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  4. ファイナルファンタジーIII
≫ファイナルファンタジーIII
■発売元 スクウェア・エニックス
■開発元 マトリックス
■ジャンル ロールプレイング
■CERO A(全年齢対象) ≪※但し一部、殺傷描写あり≫
■定価 5980円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜8人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 56ページ
■推定クリア時間 20〜25時間(エンディング目的)、40〜50時間(完全攻略目的)
そのクルガン族の男は静かに語った。
この大地震でさえも単なる予兆に過ぎぬ、と。
世界の光の源であるクリスタルを地中深く引きずり込み、魔物を生み出した大いなる震えさえもこれから起きることに比べれば些細なことに過ぎない。
それはとてつもなく大きく、深く、暗く、そして悲しい。
だが希望は失われてはいない。
4つの魂が光に啓示を受けるだろう。

そこから全ては始まる。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆冒険する手応えを尊重した、イベントクリア型の基本ゲームシステム
◆シンプルながら、ジョブの装備によって展開が大きく左右する戦略性が異彩を放つ、奥深さ満点の戦闘システム
◆戦闘の展開のみならず戦略まで大きく変化させる、意欲的なジョブチェンジシステム
◆戦士にモンク、竜騎士など、バラエティーに富んだ全20種類以上ものジョブ
◆どれを選んでも展開が不利にならない、均等さが見事なジョブバランス
◆力勝負でなく、戦略を重要視した、シビアで適切なゲームバランス
◆オリジナルの雰囲気と冒険をする手応えを尊重した、淡白でスッキリとしたストーリー
◆オリジナルの雰囲気を損ねない、最低限の性格付けが秀逸な四人の主人公キャラ
◆謎解き要素が無く、探索だけに特化したストレートでバランスの良いダンジョン構成
◆移動スピードの調整など、細かな配慮が凝らされた、優れた操作性
◆ニンテンドーDSとは思えぬほど美麗で鮮明な3Dグラフィック
◆同じく、ニンテンドーDSとは思えぬ高クオリティのオープニングムービー
◆ファンタジー色溢れる荘厳な旋律が印象的な、良質の音楽(名曲満載)
◆隠しダンジョン、ジョブの熟練度など、地味ながらも充実したやり込み要素
◆便利な中断セーブ機能(オリジナルとは違い、ラストダンジョンも中断が可能に!)

--- Bad Point ---
◆使えない人に対する差別に等しい『モグネット』経由で入手できるおまけ要素
◆グラフィック等の無茶の影響か、地味に遅めな処理速度(マップの切り替わりなど)
◆感触は悪くないが、必然性が薄い感も否めないタッチペン操作
◆硬いカーソル操作(早送りするのに、かなりもたつく)
◆やたらと死者の出るストーリー展開(ちょっとやり過ぎでは…)
◆中断ができるようになったとはいえ、やはり長過ぎる感は否めないラストダンジョン(最低でも5〜6時間はかかる…)
◆フィールドマップだけと、限られたセーブポイント(ダンジョン内にあっても…)
◆攻撃力など、無駄に高く設定し過ぎな感の否めないボス『ガルーダ』
▼Review ≪Last Update : 8/23/2008≫
16年の時を経て、悠久の風が蘇る。

あの悪夢のダンジョンも蘇る。


1990年にファミコンで発売され、後にワンダースワンカラーでのリメイクが発表されながらも開発中止となり、いつしか幻の作品とまで謳われるようになってしまった、スクウェア・エニックスの看板タイトル『ファイナルファンタジー』シリーズの三作目、『ファイナルファンタジーIII』待望のリメイク作。ファミコン版オリジナルスタッフを中心とし、実開発をPS2の『ドラゴンクエストV』のリメイク版などを手掛けたソフトハウス『マトリックス』が担当。

見た目が新しくなっても、中身は昔のまま。
今と昔の”らしさ”が絶妙なバランスで織り交ざった、名作RPGだ。

ゲーム内容は、イベントクリア型のロールプレイングゲーム。主人公とその仲間達を操作し、世界各地で起こる様々なイベントを乗り越え、時には敵と戦ったりしながらストーリーを進めていく、シリーズお馴染みの内容だ。
ファミコンで発売された作品のリメイクという事で、ゲームシステムは原作と同じものをそのまま踏襲している。ただ幾つか、今作にて新たに変更が加えられた点もある。
代表的な変更点としては、以下のものが挙げられる。

