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≫ナイツ・イン・ザ・ナイトメア
■発売元 スティング
■ジャンル アクティブ&タクティカルRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5800円(税別) / 特別版:7800円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 20〜25時間(エンディング目的)、90〜120時間(完全攻略目的)
かつては天使達の楽園だったと云われるセント・セレスティナ島。
湖畔を臨む北端の断崖には、美しい古城『アーヴェンヘイム』が静かに佇んでいた。
”深遠なる知識の館”の意を持つその城は、遥か千年の昔に一人の賢者によって建てられたが、今は獅子心王ウィリムガルドによって、栄光と繁栄の時をゆっくりと刻んでいた。

しかし、その平穏はある事件をきっかけに瓦解する…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シミュレーションRPGでありながら、シューティングのテクニックが要求される、恐ろしく独創的なバトルシステム
◆ビンゴのように列を揃えれば勝利というルールが新鮮な『エネミーマトリクス』
◆他のユニットの魂を継承させる、大胆なその発想が面白い『トランソウル』
◆システムの複雑さに反して、ペン一本しか使わないシンプルな操作性
◆初心者から上級者まで幅広く対応した、全2+αの難易度(バランス的にもそこそこ)
◆もはやシミュレーションでなく、シューティングも同然な、個性的な内容のボス戦
◆ハサミのようなものから、クモの巣状のものまで、多彩な敵の弾幕攻撃パターン
◆メインマップ50以上、特別な裏シナリオ収録と、充実した総計ボリューム
◆複雑なシステムの理解を手助けする、精密且つボリューム満点のチュートリアル
◆戦闘敗北時のハンデ機能から難易度選択機能まで、痒い所まで手の届いた救済処置
◆ゴシック風の世界観を色鮮やかに描いたドット絵が光る、珠玉のグラフィック
◆アクションゲームっぽいスピード感と印象的な旋律が秀逸な、名曲揃いの音楽
◆シューティング独特の破壊感を無駄に煽る、質感溢れる気持ち良い効果音
◆ゴシック風の世界観にマッチした、外国人声優による勢いのあるボイス演出

--- Bad Point ---
◆システム全般の敷居の高さ(かなり人を選ぶ)
◆選択手順の煩わしさがタマにキズな、出撃準備画面のインターフェース
◆時系列がバラバラな為、内容の理解が難しいシナリオ(台詞も難読漢字が多くて分かり難い)
◆たった1つしか作れないセーブデータ(最低限、2つは確保して欲しかった)
◆暗転するまでの間が妙に遅いスキップの速度(Rボタンで早送りできるが…)
◆一部、威力が飛びぬけた武器の存在(プリエステスのヴィーナスバウンドなど)
◆普通にプレイしていては滅多に気付かないベストエンディングの条件
▼Review ≪Last Update : 9/27/2009≫
これぞカオスの極み…。

この独創的なシステムに貴方は付いて来れるか?


『Riviera 〜約束の地リヴィエラ〜』、『ユグドラ・ユニオン』と世界観を共有した、スティング製作の新作シミュレーションRPG。今作より新たに名付けられた『Dept. Heaven Episodes(デプトヘヴンエピソード)』のエピソード4に当たる作品である。

