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≫悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印
■発売元 KONAMI
■ジャンル アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※出血、暴力描写あり
■定価 5000円(税別)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 35ページ
■推定クリア時間 6〜8時間(エンディング目的)、40〜60時間(完全攻略目的)
中世の昔より幾度無く蘇り、人々を恐怖に陥れてきた魔王ドラキュラ。
そしてそのドラキュラが蘇る度、聖なるムチ『ヴァンパイアキラー』を振るい、倒し続けてきたベルモンド一族。そんなベルモンド一族が19世紀に入ると同時に突如、姿を消した。時の権力者達はドラキュラへの対抗手段を求め、多くの組織や研究機関が乱立。だが、そのどれもが満足な成果を残すには至らず、解体されていった。

『グリフ』なる秘術を操り、魔物を討伐する特務機関『エクレシア』もそんな乱立した組織の1つだった。そしてその創始者であるバーロウは、遂にドラキュラを討伐する為の秘術を編み出すに至る。しかし、それは悲劇の始まりでもあった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆探索型とステージクリア型の良い所を絡め合わせた、独特のゲームシステム
◆旧ドラキュラシリーズの硬派さを取り戻したキャラクターデザインと世界観
◆ドラキュラシリーズならではの悲愴感が強調された、魅力的なシナリオ
◆魔法で生み出した武器で戦う斬新な設定、それによる使用制限が程好い緊張感を醸し出している新要素『グリフ』
◆グリフの組み合わせによる強力な技など、多彩で美しいプレイヤーアクションの数々
◆ステージクリアの要素を取り入れた事で、探索の区切りが分かり易くなったマップ構成
◆沼に海底、教会など前作以上に増強されたマップロケーション
◆動かす楽しさとレスポンスの良さに秀でた操作性
◆旧ドラキュラシリーズを髣髴とさせるシビアさに満ちたゲームバランス
◆クリアまでは10時間前後、やり込むとそれ以上の時間を費やす探索型伝統の適度な総計ボリューム
◆全体マップ選択画面と拠点の独立で、快適に進行可能となったやり込み要素『クエスト』
◆芸術的なドット絵、滑らかなアニメーションなどの職人技が炸裂したグラフィック
◆ドラキュラシリーズお馴染みの名曲揃いの音楽
◆オープニングにフルボイスによる解説が加わるなど、更に進化したボイス演出
◆所々に仕込まれた奇妙な小ネタの数々(あるボスがデ●オの真似をしたり…)
◆グリフによる多彩で派手なアクションの導入で、大幅な進化を遂げたエフェクト演出

--- Bad Point ---
◆常に装備して切り替える仕様なのが煩わしい『バックグリフ』(これは装備としてではなく、シャノアの能力として付与されるものにしておくべきだった)
◆威力と使い勝手に差が大き過ぎる武器関連のグリフ
◆操作手順が面倒で、使い勝手の悪いグリフ切り替えシステムこと『グリフパレット』
◆手抜き構成にも程がある一本道のマップ(沼など。もう少し起伏を付けても…)
◆相変わらず唐突な罠として仕掛けられてるのが残念なバッドエンド分岐
◆シビアさの増強で、アクションゲーム初心者に優しくなくなったゲームバランス
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
そして極まる、小ネタの数々。

「この馬鹿弟子があっ!」


コナミの看板タイトルにして、ゴシックホラーアクションの先駆けでもある『悪魔城ドラキュラ』シリーズ、ニンテンドーDS向け最新作、第三弾。シリーズではパラレル扱いとされた、『漆黒なる前奏曲(GB)』以来となる、女性キャラクターが主人公のドラキュラである。

