Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo DS>
  4. ラストバレット
≫ラストバレット
■発売元 フリュー
■ジャンル 狙撃ミステリーアドベンチャー
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力、殺傷描写あり
■定価 5040円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 24ページ
■推定クリア時間 4時間〜6時間(エンディング目的)、8〜10時間(完全攻略目的)
青葉国際大学1年生の響花梨(ひびき かりん)。母親の死、父親・敬一郎の失踪という悲しい過去を乗り越えた彼女は、穏やかで楽しい大学生活を送っていた。

そんなある日、花梨は大学の英語教師、佐久間司(さくま つかさ)に研究室に来るよう、呼び出された。言われた通りに研究室を訪れ、司と対面する花梨。
そこで彼女は司より、思いがけない事を告げられた。

「私の上司である、響敬一郎から伝言を預かってきた。」

そしてその瞬間、二人に武装した謎の組織員が襲い掛かる。
司は花梨にライフル銃『SVS-41』を手渡し、撃退を命ずる。
その銃には、花梨の両親の名が刻まれていた。

かくして、スナイパーになる事を運命付けられた少女の戦いが始まったのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆コマンド選択型アドベンチャーと狙撃主体のガンシューティングゲームを融合した、ありそうで無かった独自色に富んだゲームシステム
◆ターゲットの暗殺ではなく、武装解除を狙う事に特化した設定が面白いミッションパート
◆精密且つ、高度な狙撃が求められるものをメインに取り揃えた、個性豊かなミッションパートのミッション
◆難易度を下げてのミッション再開など、狙撃が苦手な方への配慮も万全な救済処置
◆ミッション完了時の評価平均次第で結末が変化するという、少し独特な仕様の分岐要素
◆早送り、デモスキップ、データベース閲覧など、適度に行き届いたオプション機能
◆印象的なものは少ないが、場面にマッチした曲が取り揃った音楽
◆重要な場面では会話がフルボイスになるなど、盛り上がり所のツボを抑えた演出

--- Bad Point ---
◆雑過ぎるシナリオ(ご都合主義の連続、雰囲気ぶち壊しなシーンが多い、成長物語としてのツボを全く抑えられてないなど、散々な出来)
◆シナリオの雑さを際立たせている稚拙なキャラクター描写(特に上司の佐久間司)
◆照準の異様なブレ具合(ブランコに乗ってるのかと疑ってしまうほどブレる)
◆ブレ具合の問題点で、思い通りに動かせない煩わしさが厳しい操作性(インターフェース周りのレスポンスは良好)
◆緊張感抜群だが、返って狙い難くてストレスも溜まり易い狙撃ターゲット
◆照準のブレを始めとする様々な問題点の所為で、調整不足感バリバリの難易度設定
◆「あっ」と言う間に終わってしまうほどに素っ気無いミッションパートのミッション(差別化は図られているが、どれもこれも一瞬で終わるので印象は薄い)
◆一昔のゲームかと思ってしまうぐらいにあっさりな総計ボリューム(エンディングまで4〜6時間)
◆一周するだけで9割近くコンプリートできてしまう、空気同然のやり込み要素
◆ドット絵の雑さがタマにキズなミッションパートのグラフィック
▼Review ≪Last Update : 12/23/2012≫
その老人、侮る無かれ。

彼の目は劣ってない。


プリントシール機、プライズゲーム向け景品の製造及び販売などを主要業務としていたフリュー株式会社が、家庭用ゲーム機事業参入の記念すべき第一作目としてリリースした、完全新作のアドベンチャーゲーム。

