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≫ホッタラケの島 カナタと虹色の鏡
■発売元 バンダイナムコゲームズ
■開発元 クライマックス
■ジャンル アクションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 29ページ
■推定クリア時間 3〜4時間(エンディング目的)、20〜25時間(完全攻略目的)
運動会に母親が来てくれなかった事で、すねてたカナタ。
そんな母親に絵本を読んでもらっていた時、カナタは自分はホッタラケなのだと思い込んでいた。すると突然、カナタの目の前に謎の男が出現。その男はカナタを本の中の『ホッタラケの島』へと連れて行ってしまう。一体、何が起きたのか混乱するカナタ。やがて彼は元の世界へと戻る為、住人の『テオ』と共に『七色の鏡』を集める事になってしまう。
果たして、カナタは無事に鏡を集め、元の世界に戻れるのか。
そしてカナタをホッタラケの島へと連れてきた謎の男の正体とは?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆タッチペン一本だけで移動から攻撃まで行う、思い切った操作性(しかも快適)
◆防御力の概念が無い為に被ダメージ量が低下する事が無いなど、独特の味付けが光るゲームバランス
◆サクサク、テンポ良く進む気持ちよさが光る、シナリオクリア型のゲームシステム
◆広過ぎず狭過ぎずの丁度良さとロケーションの面白さに秀でたダンジョンマップ構成
◆リサイクル品で作られた世界という設定を活かした、個性的なマップギミックの数々
◆仲間と連携して敵を倒す楽しさと戦略性、謎を解く快感に満ちた『トイズシステム』
◆クリアまで4時間弱と短いが、しっかりとしたマップ構成とバランスの恩恵で、確かな手応えが得られる総計ボリューム
◆武器収集、サブクエスト、引継ぎの二周目など程好く取り揃ったやり込み要素の数々
◆如何にも玩具っぽいモデリングが印象的なグラフィック
◆玩具っぽい世界観にマッチした、明るくて楽しげな音楽
◆アニメムービーが挟まったり、フルボイスで会話が展開されたりなど、凝った作りの演出周り
◆映画版『ホッタラケの島』を見た人ならばビックリする事間違いなしのエンディング

--- Bad Point ---
◆人によっては物足りなさも感じ得ない、短過ぎる総計ボリューム
◆少し煩わしさのあるトイズ選択・進路決定画面への切り替え操作(これはタッチペン操作でなく、LRボタンで即座に切り替える仕様の方が良かった)
◆あまりにあっさりし過ぎなサブクエスト(1分弱で終わるものが多過ぎる)
◆見所はエンディングぐらいしかない、浅くて面白味に欠けるシナリオ
◆恐ろしく短いスパンでレベルが上がる為、強化する楽しみ皆無のキャラクター育成
◆ややワンパターンでバリエーションに乏しいダンジョン内の謎解き
◆あまりに狭過ぎる拠点こと『ホッタラケの町』(その分、迷い難いが…)
◆トイズで攻撃を引き付け、その隙を突く戦法でほぼ勝てるボス達(例外も居るが…)
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
何気ない人物が意外な大物だった。

映画を見ておくと更に衝撃度アップ?


フジテレビ開局50周年記念作品として公開されたCGアニメーション映画『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』と同じ世界観を舞台とした、アクションロールプレイングゲーム。開発は『ランドストーカー』などを手掛けたクライマックス。

