Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo DS>
  4. ハココロ
≫ハココロ
■発売元 アムジー
■ジャンル アクションパズル
■CERO A(全年齢対象)
■定価 500DSiポイント
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■消費ブロック数 59ブロック
■セーブデータ数 1つ(※1ブロック使用)
■推定クリア時間 3〜4時間(エンディング目的)、15〜20時間(完全攻略目的)
魔法学園の卒業試験と用意された、魔力の箱を転がして敵を倒す課題こと「ハココロ」。
学園の生徒で魔法使いの卵「アストリーナ」は、自身の卒業も兼ねたこの試験に挑む!
果たして、その結果やいかに!?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆サイコロのような立方体「ハコ」を転がし、魔法を発動させて敵を撃退していく、知る人ぞ知るアクションパズル『クオンパ』のようでそうではない独自性を持ったゲームルール
◆十字キー以外はゲーム中に全く使用しない、単純明快な操作系(レスポンスも良好)
◆プレイヤーがやるべきことを直に理解できるデザインにまとめられた自機こと「ハコ」
◆派手なエフェクトと個性に富んだ効果で楽しませてくれる全三種類の魔法技
◆自分で設置する位置を決められる自由度の高さ、『クオンパ』に負けず劣らずの一度に爆発させるリスクとリターンの概念に満ちた爽快感を堪能できる補助アイテム兼ギミックの「魔法陣」
◆ギリギリの所まで最高得点を叩き出す仕掛けを作り出す試行錯誤と溜めた物を一気に突き放す快感に秀でた、やり込み甲斐と中毒性抜群のスコアアタック(スコアに応じた評価システムも完備)
◆パズルのみならずボス戦もあるなど、起伏に富んだステージ構成兼バリエーション
◆アクションゲーム臭バリバリな展開と演出が光るボス戦ステージ
◆プレイヤーに自然とゲームルールを理解させる導線を敷いた本編こと「ノーマルモード」のレベルデザイン(チュートリアルであることを感じさせないほど綺麗にまとまっている)
◆裏ステージ、最高評価獲得を目指したやり込み要素と、低価格のゲームとは思えないほど充実したボリューム
◆クリアするだけなら簡単、突き詰めると詰将棋な二面性を持った珠玉のゲームバランス
◆高いフレームレートを出す為か、意図的な低品質でまとめられた特徴的なグラフィック
◆曲数は少なめながら、アップテンポなノリの良い楽曲が揃った音楽
◆おまけ程度ながら、先生キャラクター達が圧倒的な存在感を放つストーリー
◆派手にするべきところはしっかりその通りにする、分かった作り込みが成された演出周り

--- Bad Point ---
◆やり込みの楽しい内容ながら、何故か非搭載のステージリトライ機能
◆ややデザイン的に安っぽさが滲み出ている感のあるメニューインターフェース
◆演出周りは頑張ってるが、やや展開的に単調さも滲み出ているボス戦
◆人によっては気に障るかもしれないアストリーナの棒読みボイス(味はあるのだが)
◆拭い切れない『クオンパ』っぽさ(けど、ゲーム自体はちゃんと別物になってる)
▼Review ≪Last Update : 6/24/2018≫
なんでもいらっしゃいます、魔法学園。

熱血漫画な人でも魔法使いになれるようです。



家庭用ゲーム、アーケードゲームの開発協力を主要業務としてきた、大阪のゲーム開発会社「アムジー」初の自社オリジナル企画にしてパブリッシング作品。同社の新作タイトル制作に取り組む「企画室」の製品化第一号でもある。

どこかのマイナー作品で見覚えのあるゲームルール。
しかしてその正体は、アクション性の高さを売りとしたお手軽アクションパズルゲームだ。

内容は一画面固定の見下ろし視点で繰り広げられるアクションパズルゲーム。魔法学園の生徒「アストリーナ」の卒業をかけて、その試験課題である「ハココロ」と呼ばれるパズルに挑戦していくというものだ。
