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≫イルミスライト ひかりのパズル
■発売元 インターチャネル・ホロン
■開発元 Gamesauce
■ジャンル パズル
■CERO A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSダウンロードプレイ対応
■総説明書ページ数 29ページ
■推定クリア時間 12〜14時間(エンディング目的)、20〜25時間(完全攻略目的)
遠い遠い宇宙にあるブラックホール。
そこには吸い込まれた光を栄養とする『グロウボー』が暮らしていた。

しかしある日、突如として彼らに光が届かなくなる。
ブラックホールの前に、光を食べるモンスター『イーブル』が現れたのだ。
イーブルの出現により、ブラックホール内に光は吸い込まれて来なくなってしまい、光によって生きながらえて来たグロウボー達は、命の危機に見舞われる。

そんな時、彼らを照らす一筋の光が差し込む。
見上げるとそこには不思議な生命体、『バルボロイド』がいた。
彼こそ、グロウボー達を救う為に現れた、たった一つの希望だった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆光の屈折原理を丁寧にゲームへと落とし込んだ、斬新なゲームシステム(ルール)
◆問題を解く『パズル』のほか、限界に挑戦する『エンドレス』に最高得点を目指す『スコアアタック』など、程好く充実した収録ゲームモード
◆仕掛けの配置も含め、隙無く作り込まれている全120面以上もの『パズル』のステージ
◆鏡にT字ブロック、カラーブロックなど、光だからこそできたオリジナリティが光る、ステージ内に仕掛けられたギミック群
◆十字キーとボタンのみ、更にペン一本だけでもOKなシンプル且つ取っ付き易い操作性
◆難し過ぎず、優し過ぎずの絶妙さが光るゲームバランス(特に『パズル』)
◆ルール解説から答え機能(一部限定)まで、ワリと充実しているサポート機能群
◆地味だけど、光の屈折表現も含め、そつなく仕上げられてるグラフィック

--- Bad Point ---
◆たったの2曲しかない音楽(恐ろしく地味…)
◆ステージクリア時に専用音楽が流れないなど、致命的なまでに地味な演出
◆素っ気無すぎる『パズル』のエンディング(海外ゲームらしいとも言える)
◆意図しない所をタッチする座標ズレが生じ易いタッチペン操作
◆ほとんどおまけな空気漂う『パズル』以外のゲームモード(特に対戦プレイ)
▼Review ≪Last Update : 9/13/2009≫
これ、主人公というより”モノ”では!?

細かい事は気にしてはいけません…。


イギリスのアイドス・インタラクティブ(開発:Gamesauce)より、2007年9月に発売された新作パズルゲーム『PRISM : Light the Way』の国内版。

