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≫世界はあたしでまわってる
■発売元 グローバル・A・エンターテインメント
■開発元 マリオネット
■ジャンル あたしのためのRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 2つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 25ページ
■推定クリア時間 22〜27時間(エンディング目的)、35〜40時間(完全攻略目的)
お金持ち貴族のお嬢様で、15歳の女の子『アンジェラ』はある日、舞踏会で素敵な冒険者(美形レベル99)と出会う。
アンジェラはそれを運命の出会いだと思い、彼に告白を迫るのだが、「戦いの経験を積み、一人前と言われるようになったらまたお会いしましょう」と、あっさりフラれてしまう。

納得が行かなかったアンジェラは翌日、父親に一人前になるまで帰らないに出ると告げ、勝手に冒険の旅に出る。
かくしてアンジェラの、自己中心的な冒険物語が幕を上げるのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆マス目で区切られたマップを舞台に展開する、独特の手応えに富んだメインシステム
◆世界を自分の思うがままに操れる新たな面白さに富んだ『わがままシステム』
◆敵のアイテムドロップ率増加、経験値取得量増加、更にはクエストをサボるなど、プレイヤー心理を巧みに突いた『わがまま』のバリエーション
◆わがまま無くして攻略不可の理に適った設定と内容が秀逸な依頼こと『クエスト』
◆わがままで敵まで思うがままにいじれる大胆な仕組みが面白い、独自の戦闘システム
◆敵の魔法に被弾して覚える、独自の痛々しさが面白い魔法習得システム
◆敵を物真似してパワーアップしていく仕組みが新しい、仲間キャラの『ミミックスライム』
◆圧倒的なテンポの良さ(何とゲーム中の全てのエフェクトがボタンでカット可能!)
◆少し甘い所もあるが、システムを活かす気配りと適度な温さが見事なゲームバランス
◆まさにドタバタコメディな、愉快で突っ込みどころ満載の展開が盛り沢山のシナリオ(ちょっぴり切ない展開もあり)
◆常時セーブ可能、チュートリアル完備と万全に凝らされたサポート機能
◆モデリングは荒々しいが、玩具の人形っぽさが滲み出た独特のグラフィック
◆愉快なシナリオの雰囲気にしっかりマッチした、印象深い音楽る)
◆わがままでありながらも、全く憎めない可愛らしさが新しい、主人公のアンジェラ

--- Bad Point ---
◆基本的に物集めぐらいしか無い、バリエーションに乏しい『クエスト』
◆『クエスト』のバリエーションの少なさの都合上、作業的になる中盤以降の展開
◆外に出れば倒した敵が全復活、敵と戦うのがメインと味気ない構成の地下迷宮
◆近づくだけで直にエンカウント扱いになる、陰湿な地下迷宮のエンカウントシステム
◆レベルアップで成長するよりも明らかに効率が良いという矛盾が痛い『食事システム』(後半、最初のマップで食事した方が強化させ易くなるのも×)
◆敵の魔法を被弾しなければならない故、面倒臭さも色濃い魔法習得システム
◆敵の硬さが増す為、魔法主体になり易い後半の戦闘バランス
◆素っ気無いエンディング(良い感じにまとまりはするんだが…)
▼Review ≪Last Update : 2/8/2009≫
混沌の世界=恋をすることもできない世界?

そんな娘が今作の主人公です。


『トイロボフォース(GBA)』や『ダンジョンメーカー(PSP)』シリーズなど、革新的なゲームを多くリリースしてきたグローバル・A・エンターテインメントが放つ、新作RPG。

