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  4. 光の4戦士 ファイナルファンタジー外伝
≫光の4戦士 ファイナルファンタジー外伝
■発売元 スクウェア・エニックス
■開発元 マトリックス
■ジャンル ロールプレイング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5980円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応
■総説明書ページ数 37ページ
■推定クリア時間 19〜25時間(エンディング目的)、80〜95時間(完全攻略目的)
ホルンに暮らす少年ブランドは、ある朝、誕生日を迎える。
今日はお城に初めて顔を出す日。
そして、大人と認められる日でもある。

しかし、ブランドが城を訪れると、王様は何故か困惑していた。
どうやら姫が『北の魔女』に誘拐されたらしい。

ブランドは、姫を助けに行く事を決意する。
そして、大きな冒険への幕が開く。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆初代から三作目辺りのファイナルファンタジーを踏襲した、懐かしい香りが満ち溢れたレトロチックなゲームデザイン
◆僅か5ポイントの数値で駆け引きを行う、単純明快さと奥深さが秀逸なAPシステム
◆APの駆け引きによる戦略が癖になる、王道がならも独特の味に満ちたバトルシステム
◆驚くほどスピーディでサクサクと展開する、爽快感抜群の良好なゲームテンポ
◆職業にする、装備品にするかの頭を悩ますやりくりが面白い、宝石による強化システム
◆町や地形ごとの個性を露骨なまでに現したデザインが目を見張る、印象的なマップデザイン
◆これぞ王道のファンタジーとも言うべき、親しみ易い内容でまとめられたストーリー
◆武器、アイテムを具現化させた、見栄えの良いデザインが秀逸なメニューインターフェース
◆もたつきなし、快適にキャラクターを動かせる良好な操作性(※メニュー周りは例外)
◆長過ぎず短過ぎず、やり込むとなると大変なバランスの良い構成の総計ボリューム
◆童話の世界のような独特のデザインと色使いが素晴らしい、暖かみのあるグラフィック
◆レトロなテイスト満点の秀逸な音楽(何処か懐かしい味わいに満ちた楽曲が満載)
◆状況に転じて楽曲が変わるユニークな演出が仕込まれた戦闘曲
◆暖かみのある見た目に反し、意外と迫力満点のエフェクト演出全般

--- Bad Point ---
◆新しさと古さの主張が激しく、中途半端な形にまとまってしまっているゲームデザイン
◆やりくりは楽しいが、ゲームコンセプト的にはミスマッチな感が否めないAPシステム
◆宝石による強化方式もさる事ながら、逃走コマンドが一部職業専用など、新しさと珍妙さが炸裂したクラウンシステム(特に逃走コマンドの仕様は謎過ぎる)
◆強弱の差が激し過ぎる各クラウンのバランス
◆離別イベント多めで、『光の4戦士』というタイトル名と矛盾する内容のストーリー(4人が揃い、パーティが固定化されるのがゲーム終盤というのも問題あり過ぎ)
◆ストーリー構成故のパーティ編成の自由度の低さ
◆パーティ編成と育成の楽しさをぶち壊す、後半のゲームバランス(やたらレベルが上がる)
◆構成が単調で、探索する面白さに欠けたやり込み要素『ランダムダンジョン』
◆何故か1つしか作成できないセーブファイル(1つに絞る必然性が何処に?)
◆存在意義不明のマルチプレイモード(このモードで獲得できるバトルポイントがシングルでも普通に入手可能だったりと、存在そのものが否定されている)
◆ターゲット選択不可能な仕様が煩わしいバトルシステム(ただ、ワリと想定通りに行ってくれる)
◆見栄えは良いが、切り替え操作が面倒など、使い勝手は悪いメニューインターフェース
▼Review ≪Last Update : 2/12/2012≫
古き良き中に新しさあり。

だが、その加減を誤ると…?


