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  4. ファンタシースターZERO
≫ファンタシースターZERO
■発売元 セガ(現:セガゲームス)
■ジャンル コミュニケーションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税別)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応(※2016年現在、サービス終了
■総説明書ページ数 60ページ
■推定クリア時間 8時間〜10時間(エンディング目的)、120〜160時間(完全攻略目的)
かつて、繁栄の果ての大戦争によって文明を無に帰した惑星『地球』。
全てが失われてからの空白の200年を生き残った人々は『大空白』と呼んだ。
大戦争を生き残った唯一の種族『ヒューマン』は、『シティ』を作り、復興に力を尽くした。

しかし、シティを一歩出るとそこには『エネミー』が徘徊し、容赦なく人々を襲った。
人々はエネミーに対抗すべく、旧文明の遺跡から発掘した太古のエネルギー『フォトン』を用いた武器を手に取る。エネミーと戦う彼らを人々は『ハンターズ』と呼ぶようになった。

時を同じくして、大戦争の影響を受けて眠りについていた生命体『キャスト』達が覚醒。彼らは何故か一様に過去の記憶を無くしていたが、後にヒューマンと手を取り合い、各地に点在するシティでの共存を始めた。

だが人々は忘れていた。古の時、彼らと共存していたもう一つの種族が居た事を。

空に浮かぶ月からその種族が降り立った時、新しい物語が幕を開ける。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆拠点とフィールドを行き来して戦闘を繰り返す、アクションゲーム色の強い分かり易い本編構成
◆豊富な要素が演出する戦略性の高さで魅せる、アクションゲームチックな戦闘システム
◆三箇所という限られた範囲にアクションを割り振り、戦闘をこなしていく独特の戦略性が光る『アクションパレット』
◆全三種族+14の職業から自分なりのキャラクターを生み出す楽しさ、差別化の図られた調整とやり込み甲斐の深さで魅せるキャラクタークリエイト
◆雑魚敵との戦いを繰り返してプレイヤーを強化し、強敵(ボス)を打倒するというクエスト攻略のコンセプトが明確に現れた適切且つ、やり込み甲斐のある戦闘バランス
◆DSのハード性能の限界を突き詰めた作り込みが光る、オンラインマルチプレイ
◆手書きで相手とのコミュニケーションが楽しめるという、画期的且つ、DSのタッチスクリーンを最大限に活かした試みが炸裂した『ビジュアルチャット』
◆キーレスポンスの良さとスッキリとしたデザインが素敵なメニューインターフェース
◆対象の敵へのロックオン、通過済みエリアと未通過エリアのアイコンによる色分けなど、優秀なガイド機能の数々
◆戦闘と探索を繰り返す内容を考慮した、短めの本編ボリューム
◆サブクエスト、隠し難易度の攻略、エンディング分岐など膨大なやり込み要素
◆DSのハード性能からして無茶振りな作り込みと鮮やかな色遣いで魅せるグラフィック
◆同じくDSのハード性能的に無茶振りが炸裂した、フルボイス仕様のアニメムービー
◆戦闘の状況に応じて曲調が変化するなど、臨場感と雰囲気を高める作り込みが光る音楽
◆種族間の交流と対立、巨悪との戦いという王道一直線の内容でまとめたストーリー

--- Bad Point ---
◆3Dアクションとの不釣り合いっぷりが顕著に現れた操作性(但し、3DSでプレイすれば多少はまともになる)
◆イベントとフィールドの背景等で違いは付けているとは言え、平坦さが否めないクエストのレベルデザイン
◆じゃじゃ馬過ぎるロックオン機能(プレイヤーに近い敵からロックしてしまう)
◆鬼畜過ぎるやり込み要素『エターナルタワー』(攻略に4時間以上がかかる上、中断不可)
◆『エターナルタワー』を攻略しなければ解禁されない一部隠し要素の存在
◆演出的には面白いが、逆に曲としては印象に残るものに乏しい音楽
◆ハード性能上の都合とは言え、細かい設定が効かない仕様のキャラクタークリエイトシステム
◆双方でフレンドコードを交換しないと遊べない、若干の煩わしさを抱えたフレンド同士のオンラインマルチプレイ
▼Review ≪Last Update : 2/28/2016≫
何故、私は頭しか描かれていないのか…。

今作最大の謎…かもしれない。


1987年にセガ・マークIII、マスターシステム用ソフトとして発売され、SFとファンタジーを融合させた世界観とストーリーで好評を博し、後の2000年にはオンラインマルチプレイを実装したRPGとして日本国内で大きな成功を収め、セガの看板作品の一つとして大きく発展した『ファンタシースター』シリーズのニンテンドーDS向け最新作。