「ハココロ」はその名の通りに「ハコ」と名付けられた立方体を動かし、フィールド上を動き回る敵の全滅を目指すというのが最終目標となる。ハコを動かすに当たっては十字キーを使用。上下左右いずれかの方向を押すことで、フィールド上を一マス単位で転がる。立方体という事で、転がる方向を向いている面は動かせばフィールド下(床)に回り、転がさない方向を向いている面は固定された状態となる。サイコロのような動きをすると言えば、想像し易いかもしれない。或いはNHK Eテレの教養番組『ピタゴラスイッチ』の「ぼてじん」。さすがに動かすと同時に「ぼてぼてぼて」と声を発しはしないが(当たり前だ)、動き自体は全く一緒。対象がサイコロ以上に絞り込まれる例えだが、そんな感じとなっている。
また、ハコの一面には「クチ」と呼ばれる穴がある。クチには「魔法玉」と呼ばれるフィールド上に現れるアイテムを入れることができ、対象の置かれたマスとクチの面がピッタリ重なるようにハコを動かせば回収することができる。回収すれば魔法が自動的に発動。赤い魔法玉であれば十字方向に広がる炎の魔法「ファイヤーウォール」が、青い魔法玉であれば斜め方向に氷を降らす魔法「アイスストーン」と言った具合に、「魔法玉」の色に対応した魔法を放つことができる。そして、魔法が敵に命中すれば対象を倒すことができる。このようにハコを転がして「魔法玉」を回収し、魔法を発動して敵を攻撃するというのが基本のプレイスタイル。敵を倒す流れはアクションゲームであるが、その過程において立方体の面を「魔法玉」と重ねることが要求され、どの面が次に床に来るかを推測しながら転がすパズルゲーム的な試行錯誤、推測が求められるという、双方の特色を絡め合わせたゲームルールになっている。
そして、それなりにゲームに詳しいプレイヤーであれば、このルールに強烈な既視感を覚えたはずである。見下ろし視点の一画面固定フィールドで面を意識しながら立方体を転がし、目標を成し遂げる。それってスーパーファミコン、プレイステーションでT&Eソフトより発売され、一時期はNINTENDO64での発売も予定されていたアクションパズルゲームの『クオンパ』ではないか、と。ぶっちゃけるとその通りだ。本作のルール周りの骨組みは『クオンパ』そのものである。歴史を辿れば、『クオンパ』もゲームボーイで発売された『ころダイス』と呼ばれるサイコロを転がしながら遊ぶアクションパズルゲームと仕組みは一緒なのだが、そこは解説すると長くなるので割愛。とりあえず、クオンパのルールについては詳しくは当サイトに掲載されたスーパーファミコン版のレビューを参照頂きたい。本作のルールから操作系が”そのもの”であることを理解できるはずだ。それに人によっては、こんな卑しい印象を抱くかもしれない。本作はそんなマイナー過ぎる、世間でも知られてないゲームからシステム周りを拝借したものである、と。実際、システム周りから操作系に至るまで、ソックリどころかそのものなので、そう思ってしまうのも無理はない。ぶっちゃけ、筆者も初めてプレイした時はそう思った。完全にクオンパではないかこれ、と。マイナーどころか拝借でもしたのか……とも。卑しい奴でごめんなさい。
しかし、あくまでも”そのもの”なのは骨組みだけだ。全体としては独自の個性を持ち合わせたものに完成されている。その象徴がアクション性の高さ。魔法を放って敵を倒すのがまさにそれで、パズルゲームでありながらもアクションゲームを遊んでいるかのようなプレイ感が描かれている。『クオンパ』も本作の敵に当たる存在で「ライフパネル」があったが、そちらと違って本作の敵はれっきとしたキャラクター。その場に留まらず動くし、ハコが接触すればダメージを受けてしまう。ライフ制なので、一回触れただけでやられるほどヤワではないが、全部のライフが尽きればどうなるかは語るまでもなく。そのような敵を避けながらハコを転がしていくのは本作ならでは。魔法の効果が及ぶ範囲を考えるのもまた然りで、画面構成と視点の共通点も相まって、ハドソンのボンバーマンシリーズを髣髴とさせる手触り感を描いている。
更に本編も終始、敵の全滅を繰り返すだけの単調な構成になっていない。本作は「試験」と称されたワールドごとに用意された5つの課題(ステージ)を順に攻略していくのだが、最後の5つ目は特殊な内容になっている。その内容とはボス戦!なんと本作にはボスと戦うアクションゲーム全開なステージがワールドの最後を飾るようになっているのだ。勿論、真っ当な一騎打ち。相手の攻撃を避けつつ、「魔法玉」で魔法を発動させてダメージを与えていくアクション要素特濃の展開が繰り広げられる。その光景たるや、パズルどこ行った。そんな趣向を変えたステージまで用意されていて、ジャンルとは裏腹の起伏ある展開を楽しめるようになっている。アクションゲーム過ぎる遊びまで楽しめてしまうのだ。