ステージクリア型と探索型の長所が融合。
更に世界観と難易度も原点回帰を果たした、ハードなドラキュラだ。

ゲーム内容は横スクロールの探索型アクションRPG。迫り来るモンスターを倒しながら広大なマップを探索し、ストーリーを進めていくというものだ。レベルアップの概念に武器装備など、探索型ドラキュラシリーズでお馴染みのRPG要素やシステムは今回も継承。リアルタイムで進行状況が確認できる上画面のマップ表示機能など、DS以降のシリーズで実装されたシステムも引き継がれている。但し、前作『ギャラリーオブラビリンス』のパートナーシステムは、世界観と主人公の変更に伴って廃止。更に今回はゲーム性、アクションにもメスが入れられており、従来とは異なる方向性を目指した探索型ドラキュラとなっている。
まず世界観だが、前作の1944年より更に昔が舞台。ドラキュラシリーズのキーパーソン、ベルモンド家の人間が消息を絶ち、ドラキュラに対抗する組織が乱立し出した時代という曖昧な位置付けになっている。主人公はシャノアと呼ばれるドラキュラ対抗組織『エレクシア』に所属する女性。正史のドラキュラシリーズでは初となる、単独の女性主人公だ。彼女は、過去のドラキュラシリーズの主人公達と決定的に異なる特徴がある。それは武器が使えない事。鞭は勿論の事、剣に槍、斧と言ったものを何一つ扱えない。代わりに『グリフ』と呼ばれる魔法を使う。今作で新たに導入されたシステムだ。
『グリフ』とは乱暴に言ってしまえば、武器を実体化させて扱う魔法。シャノアは、魔法で武器を実体化させ、それを使って攻撃を行うのである。魔法で実体化させられる武器は剣、槍など今までのシリーズで装備できたものが中心となっている。但し、使う度に魔力(MP)を消費する。今回は武器を使う度に体力ゲージ下のMPゲージ(緑のゲージ)が減るので、悪戯に連続攻撃するとMP不足で武器を繰り出せなくなってしまう。また、MPがゼロになる『呪い』の状態異常を食らった際は更に深刻。攻撃そのものが完全に封じられる。さすがは魔法で具現化する武器と言ったところか。普通の武器以上に制約や弱点の多い仕様になっているのである。
またグリフは武器専門のメイン、サブのほか、特殊効果を発揮するバックの三種類があり、それぞれを個別に装備できる。装備はメニュー画面のほか、『グリフパレット』なるゲーム進行と同時に行えるシステムで行える。少々癖があるが、慣れればメニューを開かず、素早い装備切り替えができるようになる。更にメインとサブのグリフは、組み合わせる事で『合成印術』という強力な攻撃を繰り出せる。『合成印術』はメインとサブの組み合わせによってその効果も変化し、ただの強攻撃になれば、画面全体の敵を巻き込む攻撃になる事も。メインとサブにこのグリフをセットすれば、どんな効果が得られるか…という模索する楽しさがあり、カスタマイズの面白味に秀でてるのが魅力的だ。やり方次第によっては、本編の難易度を一変させてしまうような効果が得られる事もあるので、意外にその奥は深い。
普通の武器とは異なる扱いが求められるとは言うものの、応用性の広さとアクションの多彩さは結構なもの。それでいて、MPの量を意識して戦う考える面白さもあり、これまでのドラキュラとは異なるアクションの妙味が演出されたシステムに仕上げられている。組み合わせが豊富故に様々な戦闘スタイルも作る事ができ、その幅広さはシリーズの中でも1、2を争う。ある意味、シリーズでは最もアクション性の強いドラキュラと言っても良いだろう。
また、他に新たな試みとして、ゲーム展開とマップの基本構成を大幅に変更。今回はワールドマップ上に点在する複数の小さな探索マップを個別に攻略していく、ステージクリア風のものに改められている。その為、今回はステージクリア型の味が濃い目。基本は探索型だが、昔のドラキュラらしさ漂う、懐かしいものになっているのである。
更に今回はいきなり悪魔城から始まらない。森、屋敷などの悪魔城でないステージを中心に探索していく、大胆なストーリー設定になっているのである。もはや、悪魔城と名乗って良いのかと、突っ込みたくなる斬新な設定。その個性豊かなステージの数々は、プレイヤーの関心を引き付けて離さず。ドラキュラシリーズとしては最高のラインナップと言っても過言じゃ無いだろう。基本構成にしても、ステージクリア型の遊びが推し出されてるので、探索型に抵抗のあったシリーズファンにも馴染み易い。更にゲームの展開も分かり易くなり、迷う事が減ったのも特筆すべき改善点と言えるだろう。まさに想定外の原点回帰。過去の探索型とは異なる、昔っぽさ全開の作りなのだ。
攻撃アクションはより多彩に、そして奥深くなり、ゲーム本編は遊び易さが劇的に向上。更に懐かしのステージクリア型の遊びまで盛り込むなど、新たな探索型ドラキュラの形を目指そうとした試みが盛り沢山。これまでDSで発売されたドラキュラシリーズの中でも、最も昔に近い匂いを持ったドラキュラと言っても過言ではないほど、新しさと懐かしさが融合した内容になっている。そして、方向性も過去の探索型とは全くの別物。むしろ、今までの中で最も取っ付き易いドラキュラだと断言できる作りだ。全てが新しく、そして懐かしいのである。