DSのハード機能を効果的に活用したマルチプレイ、携帯機ならではの手軽さを意識したゲームデザイン、バランス調整が光る良作アクションRPGだ。

ゲーム内容は、3Dの三人称視点で展開するアクションロールプレイングゲーム。『エネミー』なるモンスターを狩る『ハンターズ』の一人となり、荒廃した地球上を舞台とした『クエスト』に挑み、ストーリーを進めていくというものである。本編は拠点となる街『ダイロンシティ』とクエストが展開される『フィールド』の二つの舞台を行き来する形で進行。シティの中枢、『ハンターズギルド』内の『クエストカウンター』でクエストを受領し、同じくギルド内部にある『テレポーター』なる装置から『フィールド』へと移動してクエスト攻略に挑むというのが基本的な流れとなっている。クエストは、主にストーリーに直結した『メインクエスト』なら、フィールド最深部で待ち構える『ボスエネミー』の討伐を目指すというものがほとんど。ストーリーに関連しない『サブクエスト』だと多少、内容は変わるが、基本はフィールド上でエネミーとの戦闘を行いながら、目的地を目指すものなのでほぼ一緒。アクションゲームの感覚で進めていける、単純明快な構成になっている。また、フィールドの構造も『ファイナルファイト』等に代表される、ベルトスクロール型アクションゲームの方式を踏襲。エリアごとに現れる敵を全滅させて次のエリアへと繋がるゲートを解禁し、移動していくというものになっている。一応、RPGを謳っているだけあって経験値、レベル、装備の概念はあるが、やる事自体が敵との戦闘と探索に特化しているので、手触り感はれっきとしたアクションゲーム。そして、流れもアクションゲーム同然と、ゲームデザイン的には分かり易さ最優先。直感的に楽しめて、やるべき目的も直に理解できるという取っ付き易さを重視した内容になっている。実際にプレイしてみると、RPGらしからぬその手触り感に戸惑うこと必至。良い意味でギャップの激しい仕上がりとなっている。
反面、詳細なシステム周りは独特且つ、入り組んだ作り。まず戦闘関連だが、基本こそアクションゲーム方式ながら、機敏な動きはせず、攻撃後に僅かな間が発生する特徴的な仕組みになっている。その為、いわゆるボタン連打で敵に連続で切り込むと言ったスピーディなアクションは描かれない。連続攻撃自体は存在するが、「攻撃⇒間が発生⇒攻撃⇒間が発生…」という形で展開されるので、作りの割には結構、スローテンポな手触りになっている。また、戦闘時の攻撃、アイテムの使用と言ったアクションを行うに当たっては全て『アクションパレット』なるインターフェースに登録する必要がある。いわばボタンのアサイン(割り振り)を行うシステムで、YBAボタンにアクションを割り振る事で、ボタンを押した際にそれに対応したアクションが繰り出せるようになる。パレットに割り振れるのは全部で六箇所。デフォルトの三箇所、Rボタン押しっぱなしで開く裏パレットの三箇所にアクションを割り振る事ができる。ただ、基本的に戦闘時では三箇所に限った使用が求められてくるので、限られた範囲で如何に効率的な動きを行えるかの割り振りが重要となってくる。特にエネミーに大きなダメージを与えたりなど、高い効果を発揮する必殺技『フォトンアーツ』、他のRPGで言う所の魔法に当たる『テクニック』、更には敵の攻撃を振り切る『緊急回避』もここに割り振らないと使えないので尚更だ。仕組み自体は単純で、装備の操作にしても複雑さは皆無だが、三箇所という縛りが醸し出す戦略性とカスタマイズ性の高さはかなりのもの。それでいて、戦闘時でもこちら側の隙を考慮した立ち回りも求められてくるなど、戦術的なプレイスタイルが試されてくるという、非常に侮り難い仕上がりになっている。こういう作り故、アクションという割には爽快感は薄め。動かす楽しさ以上に考える面白さの方を重視した、とても風変わりな設計とされている。
更に今作には『キャラクタークリエイト』、プレイヤーキャラクター作成機能が搭載されており、ゲーム開始時に自らの分身となるキャラクターを作り、本編の攻略に挑むことになる。作成できるキャラクターは『ヒューマン』、『キャスト』、『ニューマン』三種族+合計14の職業。それらの中から好きなキャラクターやカラー、ボイスの設定等を行ってプレイヤーキャラクターを作り出す事になる。なお、クリエイトでプレイヤーが設定できる箇所は頭部、コスチュームの形状と色、ボイスで、顔のデザイン、体系などはハードの制約故になのか、設定できない仕様となっている。その為、若干似通ったパターンが生まれ易い。選べる数は豊富ながら、細かく設定できないのはこの手のシステムが好きなプレイヤーなら大きな不満を抱くかもしれないが、選んだキャラクターごとに異なる本編攻略が楽しめるのは魅力的。オーソドックスに近接攻撃と遠距離攻撃を主軸とした、王道の方向性で行くか、或いは『テクニック』重視のシビアな方向で行くか。そんなクリエイト要素特有の遊びの幅広さはバッチリで、カスタマイズ性、やり込み甲斐共に非常に優れたものになっている。何気に今作、セーブファイルが三つ作成できるというのも大きな特色。何かとこの手の機能を実装したゲームはセーブファイルが1つしか作成できないのが当たり前だが、今作は三つ作成できるので、プレイヤーの気の済むまで色々な攻略や戦術を楽しむ事もできるのだ。そんな素晴らしい配慮もこのシステムにおける見所の一つ。制約は多めながら、それが上手い具合にやり込み甲斐の深さへと繋がった、秀逸なシステムに仕上げられている。
この他にも、プレイヤーをサポートする機械生命体『マグ』の育成、彼らだけが使える進化する必殺技『フォトンブラスト』など、個性的なシステムは盛り沢山。また、今作はオンラインマルチプレイにも対応しており、最大四人までのパーティを組んでのクエスト攻略も楽しめる。また、マルチプレイ及びメインストーリーにおいては『ビジュアルチャット』なる、DSのタッチスクリーンを活かした手書きチャットが使え、自由なスタイルでプレイヤー間同士でコミュニケーションを行う事ができる。テキストチャットと違い、無制限に色々書ける故のデメリットもあるのだが、手書きであれこれ語り合えるというだけでもその独自性の高さはかなりのもの。ある意味、今作の数あるシステムの中では一際輝いたものと言えるだろう。
このような具合に単純明快ながらも戦略、戦術性共に深いものを秘めたゲームデザインが光る、意欲的な内容に仕上げられている。アクションRPGとしてやや単調で、爽快感に欠ける所もあるが、個々のシステムによって唯一無二のプレイ感を演出。それでいて、オンラインプレイにおいては画期的なチャットシステムを実装するなど、MMORPGとしてシリーズを積み重ねてきたシリーズだけにある意地も炸裂している。ハード制約から来る面も少しあるが、作りは本格的。携帯機且つ、DSならではのオンラインRPGとして完成された作品になっている。