細かいシステム周りにも本作独自のものが多数。一つに「レベルアップ」。本作では画面上部に「レベルゲージ」なるものが表示されており、魔法を発動させる度にゲージが上昇。最大に達するとレベルが上がり、魔法の効果範囲が拡大するようになっている。レベルは三段階まで上昇し、最大になればステージ全体をほぼ覆う攻撃を展開できるように。同時に敵への攻撃も複数体巻き込めるようにもなる。これまた、先のボンバーマンを髣髴とさせる要素だが、このおかげで一つずつ確実に敵を仕留めるか、魔法を最大まで上げて一網打尽にするかと言った選択の余地が作られており、プレイヤーの個性に見合った攻略スタイルを確立できるようになっている。ある意味、性格が現れ易いシステムとも言える。
二つに「魔法陣」。魔法を発動するとハコのクチに「魔法陣」が付き、この状態でハコのクチ先を床につけると、そのマス目に魔法陣が設置される。そして、この魔法陣に魔法が命中するとその場で爆発が発生し、周囲を巻き込む攻撃を行うことができる。更に複数の魔法陣を設置すれば誘爆させることも可能。併せてスコアボーナスを得ることもできる。これも実のところ『クオンパ』の「サンダーパネル」なのだが、本作はプレイヤーが自由に設置可能な仕様になっていて、ある程度ながらプレイヤーの思い通りな設置を爆発パターンを構築できるようになっている。更に関連して三つ目に「キック」。先の通り、「魔法玉」はクチに入れると魔法を発動させられるのだが、逆にクチ以外の部分が接触すると魔法玉は弾き飛ぶようになっている。要はズレてしまうのだが、これを利用して魔法陣に接触しない位置に玉を移動させ、そこから魔法を発動させて魔法陣を手に入れて、更なる誘爆を作る道筋を立てるという流れに持っていくことができる。地味ではあるのだが、ハイスコアと広範囲に及ぶ誘爆を作るに当たっては重要なテクニック。プレイヤー自身の創意工夫と欲求に応えてくれる、なかなかに侮り難い深みを持った要素になっている。
この他にも「魔法玉」とは別の「アイテム」も複数存在し、獲得することでライフを回復したり、制限時間を延長したりすることができる。中には一定時間、敵の動きを止める「スペシャルアタック」なるものも用意されていて、発動のタイミングによってはより高いスコアを叩き出すきっかけにもなる上、窮地からの打開にも転用することも。使った際にも特殊なカットインが挿入される演出も盛り込まれているなど、ゲーム全体の派手さを引き立てる工夫も凝らされている。更にゲームモードも本編に当たる「ノーマルモード」だけに留まらず、持久戦の「とことんモード」、ひたすらボスと戦う「ボス戦モード」と言った特殊な種類も収録されていて、多彩な遊び方ができるようになっているのも大きな見所。
このように骨組みこそマイナーな作品とソックリではあるのだが、差別化を図る工夫は徹底して行われていて、似て非なるプレイ感と面白さを描いている。件のマイナーな作品事『クオンパ』がパズル志向の作品であれば、本作はアクション志向と言った趣。幾つかの部分で共通する魅力を持ちながらも、本作だからこその味も持ち合わせた作品になっている。

そんな本作の魅力は、アクション性重視のゲームデザインと作り込まれたステージ構成。先の通り、システムの骨子はクオンパだが、見た瞬間、ゲームルールとプレイヤーのすべきことが理解できる設計が成されており、優れた取っつき易さを誇る。まさにキューブ(ハコ)を転がす気持ちよさと爽快感に特化したクオンパとも言える仕上がりになっている。