そんな今作の売りは何と言っても、シリーズ最高の多様性を誇る攻撃アクションに尽きる。通常の打撃から、大掛かりな全体攻撃に至るまで、あらゆるアクションがグリフをただ組み合わせるだけでドカドカと繰り出せるのは実に痛快。これまで、鞭や剣などを扱って戦っていた探索型ドラキュラとは一味も二味も違う爽快感がある。それほど複雑な操作も求められず、簡単なコマンド操作を行うだけで繰り出せるのも良心的だ。テンポを一切損ねず、豪快な攻撃アクションの妙に浸れるのが気持ち良い。
また、攻撃の種類が多彩であるが故にボスとの戦闘も奥深くなり、ベストな撃破法を試す為にあれこれ模索する楽しみが増えたのも見逃せないところ。ボス自体もこれまで以上に攻撃パターンがより躍動的になって手強くなり、戦い甲斐が増している。ただ、アクション初心者に対してあまりにシビアな調整になってしまった感は否めず。そこは正直、改悪と言わざるを得ない。だが、簡単に倒せてしまうから呆気ないと思っていたプレイヤーには嬉しい変更と言えるだろう。それに手強くなったとは言え、基本的にどのボスも一定のレベル差、使用するグリフ次第で無難に倒せるほどの強さ。レベルが上がれば、差も縮むという探索型のお約束は守られているので、アクションが苦手な人でも辛うじて対抗できる調整になっている。だが、今回は受けるダメージが気持ち高めなので、レベルの差はあってもボスの動きを読むのは極めて重要。テクニックが求められてくるので、本当にアクションがダメという方には今回のは厳し過ぎるバランスであるのは否定のしようが無い。しかし、力押しになりがちな探索型の戦闘でアクション性を強調させた調整を図ったのは見事。趣は異なるが、ナイスな原点回帰と言えるだろう。
原点回帰という点では、ステージクリア風で展開する本編も秀逸。特にマップが細分化されて「出口」という区切りが設定され、サクサク進めていけるようになったのはでかい。広いマップを舞台とした過去の探索型シリーズでは、そんな区切りが無い為、漠然とした不安を抱き易かったが、今回はそんな事一切無し。ワールドマップやマップ踏破の状況で進んでいるかが一目で分かるので、安心感を保ったまま、展開を楽しむ事ができる。更にマップが狭い故に探索もやり易く、億劫に感じ難くなったのも魅力。明確な目的があるからこその分かり易さが売りのステージクリア型、一つ一つを踏破する塗り潰す快感が売りの探索型。その両者の魅力のみを抽出し、高い水準でまとめた見事なマップデザイン(ゲームデザイン)になっている。やっと、ステージクリア型を好むファンも満足できる、探索のスタイルが確立されたと言っても良いだろう。もの凄くドラキュラらしい作りになった。
また、前作の絵画ステージを更に発展させた悪魔城以外のステージも展開を大いに盛り上げる。一部、一本道のつまらないマップがあるのがタマにキズだが、探索型においてそのような昔のドラキュラっぽいマップが登場したのは意義のある事だと言えるだろう。今回は残念ながら、合格とは言えない出来だが、今後の更なる発展に期待だ。
それはグリフシステムにも言え、特に『バックグリフ』は一部を標準のアクションにすべきだった。『キルクルス』という移動アクションがまさにそれで、これをいちいちメニューやパレットで切り替え、装備しなければならないのは面倒臭い。できる事なら、二段ジャンプやスライディングなどのアクションと同様の扱いにして欲しかったものだ。
しかし、多彩なアクションを可能としただけでもグリフが意欲的なシステムだったのは間違いない。今回のストーリー設定と絡んでるので、一発ネタで終わりなのかもしれないが、できればまだ発展させて行って欲しいシステムである。
そんなアクションの幅広さを拡張させたシステムに昔のドラキュラの匂いが漂うゲーム展開とモチベーションの落ち難いマップ構成など、今作で打ち出されたものは、いずれもシリーズの新たな可能性と未来を感じさせられる出来栄え。アクション性の高さに探索の楽しさ。シリーズが目指すべき探索型の形は、遂に確立されたと言っても良いだろう。