カオスなゲームシステムを実装した、ニンテンドーDS最高クラスの怪作だ。

このゲームは何と表現したら良いのか…。一応、ジャンルとしては、シミュレーションRPGに属する。ユニットに指示を与え、マップ上の敵を倒しつつ、勝利条件を達成していくのがプレイヤーの目的となる。しかし、シミュレーションRPGと言いながら、ゲーム性は世間一般のものとは大違いだ。むしろ、シミュレーションRPGと言って良いのかすら怪しい。
まず第一に、根本的な設計からして奇抜。味方と敵の交代で展開する、この手のジャンルではお馴染みの『ターン制』が採用されているのだが、その仕組みが交代方式ではない。『60秒間が1ターン』とされている。加えてターンにおける、味方と敵の行動はリアルタイムで進行。つまり、1ターン中に全てのユニットが行動する。別ジャンルだが、リアルタイムストラテジー(RTS)と同じ仕組みとなっている。
しかし、ここで第二として、プレイヤーがユニットに対して与える指示の仕組みがまるで違う。カーソルで味方ユニットを選んで、コマンドを選択して動かすのでもなければ、アクションゲームのように動かせる訳でもない。『ウィスプ』と呼ばれる魂をタッチペンで動かし、それをユニットに重ね合わせて攻撃の指示を行うという、かなり特殊な仕組みとなっている。
但し、攻撃の指示を与える際にはウィスプを画面右脇にある『武器ウィンドウ』へ移動させ、4つの武器の内、指示を与えるユニットが使えるものを選び、それを持った上でユニットに重ね合わさらないといけない。更に、味方ユニットだが一部のクラスを除き、移動は基本行えない。その場に固定となっている。加えて、ウィスプからユニットに与えられる指示は、その攻撃だけ。防御とか、待機とか、そう言った指示は決して行えない。
そして極め付け、ユニットはダメージを受けない。敵の攻撃は『ウィスプ』を狙ってくるようになっており、この攻撃を喰らうと、1ターン中に行動できる時間が減少するペナルティを受ける。更に敵の攻撃はリアルタイムで展開し、回避行動もリアルタイムで行う。アクションゲームやシューティングゲームと同じというと分かり易いだろうか。それと同じ感覚でウィスプを動かし、攻撃を回避していく。その最中に味方に指示を与えて敵を攻撃し、回避行動を取りながら60秒が経過すれば1ターン終了。次のターンで登場する敵を『スロット』で決定し、持ち込む武器やユニットの編成を行い、完了させれば次のターンが開始となり、以降は先述の繰り返し。そして、最終的に勝利条件を達成すれば、マップクリアとなる。
以上が今作の具体的な内容のあらまし。正直、ここまでの流れを読んでも、何が何だか全然イメージが掴めないと思う。シミュレーションRPGなのにターンの概念は60秒間、指示は攻撃のみ、操作対象はウィスプでユニットは移動不能、ターン終了後にスロットと…、何処を取ってもそれらしくない要素で固められている。
更に言ってしまうと、この他にも攻撃のダメージが変化する『霧』とか、攻撃時の有効範囲にMPポイント等、色々な要素がある。ユニットの編成、管理画面もまた然りで、『VIT』と呼ばれるユニット単位の生命力(HPも兼ねてるが、これは徐々に減少していき、0になるとユニットが消滅する)の存在、その生命力を他のユニットにステータスの特徴も含めて継承し、繋ぎ止める『トランソウル』とか、特殊なものがチラホラ。
プレイヤーの頭が付いていかないはおろか、「脳みそバーン(古)」にもなりかねない、カオスな仕上がりとなっている。最初に「このゲームは何と表現したら良いのか」と言ったのも、これで大体、イメージが付くかと…。本当、訳の分からないゲームなのである。凄くシンプルに言えば、砲台運びが中心の、シューティング要素を含んだシミュレーションRPGか?ウィスプで弾(武器)を運ぶ行為、ユニットが動かないという点で、そのように例えられる。勿論、実際はそれだけでは済まぬほど、特殊な内容なのだが、これでどんなゲームか、大体の想像はつくと思う。