スクウェア(現:スクウェア・エニックス)の看板タイトルであり、ドラゴンクエストに並ぶ国内製ロールプレイングゲームの象徴的作品『ファイナルファンタジー』シリーズの外伝にして、『最新技術で創り出した古き良き時代のRPG』をコンセプトに制作された作品。開発はDS版『ファイナルファンタジーIII』にも携わったマトリックスが担当。

新要素にこだわり過ぎた、中途半端な古き良き時代のRPGだ。

ゲーム内容はイベントクリア方式で展開する、ロールプレイングゲーム。主人公を始めとする仲間達を操作し、世界各地で起こるイベントや敵との戦闘を乗り越え、ストーリーを進めていくというものである。外伝を謳っているが、基本的には正伝のファイナルファンタジー(以下、FF)シリーズと同じ。伝統の体裁に則った作りとなっている。
しかし、正伝と同じと言いつつ、それが近年のシリーズの体裁でないのがミソ。ゲームを彩るグラフィックこそ、3DCGで描かれてはいるが、ストーリー構成&作風、難易度設定、インターフェースは昔基準。ストーリーで言えば会話が素っ気無かったり、難易度は歯応えのある高めの設定、そしてインタフェースは地味に煩わしかったりと、徹底して昔っぽい作りにされている。言うなれば今作は、現代の技術を用いて作られた昔のファイナルファンタジー。シリーズで言えば、初代から第三作目までの作風を継承した新作なのである。その為、当時のシリーズに親しんだプレイヤーには懐かしい香りを感じられる内容に仕上げられている。対照的にムービー、ストーリー性重視の近年のFFシリーズに親しんだプレイヤーには、物足りなさや違和感を覚えかねない内容だ。ただ、冒険する楽しさというRPGの原点を重視したゲームデザインは逆に新鮮に感じられること請け合い。どちらかと言うと、旧シリーズを知るプレイヤー対象だが、無意味なまでに不親切で意地悪にしている部分はほぼ無く、見た目も現代風なので今の世代でも難なく遊べる作りとなっている。
だが、単純に昔ながらのRPGでまとまった内容という訳ではなく。例によって、今作独自の新しいシステムも幾つか盛り込まれている。代表的なのが『クラウン』と『AP』。前者『クラウン』は、FFシリーズお馴染みの『ジョブチェンジシステム』の亜種。クラウンこと王冠を付け替える事で、固有の能力(アビリティ)を持った職業に変更できるというものだ。変更できる職業も勇者、学者、白魔道師など、FFシリーズではお馴染みのものばかりで、ほとんどジョブチェンジシステムそのものとなっている。ただ、ジョブチェンジとの最大の違いは強化システム。基本的に使い込むのではなく、敵を倒すと手に入る『宝石』を一定数、王冠にはめ込むというものになっている。宝石は非常に多くの種類があり、頻繁に敵が落とすものもあれば、滅多に落とさないものもあったりと実に様々。それらの宝石も含め、はめ込んでいかないと強化は一切行えない。少々、面倒臭さ漂う仕様だ。また、宝石で強化できるのはクラウンだけでなく、武器や防具と言った装備品にも及ぶ為、迂闊に振り分けるとどちらかの強化が遅れる弊害が生じる事も。そんなやりくりで悩まされる事が多いのも、ジョブチェンジとは異なる特徴。基本部分こそ同じとは言うものの、癖が強いものに仕上げられている。
そして後者、『AP』もまた癖のあるシステムだ。実は今作には魔法を使う際に消費される『マジックポイント(MP)』の概念が無い。その代わりとして『AP』が設けられている。これはいわゆる行動時に消費されるポイントで、魔法のみならず、通常の攻撃でさえもこのポイントを消費して行われる。極端に言えば、今回は戦闘時のあらゆる行動がAPを消費して行われる仕組みになっているのだ。その為、今回はAPの残量を念頭に入れながら攻撃、魔法を展開する独特の戦略が求められてくる。更にAPは最大5ポイントまでしか溜まらない上、強力なアビリティを使うには4つも消費されたりするので、MPの残量に任せたゴリ押しは非常に困難。厳しくもあり、頭を使う必要のある、面白味のある調整になっている。一応、システム自体は素早さのステータスに依存した王道のコマンド選択型なのだが、このAPの存在もあり、シンプルで終始していないのが実に印象的。やりくりが求められるが故に独自の戦法として『ためる』というAP回復の為の行動も求められたりと、このシステムだからこその生み出された戦略性、スリルもなかなか味わい深いものがある。ちと、新し過ぎではと思う所もあるが、ポイントを上手く配分しながら展開していく面白さと手応えはなかなか。新しいファイナルファンタジーの形を示したと言っても良い、個性的なシステムに仕上げられている。
この他にも、戦闘システムではモンスターへの攻撃が任意で選べない自動形式だったり、ランダムダンジョンという地形が変化するダンジョンが用意されているなどの特徴的なシステム、要素が盛り込まれている。コンセプトとしては昔ながらのRPGという事でシンプルなストーリーや厳しめの難易度など、その魅力を全面に推し出している。
ただ、AP消費による戦闘やクラウンシステムと言った、新しいRPGとしての形も追求しており、単純に昔ながらのRPGとは言い難い部分もある。まさにこれぞ、昔っぽくて新しいファイナルファンタジーと言ったところだろうか。古臭さを売りとしながら、新しさもある、何とも独創的で他に類を見ない味わいを持った内容に仕上げられている。