◆変更点(1):主人公を始めとする4人のキャラクター達の性格付け
原作のファミコン版では、基本的に主人公とその仲間達には明確な名前や性格と言ったものが設定されてなく、いわばプレイヤーの分身みたいな存在だった。
それに対し、今作ではこの四人のキャラに名前と性格が備え付けられた。更にそれに伴い、ゲーム開始後の展開も大幅に変更され、最初から4人が揃ってスタートするのではなく、1人1人のエピソードを順に追いながらストーリーが進行していく仕組みとなった。原作経験者には、いきなり4人から始まらない展開に違和感を覚えるかもしれないが、これによって各キャラの特徴や性格が把握し易くなったのは大きな進歩。また、1人1人のエピソードを順に追うスタイルにより、自然なチュートリアルとしての存在意義を確立している。
これのおかげもあり、初体験者でも抵抗無く、本編に溶け込んでいけるようになっている。
まさに、時代を表すかのような、親切な変更点…と言ったところだ。
更に各キャラの性格に関しても、そこまで突っ込んだものには仕上げられてなく、あくまでも最低限のもの…としての扱いがされているのも上手い。今風にしながらも、原作ファンへの配慮が上手く成されている。

◆変更点(2):戦闘における敵の最大表示数
原作では2Dグラフィックを起用していた為、最大で4〜5体までの敵が戦闘中において、表示されたが今作ではグラフィック全般が3Dポリゴンに描き直されたのもあってなのか、最大で3体までと数が減ってしまっている。
それに伴い、敵ごとに得られる経験値の量や強さなどのバランスも調整されており、戦闘の展開が原作とはややかけ離れたものになっている。
しかし、バランス周りが変更されたとは言え、従来のシビアさに変わりは無い。

◆変更点(3):中断セーブ機能の追加
ニンテンドーDSという携帯ゲーム機の特性を考慮し、新たにいつでもどんな場面でも行える中断セーブ機能が搭載された。この中断セーブはゲーム中の戦闘やイベントを除く、ほぼ全ての場面にてでき、当然ながら、あの地獄のラストダンジョンでも行えるようになっている。原作で苦汁を飲んだファンには、まさに待望の機能と言えるだろう。しかし、中断セーブ…一度、ロードするとそのデータは消されるタイプのものなのがミソ。ずっと記録される通常セーブとは違うので、ゲームバランスを根本的に変えるまでには至ってない。その辺は結構、こだわっている。

この他にも、今作ならではのシステムである『ジョブチェンジ』の能力バランスが修正、全てのジョブが最後まで使えるようになったり、移動スピードの調整オプションの追加、『モグネット』と呼ばれるニンテンドーWi-Fiコネクションを使った要素など、新たに変更が加えられた(追加された)ところは多い。
グラフィックに音楽も、DSに移行したという事もあり、前者は3Dポリゴンを主体としたグラフィックに描き直し、後者は全曲アレンジ(アレンジは植松伸夫氏自らが担当)と言った感じに全面的にリニューアル。
演出に関しても、スクエニお得意のCGムービーを取り入れると言ったこだわりが炸裂しており、もはや『ファイナルファンタジーIII』という名の新作…別物感漂いまくり。
16年ぶりの復活故にか、総じて偉く気合の入った仕上がりとなっているのだ。

