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≫ジェットインパルス
■発売元 任天堂
■開発元 元気、G-Gadget、ジェットグラフィックス
■ジャンル フライトシューティング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜4人(※オンラインプレイ時:1〜2人)
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 48ページ
■推定クリア時間 8〜12時間(エンディング目的)、27〜39時間(完全攻略目的)
人類は世界を巻き込む大きな戦いを三度経験した。多くの国土、そして人の心をも疲弊させた愚かなる戦いの後、全ての国々は国際連邦『ユニオン』に参加し、平和を誓い合った。

しかし、世界の平和は瞬く間に崩れ去った。
老大国『マルドーク』の独裁者・アリマンが近隣諸国への侵攻を開始。併合した国々の資源を国有化し、それらの利権を持つ軍事大国『アヴァロン』と対立したのである。
これに対しアヴァロンは、ユニオンの正義の名の下にマルドーク侵攻を画策。一方、アリマン政権と友好関係にある『ミッドガルト』はユニオンを離脱。汎大陸同盟『アリーズ』を結成し、アリマンを支援した。
そしてマルドークは、ユニオンとアリーズの代理戦争の場へと姿を変え、その紛争は10年もの長きに渡って続いた…。

世界に再び大戦の危機が迫る中、物語はアヴァロン連邦共和国『アキツ州』から始まる。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆課せられるミッションを遂行していく、分かり易くて取っ付き易いゲームシステム
◆簡易タイプからリアルタイプまで、各々のユーザーに対応した、懐の広い操作性
◆レーダーのアイコンをタッチするだけのシンプルさが見事なロックオン操作(武器の切り替えも同じようにできる)
◆本編からやり込み系まで、至れり尽せりなラインナップの収録ゲームモード
◆ファンタジー色の強い展開と描写が味わい深い、本編モード『ストーリー』
◆それぞれ違うゲーム性と手応えを表現した、圧巻の三種+一種の難易度
◆夜間の奇襲、秘密兵器の破壊など、熱いミッションが満載の全19ものステージ
◆持久戦にダーツ、風船割りと言った奇抜な遊びができるのが面白い『フリープレイ』
◆ドックファイトにダーツ、チーム戦など多様な戦いが楽しめる『VS.MODE』
◆圧巻であるのみならず、起用の意図がはっきりしているのが素晴らしい、フルボイス演出(声優陣も田中敦子に納谷六朗、大木民夫と言ったベテラン揃い)
◆シナリオ展開を大いに盛り上げるカット割りが秀逸な、存在感溢れるアニメムービー
◆全難易度のストーリー制覇、機体集めなど、充実した総計ボリューム
◆DSの限界に挑戦したと言っても過言ではない、美麗な3Dポリゴンによるグラフィック
◆各シチュエーションを大いに盛り上げる、熱い音楽(名曲もたっぷり)
◆『黒い●連星』に三●敏郎など、随所にて炸裂した露骨な小ネタの数々

--- Bad Point ---
◆リトライ、ゲームオーバー後の再開を行うと、必ず減点となるステージ攻略後の評価
◆チュートリアルなど、初心者救済処置の少なさ(画面解説こそあるが…)
◆ステージクリア後の『NEXT STAGE』を選ばないと見れないイベント・ムービーの存在
◆荒削りな感が否めないシナリオ(ラストの素っ気無さは何とかして欲しかった…)
◆ややノイズが混じるボイス(DSの限界だったのかもしれないが…)
◆最大二人まで、バトルロイヤルしか楽しめないWi-Fiでの『VS.MODE』
▼Review ≪Last Update : 9/6/2008≫
「この空、我らが制する。」

制するのは俺らの方だ!


『DS AIR』という名で発表され、その後、CMなどのプロモーションも行われず、ひっそりとリリースされた完全新作のフライトシューティングゲーム。開発は『首都高バトル』シリーズで知られる『元気』とその子会社『G-Gadget』、CG制作・ムービーを『ジェットグラフィックス』が担当。