だが今作、そんな新しさと古さが見事な相乗効果を及ぼした作品なのかというと、全くそうではない。全体的にどちらも自己主張が強く、互いの良さを活かし合おうともしない、どっち付かずで中途半端な内容に落ち着いてしまっている。古き良き時代のRPGというには、疑問だらけの出来なのである。
特に先ほど紹介した新システムの二つ、クラウン、APはやり過ぎ。ストーリー構成、難易度など、徹底して懐かしさを演出している部分との相性が悪過ぎる。
中でも悪い意味で傑出しているのがAP。制作スタッフは、本気で古き良きRPGを作ろうと考えていたのか、そう問い詰めたくなるほどに作りと手応えが新し過ぎる。ポイントをやりくりしながらの戦い、MPの概念が無いという基本設計など、完全に新しさを売りとするRPGのそれだ。シンプルにコマンドを選択し、敵に攻撃を行っていく単純明快さも無ければ、手軽さも無い。更に言ってしまえば、王道の「お」の字も無いほどに変則的。何処が古き良きだ、の一言である。念の為、取っ付き易さの点ではしっかりしており、実際にポイントをやりくりしながらの戦いは面白く、新鮮な味わいに満ち溢れている。しかし、古き良きをコンセプトとする今作において、この設計はミスマッチと言わざるを得ない。ただのコマンド選択型システムでは芸がないから新要素を、という考えに至るのはよく分かる。確かに今の時代に出す新作で、単純なコマンド選択型は古臭いと一蹴されかねないだろう。また、FFシリーズは『アクティブタイムバトル(ATB)』など、常にシステム面で革新を行ってきたシリーズ。その歴史から、今作に新システムを設ける流れも理解できない訳ではない。やって当然と言っても良いだろう。システム自体は面白く仕上げられているので、高く評価できる。最大値5という少ない数値を軸に展開される仕組みである為に戦略が練り易い、手軽に駆け引きの楽しさを堪能できるなどは大きな強みである。しかし、古き良きをコンセプトとする今作において、この導入は筋違いだと言わざるを得ない。新要素を導入するのも良いが、もう少し、シンプルなノリを強調できなかったのか。願わくば新要素の存在感は極力抑えて欲しかったところだ。前者、クラウンも種類により戦闘時のコマンドに変化が生じるという仕様は、さすがに古き良きとは言い難い。更に特定の種類でないと『逃走』のコマンドが選択できないというのもやり過ぎだ。それはデフォルトにすべきだろう。こう言った奇妙な仕様もAPと同様、古き良きコンセプトを壊していると言わざるを得ない。
また古き良きの象徴部分、ストーリーも問題だらけ。何と言っても、パーティメンバーの離別イベントが多過ぎる。四人揃ったと思ったら、仲間割れを起こして離別。やっと集結かと思ったら、トラブルでまた離別と、自由なパーティ編成も全然できない。更に離別の原因もキャラクターの勝手な行動によるものと、プレイヤーの意に反したものばかりなので、全く腑に落ちない。トラブルにしたって、基本的に制作側の都合なので尚更だ。それでいて、最終的に4人が揃うのがゲーム終盤という有様。これの何処が『光の4戦士』なのか。そして、何処が古き良きロールプレイング、成りきりゲームなのか。初代から三作目までを基にしているのなら、パーティ編成は自由であるべきだし、ストーリー上の都合が少ない方がまさしくロールプレイングゲームとなりえるはずだ。題名に反し、古き良きのコンセプトに反し、ストーリー構成に至っては都合の塊。まだ、システムだけがコンセプトを外しているのなら救いはあったのかもしれないが、ストーリーまでこれではもう擁護はできない。中身も王道のファンタジーとは言え、昔基準なので薄いし、自由度の低さも相染まって見応えにも欠ける。何を持って古き良きなのか。結局のところ、新しい事がやりたかっただけではないのか。このアンバランスさには呆れるばかりだ。
基本部分の出来は概ね問題ない。バトルシステムは古き良きとかけ離れ過ぎてる点を除けば出来は良いし、爽快な演出とスピーディな展開は見応えがある。フィールドマップ構成に移動周りのレスポンスも総じて良好だ。
それだけに、古き良きを意識しながら、どっちつかずで落ち着かせてしまった作りがあまりにも勿体無い。ここまで新しい要素を詰め合わせるのなら、もっと完全新作としてアピールした方が良かったのではないだろうか。そうすれば、ストーリー構成にせよ、システム全般にせよ、ここまで強い違和感を持つものにはならなかったはず。結果的に昨今流行りの古き良きの流行に乗って、中身は特にそれを意識せずに作ってしまった中途半端な作品になってしまったのだから残念だ。光る要素も沢山あるのに本当に勿体無い。