光の屈折原理を活かした独自のゲームデザインが光る、隠れた良質パズルゲームだ。

ルールは至ってシンプル。『バルボロイド』と呼ばれる、光線を発するキャラクターを十字キーとボタン、或いはタッチペンで動かし、フィールド上に点在する『グロウボー』と呼ばれるスライム(?)に光を浴びせていき、全部のグロウボーに光を浴びせられればステージクリア、というものだ。パズルゲームとしては、いわゆる『思考系』に属する内容。課せられる問題を一つずつ解いていくのが中心のパズルゲームとなっている。
収録されているゲームモードも、メインは問題を一つずつ解いていく『パズル』であるなど、思考系の基本に則ったラインナップで構成。他の『スコアアタック』、『パニック』、『エンドレス』、『対戦』なども、『テトリス』等の落ちモノ系のパズルと同じようにテクニック勝負かと思いきや、どちらかと言うとテクニック以上に思考力が試される内容であると、思考系パズルとしての基本形を尊重した作りとなっている。故に今作は、どちらかと言うと爽快感よりは、問題を解く『達成感』を重視したゲームデザイン、バランス調整が図られている。
ただ、肝心のゲーム性は正直、かなり地味。ひたすら、黙々と問題を解いていく事に終始するので、華やかさなんてのは微塵も無い。エフェクト絡みの演出も恐ろしく地味で、『テトリス』等の落ちモノ系パズルと比較したら、雲泥の差と言っても良い。演出面とかで派手さ、或いは爽快感を求めるプレイヤーにとっては、この上ないほど割に合わないゲームなのは、言うまでも無い。更に、ゲーム自体も決してつまらない訳でもない。むしろ、面白い。中毒性が非常に高い。思考系パズルゲームの新境地を開拓したと言っても良いほど、今作には素晴らしいアイディアの数々が詰め込まれている。
特に秀逸なのが『光の原理』という、それまでパズルゲームではさほど見向きもされてこなかったテーマに挑戦している事にある。ゲームで『光』と言うと、3Dアクション等の3D描写を取り入れたものでは、あくまでも演出の一つとして扱われるだけが多く、ライトを照らす事によって周囲が明るくなったりとか、その程度のものであるのがザラである。
かつてニンテンドーゲームキューブで本体と同時発売された『ルイージマンション』では、懐中電灯を照らしてお化けを硬直させるという、光の特性を活かしたアイディアも導入されていたが、基本はサブ扱い。メインはお化けを吸い込む事としていたので、そこまで強烈な存在感を放ってはいなかった。(それでも、暗闇の中をライトで照らしながら進めていくゲーム性は、地味ながら光の有り難味というのを出していたが)結局のところ、どう頑張っても「光」は演出の役割しか果たせない。それが暗黙の了解のようにされていた。
そんな演出の一部でしかなかった「光」。それが今作では、各ステージ攻略の要となる。”リアルに”、光がどんな風に流れていくか、それを考えていかないとステージ攻略は不可能な、正真正銘の「光のゲーム」となっているのである。演出でもなければ、サブ的な要素としての扱いでもない。本当に「光」そのものを操らなければならないのだ。
そんな作りだというだけでも、今作がパズルゲームとして新しく、そしてゲームとしても革新的なアイディアに挑戦した内容だというのは、言うまでも無く。まさに正真正銘の「光のゲーム」として仕上げられている。
元々、演出の一部で、ゲームのシステム部分にはそんな縁がなかった「光」をゲームへと落とし込めたその手腕、そしてアイディアには正直、感心せざるを得ない。「ゲームにおいて、光って演出にしか使われないものか?」という、暗黙の了解に対する疑問に対し、驚くほどストレートに答えている。
また、こう言ったパズルゲームとして、「ありそうで無かったネタ」を実現させたその手腕も結構なものだと言える。そもそも、こう言ったシンプルなネタが何故、これまでゲームとされなかったのかと、逆に疑問が湧いてくるほど。そんなにも「光」とは、ゲームのアイディアとしての対象にすらされなかったのかと、これには驚きを覚えるばかりである。如何に「光」というものが、演出の要素として凝り固められてしまっているか。今作をプレイしてみれば、それを痛感させられるだろう。

