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≫キミの勇者
■発売元 SNKプレイモア
■ジャンル ロールプレイング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 32ページ
■推定クリア時間 23時間〜27時間(エンディング目的)、70〜85時間(完全攻略目的)
遥か昔、神が創り治めた大地、浮遊大陸『ミディアリアス』。
この地にいずこから、魔王と呼ばれる邪悪な存在が現れた。
神は魔王から世界を守る為、魔王は世界の全てを奪う為。
かくして世界の覇権をかけた戦いが始まった。

戦いは魔王が優勢に立ち、魔物達によって世界は闇に包まれ、人々は絶望の淵に立たされた。だがその時、その手に星の力を宿す『セイケン』を、その身、その脚に制なる武具を身にまとった戦士が現れる。
その神々しい出で立ちの戦士を、人々は神の使い、勇者と呼んだ。
彼はセイケンを振るい、大陸を闇をかき消し、遂には魔王も大地に封印。
永き戦いに終止符が打たれたのだった。
やがて世界に復興の兆しが見えた頃、勇者は大陸からその姿を消す。
人々は天に帰った勇者を称え、星の勇者と呼び習わすことになる。
また、大陸を守る為に勇者と共に戦った住人達も、星の従者と呼ばれ、称えられた。
こうして、ミディアリアスは多くの犠牲を払いながら、平和を取り戻したのだった。

それから数千年後…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆マップ移動から街の探索まで、簡略化の工夫が際立つコンパクトなゲームデザイン
◆きっちり30分の範囲内で決着するように構成された、各シナリオ(各話)の内容
◆魔法の装備、コンボシステムなど独特の工夫が光る、戦闘システム(テンポも良好)
◆ボリューム控えめとし、仕掛けを最小限に押さえ込んだ独自のマップデザイン
◆お手軽な内容にマッチした、温めに設定されたゲームバランス(少し歯応えもあり)
◆善意の行動を取ると経験値が得られる仕組みが面白い、『ありがとうレベルアップ』
◆仲間と連携して連続攻撃を叩き込む、爽快な演出と組み合わせを考える面白さが光る、コンビネーションシステム
◆ビックリするほどよく動く、キャラクターのドット絵が印象的なグラフィック
◆きちんとしたシナリオが用意された、珍しい構成のサブイベント
◆1話1話は短いがクリアまで25時間以上と、意外に充実した全体のボリューム(隠しダンジョンなど、おまけも充実)
◆昔ながらのゲームらしさ漂う、メロディアスな音楽(特に戦闘曲全般が秀逸)
◆王道ファンタジーながら、ラストの切ない結末が大変印象的なシナリオ
◆キャラのアニメーション、エフェクトまで派手さを徹底追及した演出全般
◆メーカーロゴが表示される事なくタイトル画面に移行する、起動の早さ

--- Bad Point ---
◆やや高めのエンカウント率(減少アイテムを使っても効果が薄い)
◆起伏を付ける工夫に欠けたマップデザイン(全体的に味気なくて寂しい)
◆中盤から固いだけの敵が増え、作業染みた展開に陥ってしまう戦闘(攻撃パターンを練るなど、工夫して欲しかった)
◆萌え系の人によってはかなり好みの分かれるキャラクターデザイン
◆コンパクトさを徹底しながら、何故かポイント方式のセーブシステム(常時方式の方が適していた気が)
◆やや反応が重い操作のレスポンス
◆シナリオ分岐がありながら、非搭載の2周目引継ぎ要素(あるべきだったのでは?)
▼Review ≪Last Update : 11/22/2009≫
主人公は勇者でなく、従者です。

これ本当。


『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズなど、対戦型格闘ゲームを中心とする旧SNK系列のメーカー、SNKプレイモアが放つ完全新作のロールプレイングゲーム。

