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  4. 株トレーダー瞬
≫株トレーダー瞬
■発売元 カプコン
■開発元 インティ・クリエイツ
■ジャンル 株トレードアドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 36ページ
■推定クリア時間 8〜12時間(エンディング目的)、25〜35時間(完全攻略目的)
『相場の魔術師』とまで呼ばれた男、相場一平(あいばいっぺい)。
彼は株で何億もの利益を出し、そのほとんどを慈善事業に費やしていた。
だがそんな男がある時、何らかの理由で株に失敗して破産。謎の失踪を遂げてしまった。

そんな一平の失踪から5年後。
彼の一人息子の瞬は、父親の後を追うかのように自ら、株の世界へとその身を投じる…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ストーリーを読み進める面白さと真剣勝負のスリルが絶妙に絡み合った、アドベンチャーらしからぬ手応え満載のメインゲームシステム
◆株取引の面白さと緊張感、ゲームらしさが自然に合わさった『トレードパート』
◆スタンダードなソロトレードにミッショントレードなど、個性豊かなトレードジャンル
◆前代未聞の『株で真剣勝負』という奇抜なスリルと面白さが満載の『バーサストレード』
◆株価を急上昇させたりなどの、ゲームらしい仰々しさが痛快な必殺技『トレーディングアーツ』(各技の能力バランスも適切なものにまとめられている)
◆タッチペン操作とボタン操作の利点が程好く織り交ざった、触り心地の良い操作性
◆アドベンチャーとしては史上稀なやり込み要素満載の、充実しまくりの総計ボリューム
◆プレイヤーの分析能力が全てを左右する、株らしさを強調した絶妙なゲームバランス
◆地味な株取引のバトルを仰々しく表現した、カットインのグラフィック&演出
◆それぞれのシチュエーションにマッチしたものが盛り沢山の良質な音楽
◆株の光と闇を克明に描いた展開の数々が見るものを圧倒させる、良質なシナリオ
◆まさに見た目通りに一癖も二癖もある個性が強烈極まりない登場キャラクター達
◆現実の株を始めたい方への特典として用意されたガイドモード『株を始める人に』
◆株トレードが始めての方にも親切な専門用語解説機能(チュートリアルも完備)
◆ギリギリっぷりが痛快なパロディ銘柄(天王堂など…)

--- Bad Point ---
◆株をテーマにしているが故の敷居の高さ(システムやゲームバランスの癖など、全体像を把握するのに時間がかかる)
◆長期戦な上、途中で失敗したらまた最初からやり直しのシビアさが辛いラスボス戦
◆敵側だけが可能な銘柄の『一括売り買い』(公平性が損なわれている気が…)
◆ポーズ不能のバーサストレード(これは最低限、あるべきだったのでは…)
◆リトライ機能未搭載の全トレード(これもあると良かったのでは…)
◆対戦プレイの未搭載(システムが面白いだけに、あればかなり化けてたと思う)
▼Review ≪Last Update : 10/25/2008≫
私には波が見える…後に何が起こるかが分かる波が…