そして、このゲームも売りも一発で想像がつくだろう。とにかく、ゲーム性が異様なまでに新しい。ユニットに弾(武器)を運んだ後、攻撃指示を行う(指示は、タッチペンをスライドさせてチャージを行った後、ペンを離す事で実行される)、敵の攻撃をまるでシューティングのように回避する…、それだけでも、別次元とも言える手応えが満ち溢れている。
シューティングのように、と言ったが、実は敵の攻撃も結構過激で、撃って来る弾は、画面全体を覆いつくすほどの物量と大きさとなっている。もはやそれは、単なるシューティングじゃなく、弾幕シューティングそのもの。弾の先端を「かする」事で高得点(今作の場合はボーナス経験値)が得られる、『かすりボーナス』なんてのもあるほどで、シミュレーションRPGとしては場違いも甚だしい要素まで仕込まれている。しかし、弾幕と言ってもかの『エスプガルーダ』や『怒首領蜂』ほど激しくは無く、回避はワリと楽。更に、喰らっても即死には繋がらないので、未経験者への配慮は万全だ。
何より、弾幕を回避しながらユニットへ攻撃指示を与えていく過程が実にスリリング。地味な遊びになりがちなシミュレーションRPGのゲーム性に、良いアクセントを加えている。シミュレーションRPGでシューティングだなんて、無茶苦茶にも程がある…かもしれないが、常に緊張感を与えてくれるその作りは、シミュレーションRPGの欠点を良よく捉えてる。そんな感じにスローテンポなノリが皆無、常に緊張感満点…というだけでも、今作のシミュレーションRPGとしての独自性、そして斬新さが想像できるだろう。手応えのみならず、面白さもまた、別次元の域なのである。
しかし何より今作で秀逸なのが、システムは酷く複雑なのに、ゲーム自体は軽いこと。60秒間のターン制、ユニットの移動制限、『霧』に『トランソウル』だとか、システム周りはかなりカオスなのだが、操作はタッチペンだけの簡単設計、マップの勝利条件の基本は敵の撃破が中心、1マップ攻略にかかる時間は僅かに数分程度と、意外に手軽に遊べる工夫が徹底されている。要はシステムをある程度理解してしまえば結構、単純で軽いゲーム。実態はそんな感じなのだ。
若干ながら、拍子抜けではあるが、冷静に見てみるとこれは結構凄い。普通、斬新なシステムを大量に詰め込んだゲームというと、遊びの面も含めて重くなりがち。主にRPGやシミュレーションRPGは特にそうなり易く、人にもよるがルールを理解するのに3日以上もの時間を費やすハメになったりする。そしてこれも人によるが、理解したにしても、編成などであれこれ悩まされ、必要以上に疲れることもある。新しい要素を入れ過ぎたゲームは、面白さだけでなくプレイヤーにかかる負担も倍。そんな感じに要素の入れ過ぎは、危険な行為とも言えるのだが、その真似をしているのにも関わらず、今作のプレイヤーへの負担はそれらと比較して軽い。
恐らくそれは、必要以上に考える要素を最小限に抑えている事にあるのかもしれない。実は今作、シミュレーションRPGながら戦略性は結構、薄味だったりする。武器の持ち込みやユニット配置とか、考える所はそれなりにあるが、敵の攻撃を回避すると言った、直感的な操作によるプレイがマップ攻略では大事なので、戦略よりは腕が求められてくる。それこそが、プレイの負担を軽減させている原因ではないのか?…と。
他にも操作性とか、マップスケールの小ささとか考えられるものはあるので、一概にそうとは言い難いのだが、結果としてはそれが元だと考えられ易い。確かに戦略性が薄いというのは、シミュレーションRPGにして見れば、ちと致命的な感は否めない。シミュレーションRPGにとって戦略性は何よりも大事にしなければならないものだなのだから。しかし、あえてそこを最小限に留め、シンプルな作りに徹した他作品を超える手軽さを演出しているのは、特筆に値する。
戦略性が大事だと言っても基本、シミュレーションRPGはプレイ時にパワーのいるゲーム。それはシンプルな作りのものも同じ。そんなデメリットを見据え、戦略性を必要最低限とし、システムでそのノリを演出した今作のゲームデザインは、まさに昨今のシミュレーションRPGに一石を投じるものと言えるだろう。
新システムを詰め込んでも、基本形がシンプルであれば負担も少ない。なかなか出来そうで出来ない事をやってのけた今作は、まさにこのジャンルの革命児と言っても良い。かつての『リヴィエラ』もそうだったが、複雑なシステムを導入する際のデメリットを考慮したその設計の上手さには、本当に頭が下がる。流石はスティングと言ったところだ。

軽さだけでなく、ユーザーに対する細かな配慮も秀逸。丁寧且つ細かいチュートリアル、難易度選択システムと『リヴィエラ』から継承された、ゲームオーバー後のハンデ機能など、その徹底振りには溜息が出る。
エフェクト等の演出も、スピーディなゲーム展開を考慮して短縮するなど、テンポを意識した配慮が成されていてグッド。冗長な演出を見せがちなスティングだが、今作ではその悪しき癖が完全に正されている。
ボリュームもなかなか。マップ数は全50以上、裏シナリオ、騎士団集めなどやり込み甲斐のある要素が揃っている。また、マップも地形も含めて結構、起伏が付けられており、単調さを緩和する工夫が徹底されているのが見事だ。
グラフィックと音楽のレベルも高い。中でも音楽は名曲揃いで、プレイヤーをけん引する力に秀でている。マップ別に個別の曲を用意するこだわりにも驚きだ。特に『ラーナ街道』、『カンタローニュの地』、ボスの『アクリーヌ戦』はいずれもインパクト抜群の曲になっているので必聴の価値アリである。
対しシナリオはやや複雑。意図的に時系列バラバラで展開する作りとされているので、流れがかなり掴み難い。テキストの言い回しも妙に難解で、堅苦しいテイストに溢れているのがきつい。設定等は悪くないだけに、もう少し分かり易く作れなかったのか。この点に限っては正直、残念だ。

この他、ゴシック風味のデザインが秀逸な、戸部淑氏&きゆづきさとこ氏デザインによるキャラクターや独特且つ使い易いインターフェースなど、見所は多い。とにかくシステムは複雑で、敷居もかなり高い。ゲーム自体の手応えは手軽だが、かなり好みが分かれ易い部分があるので正直、ゲーム初心者には薦められない。しかし、コアなゲーム好きには自信を持ってお薦めできる一本。癖がある為、ちょっと好みは分かれるかもしれない。しかし、この複雑なのに手軽という手応えと斬新なシステムは、体験してみるべき価値が十分にある。
カオスも同然なゲームデザインが光る今作。我こそはというプレイヤーなら是非とも挑戦して欲しい怪作だ。DSはライトなゲームばかりしかないと思う方こそ是非。このゲームにはニンテンドーDS特有のライトなイメージなど無い。
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