コマンド選択型アドベンチャーとガンシューティングの意外な融合。
そんな魅力的な試みを潰す、雑な作りが残念極まりない意欲作だ。

ゲーム内容はシナリオクリア方式のコマンド選択型アドベンチャーゲーム。突如、スナイパーに任命された女学生の主人公、響花梨となって様々なイベントとスナイパーのミッションを攻略していくというものである。
本編は話単位で区切られたシナリオを追う形で進行。各シナリオは『アドベンチャーパート』と『ミッションパート』の二つのパートを交互に繰り返しながら展開していく。前者『アドベンチャーパート』は会話をしながらストーリーを進めていく、名前通りのコマンド選択型アドベンチャーのパート。情報を集める為に聞き込みを行ったり、時折表示される『選択肢』を選んだりしていくのが主な内容となっている。『選択肢』があるという事は、分岐やバッ ドエンドの要素があるのかと、アドベンチャーゲームを経験した事のある方なら想像するかもしれないが、そのような要素は皆無。基本的に一本道で、どの選択肢を選んでもストーリーに大きな変化は起きない。あっても、その後の台詞が変わる程度。なので、複雑な構成を期待するプレイヤーは肩透かしを喰らうかもしれない。 ただ、ストーリーの分岐がない一方、結末の分岐に関連する要素は存在する。それが後者にして、今作最大の特徴でもある『ミッションパート』だ。
簡単に言ってしまえば、狙撃を行うパート。ガンシューティング風の主観視点の画面で、ターゲットであるオブジェクト(物)をスナイパーライフルで撃ち抜くというのが主な内容となっている。基本的にこのパートは最初に任務の詳細及び解説を行う『ブリーフィング』から入り、その後、『狙撃モード』へと移行する流れとなっている。最終的にターゲットのオブジェクトを撃ち抜く事ができればミッションクリア。逆に制限時間が経過してしまったり、間違ったターゲットを撃ってしまうとゲームオーバーになる。操作はタッチペン、或いは十字キーで照準(狙撃スコープ)を動かし、Lボタン、またはRボタンで銃撃を行う。基本的に本編で登場するミッションは一発勝負のものがほとんどで、下手な無駄撃ちをするとあっという間に失敗に至る設定になっている。その為、慎重且つタイミングを見計らった狙撃が求められてくる。ただ、照準は大きくブレる為、狙いを付けるのはかなりシビア。これを最小限に抑える為の救済処置として『集中モード』という照準のブレを抑える機能も用意されているが、回数制限付きな上、抑えられるのは一定時間の間だけなので、使いどころはよく考えなければならない。単純にターゲットを撃ち抜けば良いだけとは言え、このようなシビアな設定や調整が施されているのもあり、難易度は高め。狙撃する緊張感と難しさを余す事無く演出した、非常に癖のあるパートに仕上げられている。
そして、このパートでの結果が結末の分岐に影響。ミッションを達成すると評価が下されるのだが、今作ではこの評価次第で最後に訪れる結末が変化してくるのだ。なので、より良い結末を迎える為には極力良い評価を獲得し続けていかなければならない。念の為、悪い評価であればバットエンドになる訳ではなく、単に違う結末になるだけなので、そんな絶対に良い評価を取らなければならないというほど、厳しい制約は設けられてない。ただ、このような分岐がある為、どのミッションも余計に慎重になってしまう。まさに狙撃をメインとしたゲームだけにある設定。選択肢を選ぶのとは異なる、スリル溢れる体験を堪能できる作りとなっている。
しかし、ここまで難しいと、タイミングを合わせるのが苦手なプレイヤーには厳しいゲームなのではと思うのも事実。そこも今作は上手くカバーしており、何度かゲームオーバーを繰り返すにつれ、集中モードが制限なしで使えるようになる救済処置が設けられている。なので、意地さえあれば、クリアは可能。また、ミッション1つの時間も数秒程度と短め。難易度設定や仕組みはシビアだが、アドベンチャーゲームという事で、ストーリーをテンポよく進める為の配慮は万全。独特ながらも、アドベンチャーとしての体裁はしっかり守る設計が施されたものに仕上げられている。
ただ、それでもかなり異質なゲームであるのは言うまでもない。コマンド選択型アドベンチャーとガンシューティング、それも狙撃を行うゲームを交互にプレイしていくその構成と手応えは、他に類を見ない独自性に満ち溢れている。女学生がスナイパーとなり、狙撃の任務をこなしていく設定そのものはぶっ飛び過ぎだが、その独特極まりないゲームデザインと展開は、かの『ゴルゴ13』そのもの。あれほどのハードボイルドさは無いものの、無茶な設定を一つのゲームシステムとして確立させたその様はインパクト抜群。ありそうで無かったシチュエーション、そして遊びが体験できる、個性的にして唯一無二の作品とはまさにこの事。革新的な試みが成されたアドベンチャーゲームになっている。

