているかのようなその不思議な手応えと緊張感には良い意味での違和感を覚えるだろう。また、単に動きを読んで回避するのみならず、特殊な攻撃を行って数ターン動きを止めるなど、対処方法も盛り沢山で、『不思議のダンジョン』などのローグゲームっぽい考える面白さが表現されているのも秀逸。3DダンジョンRPGに別ゲームの要素を入れ、それを破綻無く成立させてしまっているそのまとめ方には、改めて脱帽する限り。増えればただのストレス材料にしかならないものをこうして遊びにしてしまうそのセンスには驚かされるばかりだ。
それでも、経験値が取得できなくなった都合で余計に邪魔物としての存在感が増強してしまった、倒すと言う選択肢が無いに等しくなってしまったのは感心しないが、前作との差を出す為の処置として、これは本当に見事。純粋な改変をしなかった今作のスタッフのチャレンジ精神ぶりには改めて感服する次第だ。
これのみならず、肝心の戦闘バランスも確かに凶悪さは増してるが、レベルとスキルの配分によって難易度が変わるなど、それなりの絶妙さはキープ。難しくなったが故に達成感もかなりのもので、壁を乗り越える面白さが存分に活かされてる辺りも流石の一言だ。
この持ち味には断じて手を加えない潔い姿勢には、如何に今作のスタッフがゲームを作ろうとしたのかが窺える。何でもかんでもユーザーの声に従えば良いってもんじゃない。ユーザーに媚びる事は、ゲームをダメにする。これらの凶悪な配慮にはそんな、スタッフの熱き思いが込められていると言っても、決して過言では無いだろう。

その他、硬派な難易度と肩を並べる今作独自の持ち味である『古臭さ』も健在。淡白だけどちょっぴり衝撃的なストーリーと目的意識のハッキリしたゲーム展開、シンプルなコマンド選択式で展開する戦闘システム、そしてFM音源で仕上げられた古風で印象深い音楽(作曲は今回も古代祐三氏が担当)は、より磨きのかかったものに進化している。
ダンジョン階層のバリエーションの豊富さも相変わらず。今回は、紅葉で覆われた階層や桜だらけの階層など、かなり極端な色分けが成されていて、それぞれの個性が滲み出た作りとなっているのが面白い。また、例によって最後の第五階層も前作ほどのインパクトは無いが突っ込みどころ満載なので必見だ。
サポート周りも今回はチュートリアルのみならず、中断セーブ機能が搭載されたのもあって格段に進化。相変わらずの厳しいバランスとしながら、導入部は広くすると言ったこの配慮には感心する限りである。
しかし、その辺の配慮は万全なのにバグに対する配慮がいま一つなのは残念。特にある職業のステータスアップのスキルが、プレイヤーでなく「敵を強化する」ものになっているのは致命的だ。それ位、戦闘をしていれば普通に気付くだろうに何故、修正しなかったのか。この辺の詰めの甘さは本当、残念極まりない限りだ。

また、ゲームブック風味のテキストも地味に傲慢な文体となり、説教臭くなったのもちと辛い。職業のバランスも概ね良いのだが『カースメーカー』だけ極端に強かったり、先のバグ持ちの職業がいるのも惜しい。最大レベルが100になったのに、それをするにはまずは『ギルド』で『引退』しなければならない仕様も、何でこう面倒なものにしたのかが謎だ。
そんな感じに欠点も多いが、総合的な出来については問題なし。前作の欠点を綺麗に潰しつつ持ち味は堅持し、新しいプレイ感覚を提供した理想的な続編に仕上げられている。
例によって現代RPGに慣れた方には辛いかもしれないが、チャレンジ精神を煽る要素が盛り沢山で、相変わらずやり甲斐満点の今作。前作を遊んだ方は勿論、新規ユーザーもストーリーの繋がりとかは無いので、是非チャレンジしてみて欲しい傑作だ。今度は地下じゃなくて天辺目指して、登りまくろう。
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