30分単位で進行するテンポの良さが光る、ライト系RPGの傑作だ。

内容は、シナリオクリア型のロールプレイングゲーム(RPG)。一話単位で区切られたシナリオを順に攻略していくという、一本道スタイルのRPGだ。ただ、その構成において、大変ユニークな試みが成されている。それは、各シナリオ(各話)のクリアまでに要される時間が、30〜40分以内とほぼ固定されていること。まるで、テレビアニメのような、スッキリとした内容でまとめられているのである。その為、「一日に一話プレイ」と言った感じに止め時が作り易い。携帯ゲーム機独特の「手軽に始められてすぐ止められる」という特性を最大限に活かした、実に個性的なRPGに仕上げられているのだ。
しかも、驚くべきはこの各話のボリュームは、イベントのみならず、マップ探索やキャラクターの育成等の過程を含めた上での量となっていること。全体のバランスも含め、計算されたものに作られているのである。単純にそれらの過程を含めたら、1時間強はかかって当たり前なものを30分以内にまとめてしまっている…。それだけでも、30分間を意識したゲームデザインが如何に徹底されているかというのが、感じられると思う。
その30分間にこだわったゲームデザインこそが今作の大きな売りだ。主に移動パートで、全体マップ(ワールドマップ)、街マップを選択方式とし、ダンジョンマップだけに探索を集中させる作りは実に秀逸!目的地の移動や街の探索と言った事に割かれる時間が少ないので、スムーズにシナリオ本編の目的に集中できる。そして、シナリオ的にもそこに焦点が絞られるので、話がテンポ良く進行するし、キャラクター育成もシナリオに絡むという事で作業感が薄い。更に、ダンジョン内にはパーティの全回復ポイントがあるなど、街へ戻る必要を廃す工夫も凝らされていて、それまでの流れに水を刺される事も少ないという快適さ。ある程度、キャラクター育成の工程を積むのが要されるRPGで、ここまでそれをシナリオ本編と絡め、自然なものにしてしまっているのには、驚嘆の限りだ。余分なものを削ぎ落とし、テンポを優先させた仕組みにもRPG特有の面倒臭さが無く、予想外の気持ち良さに富んでいて驚かされる。
育成から探索も含め、細々と行うのが当たり前のRPGというジャンルにおいて、こうもバッサリと切り落とした作りはかなり挑戦的だ。それでいて、RPG特有の面白さが何ら失われてないのだから驚き。要素を削ぎ落としても、肝さえ活きてれば面白さは失われない、それを体現したゲームデザインと言っても良いだろう。コンパクトさを優先させつつ、RPGの面白さをきちんと残す。メーカー自体、RPGはそんなに手掛けてないにも関わらず、ここまでその売りを活かすゲームデザインをしてしまっているのは、もはや奇跡に近い。これはもはや、職人技と言っても良いだろう。その執念、凄過ぎだ。