システムは飛び抜けてるが、肝心のゲームがいま一つな凡作だ。

ゲーム内容はかなり特殊。一応、名目上ではロールプレイング(RPG)を名乗っているが、いわゆる『ドラゴンクエスト』シリーズのようなオーソドックスなタイプのものであらず。マス目で構成された『ローカルマップ』なるマップを一コマずつ自由に移動しながら、街で課せられた『クエスト』と呼ばれる依頼をこなしていく、他に類を見ないプレイスタイルを取り入れたRPGとなっている。それ故に本編そのものの手応えも、世間一般のRPGと一線を欠いており、いわゆる「プレイヤー自らが冒険の舞台を直に歩く」と言った動かす面白さ(操作感覚)というのが皆無。「マス目を囲うカーソルを動かしている」と言った、まるでシミュレーションゲームやボードゲームであるかのような手応えが全面に押し出された、奇抜極まりないものとなっている。一応、一部の『ローカルマップ』にセットされた『地下迷宮』などのダンジョンに限っては、従来のRPGの移動方式と手応えを取り入れたものになっているが、それも今作においては実質サブ的な存在に過ぎないという始末。(つまり、滅多に出てこない)今作が如何に、世間一般RPGの先入観を持って遊ぶと肩透かし遭うものなのかは、この時点で十分過ぎるほどお分かりだろう。しかも、今作の特殊さはそれらの基本部分だけに留まらない。主となるゲーム本編を構成するシステム周りにも、奇抜な試みが沢山行われている。
その中でも特に強烈なのが、今作最大の売りである『わがままシステム』。どんなものか簡単に言ってしまうと、「主人公の特技(?)『わがまま』を言って世界のあらゆる現象を操る」というもの。前代未聞にしてありそうでなかった、驚きのシステムが今作には搭載されているのである。その『わがまま』というのがまた、どれもこれも強烈も強烈。地形を変えたり、敵が落とすアイテムの入手頻度を高めたり、挙句の果てには現在進行中のクエストを「終わった事にする」等とプレイヤー心理の痛いところを付いてくる、痒い所に手の届くものばかりとなっている。
更にこの『わがまま』は、何と敵やボスとの戦闘でも使用可能。必ず先制攻撃をするようにターンを”強制的に”ひっくり返したり、雑魚だろうがボスだろうが”絶対に”麻痺状態にして暫く動かせなくさせるなどとやりたい放題、色んなことができてしまう。まさに、プレイヤーの欲求をそのまま本編に反映させる事ができる!…と言った感じの、あまりにも刺激的なものに仕上げられているのだ。加えて凄いのがこのシステム、ちゃんとゲーム攻略のカギとしての存在感を発揮していること。元の新しさもさることながら、意外と作りがしっかりしている。ここまでの記述を読んで、わがままはまるでライトユーザーのサポート機能のように受け止めた方もいるかもしれないが、実はこれ、サポート機能などではなく、れっきとした「ゲームクリアに必要な要素」として、本編では取り扱われているのである。つまり、本作は「わがまま」なくして全てが成立しない!「わがまま」の力を頼らないと突破できない局面(例えば、あるはずも無いアイテムを回収するクエストなど)が、これでもかと言わんばかりに立ちはばかってくるのである。プレイヤー側のサポートになることなんて、経験値アップとか些細なレベルでしかない。ゲームの難易度を下げるシステムじゃなくて、ゲームの面白さを演出するシステム。そんな風にこの『わがままシステム』はまとめられているのだ。
はっきり言って、これは凄い…以外にかける言葉が無い。一歩間違えれば単なる「ネタ」で終わりかねないなアイディアをきちんとゲームの要素として昇華し、それによる独自の面白味を生み出しただけでも驚嘆に値する行為だ。大げさだが、今作はRPGの新たな可能性を発掘したと言っても決しておかしくはない。
『わがままシステム』を最大限に活かし、且つ違和感を無くす為、ゲームの世界観からストーリーにもわがままをテーマにした、『総合的な整合性』を取る為のこだわりが発揮されているのも素晴らしいの一言。単にシステムとストーリーを別々にせず、融合させて独自の世界観を作り出そうとしたそのこだわりには、製作スタッフが「二つの要素を自然に絡める事の大事さ」と言うのを如何に熟知した方々なのかがヒシヒシと伝わってくる。「このゲーム無くしてこのシステム無し」とでも言うべき、比類無きオリジナリティが全面に出ているのも、全てはそのこだわりの賜物と言っても異論は無いだろう。