そんな今作の魅力は、手書きチャットこと『ビジュアルチャットシステム』を実装した画期的にして、DS独自の魅力を併せ持ったマルチプレイだ。主にオンライン要素を取り入れたRPGにおけるコミュニケーション手段というと、キーボードで文字入力を行うテキストチャットが一般的だが、この文字入力というのは基本、タッチタイピングのスキルが要求されるもの。なので、それができるプレイヤーなら手軽に触れる反面、そうでないプレイヤーには敷居が高く、敬遠され易いという極端な特徴を持つシステムでもある。そう言ったプレイヤーへの配慮として、定型文を送る仕組みを実装したシステムも存在するが、やはり自分自身の言葉で相手とコミュニケーションを取れないのはもどかしさを感じるもの。それが行える環境があるゲームなら尚更である。しかし、行いたくてもタッチタイピングのスキルは自分に無い、手書きなら簡単にメッセージが送れるのに…と、そのシステムを前にして思ったプレイヤーは少なからず居るのではないのだろうか。
そんな夢のようなシステムを今作は実現。キーボード以上に快適かつ、直感的なコミュニケーションが行えてしまうのだ。なので、タイピングスキル無しに気軽に相手とやり取りしながらゲームを遊べる。それも別に綺麗な字を書く必要もなく、汚い字を書いても全然大丈夫だし、絵でやり取りしても問題無し。プレイヤーの直感の赴くまま、相手とのやり取りを楽しむ事ができるのである。まさにDS特有のタッチスクリーンだからこそできた、新たなコミュニケーションの形を実現。オンラインだけでなく、ローカル通信時のマルチプレイ、本編でも使えるのだが、それでもこの人間が最も手慣れた操作で相手とやり取りしながらゲームが遊べるというのは本当に革新的。タッチスクリーンと協力型マルチプレイの相性の良さというものを存分に痛感させられる仕上がりになっている。
またオンライン時に限り、この機能をフレンド同士にしかできなくした縛りも適切。何気にこの手書きチャットはどんな言葉でも書けてしまう、下劣なものから中傷的なものまでオールオッケーの仕様なのだが、不特定プレイヤーとの協力プレイ、いわゆる野良プレイ時は使用不可。定型文のみでのやり取りしかできないように縛っているのだ。なので、他人の傷つける発言に心を痛める事も無ければ、不愉快な思いになる事も無い。本当に気を許した者同士でしか使えない作りになっているのである。正直、魅力的なシステムの可能性を狭める措置と見えなくもないが、この配慮は実に見事。幾ら画期的だからと言って、誰もが楽しめるような風にせず、しっかりとシステム上の欠点を検証し、互いが傷つかない為の措置を取っているのには、過去のシリーズでオンラインRPGの可能性とそこから生じる危険性を探ってきた経験が行かされている。下手に使えば、虐めの要因にもなりかねないだけに自由にし過ぎる訳にもいかない。ましてや、今作はニンテンドーDS向けのゲームであるから低年齢層が触れる可能性も高い。そう言った懸念を払拭し、安心・安全な環境を作る為、システムの面白さ以上にユーザーの心情を最優先とした判断は極めて秀逸なものだったと言えるだろう。これがシステムの面白さをもっと色んな人に!…なんて考えが先走っていたら地獄絵図になってたのは確実。そうしっかりとシステム上の特性を見据えて適切な措置を取ったのには、今作がどれほど入念な検証を持って作られたものなのかという事を実感させられるばかりだ。こんなシステムの新しさに自惚れない配慮が成されているのもこのシステムの秀逸な所。非常に理に適った形にまとまっているのだ。人とシステム双方を見た上で作りにもまた、製作スタッフの素晴らしいセンスと配慮を実感させられるばかり。その見事な仕上がりには、さすがは国内で大きな成功を治めたオンラインRPGを作ったセガだけにあるの一言に尽きる次第だ。
オンラインに目が行きがちだが、アクションRPGとしての出来も良好。特に『アクションパレット』が演出する限られた制約下で如何にベストな戦術を駆使するかと言った戦略を練る面白さはなかなかのもの。戦闘とフィールド探索に特化しがちな本編に程好く起伏を与えているほか、クエスト攻略に奥行きを与えている。バランスの付け方も上手い。基本、雑魚敵との戦闘はほぼ負ける事が無いよう、気持ち弱めに設定されているのに対し、ボスは体力から攻撃全般のステータスが高く、力押しでは勝てないなど、プレイヤーに対して雑魚敵との戦いを繰り返してプレイヤーを強化しろと暗に訴えかけるコンセプトで調整されている。かと言ってレベルを上げれば余裕という訳では無く、緊急回避などのアクションを駆使したり、クエストによってはサポート役に付く仲間の状態も見極めて行動を取っていかなければならないなど、安易な遊び方を通用させない適切な作り込みが成されている。この辺も単調になり易い本編の構成に華を添え、且つアクションRPGとしての意義を突き詰めた仕上がりになっているのが絶妙。適度に刺激を受けながらストーリーを進めて行ける作りとなっているのにもまた、製作スタッフのセンスの素晴らしさを感じさせられる所だ。そして、そのストーリーのボリュームが短めなのも見事。大体、クリアまで10時間ほどと、アクションRPGとしてはかなり短めだが、戦闘と探索を繰り返す内容としてはこれが適切。下手に水増しすれば、ただの苦行となりかねないだけに、酷い飽きが来ない内に一息つけられる密度で落ち着かせたのはナイスな判断だ。アクションRPGというジャンル上、どうしてもボリュームには神経を尖らせてしまうものだが、そう言った所も今作は内容の特性を見据えた上で調整。ビジュアルチャットの使用制限もそうだが、プレイヤーが丁度良いと感じれる所までに留める見切りの良さは、本当に遊びの根本をよく検証しながら作っている事が分かる。こんな所においても、プレイヤーを尊重する姿勢が現れている辺りに製作陣の視野の広さというものを実感させられる。
その他、細かな状況確認が行えるミニマップを下画面に実装したり、フィールド上では通過済みのルートに専用のサインを表示すると言った探索上のストレスを緩和させる配慮も素晴らしいの一言。快適に遊べる事へのこだわりの強さには本当に感服するばかりだ。
しかし、クエストのレベルデザインはもう少し捻っても良かった。フィールド上の特色が敵と背景が違う程度しかないので本当に味気ない。また、サブクエストも少し行き過ぎている感があり、中でも『エターナルタワー』なるダンジョンが舞台になるクエストは途中中断ができず、4時間近くの長丁場になるのが酷い。携帯機のゲームとしてのコンセプト全否定も良い所だ。しかも、これをクリアしないとストーリーのクリア後要素である難易度で追加分が発生しないというのもいささか問題あり。ここも中断が効く仕様にするなど、もう少し妥協して欲しかったところだ。
そう言ったツメの甘い所もあるが、シンプルながらも極め甲斐のあるアクションRPGとしての作りとビジュアルチャットシステムは一際映えるものがある。残念ながら2016年現在、Wi-Fiサービス終了でオンラインは遊べなくなってしまったのだが、己の欠点を見据えた上での計算を施した作り込みは圧巻の一言。低年齢層が遊ぶオンラインRPGとしても、一つのアクションRPGとしても遊び応え共に十分なその仕上がりには、製作元であるセガの本気と言うものを実感させられるだろう。それほどまでに見所満載。素晴らしい作り込みが光る作品になっているのだ。