特に秀逸なのはプレイヤーの分身となる「ハコ」のビジュアルとその特色。クチ先を魔法玉に重ねて魔法が発動させる仕組みというのもあって、一ヶ所の面を意識するだけで遊べてしまうハードルの低さは本作ならではだ。クオンパだとキューブの面と重ねるパネルの法則を考えながら動かすことが求められた為、結構頭を使う(脳が刺激される)ところがあった。パズル志向の作品ならではのプレイ感だ。対し本作はクチ先を重ねることだけを意識するだけでいいので、直感的にハコを動かしながらステージを進めていける。全ての面を意識せず思うがままに動かせるので、頭にかかる負担も軽いし、何よりもプレイヤーがすべき事が分かり易い。その代償としてパズル性は薄れてしまっているが、そこを濃い目にしたりすればクオンパと変わらないし、単純に模倣となってしまう。そんな同じ道を歩むようなことはせず、「ハコを転がす気持ちよさ」という独自のものを突き詰め、このデザインとプレイ感を構築。結果として、そのコンセプト通りの楽しさを描き切っているところには、似たようなゲームであっても違うものにする、このゲームでしか味わえないものをプレイヤーに感じ取ってもらうという、制作スタッフの差別化への確固たる姿勢が現れていて見事だ。そして、バッチリ全く違う手触り感を持ったゲームにまとめ上げてしまっているのだから感服するしかない。
同じことは「敵を全滅させる」という基本ルールによって、アクションゲームを遊んでいるかのような手応えが詰まった内容にまとめられたステージ構成に対しても言える。基本的にやることはそれに終始するのだが、どのステージも全体の形状と敵の出現パターンによって独自の戦略が求められる内容にまとめているので、同じ事の繰り返しでありながらも、全く飽きることもない新鮮な気持ちで進めていけるようになっている。チュートリアルも兼ねたレベルデザインの巧みさも特筆に値する。本作のメインモードこと「ノーマルモード」の序盤は、一つずつ要素を解禁しながらプレイヤーに理解してもらうというチュートリアルの側面を持たせた構成になっているのだが、この各要素の解禁タイミングが絶妙で、流れに身を任せて進めていけば自然と本作全体を構成する要素、システム、ルールを理解できるように作られている。純粋なパズルゲームであれば、専用のルール解説モードを設け、本編は本番みたいな内容でまとめるのが常套手段だが、本作はストーリーの存在を活用する形でこのような構成を採用。それによって、押しつけがましさも不親切さも感じさせず、楽しみながら一つ一つを覚えてゲームに没頭できる作りにまとめられているのである。元々のゲームルールの取っつき易さもさることながら、それで説明はしなくて良しとせず、かと言って単独のモードにするのも良くないと考え、ストーリーが存在する内容を利用してこうした形にまとめたのは巧の一言。チュートリアル独自の堅苦しさを感じることなく、純粋にゲームを楽しめるように設計されているところにも、遊ぶことに力点を置いたスタッフの姿勢が現れていて印象的だ。俺達は懇切丁寧なゲームではなく、直に遊べるゲームが好きだったから、こんな風にしたんだという熱意も滲ませている。
難易度も適切。ボス戦では回避行動が重視されるなど、少し違った戦術が要求されるが、基本的にはその場その場の対応を取っていけば苦労なくクリアできるバランス。多少、特徴的なプレイをプレイヤーに要求しつつも、パズル的な試行錯誤は最小限に留めた、本作の特色に応じた調整が図られている。逆にパズル要素、特に魔法陣による誘爆を考えながらプレイすると途端に手強さアップ。如何に大量の魔法陣をフィールド上に配置し、そこに魔法を当てないようにして魔法玉を会得していくかという一手先を見据えた行動が要求されてくる。そして、そう言ったプレイを心掛ければ心掛けるほどに大きな見返りがハイスコアという形でプレイヤーに帰ってくるだけでなく、ド派手な誘爆によって高い爽快感を得られる。この辺のリスクとリターンの概念が活きた面白さは『クオンパ』譲りで、あの爽快感に酔いしれたプレイヤーにはたまらないものになっている。システム的に同じ内容だから、そのゲームで特に光っていた要素を残す辺り、凄く分かっている感じがあって好感触だ。また、そっくりそのままという訳では無く、プレイヤー側が誘爆の流れを作れる点で差別化もできていて、安易なパロディで終わってないのもお見事。地味ながら、誘爆の演出がスピーディで、ゲームが長く止まったりしないのも元より優れていると言えるかも。先のシステム周りもだが、同じだけど同じものにはしまいとする仕上がりには本当、このシステムの祖に対する敬意が現れて見事。そして、クオンパを経験した身にはその楽しさがそのまま残されているだけでなく、携帯機でいつでもどこでもできるようになったという点でも有り難い限りだ。