また、システム上での売りは『わがままシステム』だけに留まらない。
『わがままシステム』以外にも、今作には『ミミックスライム』によるモノマネ成長システム、『オウムのパロ』による被弾型魔法取得システム、『宿屋の食事』による強化システムなど、インパクトこそ薄れるが、強烈なものが沢山収録されている。
中でもゲームが進むと仲間になる、『ミミックスライム』と呼ばれるキャラクターの成長システムは実にユニーク。主人公のようにレベルアップではなくて倒した敵に『モノマネ(擬態)』して攻撃力と言った個々のパラメーターが強化される、特殊なものを取り入れているのである。しかも『モノマネ』することで変化するのは基礎パラメーターだけでなく、装備できる武器と防具に取得している魔法と言ったものまで対象。積み重ねていけばいくほど、どんどんおかしなキャラクターに転身していくのだ。肉弾戦主体の漢(おとこ)になることもあれば、魔法乱発の危ないスライムになるなどと。そのバラエティー豊かなモノマネパターンを考えるだけでも、一風変わったキャラクター育成の醍醐味みたいなものを味わうことができるだろう。
またシステムとは別に、依頼こと『クエスト』主体で進行していく本編の構成も面白い試みが盛り沢山。わがままシステムを駆使して解く『クエスト』の内容もさることながら、時には『地下迷宮』でダンジョン探索をしたり、選んだ選択肢によって各マップのゴール地点『門』の前で待つボスキャラが変化したりなど、これまでのRPGとは一線を欠くネタの数々には、こんなのアリで良いのかと、逆に突っ込みたくなってしまうこと間違いなし。『わがまま』を効果的に取り入れたクエストの構成、ストーリー展開にも思わずクスッと笑ってしまうだろう。
しかし、残念極まりないのがこの『クエスト』主体のゲーム展開の発展性の乏しさ。これが今作を「斬新なシステムを実装した名作」から、「斬新なシステムを取り入れただけの凡作」とまで評価を落とす要因として機能してしまっている。そもそも『クエスト』自体、バリエーションがあまりに少ない。大半が「特定のアイテムを○個集めろ」などのノルマを達成するのが目的の内容ばかり。ゲームと言うよりは作業も同然な作りに終始してしまってる。しかも信じられないのが、ゲーム終盤までこれと似たような事が繰り返されていくこと。新しいクエストを出したりするのではなく、後半に行く度に集めるアイテムの物量が増やすという、浅はかな調整が図られてしまっているのだ。
そんなのだから、後半に行けば行くほど、今作の「ゲームとしての面白さ」は氷が解けるかの如く、面白くなくなっていく。段々と面倒臭さが増していくばかりで、最後の方では「早く終わらんかな、これ…」と思わず愚痴りたくなる。
それで先の『クエストを終わったことにするわがまま』を使えば、今度はプレイヤー自身の成長が遅れるから、別のところで無駄な時間を費やすハメになってしまう。『クエストを終わったことにするわがまま』を使って手抜きしても、それを使ったとしても攻略扱いしないクエストが出てくるから、最終的にはそのクエストをやらねばならぬ事になる。まさに「何て勿体無いことをしたんだ!」…である。折角、ゲームシステムで新しいものを見せたのに、肝心のゲーム展開がこれではそれも活きない。最初しか新鮮味が楽しめない作りだなんて、言葉が悪いが努力不足だ。開発期間が限られてたとか、その可能性も無きにしも非ずだが、それだからって単調な内容で水増ししてその場しのぎとか、情けな過ぎる。それしかできないのだったら、本編のボリュームを削り落としてくれた方がよっぽど良かった。
クエストだけでなく、先に挙げた『宿屋の食事』による強化システムも詰めが甘く、こっちでキャラを強化した方が、レベルアップするよりは強くなるというのも理に適ってなく気持ち悪い。食事の値段が後半のマップになるほど増え、逆に序盤のマップで食事を取り続ける方が効率が良いというのも不自然極まりない。「食ってすぐ寝てパワーアップ」という概念自体も、メタボ検診で騒がれる世の中への反逆みたいで、何処と無くカッコ悪い。まさに、真新しさを優先し過ぎたあまり、肝の部分を怠った良い例とはこれである。
面白いシステムをこんなにも実装しながらも、肝である本編を疎かにしてしまうとはそれで終わらせてるな…だ。システムを作り込めば本編だって面白くなるとか、本気でそんな事を考えながら今作は作られたのか。つくづく、勿体無さ過ぎるの一言だ。整合性へのこだわりとか、見るべきところがあっても、今作がシステムだけが面白いゲームなのは変わらず。とにかく、ネタとして面白さだけが強調された、実に奇妙なものに仕上げられてしまっているのである。これは無い。

その他、クエストの内容のみならず、地下迷宮のダンジョン構成やゲームバランスと言ったサブ的なところでも今作は作りの甘さを露呈してしまってる。
特にバランス周りは総合的には温め、また『わがままシステム』を活かした作りなのは良いのだが、先の食事による強化が優先されたレベルアップの仕組みだとか、所々で不備が目立つ。敵との遭遇率…エンカウント率なども高め、迷宮ではシンボルエンカウントだが「敵に近づいただけでエンカウントされる」という謎の仕組みとなっているのも然り。しかも迷宮では下げる手段(減らす手段)なし、一度外に出ればモンスター復活と言うこれまた謎の調整が図られてしまってる始末。もはや、適当以外の何者ではない。
しかし、サポート機能周りはそこそこ良い出来。特に戦闘のエフェクトカット機能は大変秀逸で、どんなに派手な魔法だろうが通常攻撃だろうが、Aボタン一発で飛ばせてしまうのは爽快。基本、3Dのグラフィックながら、まるで処理落ちを起こさない辺りも素晴らしく、テンポの良さを出す為の工夫に関しては今作、他のDSゲーム以上に秀でてると言える。
また音楽も素晴らしく、各場面を大いに盛り上げてくれる曲が満載なのも素晴らしい。中でもボス戦の曲はかなり熱い作りなので、是非とも要チェックだ。
ストーリーもギャグテイスト全開の内容であるので深みは無いが、わがままでありながらも全く嫌悪感が無い、むしろ好感が抱ける主人公アンジェラのキャラクター性など見所は結構ある。

しかし、残念ながらそれでもゲームとしての総評は凡作。結局、システムの真新しさばかりが優先され、ゲーム本編の面白さが無視されてしまった、酷く素っ気無い作りとなってしまっている。
システム自体の触ってみる価値はありまくり。それでもゲームとしては物足りない感が強い、この『世界はあたしでまわってる』。新しいゲーム好きにはお薦めできるが、やり応えのあるゲームを求めるプレイヤー、RPG好きには手放しにお薦めできない一本である。もう少し、細かい捻りの効いたゲームなら、万人に薦められる一本だったのだけど…。
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