単に「光」をゲームに落とし込んだだけでなく、その「光」の特徴をきちんと活かしたゲームデザインが成されているのも見逃せない。光を対象物に当てるその基本ルールから、酷く単純そうな印象を抱くかもしれないが、実際は対象物に光を当てるにしても結構、考える必要がある。そもそも、発光体である『バルボロイド』が発する光は直線。発する角度も、バルボロイドが向く上下左右の方向で固定されており、プレイヤーが任意でそれを曲げる事はできなくされている。では、例えば上に光を発していて、グロウボーが右にあった場合、どうすれば良いのか?
答えは簡単。光線を「屈折」させるだけ。実はステージによってはバルボロイド、グロウボー以外に『ミラー』や『T字ブロック』と言ったギミックが登場する。それで、先のように直線では当てられない位置のグロウボーに光を当てたい時は、『ミラー』で方向を変える…と言った具合に、光をコントロールするテクニックが求められてくるようになっている。決して、バルボロイド自体をコントロールするのではない。コントロールするのは光。そしてその光も、自由に方向が変えられない。「光」はあくまでも「光」。現実同様に『鏡』とかを使わなければ、その向きも変えられないようにされているのだ。まさに”リアル”。単にアイディアとしてではない、こう言った特徴も含め、今作は正真正銘の「光」を表現。並びにそれを活かす設計が施されている。しかも、屈折なんてまだ序の口。それ以外にも、プレイヤーを考えさせる要素はごまんと用意されている。例えば左右片方でなく、両方にグロウボーがいた場合、どうやって光を当てるのか等。この場合、先ほど挙げた『T字ブロック』に光を当てれば、左右に光が射出されるので、それを使うのが正解だが、では上と右にグロウボーがいて、右は『T字ブロック』で当てられるが、上方向は壁が邪魔して届かない時はどうするか…と言った感じに、ステージの状況によってはミラーとの併用も必要となってくる。
更に、ステージが進むと『カラーブロック』なる、光に色を付けるものまで登場。これに光を当てて色を変えないと、ヒット判定にされないグロウボーがいるなど、普通に考えるだけでも悩ましい事が求められてきたりもする。曲げるだけならず、方向転換に色の変更も必要とされる、脅威の慌しさ。まさに、「光の特徴を舐めたらダメ!」な、深い作り込みがされている。一筋縄ではいかないパズルゲームなのは、これだけでも嫌というほど伝わっただろう。
パズルゲームとして、斬新な手応えに満ちているのもまた然り。屈折の流れを読み、その流れを作り上げていく過程は、それまでのパズルゲームにない「原理を読み解く面白さ」があり、まるで遊び目的で勉強しているかのような気分に浸れる。そしてその原理を読み解き、全てのグロウボーに光を通した時には、まるで配線修理を完了した時に似た達成感がある。全てのブロックが消えて無に帰すのでなく、きちんと結果が残った上で終了するのも、自分がやり遂げた、という確かな手応えがあってなかなか味わい深い。
新たなテーマに挑戦しつつ、新たな価値と面白さも提示する。「光」のテーマ自体は正直、単純ではあるが、ここまで「光」の流れを読み解く過程を、パズルゲームとして面白いものに仕上げたのは、まさに職人技。今作のおかげで、それまで演出かサブ的な要素の一部でしかなかった「光」は、メインのネタとしても十分に存在感が発揮されるものと、証明されたと言っても良いだろう。まさに、新境地開拓。
そしてまた、光の勉強になる利点があるのも大きな売り。光の原理は現実に則っているので、純粋に学習ゲームとしても楽しめる。小さな子供でも、大人でも光の面白さがよく分かるので、それ目的でプレイするのも案外いける。光の物理学の入門タイトルとしても、今作の価値はある…かもしれない。こんな妙な売りがあるのも正直、パズルゲームとしては珍しい。何処まで開拓したら気が済むのか、その開拓精神には感服させられるばかりだ…。

ボリュームに関してもメインモードである『パズル』は120ステージ強と盛り沢山。パズルとはかけ離れた、文字通り頭が混乱するゲーム展開が楽しめるゲームモード『パニック』もまた、パズルゲームとしては新鮮な手応えに満ちている。
操作性もタッチペン、ボタンの両方に対応。ペン操作は少し、座標ずれを起こし易い欠点があるのが残念だが、そこまで複雑な操作は無いので概ね快適。誰でも気軽に触れる敷居の低さを演出している。
ゲームバランスもなかなか。序盤は温く(何と答え付きヒント機能が使える)、後半から厳しくという適切な調整が図られている。特に後半の厳しさは、パズル好きも唸る歯応え。可愛い見た目に反した、やり甲斐を実感できる。
しかし、グラフィックに音楽、演出全般は流石に地味過ぎ。特に音楽は僅かに2曲しか無いと、かなり質素。じっくり遊ぶ、地味なタイプのゲームなので、これはこれで良いのかもしれないが(ちなみにオプションで音楽だけを消す…という事もできる)、エンディングやステージをクリアした際に違う曲入れるとかしても良かったのではないか。ゲームデザイン的な考慮があったのだとしても、ここはもう少し凝って欲しかったところだ。ゲーム全体の地味さに拍車をかけ過ぎてる。

そんな地味過ぎるという欠点もあるが、パズルゲームとしての出来栄えは結構なもの。何よりも、「光」という世間一般のゲームで演出としての扱いを受けてきたものを、きちんとゲームとして仕上げたその内容は、パズルゲーム好きならずとも必見。操作も簡単な上、答え機能などのサポートも万全。DSのゲームらしさは薄いけど、パズルゲーム界に革命をもたらした要素が満載の今作。地味な作りなので、好みは分かれるが、パズルゲームが好きで仕方がない方は是非、チャレンジしてみて欲しい隠れた秀作だ。演出でない、ゲームとしての「光」。その凄味、とくとご堪能あれ。
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