ノストラダムスも真っ青の能力ですな…。


株取引を題材とした、カプコンが放つ完全オリジナルのアドベンチャーゲーム。開発は『ロックマンゼロ』や『ロックマンゼクス』で知られるインティ・クリエイツが担当。

アドベンチャーゲーム史上初、やり込み甲斐満点の意欲作だ。

ゲーム内容はタイトル通りだが、章仕立てで展開するストーリーを追いながら、株のトレードやライバルとの戦いを乗り越えていく、その名も『株トレードアドベンチャーゲーム』。基本的な作りは古くからあるテキストタイプのアドベンチャーゲームで、同社の『逆転裁判』にやや近いノリのものとなっている。
しかし、当然のように肝心の中身はまるで別物。『逆転裁判』がテキストアドベンチャーゲームの発展形だったのであれば、こちらはテキストアドベンチャーの変異種とでも言うべき、実に特異稀な味わいと手応えを秘めたものに仕上げられている。その変異種としての存在感を出しているのが、今作の肝『トレード』だ。
今作では、アドベンチャーとトレードの二つのパートを交互に経由しながらゲームが進行。その二つのパートにて、最も多く体験する事になるのが後者の『トレード』で、ここでプレイヤーは株を買ったり売ったりしながらお金を稼いでいく。DSの上画面に表示される『チャート』と呼ばれる株価の動きに気を配りながら、上がった瞬間を見計らって買った株を一気に売りさばき、資産(お金)をゲットする…それだけの事だ。
実際の本編では画面内に沢山の情報が表示され、その見た目から難しそう、敷居が高そうな印象を抱くかもしれないが基本は本当、そのお金を稼ぐ事だけに集中すれば良いだけのシンプルな作りとなっているのでご安心あれ。
株でトレードをしたことが無いという方でも、すんなりと入っていけるものとなっている。
ただ、ゲーム中にプレイヤーが体験するトレードは、自由取引が行える『ソロトレード』一種類のみならず、クリア条件が指定された(例えば規定日数以内に10万以上を稼げ!…など)『ミッションソロトレード』、そして特定のルールに従って相手と戦う『バーサストレード』と言った特殊なものも存在。ストーリーの展開によっては、それらの特殊なトレードにチャレンジし、それを乗り越えていかねばならなくなる。
中でも注目すべきは『バーサストレード』と呼ばれるトレードだ。先に紹介した通りだが、何とこのトレードでは相手との勝負をしなければならない。「株のトレードで相手と勝負する!?」…とビックリするかもしれないが、そんな現実ではあり得ない戦いが今作では終始、繰り広げられていくのだ。しかもバトル内容も相手より多くの利益を得た方が勝ちとなるもの、損をした方が勝ちとなるもの、更には複数の条件を先に達成したものが勝ちとなるものと多種多様。ゲームらしい嘘っぽさと仰々しさに富んだ、まさに「あり得ない」バトルの数々を堪能する事ができる。
加えて「あり得ない」のは、そのバトル内容だけじゃない。プレイヤー並びに対戦相手にはそれぞれ『トレーディングアーツ』と呼ばれる必殺技が用意されており、これを発動させる事でチャートの動きを自分に有利な方向に持って行ったり、相手を一時的に行動不能にさせるなどと言った過激なお邪魔攻撃を仕向ける事までもができるようになっているのだ。単にお金をチマチマと稼いでいくだけの味気ない内容だと思ったら大間違い。運を自分の方向へと運んで勝利を掴むとでも言うべき、臨場感満点でゲームらしい嘘がたっぷりなものに仕上げられているのである。
株トレードという見た目からして地味なものを、ゲームらしい要素一つを付け加えてここまで白熱させるものにするのは、流石は格闘などのバトル系ゲームには手馴れたカプコンと言ったところ。逆転裁判に次ぐ、新たなバトルフィールドの創造を実現させてしまっている。だが本来ならテーマにしても戦闘としては成立しない株トレードを、こうも激しいものへと仕立て上げられたのは、何と行ってもゲームと言う媒体の賜物だろう。嘘っぽさが肝のメディアだからこそ実現した新たなエンターテインメント。まさに新しい事だらけ、変異種という言葉がよく似合うゲームに仕上げられているのだ。

しかし、それ以上に今作がアドベンチャーゲームの変異種と言うべき所は何と言っても、一度クリアしても終わらない充実したやり込み要素の数々だろう。
そもそもこの手のジャンルにてプレイヤーがする事と言ったら、最低限ストーリーに介入してその顛末を見守るだけ。他のアクションゲームやRPGなどとは違い、敵を倒したりと言った遊びは皆無に等しい(あってもパターンが決められているので奥行きがない)ので賞味期限も他のジャンル以上に短く、「ゲーム」の一つと称されるのには幾分、無理があるかのような印象が強かった。ゲームに慣れ親しんだユーザーの中でも「アドベンチャーゲーム=直に中古行きになるもの」として、一部では強く印象付いていただろうと思う。そんなアドベンチャーゲームの通例とされてきたもの、それが何と今作には皆無。一度、ストーリーを追いかけてクリアしても、それで終わりとはならないほどのやり込み要素、そして遊びの数々がこれでもかと言わんばかりに詰め込まれている。アドベンチャーゲームにしては異質極まりない「ゲームらしさ」が全編を通して感じ取れる、まさに新境地とも言うべき作りになっているのである。
先に『バーサストレード』なる、株トレードをしながら相手と戦うと言う要素を紹介したが、まさにそこがその一例。アドベンチャーゲームにおける対戦と言うと、「答えを知っていれば楽々と勝利できる」と言う一方通行的さが一つの特徴でもあったが、このバーサストレードにはそんな一方通行的さは無い。何せ獲得資金の量を左右するチャートの動きは完全にランダム。しかもトレード中では事件(ヒット商品出現、地震など)が発生してその動きが急激に上がったり、下がったりするイベントもあるので、常に動きが決まっているという訳でもない。そして相手の攻撃パターンも一回戦目では損を繰り返していたのが、二回目に挑んだ時は得を繰り返してると言ったように、全く固定されていない。チャートの動きと同様に、何をしてくるか分からない怖さがあるのである。だからこそ、どんなトレードを行う、そして相手と戦う時に当たっても、冷静にチャートの流れを読む分析力、そして状況に応じて『トレーディングアーツ』を発動させて相手を陥れる判断力、その双方が今作では終始、問われてくる。
もの凄く極端にまとめてしまうと『プレイヤーのスキルが問われる』と言ったところか。
答えを選んで回答していくだけの単調さは皆無、プレイヤーの腕が後の展開を大きく左右するとも言うべき、「ゲーム」な手応えが染み渡った仕上げられているのだ。こんな有様だから「どうせ、答えを選んで行けばそれで良いんでしょ?」なんて甘い考えで挑んだりしたら、痛い目に合うのは確実。それほどまで、過去の文法が今作では通用しない。
そしてバトルのみならず、やり込み要素も然り。今作ではメインのストーリーラインの他にクリアする必要の無い『サブイベント』も随所にセットされていて、単にメインを追っていけば良いだけの一本道な作りになっていない。アドベンチャーゲームとしては史上初のシナリオ構築が成されているのである。しかも『サブイベント』のみならず、『銘柄集め』に『トレーディングアーツ集め』などのコレクター要素まで収録。トレードで『トレーダーポイント』を溜め、それらを買い漁ると言ったものまであるのである。しかも、どちらもその総数は50以上、中には二周目以降でないと出てこないものまであったりと莫大。単にストーリーをクリアすればそれでお終いだとは言わせないほどのこだわりが凝らされてしまっているのだ。挙句、プレイヤーには『トレーダーランク』なるのものもセットされていて、トレードを繰り返す度に称号が変わっていくという文字通りのやり込み要素まである始末。アドベンチャーゲームって一回終わったらもうやる事が無くなるから面白くない…とは絶対に言わせない、徹底的にやり込ませてやる!まさに今作ではそんな制作スタッフの執念とも言える、革新的な試みの数々が凝らされた仕上がりとなっているのだ。
それまでプレイヤーの介入は僅か、やる事も僅かしか無いと言った事がザラとされてきたアドベンチャーゲームにて、これほどまでプレイヤーを直接介入させ、多種多様な遊びを詰め込んだのは今作が史上初なのは間違いないだろう。一周終わってもまだ遊ぶ要素が沢山あるから、もう一度やりたくなる。そんなアドベンチャーがこれまでにあっただろうか?だからこそ、今作は変異種である…と。斬新な『凄味』が溢れた内容となっているのである。

