Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo DS>
  4. ロックマンゼクス
≫ロックマンゼクス
■発売元 カプコン
■開発元 インティ・クリエイツ
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 44ページ
■推定クリア時間 10〜15時間(エンディング目的)、35〜45時間(完全攻略目的)
人間とレプリロイドとの対立により、長きに渡って続けられた戦争…。
それを境に両者は真の平和と平等を求め、人間は『機械の体』というレプリロイドと同じ『力』と、レプリロイドは『寿命』という人間と同じ『命の重さ』を与えることを法律で定めた。

それから数百年後、限りなく近しい存在となった両者は互いを区別する事もなくなり、かつての戦争の事など忘れ去られようとしていた。一方、世界的な問題となっていたエネルギー不足も『セルパン・カンパニー』という大企業が発掘した大型エネルギー供給装置によって解消。世界的にセルパン・カンパニーは、優良企業として英雄視された。

そんな中、一人…その企業を憎む者がいた。
運び屋で働くその者は、セルパン・カンパニーのビルを何処か悲しい目で見つめている。
これから自分に託される運命も知らずに…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆人間形態も含めた6種類以上の変身を使い分ける、奇抜な『ロックオンシステム』
◆エアダッシュに水中歩行など、シリーズ最高の多彩さで送るプレイヤーアクション(ロックオンシステムの恩恵により、できる事が増えた)
◆人物捜索、特定資源の回収などロクゼロシリーズ譲りの個性的なミッションの数々
◆大都市、高速道路、発電所、遊園地など多彩なバリエーションに富んだステージ
◆推定クリアタイム10時間以上と、アクションのロックマンとしては異例の総計ボリューム(更にアイテム収集、クエストとやり込み要素も満載)
◆如何にもロックマンらしい、躍動感溢れる動きが見る者を魅了するボスキャラクター達
◆やや煩わしさはあれど、動かす面白さはしっかりとした優れた操作性
◆DSの能力を最大限に発揮した、究極に近いドット絵が秀逸なグラフィック
◆ロックマンシリーズらしい、勢いのある秀逸な音楽(名曲もチラホラ)
◆シリーズとしては異端、人間キャラの関与の濃さが印象的なストーリー
◆本当にDSのゲームなのかと、思わず耳を疑う圧巻のフルボイス演出
◆同じく、本当にDSのゲームかと目を疑う、気合いの入ったアニメムービー
◆何処かで見た敵キャラ、懐かしの『缶』の登場など、露骨なネタの数々

--- Bad Point ---
◆初代ロックマンゼロを悪化させたと言っても過言ではない、マップの探索メインの面倒臭さ満点の基本ゲームシステム(仮にもアクションのロックマンで、これはない)
◆もはや「迷わせる」を前提としているとしか思えない、陰湿なマップ構成(各エリアとの繋がりが分かり難くて、無駄にイライラさせられる)
◆同じく「迷わせる」を前提としているとしか思えない、簡易マップ機能
◆完全コア志向な狭いゲームバランス(ロックマンゼロ4の悪い所を継承してしまってる)
◆上級者への優遇処置でしかない、ボスの『弱点』と入手モデルの損傷
◆他のモデルと比べて、明らかに万能・強過ぎる『モデルHx』
◆攻撃手段を持っておらず、しゃがむぐらいしか特徴が無い人間形態(存在意義が薄い)
◆面倒臭さ満点の街の人との会話(必ず人間形態でないといけないって…)
◆発動時間の短さもあって、中途半端な印象が否めない『O.I.S』
◆圧巻ではあるが、逆にやかましいフルボイス(消去機能が無いのも腹立たしい
◆同じく凄いけど、『容量の無駄遣い』としての感も否めないアニメムービー
◆シリーズ最高の嫌らしさを誇る、終盤のボスラッシュ(回復不可とか訳が分からない)
◆ロックマンゼロ3〜4が無ければ明かされない、隠し要素の存在
▼Review ≪Last Update : 9/6/2008≫
再び、混迷の時代へと戻る。