マイナーな作品のシステムを拝借していると思しきところがあるのは、正直、モヤッとするものがある。だが、ちゃんと別作品にまとまっているのは素直にお見事。クオンパを知る人間には穏やかになれない見た目だが、ちゃんと『ハココロ』としての面白さもあり、しっかり遊べるゲームとしても完成されている。アクションゲームとして生まれ変わったクオンパと豪語しても違和感なし。キューブを転がすパズルゲームの別境地を切り開いた作品になっているのだ。

細かいところでも、操作性がすこぶる良い。ハコの移動速度が早く、気持ちの良い効果音が鳴り響くのもあって、転がすだけでも楽しい手触り感を実現している。先述の通り、ゲームプレイ時に用いるのは十字キーだけで、ABボタンなどはメニュー操作にしか使われないので、片手だけで遊べるのも大きな魅力だ。この辺はクオンパと大差ないが。
ボリュームも侮り難い密度。総数こそ100には及ばないものの、それでも40以上と結構な数が用意されている。またクリア後の裏ステージ、称号のランクアップ、そしてステージクリア時の最終スコアに応じて獲得できるメダルなどのやり込み要素も充実。いずれも極めるとなれば相当な時間を要するやり応えだ。特にメダル集め、裏ステージのやり応えは抜群で、前者は本作のスコアアタックが如何に侮り難い難易度であるのかを際立たせている。メダルの最高ランクもゴールドではなく、それ以上のプラチナであったりなど、限界を極めて見せろと言わんばかりの挑戦的な仕様にされているのもニクい。しかも、500円の低価格タイトルでこの密度だ。コストパフォーマンスが如何に高いかは想像に難くないだろう。本当にそこまで遊ばせてくれるのかと、半信半疑に感じるかもしれないが、実際にやってみればその凄味を思い知ること間違いなし。低価格のゲームだと舐めてかかることの恐ろしさというものも同時に痛感させられるかもしれない。
その他、グラフィックは平均的な出来。ハコや敵キャラクター達は3DCGで描かれているが、モデリングは簡素で、そこまで凝ってはいない。ただ、ゲーム全体の印象を安っぽくするほどの存在感の強さはなく、何よりゲーム自体の熱中度が高いのもあって、それほど気になるものでもない。それどころか、高いフレームレート(60fps)を実現する意狙いで簡素にしていると思えてしまうような意図を感じさせられる仕上がりで、密かにこだわりの込められた仕上がりになっている。
音楽もアクション性の高さを意識してか、全体的にアップテンポなノリの良い楽曲が揃っている。数は少ないが、いずれも印象に残る曲ばかり。特に妙に哀愁を漂わせたボス戦の曲は要チェックだ。

演出周りもエフェクトからスペシャルアタック発動時のカットインなど、意外と派手なものに仕上がっている。何気に掛け声ボイスも実装されていて、本編を大いに盛り上げてくれる……と思いきや、ボイス担当は制作スタッフなのか、棒読み全開であり、人によっては気に障るものになっている。ただ、あくまでも掛け声だけなので、そこまで気分を害するほどのものにはなっていない。むしろ、作中のユルさとノリの良さを引き立てる要素として機能している。何かと悪いものとして評されがちな棒読みボイスだが、本作に関してはそれが良い方向に活かされている例と言えるかもしれない。ただ、感じ方には個人差があるので、念のため御注意を。また、ストーリーも各試験の担当とされた先生キャラクター達が非常に濃い。中でも試験5に登場する先生は色んな意味で必見。本作の公式サイトでもその容姿をご覧頂けるのだが、人によってはこう思うだろう。お前、どこの島本和彦作品からやってきたんだ!……と。
これ以外にも魅力的なフィーチャーが取り揃っている本作。メニューデザインの安っぽさ、ステージリトライ機能の不備によるスコアアタックのやり込みの不便さなど、欠点もない訳ではないが、いずれも些細なレベルに収まっていて、遊んでいて気になるほどの酷さはない。かの知る人ぞ知る傑作『クオンパ』とゲームルールが似通っているという事で、経験者なら強い既視感が、未プレイのプレイヤーならば若干のうさん臭さと模倣臭を感じるかもしれないが、その内容はパズル以上にアクションを押し出した作りで、キッチリ差別化された作品に仕上がっている。数あるDSiウェアのゲームの中でも三本の指に入る傑作。マイナー故にプレイ人口は限られるだろうが、スーパーファミコン、プレイステーションの『クオンパ』を楽しんだ方ならば要プレイの一本だ。アクション重視の爽快な立方体パズルをご堪能あれ。非常にお薦めの一本だ。
≫トップに戻る≪