しかし、それでいて驚かされるのが、ゲーム自体の手応えはファミコンのゲームそのものだと言うこと。グラフィックを3Dとしながらも、そして一部のバランスやストーリーを変更しながらも、根本的な『ファイナルファンタジーIII』としてのらしさは何一つ、失われていないのだ。
それを象徴するのが、シビアで適切なゲームバランス、淡白なストーリーの二つ。
前者に関しては流石、16年も前のゲームという事もあってか、今のRPGとは比べ物にならないシビアさ。フィールド上に出てくる雑魚敵に致命傷を負ってピンチに陥ってしまったり、ボスは単にレベルを上げれば良いのではなく、きちんとした戦略を元にして戦わないと高いレベルであってもボロ負けするなどと、生半可な気持ちで挑むと痛い目に遭うバランスとなっている。更に例えば武器を買うのに当たり、沢山の資金が必要とされたり、死亡してしまった仲間を蘇らせるアイテムの入手が限られているなど、戦闘以外の場面においても、シビアさを徹底的に追求。如何にも、難易度の高いものが多く世に出されたファミコン時代に誕生したゲームらしい、古めかしさが一貫されているのである。
後者のストーリーも、これまた16年前のゲームというだけに、とても淡白。主人公達に新たに性格が加えられたとは言え、イベントでの会話は短めで、迷ったり落ち込んだりすることもない。ただ、ひたすら前へ前へと突き進む。何ともあっさりとした作りになっているのだ。こういうRPGモノのリメイクは、新たに台詞が加えられて深みが増していたりとかするものであるが、本作ではそんな流行とは真逆の路線を選択。先のバランスもそうだが、こちらもファミコンのゲームとしてのらしさを守る為の姿勢が強調されているのだ。
見た目を派手に変えて、中身をそのままにするだなんて味気ないと思うのも、これでは致し方ない。けど、裏を返せば、それほどファミコン版のバランスとストーリーは完成されていたからそのままにしたという事でもある。
実際、全く変えていないとはいうものの、ゲームとしての面白さに色褪せた感じは全く無い。原作未経験者の立場として見ても、十分に面白い。少しの判断ミスが死へと繋がる緊張感、自らの力で道を開いて世界を渡っていく冒険色の強さは、原作から16年が経過しても変わらぬ魅力を秘めている。そしてそれらは同時に、如何に今のRPGがストーリーを重視し過ぎて肝心の冒険色の強さを疎かにしているかをも痛感させられる。
所詮、RPGのストーリーなんてのは結果論、遊びと冒険する雰囲気こそが大事で、それらがしっかりとしていれば腐っても鯛、時代を変えても通用するものになるんだ、と。今作が見た目の変更には力を入れながらも、本質的なところには一切の手を入れなかった(一切…とは正直、言い難いかもしれないけど)のも、そんな自信があったからこそなのだろう。そういう意味では本作は、凄く適切なリメイクをしているな、と痛感させられる。
同時に、RPGとしての大事な要素が如何にしっかりしているのか、という事も。そんな感じに今作、見た目が大きく変わりながらも、RPG本来の面白さとスリルは何一つ変更されておらず。腐っても鯛、十数年の時を経ても変わらぬ面白さにこだわった、リメイクとしても単品のRPGとしても、大変優れた出来を誇っているのである。

操作性に関しても、先に少し挙げたが移動スピードを調整するオプションが備わっているのもあり、非常に快適。おまけで導入されたタッチペン操作も、タッチ範囲の狭さが難とはいえ、そこそこの触り心地の良さがあって好印象だ。
今作ならではの『ジョブチェンジ』も戦闘の戦略性に上手い具合にアクセントを与えていて面白い。用意されているジョブも全部で20種類以上と豊富。更にリメイクに当たってのバランス調整もあってか、プレイヤーがどのジョブを使っても、最後の最後まで楽しめるようになっているのは素直に凄い!このおかげもあって、2周目以降のプレイにも大きな変化を加える事ができて、凄くやり込み甲斐がある。
また、ジョブは『熟練度』を強化することでより、その威力を高めることもできるようになっており、その強化もまたやり甲斐がある。何よりもこの『熟練度』もあり、今作ではキャラの『レベル上げ』に全く作業感が無い、むしろ遊んでいる手応えが強めなのもお見事だ。こうも作業と思える事が楽しいと感じられるRPGも、珍し過ぎる。
その他、ゲーム中に訪れることになるダンジョンのマップも、長すぎず短すぎずの丁度良いバランスでまとめられていてグッド。だが、ラストダンジョンに関しては論外で、無駄に長い上に途中セーブ不可能(中断はOK)、最深部のラスボスに負けるとまた1階からやり直しになるなど、意地悪の度が過ぎてる。原作の伝統でもあり、本作の語り草でもあるので、そのアイディア自体は面白いのだが、だとしても今回…せめて一箇所でも途中セーブを入れるとか、そういう処置を施して欲しかったところだ。いくら忠実とは言え、これは…。

Wi-Fiコネクションを経由する『モグネット』と使わねば手に入らないジョブ、隠し要素があるのも問題。これは幾ら何でも差別に近い。環境上、できない人とかもいるのだから、せめてWi-Fi以外でも入手手段をセットするとかの処置を行って欲しかった。流石にこれは褒められたものじゃない。そもそも、通信経由でないと手に入らない要素が如何に嫌われるものかは、他のゲームの例で実証済みでしょう?他にも、マップ内の切り替わりが少し遅い(地味なロードがある)、カーソルの感触が硬いと言ったところも、できれば修正して欲しかった限り。
けど、純粋にFF3のリメイク作品として、一つのRPGとしての完成度は折り紙付き。ファミコンのゲームとしてのらしさを残したゲームバランスとストーリー、そしてジョブチェンジによる奥深いゲーム性、DSの限界に挑戦したグラフィック、植松伸夫氏による名曲揃いの音楽などと、色褪せぬ面白さと魅力を一同に兼ね備えたこの『ファイナルファンタジーIII』。
シリーズファンは勿論のこと、ニンテンドーDSを持っているユーザーなら一度でも体験すべき価値のある名作だ。これは文句無しにお薦め。現代風にアレンジされた、昔懐かしいRPGの面白さと怖さを是非、その手で体験してみて欲しい。
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