ゲームデザインだけでない。戦闘システムの作りとテンポ、バランス調整の部分においても、30分間に対するこだわりは存分に発揮されている。戦闘システム自体は、オーソドックスなターン制のコマンド選択タイプで、作り自体はそんな真新しくはない。ただ、スピーディな展開、同じ敵を連続攻撃した際に発動するコンビネーションシステムなど、テンポの良さを意識した設計が成されているのが魅力的だ。サクサクと展開されるので、シナリオ本編進行のストレスになり難いし、何より気持ち良い。敵も強過ぎず弱過ぎずの丁度良い強さで、極端に弱くするワザとらしさが無いのが好感触。作りをコンパクトにしても、手応えをきちんと残すこだわりは、RPGの魅力をよく理解しているなと感心させられるばかりだ。
また、ユニークなのが『星技(セイギ)』なる特殊技。いわゆる魔法なのだが、これが各キャラ全てレベルアップで習得されるのではなく、街の武器屋で購入し、装備する事で習得となるのが仕組みとして面白い。プレイヤーの好きなようにカスタマイズできる楽しさがあるだけでなく、戦闘時、素早く使いたい技を選択できるように調整できるなど、テンポの向上にも一役買っているのが、実にユニークだ。『星技』は他に、コンボシステムと併用する事で『覚醒星技』なる大技も繰り出す事もでき、組み合わせを考える戦略の奥深さが醸し出されているのも秀逸。単なる魔法としてだけで終わらせないその作りには、ただのコンパクトな普通のRPGとして終わらせぬこだわりの表れと言ったところか。本当、そのチャレンジ精神には感服する限りだ。もう一つ、戦闘絡みとして影は薄いが、経験値の習得法が戦いだけでなく、人助けでも得られる(その名も『ありがとうレベルアップ』)…というのも斬新。そのシステムの恩恵で育成の工程を減らす事もでき、それがテンポの向上とつながっている辺りも、絶妙の一言だ。
そんな感じに色々と頑張ってる今作。だが、やはりメーカー自体がRPG製作の経験が乏しい故にか、色々と詰めの甘い所も多く見られる。主にダンジョン構成だが、仕掛けの個性が弱く、基本的に迷路で落ち着いてしまっているのが味気ない。シナリオ別に展開の工夫はきちんとされているものの、もう少し探索で遊ばせる工夫も凝らして欲しかったところ。
戦闘バランスも、中盤以降に体力が単に高いだけの敵が増え、戦略がただボタンを押し続ける作業と化してしまうのが辛い。作業化を抑制する為、体力は少なめにし、攻撃を多彩にするとか、そう言った工夫を凝らせば申し分なかったのだが。後半になったら敵が固くなるというのはさすがに調整としては安易過ぎる。もっと凝れなかったのだろうか。
そしてインターフェース周りも、コンパクトさを徹底しながら、中断セーブ機能が無いなど、微妙に配慮が足りてないのも気になるところだ。これは最低限、必要だったと思うのだが、何故入れなかったのか。あればコンパクトなRPGとしては完璧だっただけに、入れなかった判断は本当、謎としか言い様がない…。
他にも、エンカウント率が少し高い、操作のレスポンスがやや悪い(鈍い)など、「ここが良ければ文句無しなのだけど…」と言いたくなる所があるのも色々ともどかしい。
しかし、RPGに不慣れでありながら、ゲームデザインからシステムのアイディアなど、有名なRPG顔負けなインパクトを放っている事、これに関しては凄く頑張っていると言ってもおかしくないだろう。イベント主体のRPGが増える中、素直にRPGのゲームとしての面白さ、奥深さにこだわってる辺りも好感が持てる。確かに、RPGとしては色々と物足りないところがある。だが、RPGとしての新たな価値観を提示したこれらのゲームデザインは、大きな評価に値すると言っても良い。言葉が悪いが、不慣れ故の意地とでも言うべきか。この頑張りは、称賛モノと言っても相応しいだろう。恐らく、続編とかを作ったりする場合、このスタッフは更に化けるのではないだろうか?そんな期待を予感させられる。

この他、サブイベント、分岐によるシナリオの変化などのやり込み要素も充実。全体ボリュームも一話が短めながら全部で25話、クリアまでも25〜35時間ほどとなかなか充実しているので、やり応えもバッチリだ。
シナリオもなかなか良い。王道のファンタジーでありながら、終盤にどんでん返しな展開があるなど、魅力的な内容に仕上げられている。キャラクターデザインが萌え系な為(モンスター系は普通)、好みが分かれるかもしれないが、それでも全体的な力の入れ様は折り紙つき。特にエンディングは近年のゲームでは稀な、切ないものとなっているので必見だ。
グラフィックもなかなかの出来。特にグラフィックは、戦闘時のキャラクターアニメーションがもはや職人技の域。ビックリするほど豪快且つ、迫力満点の動きを披露するので、これもまた先の結末と並行して必見である。音楽も及第点の出来栄え。昔ながらのゲームミュージックテイスト溢れる、メロディアスな曲が豊富に用意されている。特に戦闘系の曲はワリと良い感じ。四天王戦とかは必聴の価値ありだ。

『星技』全般のエフェクトの派手さやメーカーロゴも無く、ソフト起動後直に始まる快適さなど、それらもまた特筆すべき魅力。特に後者は起動が遅いのがザラな最近のゲームにしては、かなり挑戦的且つ最高の試みと言っても良い。
色々と不慣れな部分はあれど、RPGとしては高い水準で完成されていて、尚且つ携帯ゲーム機との相性も最高な内容に仕上げられている。これで中断セーブ機能もあれば、更に最高な内容になっていたのだが…。
ともあれ、一話30分以内で決着するコンパクトさもあって気軽に楽しめ、ボリューム面でもかなりの奥深さも兼ねているこの『キミの勇者』。「萌え」を狙い過ぎてる所もあるが、RPGとしての面白さは確かなもの。大作系RPGとは異なる、手軽いの魅力に秀でた隠れた傑作だ。大作系RPGに疲れたプレイヤーからRPG初心者に特にお薦め。
たまには、手軽に遊べるRPGでも如何でしょうか。
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