短めだが、確かな遊び応えを実感できる、良質アクションRPGだ。

ゲーム内容は2Dの斜め見下ろし視点で展開する、アクションRPG。プレイヤーは主人公のカナタを操り、ダンジョンを攻略しながらストーリーを進めていく。本編はシナリオクリア方式で進行。シナリオは章単位で分けられており、基本的にダンジョンの最深部で待ち受けるボスを撃破すると章クリア。次の章へと進み、以降はその繰り返しとなる。
また、ダンジョンへの移動は拠点となる『ホッタラケの町』からシナリオの展開に応じ、強制的に移動されるシステムを起用。この仕様からして明らかだが、今作にはフィールドマップが無い。マップはダンジョンと拠点である『ホッタラケの町』だけと、かなり思い切った設計となっている。なので、RPG特有の探索要素は薄め。それ以上にアクションゲーム色を強調した、独特のゲームデザインが図られた作りになっている。良く言えば、すっきり。悪く言えば、狭い。RPGとしての内容を求めると正直、かなり肩透かしに遭う作りである。
RPGを名乗るだけに成長要素(レベルの概念)もあるが、これも僅か2〜3体の敵を倒すだけでレベルアップするなど、間隔が短め。あまりそれで時間を縛られたりしないので、おまけ同然となっている。複雑なステータス変化などの要素も無いのでまた然り。探索のみならず、その辺の成長の過程を楽しむパートも、あまり期待しない方が良い仕上がりだ。
逆にアクションゲームとしてはどうか、と言うと実は単純明快。プレイヤーアクションの種類も少なめ(攻撃と必殺技を繰り出す程度)であり、あまり多彩な動きの妙を楽しめる作りにはなっていない。ただ、単純明快である故に取っ付き易さは優れており、アクションゲームがそれほど得意でない方でも楽しめる仕上がりとなっているのは、かなりの強みだ。操作も使うのはタッチペンだけ。任天堂の『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』をオマージュした、思い切ったものとなっており、シンプル且つ直感的にキャラクターを動かせる仕上がりだ。アクションの種類がそれほど多くないので、複雑な操作を求められる機会も少なめ。純粋にスライド、タッチと言った操作でテンポ良く楽しめてしまうのも大きな特徴だ。単純明快な作りならではの良さが発揮されている。無論、アクションはただ単純なだけで終わりではなく。独自の要素として『トイズ』なるものがある。いわゆるお助けキャラクターで、呼び出して命令を下す事で敵の注意を引き付けたり、仕掛けを解除したりと言った様々な行動を取ってくれるのだ。命令の下し方も簡単で、画面左上の『トイズ』という項目を選択して命令画面に移行し、ペンで軌跡を描き、『突撃』の項目を選択するだけ。それだけでトイズが状況に応じた行動を取ってくれる。任意の行動を取って欲しい場合も、軌跡をその対象に重なるように描けば良いだけと非常に簡単。複雑なコマンド選択などをする必要も無い、直感的に行える親切設計となっている。
また、トイズも特定の属性攻撃に対しては無敵を誇ったり、攻撃専門の能力を持っているなど、様々な種類が存在。ダンジョンによっては特定のトイズを状況に応じて使い分けたりと、パズル的なテクニックが求められる場面も用意されている。敵との戦闘でも、彼らに注意を引き付けてもらい、自分は背後から攻撃を行うというコンビネーションによる戦法ができたりと、幅を大きく広げる。例によって、トイズは呼び出してずっとそのまま居る訳でなく、制限時間が過ぎると消えてしまうので、そこを考慮して如何に効率よく行動させるか、と言った事も求められる。そんな如何に上手く彼らを動かすかはさながら、ラジコン遊びをするかのような面白さとパズル的な考える面白さに秀でている。若干、似通ったトイズが多いのはご愛嬌だが、お供のキャラに命令を下しながら戦ったり、仕掛けを突破するゲーム性はなかなか個性的。思い通りの動きをしない事で生じるストレスを緩和する配慮も徹底していたりと、丁寧に設計されているのも大きな見所だ。真新しさは少ないとは言え、ラジコン遊びに近い手応えは何処となく懐かしい仕上がり。なかなか侮れぬ魅力を持ったシステムだ。
こんな具合にアクションゲーム全開のゲームデザイン、そしてラジコン遊びのような独自の要素『トイズ』など、ユニークな仕上がり。アクションRPGながら、RPG要素が控え目なのは期待外れに受け取られかねない部分だが、探索などが全く無い訳では無いので、それっぽい手応えは感じ取れる出来。手応えはきちんとした内容に仕上げられている。