一方、操作性は、色々と限界の現れた仕上がり。3DのアクションRPGなのに十字キーでキャラクターを操作するので、人によってはかなりの煩わしさを感じてしまうだろう。混戦になった際に自由にカメラを動かせない辺りは尚更。制約の多いDSで3Dのオンライン要素を持ったアクションRPGを作ったという実績自体は素晴らしいが、こうも不便さを感じてしまう操作を体験させられると先走り過ぎの感は否めないところだ。それがセガらしいと言えば、セガらしいが(笑)。
グラフィックも同様に無茶が現れた仕上がりだが、質は非常に高く、特に背景周りにおいてはDSの性能を限界にまで使った事を実感させられる丁寧な描き込みが成されている。同様に演出周りもDSの限界を突き詰めるかの如き仕上がり。主にストーリー本編にて頻繁に挟まれるアニメムービーはその真骨頂。限られた容量の中によくぞ入れ込んだなと感心させられるものになっている。無論、ムービーはフルボイス。出演キャストも地味に豪華で、ナレーション及び主人公達の上司に当たる市長ダイロンの役に銀河万丈氏を起用しているというだけでも本気が伺い知れる…かもしれない。
音楽も基本的に雰囲気重視の仕上がりではあるが、戦闘の状況に合わせて曲調が変わる仕掛けが凝らされているのがユニーク。特にゲーム開始時のセーブファイルセレクト画面の曲は、色んな意味で今作の音楽における最大の注目ポイントと言ってもいいだろう。何せ、起動する度に曲が変わるのだから。あまりに頻繁に変わるので、人によっては「そもそも、この画面の音楽ってどんな曲だったっけ」と混乱してしまうかもしれない。