ゲーム的にも、ストーリー的にも。


GBAの『ロックマンゼロ』シリーズの後継作としてリリースされた、新生ロックマンシリーズ。開発は『ロックマンゼロ』と同じ、インティ・クリエイツが担当。

進化の方向を間違えた、もどかしさ溢れる問題作である。

ロックマンゼロシリーズの後継作という事もあり、基本的な内容、システムはそれに順序。横スクロールで展開する、ミッションクリア型アクションゲームで、主人公のヴァン、或いはエールを操り、人物の捜索、特定アイテムの回収などのミッションを攻略していくというものとなっている。
ゲームとしての骨組みそのものは、ロックマンゼロと何ら変わりは無い。プレイヤーキャラのアクションもゼットセイバーによる剣撃など、ほとんど同じものを継承している。しかし、実質的な中身そのものはロックマンゼロ以上に陰湿且つ複雑。文字通り、間違った進化を遂げてしまった。
その間違った進化こそが、本編進行の仕組み。ロックマンシリーズと言えば、遊びたいステージを選ぶと直にそのステージが遊べ、クリア或いはゲームオーバーになると、またステージを選ぶ画面に戻れるという、独特のテンポの良さが、いわゆる一つの伝統でもあった。そしてその伝統はロックマンXシリーズ、ロックマンゼロシリーズでも、形を少し変えながらも、引き継がれてきた。それを今作は何を血迷ったか、完全に取っ払ってしまった。遊びたいミッションを選んでも、その舞台となるステージに直に転送されなくなってしまったのだ。
じゃあ、どうやってステージまで行くのかというと、徒歩!広いマップを歩き回りながら、目的地まで自力で向かわなければならないのである。しかも、全体マップはあっても「ミッションはこのエリアで行われます」と言ったガイド機能が無いから、どう歩いていけば良いのかも分からない。更に全体マップも、現在いるエリアがどういう構造なのかも示してくれない簡易型だから、何処と何処が繋がっているのかも一目で分からない。特定のエリアとエリアを繋ぐショートカットがあっても、マップの繋ぎが分からないのだから、全く役立たない。もの凄く極端に例えれば、任天堂のメトロイドを更にやり難くしたような進行の仕組みとなってしまっているのである。
それだから、サクサクとミッションを攻略していきたい!…と思っても、その前に迷いという大きな関門が立ちはばかるから、全くと言って良いほど気持ち良く楽しめない。逆に道が分かり難いが故に、ストレスが溜まっていくだけ。
こう言う探索型のアクションゲームは、プレイヤーに迷いの負担を可能な限り減らす、慎重なマップデザインとサポート(詳細マップ機能の導入、セーブポイントの大量配置)が大切なのだが、今作はそれが皆無。プレイヤーへの配慮がまるで足りてない、明らかに「全てを知っているスタッフ有利」な有様となってしまっているのである。
また、何故ロックマンで探索をしなければならないのか、その必然性が感じられないのも致命的だ。明らかに従来の「ステージを選べば、直にステージが始まる」という仕組みより遊び難いし、面白くも無い。遊び易さこそこのシリーズの伝統であったのに、それを崩すかのような安易な変更をしてしまったのはただひたすら残念。
そんな惨状だから、当然のように今回はアクションゲームとしての面白さも激薄。むしろ、面倒臭さが濃い目だという、アクションゲームとしては一番押し出されてはいけない所が強調されてしまっている状況。まさにロックマンの名を語るゲームとしての相応しさの無い仕上がりとなってしまっているのである。ロックマンゼロに次ぐ、新たなロックマンシリーズの記念すべき第一歩で、こんなドン引きするような真似を仕出かすだなんて、スタッフは何を血迷ったのか。