言うまでも無く、今作の売りはコマンド選択型アドベンチャーとガンシューティングを融合させた独自色の強いゲームシステムだ。ミッションパート自体はミニゲーム同然の簡易な作りではあるものの、射撃の腕が求められてくるというのは、アドベンチャーゲームとしてはあまりにも革新的。テキストを読み進め、選択肢を選んでストーリーを進めていくのがお約束とも言えるアドベンチャーゲームの形に一石を投じる、非常に新しい手応えに富んだものに仕上がっている。ミッションのバリエーションも多彩且つ独特だ。敵の車のタイヤを狙う、相手スナイパーが持つライフル銃を狙うなど、精密で高度な狙撃が求められる場面が多く、それが否が応にも緊張感を煽り立てる。そう言った精密射撃が求められる場面が大半なだけに、上手く成功した時の達成感と開放感は格別。非常に短い時間の間に何十分もの時間が過ぎたかのような錯覚を覚える。似通ったミッションが少ないのも評価に値する部分だ。
また、こう言った狙撃を題材にしたストーリーを描いた作品と言えば、かの名作漫画『ゴルゴ13』であり、「狙撃=暗殺」というキーワードを知っている方ならば連想するかもしれない。だが、今作は珍しい事に、暗殺を目的としたミッションは一つも用意されていない。一応、ストーリー上、悪党やその手先は登場するのだが、今作におけるスナイパーは相手の命を奪わず、無力化させる事を目的とする設定により、基本、どんな敵であっても命を奪う真似はしない。逆に武器と言った暴力を行使する為の道具を撃ち、相手を無力化させる事を最優先としているのである。ミッションの大半が精密な狙撃を求められるものばかりというのは、全てこの設定によるもの。この為に本編のミッションの面倒臭さが際立っていると言っても過言ではないのだが、「狙撃=暗殺」というお約束に捉われない設定そのものは非常に素晴らしく、この手のストーリーにありがちな血生臭さが皆無なのは特筆に値する部分だ。こういう設定にしたのも全ては主人公が女学生というのにあるのだろうが、狙撃の暗殺イメージを決定付けた名作に捉われず、無力化というキーワードを貫き通した姿勢は素晴らしいの一言に尽きる。これにこだわった為、シビアさが突出してしまった感も否めないが、暗殺という安易な方向に逃げず、全てをまとめ上げたのは実に見事。こう言った従来の形に捉われない姿勢もミッション全般における大きな見所である。
だが、そうゲームシステムやミッション、設定周りが面白いものに出来上がっていながら、調整の面で難があるのは実に残念。特にミッション中における、過剰なほど左右にブレる照準は幾ら何でも酷過ぎだ。主人公はブランコにでも乗っているのかと突っ込みたくなるほど過剰に動くので、『集中モード』を使わないと、とまともに狙いを定める事も難しい。そんな状態で車のタイヤやら、ライフルやらなどの小さなターゲットを狙わねばならないのだから、ストレスも溜まる、溜まる。小さなターゲットを狙うミッションの内容上、ブレるのは一瞬だけなどにした方が遥かに良かっただろうに何故、ブランコ並にブレる設定にしてしまったのか。正直、この部分の調整を担当したスタッフはガンシューティングやFPSを全然やった事がないのでは、と疑われても仕方が無いぐらいだ。あまりにも雑過ぎる。
だが、それ以上に雑なのはシナリオだ。先ほどの通り、設定は面白いのだが、肝心の中身に関しては非常に浅く、ご都合主義がこれでもかと繰り返されるので面白味も感動も何も無い。シリアスな場面なのにギャグにしか見えない場面の多さも多く、特に主人公の花梨がナース服姿やショップ店員の姿のまま、狙撃に転じる展開はもはやコスプレショーも同然。雰囲気ぶち壊しである。人物描写もお粗末としか言い様が無く、花梨に指示を飛ばすパートナーのは残念なイケメン振りを発揮したり、悪役に至ってはショッカーの構成員ですらそんな失敗はしないというほどのお馬鹿っぷりを晒す始末。また、今作は成長物語を謳っているのにそういう描写が皆無なのも致命的だ。こういう突然、非日常に巻き込まれた主人公の物語なら、挫折描写は避けられないのに、それが何もない辺りに成長物語に対する理解の甘さが露呈している。一応、それなりにシリアスな場面もあるにはあるのだが、細かい描写の粗もあってか、その出来は習作かと錯覚するほどに稚拙。設定は悪くないし、料理次第では見応えのあるストーリーになる可能性を秘めてたというのに何故、出来の悪いライトノベルのノリを出してしまったのか。そう全てが宝の持ち腐れで終わってしまっているのがあまりにも勿体無く、手抜き過ぎるとしか言い様が無い。
決して遊べないほど酷く無いのは救いだが、新しい狙撃を題材にしたゲーム、物語を作るというのなら、もっと調整と推敲には時間を割いて頂きたかった。結局、そういう努力は本編からは感じ取れず、ただアドベンチャーゲームと狙撃ゲームを組み合わせた新しさ、珍しさだけを売りにした作品に落ち着いてしまっているのが残念な限りである。