ストーリーも設定周りが独特ではあるが、本筋は種族間の交流と対立、そして巨悪との戦いという王道の内容で安定した作りになっている。また、イベント上の選択肢によってエンディングが変化するマルチエンディング制を盛り込んでいるなど、なかなか挑戦的且つ、リプレイ性を高める要素が盛り込まれている。キャラクター周りもボクっ娘ヒロインのサリサに頼れる兄貴分のカイなど、個性的な面子が揃っており、ちゃんとそれぞれに専用のエンディングが設けられているというこだわりっぷり。全エンドを目指すだけの甲斐は十分にある仕上がりになっている。また、所々に仕込まれたネタな描写も必見だ。特にサリサがアレされる場面(※自主規制)には、CEROが仕事してない?…と変な失望感を覚えるかも。
他にも変に人を選ばない適切なキャラクターデザインなど、見所はあるのだが割愛。
ひたすら戦闘と探索を繰り返す故の好みの分かれる本編構成、重過ぎるやり込み要素、そして無茶が過ぎる操作性など、手放しに誉められないところや時代を先走り過ぎる事に定評のあるセガの個性(?)が現れた所も散見されるが、携帯機で手書きチャットなる新たなコミュニケーション手段を確立させた意欲的な作りのオンラインプレイの環境、直感的に遊べてやり込む度に奥深さが増していくゲームデザイン、グラフィックや演出周りを始めとする技術的な面での無茶の数々等、力作というに十分過ぎる仕上がりになっている。オンラインが遊べなくなってしまった所為で、シングルとローカルのマルチプレイしか遊ぶ余地が無いのだが、それでも十分に遊び応えのある内容になっている今作。手軽に遊べてやり込めるアクションRPGを求めているプレイヤーなら、是非、手に取って遊んでみて頂きたい逸品だ。マルチプレイもなかなか盛り上がる仕上がりになっているので、接待ゲームとしてもどうぞ。お薦めです。
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