真新しさは無いが職人的な作り込みが光る、隠れた名作だ。

基本的なゲーム内容は、多種多様な戦闘機を操縦し、敵の秘密兵器の破壊や進軍援助、夜間の奇襲と言ったミッションをこなしていく、3D視点で展開するフライトシューティングゲーム。ぶっちゃけると、ナムコのエースコンバットそのもの。ゲームシステムも先の通りにミッションをこなしていくのが主だったりと、そのまんまである。
かと言って完全なパクりという訳でなく、DSのタイトルらしく上画面が自機の操縦、下画面はレーダーと区分されているなど、今作独自の工夫も随所に凝らされている。
操作性も敵機へのロックオン、並びに装備武器の切り替えはボタンのみならず、下画面の対象となる項目を直接触るだけで選択できるタッチペン操作を用意。直感的な操作が可能となっており、フライトシューティング初心者にも優しい仕様となっている。自機の操作も、簡略化された『NOVICE』、実際の飛行機と同じ操作系統の『ADVANCE』の計2種類を用意。フライトシューティング初心者、上級者の双方に対応した懐の広い配慮が成されている。
また自機の基本操作は、十字キーとボタンがメイン。今作の前にリリースされたタッチペン操作のみの『スターフォックスコマンド』とは違い、癖の無いものとなっているから、もどかしさを感じる事無く戦闘機を動かせる というところも、見逃せないところだ。ジャンル的には別物だが、『スターフォックスコマンド』の操作に馴染めなかった方にとって今作はある意味、感涙モノのゲームとなっていると言えるだろう。
更にゲームモードもメインの『ストーリー』のほか、特別なミッションが楽しめる『フリープレイ』、DSワイヤレス通信やWi-Fiコネクションを使って楽しめる『VS.MODE』などを収録。多種多様な遊びが楽しめる、至れり尽せりなラインナップとなっている。特に『フリープレイ』は、『ストーリー』では楽しめない奇抜なミッション、持久戦にダーツ、風船割りと言ったものが楽しめるなど、この手のゲームとしてはぶっ飛んだ雰囲気に満ち溢れているのが面白い。スコアアタックの要素もあるので、やり込み派プレイヤーにとって遊び甲斐のあるものとなっているのも必見だ。
肝心の本編『ストーリー』も、エースコンバットとは異なり、ファンタジー色が強いのが独特。夜間の奇襲とかリアルなものが基本なのだが、中には巨大戦艦との戦闘やUFO(!?)の編隊とのドッグファイトなど、奇抜なミッションも豊富に用意されており、この手のゲームにしては珍しい、ゲームらしい嘘っぽさを満喫できる。
また、『赤い●星』や『黒い●連星』をモチーフとした機体(キャラクター)が出て来たり、各国の代表や重要人物が三●敏郎、更には小●純一郎元首相、金●日総書記をパロったキャラだったりなど、随所で炸裂した露骨なネタの数々も必見。世界大戦をテーマとしたシリアスなストーリーなのに、脇を固めるキャラがネタばかりだという構図には、コアなユーザーならば笑いが止まらないだろう。
このように、ゲームとしてはまさにDS版のエースコンバット。だけども、DSらしい操作面の工夫や独自の小ネタも盛り沢山で、まさにB級のフライトシューティングなオリジナリティのある作品に仕上がっている。無理矢理言えば、かなりライトなフライトシューティングなのである。だから、この手のゲームが初めてだという方にも今作はとても取っ付き易い。