また、ボリュームも全体的に浅い。エンディングまで、大体4〜6時間程度で到達できてしまう。昨今のアドベンチャーゲームは、最低でも10時間ぐらいは遊ばせてくれるが、今作は一昔のゲームかと思ってしまうぐらいにあっさり。裏を返せば気軽に遊べる魅力もあるが、コンセプトの珍しさと時代を反映し、あと5時間ぐらいは遊べる内容にして欲しかったところだ。昔ならまだしも、今の時代でこの短さは如何ともし難いものがある。それを補完する狙いでCG(一枚絵)集めなどのやり込み要素も備わっているが、はっきり言って空気同然。そもそも、1周目のエンディングを迎えるだけで9割程度が埋まってしまうとか、何のギャグか?
ボリューム、やり込み周りがそういう散々な状態なのに対し、操作性や環境周りは及第点の出来。ミッションにおける照準のブレ具合が激しい故、思い通りに動かせない煩わしさを感じる部分もあるが、レスポンスは良好。早送り機能、デモスキップと言った最近のアドベンチャーではお約束の機能も実装しており、全体的な触り心地は問題ない。
グラフィック、音楽に関しても及第点の出来だ。ただ、グラフィックに関してはミッションにおけるターゲットとなっている対象が随分、荒いドット絵で描かれていたりなど、一部に雑な所が見受けられるのが少し引っ掛かる。ただ、キャラクター周りやCGの描写は概ね悪くはなく、なかなかの出来となっている。音楽も曲自体には印象的なものがそれほどないものの、場面の雰囲気にマッチしたものが取り揃っているので、出来は悪くない。地味さは否めないが。

演出周りに関しても、重要なイベントではフルボイスになったり、一枚絵が挿入されたりするなど、緩急のつけ方はしっかりしており、概ね及第点の仕上がりとなっている。また、声優陣に関しては公式でも売りにしている通り、花梨役である堀江由衣氏の演技はなかなか。特に集中モード時の演技は…以下、自粛。その他の出演者も全体的に良好で、ボイスつきのイベントを適度に盛り上げてくれる。
全体的に表面部分の出来は概ね悪くない。だが、バランス調整や細かな描写と言った面では粗が非常に多く、見事に一発ネタで終わってしまっているのが何とも惜しまれる。公式で謳う成長物語というのも全くなく、ちょっと甘く見ているのではないのかと穿った見方をしてしまうところがあるのも残念な限りである。繰り返しになるが、コンセプトは悪くない。それだけに細かな調整と物語の推敲に時間を多めに割いて頂きたかったと、悔しい所があまりに目立つ今作。
決して遊べないゲームではないが、ネタゲー好き以外には安易にお薦めできない一品だ。アドベンチャーゲーム好きには、ガンシューティング周りがきつい所があるので、そういうのは大丈夫でないという人は止めておいた方がいいかもしれない。とは言え、色々可能性は感じるゲームである。なので、願わくば今回の欠点を完全に潰した続編の登場に筆者は期待したいと思う。まあ、絶望的だと思うが。
≫トップに戻る≪