また、根本部分以外でも損をしている部分は多々ある。中でも、セーブファイルが1つしか作成できない仕様は謎過ぎる。原因は通信プレイ、やり込み要素として収録されたランダムダンジョンのようだが、後者に至ってはやり込みというには質素過ぎで、ダンジョン構成も単調なので全然面白くない。前者も、古き良きをコンセプトとする作品で入れる必要があったのか、疑問だらけの要素になってしまっている。古き良きをコンセプトとするのなら、これら別に入れる必要は無かったように思うのだが、何故に入れたのだろうか。しかも、これらの所為でセーブが1つに削減されたとなれば非常に腹立たしい限りである。友達と進行度合いで競い合ったりとか、その遊びも古き良きRPGの魅力の一つだったのに、削る事に何の意味が?全く持って理解に苦しむ。
その他、難易度のバランス設定もバラツキが酷い。特に4人が揃う後半以降で入手経験値が爆発的に増え、レベル上げが容易になる仕様は、パーティ育成の楽しさを完全に損ねている。
メニューインターフェースも意図的とは言え、やはり使い勝手は宜しくない。一人当たりのアイテム所持最大数が15個まで、ポーションと言った消費系アイテムですら個別扱いにされるなど、納得できない部分が多い。他のキャラクターのメニューに移動する際、Xボタンを押してカーソルで選び、決定するという過程も煩わしい限りだ。アイテムがアイコンで表示されるなど、見栄えは良いのだが、もう少し便利にしても良かったのではないかと思う部分が多いのが悔やまれる。せめて、消費系アイテムの個別扱いは廃止して欲しかった。ただ、エンカウント率(敵との遭遇率)は大変適切なレベルで設定されているほか、操作性も概ね良好にまとめられているのはせめてもの救いだ。

絵本の世界のようなグラフィック、レトロチックな音楽も雰囲気抜群で、完成度が高い。特に音楽は演出周りでの工夫も素晴らしく、ボス戦であと少しで止め、という頃になると曲が変化したり、ピンチになった際も危機感を煽る曲になると言ったインタラクティブな試みは必見だ。曲自体の完成度も高く、中でもメインテーマは要チェックである。
他にボリュームもエンディングまでは大体15〜20時間程度と適切なほか、マップ構成も意地悪な謎解きが少なめで、サクサク進めていける作りであるのも好感触。個性豊かなデザインでまとめられた街ごとのマップ構成も非常に魅力的だ。
色々良い所はあるだけに、古き良きのコンセプトに似合わぬシステムの作り、自由度の低過ぎるストーリー構成、そしてセーブファイル総数を始めとする利便性の悪さなどがあまりにも勿体無い。コンセプト自体は悪くないのに、新しい事に対する欲が炸裂し、勘違いな古き良きRPGとしてまとめられてしまっているのは何とももどかしい限りだ。
レトロスタイルなのに、新作色強めの中途半端な具合にまとまった今作。雰囲気は素晴らしく、昔のFFっぽさがあるので、当時のプレイヤーなら楽しめる部分もあるが、強烈にお薦め!…とは到底言い難い作品である。正伝とは違ったFFがやりたいプレイヤーなら、プレイしてみる価値はある。但し、不便な所が多いので、そこは念頭においておきましょう。
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