その他、DSのタッチペンを活かした操作性も見事な仕上がり。特に買った株をスライドさせて一気に売りさばく気持ち良さは、他に無い味わいに富んでいる。メッセージスキップ、デモスキップなどが標準装備されているのにも、スタッフのプレイヤー側を思う気持ちを実感させられる。
総合的なゲームバランスもやや運も左右するが、冷静に画面内の各情報を見極めれば自分の流れを作っていけるという絶妙なレベルを維持していて秀逸。それが読み取れるようになるまでに時間がかかるのがちとタマにキズだが、それもそれで実際の株トレードの雰囲気が出ていて独特の味わいがある。
グラフィックも主にトレーディングアーツ周りの演出(カットインのイラスト)が良い感じの仰々しさで、音楽も各場面にマッチしたノリの良い曲が満載。主に音楽で戦闘絡みの曲はいずれも秀逸な出来で、一聴の価値ありだ。
そしてストーリーも良い出来。中でも「株=良いモノ」と一貫せず、しっかりと株独特のダークサイドを克明に描いている所には、架空の世界でありながらも真の怖さを描こうとする制作側のプレイヤーへの配慮をうかがい知れる。シナリオの流れそのものも良質で、要所要所で戦う事になるトレーダー達(登場キャラクター達)が良い味を出している。特にヒロインの桐神楽花子のツンツンな突っかかりっぷりは要チェックだ(笑)。

また、本当の株を始める方の為のスペシャルモードも収録されており、簡易型ガイドブック的な一面があるのも大きな魅力。純粋にトレードだけを楽しみたい方の為の『トライアル』も、やり込み派のプレイヤーにはたまらない。
株をテーマに扱っているだけに専門用語が多かったり(しかし、サポート機能として用語解説は実装されている)、ラスボス戦が無駄に長かったり、そして対戦プレイが非搭載(これはあったら化けてた…)などと惜しいところもチラホラあるが、それまでのアドベンチャーゲームの常識を打ち破ったゲームシステム、膨大なやり込み要素の数々は多くのプレイヤーに衝撃を与えるほどのインパクトを備えている。
株トレードでバトルする新しい手応え、一度終わっても終わりじゃない史上初の試みが成された、まさにアドベンチャーゲーム変異種とも言うべきこの『株トレーダー瞬』。アドベンチャーゲーム好きは勿論のこと、ライトユーザー(但し高校生以上)からコアユーザーまで自信を持ってお薦めする、カプコンが送るアドベンチャー異色作だ。株という題材によって生まれた奇跡の数々を是非、その目で確かめてみて欲しい。
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