同じく新要素の『ロックオンシステム』も、残念ながらいま一つと言わざるを得ない。
今作では『ライブメタル』と呼ばれる特殊な鉱物を使う事で、全部で6種類以上のロックマンへと変身できる『ロックオンシステム』と呼ばれるものが起用されてるのだが、これで変身できるロックマンの能力差というのが極端で、統一感が取れていない。スタンダードであるモデルZXが終始使い易かったり、エアダッシュのアクションを持つモデルHXは攻撃力共に強力過ぎるなど、はっきり言ってこの二つだけで十分と言ってもおかしくないほど。他のものは、特殊なエリアの突破に必要となる程度で、上手く活かしきれてないのである。
またモデルZX以外のものは、基本的にミッションでのボスを倒す事によって入手できるのだが、これにも嫌らしい付加要素がある。今作で登場するボスには『弱点』となる部位があり、ここに攻撃を集中させると通常より大きなダメージを与える事ができるのだが、この『弱点』というのはモデルそのもの。つまり、集中的に攻撃をし過ぎるとモデルが損傷し、ボロボロの状態でゲットする羽目となってしまう。更に完全な状態に戻す為に『Eクリスタル』のアイテムを集め、修復するという作業までせざるを得なくなる。結局、弱点を攻撃する事によって得られるのはデメリットばかり。弱点を攻撃せずにボスを倒した方がメリットがある。明らかにプレイ時間の間延び、そして上級者への優遇行為としか思えない、嫌らしい処置が加えられてしまっているのだ。リアリティを追求したが故の産物なのかもしれないが、逆にそれがゲーム性を損ねてしまっている惨状には正直、苦笑いせざるを得ない。何の為の弱点なのか。
他にも、モデルには『オーバー・ドライブ・インヴォークシステム(O.I.S)』なる、いわゆる必殺技みたいなのもあるのだが、これの使い勝手も大変悪く、発動しても短時間でエネルギー切れとなり、使えなくなってしまうのがもどかしい。
特にボス戦において、短期で決着を付けようにも、エネルギーが直に切れるから普通に戦いざるを得なくなるのは不快。 ボスが苦手とする武器で攻めると、いつもは苦戦するボスもあっさり倒せてしまう、そんな大らかさを兼ねたバランスこそが、ロックマンシリーズの伝統でもあったのに、それを封じるだなんて上級者への優遇にも限度がある。『ロックマンゼロ4』の時のエレメントチップ廃止もそうだが、どうして直にボスを倒せないような嫌らしい処置、上級者が喜ぶような真似をするのか。ゲームバランスが崩れて単調化するからという理由があっての事かもしれないが、その自由にバランスを崩せる事もシリーズの大きな売りであったはずだ。それを取っ払ったら、ロックマンではないじゃないか。ただのコアユーザーが喜ぶだけのマニアックなアクションゲームへと成れ果ててしまうではないか。
結局、今作もそんな『ロックマンゼロ4』と同じ道を辿ってしまったのが腹立たしい限りだ。システムの発想自体は面白いのに、こんな嫌らしい処置を施しては元も子も無い。

当然ながら、総合的なゲームバランスも褒められたものじゃない。理不尽さこそ無いのが救いだが、初心者に対する救済処置が少なすぎて、コア志向に陥ってしまっている。イージーモードについては、敵の体力が緩くなっている分、ある程度マシなレベルに落ち着いているが、この劇的な差には正直、辟易する。
操作性も決して悪くは無いのだが、DSのハードの都合上もあり若干、動かし難くなっているのが辛い。こればかりは、DSのボタン配置がいけないとしか言い様が無い。とは言え、サブウェポン(メインとは別に装備する武器)がRボタンで発動というのは正直、疑問が残る。
グラフィックと音楽は水準以上の出来だと言える。反面、演出周りは『容量の無駄遣い』とも言えるものが多く、入れる異議の無いものに満ちている。特にフルボイスはその代表格で正直、やかまし過ぎてウザい。起用している声優陣も明らかに媚びを売ったキャスティング(小林早苗、水島大宙、広橋涼、伊藤静ほか)で、気持ち悪い(決して演じている声優さんが悪い!…という訳ではないが)。挙句、このボイスはオプションで消せないのだから、余計に腹立たしい。落ち着いてアクション本編に集中したい人にとって、これは苦行も良いところではないか。どうして、ボイスだけを消せるオプションを導入しなかったのか。消せれば、ゲームとしてもかなり懐の広いものになっただろうに、どうしてやらなかったのか。正直、そこに関してはスタッフの神経を疑わざるを得ない。中にはボイスが死ぬほど嫌いな人だっているんだ。何故、そう言った人達への配慮をしないんだ?絶対に気に入るとでも思っているのか?よく考えてもらいたい。

他にもファンに対する媚びを売り過ぎな露骨なファンサービス、ロックマンゼロ3と4のダブルスロットによる差別的なおまけ要素の存在など、やり過ぎとしか言い様の無い点は多く見受けられる。 それでも、総合的なアクションゲームとしての完成度はそこそこだ。上級者寄りとは言え、バランスは綺麗にまとまってるし、アクションゲーム特有の動かす楽しさもある。だが、ロックマンシリーズとしてカテゴライズすると、新しいシリーズであってもこれは無い…と言った有様となってしまっているのが正直な所である。余計な味付けをし、人を限ったものと化してしまっている、今作『ロックマンゼクス』。長年のシリーズファンにも、アクションゲーム好きのユーザーにも薦め難い一本である。決して遊べない事は無いが、それ相応の覚悟を持った上で臨むのを推奨する。個人的にだが、ロックマンシリーズの将来が不安でならない限りだ。こんなにも媚びを売った作品が、次世代を担って良いのだろうか…?
≫トップに戻る≪