そんな手応えのしっかりした内容が今作最大の売りだ。人によっては重大な欠点として映ると思うが、あえて言おう。正直な所、今作の総計ボリュームは凄く短い。何とエンディングに到達するだけでも、たったの4時間以内で終わってしまう。アクションRPGとしては信じられないほどの短さなのである。何でまた、そんなに短いのかというと、全体構成と基本システムが最大の要因。先も語ったが、今作にはダンジョンと拠点(町)しかマップが存在せず、探索要素が希薄。更にダンジョンへの移動も、拠点で選択するだけで直に行けてしまうと、簡略化されているので、無駄な時間が一切かからない。その為に恐ろしいほどテンポ良くメインストーリーが進行。集中してプレイすれば、あっという間に終盤へと到着できてしまうのだ。何て呆気ない構成なのかと、突っ込みを入れたくなるのは言うまでも無い。そして、そのあまりの短さに今作はプレイの満足度が低いゲームなのだと、思ってしまうだろう。
しかし、断じてそんなことは無い。確かにエンディングまでの到達時間は短いが、それでもちゃんとした満足度が得られる内容に仕上げられている。短くても、構成は丁寧にまとめられているのである。特にストーリーの主舞台となるダンジョンの作りが見事。全部で7つあるのだが、その一つ一つに独自の仕掛け・遊びが盛り込まれており、似通った部分がほとんど無いのが凄い。難易度の味付けも上手く、後半になれば大ダメージを受けるトラップが多数登場するなど、理に適った調整が施されているのも見事。成長要素があるので、レベルを沢山上げれば後は楽勝、というムードを良い感じに壊しており、適度な手応えを引き出すことに成功している。ダンジョン内で登場する敵も、レベルを沢山上げれば簡単に倒せるようになるほど脆くはなく、一方的な展開を防ぐ適切な調整が図られている辺りに職人の技を痛感させられる。『トイズ』を使った謎解きも、種類は少ないが程好く考え甲斐のあるものが揃っており、アクションのテンポを極力崩さない配慮が凝らされているのが印象深い。謎解きの難易度も適切で、ほぼ直感で解けるバランスでまとめられているのが面白い。その為、手応えは弱めではあるが、そこをトラップや敵がカバーしてくれるので、それほど物足りなさは感じない。ボスもなかなか戦い甲斐のあるメンツが揃っているので尚更だ。
エンディングまでの到達時間が短い、その表面情報では浅い作りだと思ってしまいがちだが、個々の作り込みは確かなもの。その妥協の無さと意外な手応えは、実際にプレイすると驚くこと請け合いだ。むしろ、色々な要素を詰め込める為、複雑になり得る一面を持ったアクションRPGをここまでを短く、且つ確かな手応えのある内容にまとめた手腕が凄い。色んな要素を詰め込んで寄り道させる傾向の強いこの手のジャンルで、ここまで本質の面白さに一点集中した作りのゲームも近年では珍しい。そういう点では今作、本質を守り通す事にこだわり抜いたアンチテーゼ的な一本とも言えるかもしれない。まさに往年のクリエイターの本気と言ったところか。かなり潔い内容なのである。
ダンジョンばかりでなく、ゲームバランスの味付けも注目に値する部分だ。特にどんなにレベルを沢山上げても、カナタが無双できるほど強くはならないのがユニーク。実は今作、防御力の概念が無い。幾らレベルを上げても、防御力は初期値のままで、敵から受けるダメージは常に一定なのだ。なので、どんなにレベルを上げたとしても一切油断できず。本来なら、レベルが上がるとプレイヤー自身が強化されるのがお約束だが、今作では一部しか強化されぬ捻った設定。故に終始、緊張感が付きまとう。こう言った所にも手応えを演出する工夫は凝らされており、短いけど侮れぬという魅力を引き立てている。短いからと言って難易度も温いという訳であらず。そんなしっぺ返しをかます個性的なバランス設定、今作の大きな魅力の一つである。
とは言え、やはり短い故に若干の浅さがある点は否めない。バランスは工夫されてるとは言え、普通にサクサク進む為、人によっては物足りなさを感じるだろう。しかし、複雑で入り組みがちなアクションRPGをシンプルにまとめ、適度にやり応えのある内容に仕上げた手腕は高く評価できる。そして、徹底して本質に迫った設計にも、昔ながらのゲームの良さが現れているのが見事だ。まさにお手軽アクションRPGというにはこの上ない出来。そして、色々な思いが込められたゲームに仕上げられている。一応、原作付きではあるが、結構本気の内容なのだ。

ただ、短くまとめ上げた内容は良いとして、色々と「あと一歩」な部分が散見されるのは正直、残念。操作性に関して言えば、『トイズ』の選択と指示が立ち止まった際にしか行えないのは地味に不便。もう少しアクションのテンポを考慮し、LRボタンで即座に切り替えられる仕組みにして欲しかった。『夢幻の砂時計』の操作系統を今作でやるのなら、そう言った細かい所も考えて作り込んで頂きたかったものだ。アクションの反応速度が良好なのがせめてもの救いであるが。
メインストーリー以外に用意されたやり込み要素『クエスト』も、クリアまでの過程が異様に短く、やり応えに欠けてるのが気になる。大半が受領して5分も経たぬ内に攻略できてしまうというのは、手抜きと言われても仕方が無い。もう少し、10分ぐらいはかかるものがあっても良かったのではないだろうか。手軽さが売りとは言え、何もここまでそうする必要はなかった。願わくば、本筋から外れてるのだから、色々ぶっちゃけて頂きたかった。
対し、グラフィックと音楽はいずれも及第点の仕上がり。グラフィックはDSでは荒くなりがちな3DCGでありながら、モデリングがしっかりしているのが印象的。音楽も明るい楽曲が中心で、玩具っぽい世界観に絶妙にマッチしている。曲自体も意外と良いのが揃っていて、特にボス戦の曲はなかなかの出来栄えだ。

演出周りもアニメのムービーが入ったり、イベントによってはフルボイスで表現されたりと、そこそこ凝っている。ただ、シナリオは全体的に浅い内容で見所に欠ける。映画の『ホッタラケの島』にも登場したキャラクターが相棒として今作にも出るとは言え、それほど目立った活躍をしない為、空気に等しい存在になってるのが何とも悲しい。しかし、エンディングのオチは映画を見た人ならば必見だ。そのまさかの真相には「そうだったの!?」と声を挙げてしまうだろう。
全体的に短い内容である為、あっさりクリアできてしまう所が賛否を分けるが、ゲームとしてはバランス良く、丁寧に作られている。また、アクションRPGとしての手応えも短いとは言え、しっかりしており、結構な満足感も得られる。あっさりとした内容とは言え、本質的な面白さは万全。これぞまさしく、お手軽アクションRPGと名乗るに相応しい出来を誇る今作。時間が無いから、サクッと楽しめるゲームが遊びたいという方にこそお薦めしたい良作だ。最近のゴテゴテとした作りのゲームに疲れている方にもお薦め。短いけど、やり応えは確か。機会があったらお試しあれ。
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