操作性も前作のボタン操作に特化させた、完成されたものを継承。プレイヤーの思うがままにキャラを動かす楽しさに浸れる仕上がりになっている。グリフパレット切り替えの操作など一考して頂きたかった部分もあるが、相変わらずアクションゲームとしては合格点の快適さとなっている。
ゲームバランスは先の通り、硬派になったが、決して理不尽な調整ではあらず。プレイする度に上達を感じ取れる、程好い手応えに富んだバランスになっている。昔のドラキュラを髣髴させる容赦の無さなど、懐かしさに富んでいるのもニクいところだ。ボリュームも、エンディングまでは従来と同じ長過ぎず短過ぎずの適切な量。しかし、例によってクリア後はおまけシナリオやアイテム収集、クエスト攻略と言ったやり込みがドッサリ。相変わらず歯応えのある内容になっている。また、サブイベント『クエスト』が、ワールドマップ導入の恩恵で移動が快適になったのも地味ながら嬉しい改善点である。無論、前作で導入された『マジカルチケット』のアイテムは今回も健在。スムーズな探索が楽しめる。
そしてグラフィック、音楽も相変わらずの完成度の高さ。
演出もグリフの恩恵でアクションが増え、エフェクト周りが大幅強化。更にボイス演出も更に磨きがかけられて派手になっている。例によって、アナゴさんこと声優の若本規夫氏の演じる”あの人”は必見だ。

また、これまで若干弱めだったシナリオも僅かにパワーアップ。ドラキュラを倒す運命を背負った主人公、シャノアが辿る末路は如何にもドラキュラシリーズらしい悲愴感が満点。イラストも劇画調のハードなものになり、シリーズ特有のダークな雰囲気が復活しているのも嬉しいところだ。特に序盤から悪魔城突入に至るまでの展開は必見。今作が『悪魔城ドラキュラ』である事を露骨なまでに象徴したその展開には胸を打たれるかもしれない。
その他、レベルを引き継ぐ仕様になった二周目、随所に仕込まれた格闘ゲームのパロディなど、魅力的な要素やお遊びもたっぷり。方向性を変更した故の作りの甘い所も散見されるが、過去に出た探索型ドラキュラシリーズ中でも屈指のアクション性と取っ付き易さ、悪魔城ドラキュラの名を痛感させられるシナリオなど見所は満載。無論、アクションゲームとしての完成度も水準以上だ。探索型の新たな方向性を提示し、昔のドラキュラらしさを際立たせたこの『悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印』。過去のDS二作よりも難易度が高いので、アクションが苦手な人にはお薦めできないが、シリーズファンやアクションが好きな人ならプレイする価値あり。探索型シリーズの新たな可能性を打ち出した、珠玉の傑作だ。
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