しかし、今作の魅力はそんなB級テイストや取っ付き易さだけじゃない。ニンテンドーDSの限界に挑戦した、こだわりの数々もまた、凄いのである。特に今作、初めてプレイした際、真っ先に驚かされるのが全編フルボイスだという事。ステージのタイトルコールにブリーフィング(作戦説明)、イベントシーンにミッション中まで、全てに声が付けられているのである。しかも、素晴らしいのがこのボイス、かの名作『スターフォックス64』のようにしっかりとゲーム性に絡んでいて、明確な使用意義を出していること。主にミッション中だが右に左に忙しく、テキストメッセージを読む暇すらない性質上、ボイスで「敵機、正面!」や「真っ直ぐ飛ぶなよ!」と言った感じに指示してくれるのは、 遂行の大きな手助けとなってくれる。また、「次は地上ターゲットの破壊に専念してください」と言った感じに、ミッションがアップデート(基本的に、各ステージで課せられるミッションは複数存在)した後、次に何をすべきか教えてくれるのも有り難い。
そして極め付け、ミッション中に上手いプレイを披露すると「敵を連続で撃破!素晴らしい功績です!」と、ちゃんと褒めてくれる。しかも、そのプレイは各ステージの攻略評価にも影響するから、自然とプレイヤーのモチベーションも高まる相乗効果ももたらすほど。まさに、ボイス様々。ゲーム性に直結するのみならず、モチベーションの向上までをもバックアップしてくれる、素晴らしさなのだ。雰囲気を出す為とか、自分でも読めるテキストを更に読み易くする為と言った、ゲーム性とは直結しない使われ方じゃないのは、如何にも任天堂らしい。『スターフォックス64』のノウハウが、上手く活かされた好例と言っても過言ではないだろう。
また、出演声優も媚びを売ったキャスティングとなっていないのがお見事。誰一人、聴くだけでモチベーションが下がるような声を出す者がおらず、もの凄く神経を使ってキャスティングを行った事がうかがい知れる。
更にメンバーも豪華で、主人公のサポート役は何と『攻殻機動隊』の草薙素子役で知られるベテラン女性声優・田中敦子が担当。他にも納谷六朗(『クレヨンしんちゃん』の園長先生役)、大木民夫(『フランダースの犬』のコゼツ役)と言った実力派揃いで、声優に詳しいユーザーなら「これ、本当に任天堂のゲーム?!」と驚かされること、間違いなしだ。
ボイスのみならず、3Dポリゴンによるグラフィックも素晴らしいクオリティだ。
流石に次世代機並という訳ではなく粗さもあるが、かなり細かい所まで作り込まれており、DSでよくここまで…と、唸らされること必至。 フレームレートも例によって少なく(大体15fpsぐらい?)、処理落ちもしばしば生じるのだが、それでもまるでゲーム性に損害が生じない、また動かしていて不快さを感じる事が無いのも圧巻の一言ところだ。
イベントシーンで展開されるデモも、カメラワークやカット割りが凝っており、少ないフレームレートを思わせないスピード感が秀逸。改めて、ニンテンドーDSのハード性能の高さをとくと実感させられるだろう。
他にも、全部で10本以上も収録されたアニメムービー、リアルなミサイルの弾道などもあるのだが、そちらについては本編を実際にプレイして、その目で確かめてみてほしい。
とにかく、これらを一通り読むだけでも分かるが今作、総じてかなりDSとしては無茶な事をしてしまっているのである。しかも、その無茶によってゲーム性に損害が何一つ生じてない、むしろクオリティを高める方向に作用しているのだからなお驚かされる。そういう意味では今作、DSの頂点を極めた一本と言ってもおかしくはないだろう。

ゲームバランスも絶妙。全部で三段階+αの難易度が用意されているのだが、その難易度ごとの違いが明確で、どちらも異なった手応えが味わえるように仕上げられているのには驚かされる。特に、最初に選べるものの中では最高難易度である『エキスパート』のバランスは秀逸で、「極限の戦い」とも言うべきシビアさを演出しているのが凄い。他の難易度でもノーマルでは、派手なドンパチが楽しめるようになっているなど、爽快感重視のバランスにまとめられているのが面白い。単なる難しさの変化だけでなく、遊びまでをも変える工夫を凝らしたスタッフの手腕には正直、圧巻の一言だ。
『ストーリー』でステージも全部で19種類となかなかのボリューム。やや少ないと感じる方もいるかもしれないが、1つのステージの密度が濃い目だから、実際に遊べばそこまで物足りなさを感じたりすることはないはずだ。スコアアタックや全難易度コンプリート、機体集めと言ったやり込み要素も充実しているなど、別の配慮も完璧だからご安心のほどを。
更にグラフィックのみならず、今作は音楽も素晴らしい出来。どの曲も「これぞゲームミュージック」と言うべき、インパクトのあるものと仕上げられているので、ただ聴いているだけでも楽しさを味わえるはずだ。特に先の『黒い●連星』との対決などの場面で流れる曲『Loss Of Control』は必聴の価値ありだ。

ただ、シナリオは荒削り。無駄に死ぬキャラや使い捨てが多かったり、エンディングが素っ気無いなど、どうにも適当な所が目立つのが痛い。展開は悪くないし、設定周りは凝っているのだけど正直、ここまでやるのなら、もっと徹底的に作り込んで頂きたかったところだ。並行して、ステージクリア後の『NEXT STAGE』を選ばなければ見れないデモやイベントがあったり、ミッション中にゲームオーバーとなり、リトライすると決まって最後の評価で減点される、初心者救済処置が少ないのもどうにかして欲しかった。登場する戦闘機や兵器が全て架空という所も、ミリタリー好きには賛否が分かれるが、そんなの抜きにしてもゲームの完成度は高レベル。
どうして任天堂はこのゲームのプロモーションを何ら行わなかったのか、そんな疑問すら湧くほど、DSのゲームとしては異様なクオリティを誇るこの『ジェットインパルス』。単刀直入に言おう。DSを持っているユーザーならば、何が何でもプレイしておくべき逸品だ。こんなにも良いゲームを遊ばないだなんて、言葉が悪いが大損も良いところ。是非ともプレイしてみて欲しい。これを遊ばずとして、DSは語れない
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