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≫悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス
■発売元 KONAMI
■ジャンル アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※出血、暴力描写あり
■定価 5229円(税込)<Best版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 6つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 7〜8時間(エンディング目的)、40〜60時間(完全攻略目的)
1944年、世界は大きな混乱の中にあった。この世界を巻き込む第二次世界大戦は不安と憎しみ、恐怖を撒き散らし、無数の救われぬ魂を生み出した。

そしてそれらの怨念は人の世を恨み、邪悪なる城をこの世に呼び寄せた。過去、幾度無く現れ、近隣を蹂躙し、災厄を撒き散らす魔王ドラキュラの城…『悪魔城』である。
それを察知した教会はヴァンパイアハンターのジョナサン・モリス、魔法使いのシャーロット・オーリンを討伐の為に派遣する。そして城を訪れた二人は、後にある事実を知ることになる。
この城はドラキュラではない、別のヴァンパイアが支配している事を…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シリーズ初の共闘方式という、独自のゲーム性を確立させたパートナーシステム
◆パートナーシステムの特徴を最大限に反映させたマップギミック
◆二人で解く謎や仕掛けが導入され、大幅に探索の手応えが増したマップ構成
◆絵画の中が舞台という設定の恩恵で、過去のシリーズ以上に多彩になったマップロケーション(砂漠や異空間、市街地と言った地形が登場)
◆アイテム収集にクエスト攻略と、バリエーション豊かになったやり込み要素(全体のボリュームも前作の倍以上に)
◆店のある拠点に戻れる『マジカルチケット』の復活で、大幅に改善された移動周り
◆前作のタッチペン要素が省かれた事で、より快適なものへと進化を遂げた操作性
◆パートナーシステムの恩恵で、よりマイルドに変貌を遂げたゲームバランス
◆前作以上に増強されたクリア後の特典要素(特にとある敵キャラでプレイするモードはかなりの高難易度)
◆前作譲りの芸術的なドット絵と滑らかなアニメーションで魅せる、珠玉のグラフィック
◆シリーズ伝統の名曲揃いの音楽(更に今回は『アクトレイザー』などで知られる、古代祐三氏が作曲に参加)
◆敵やボス個別に用意されたやられ様など、相変わらず凝りに凝ってるエフェクト演出
◆ボス戦などの場面を大いに盛り上げる、実力派声優陣による勢い満点のボイス演出
◆アイテムの取引、協力プレイなど独特の試みが成されたWi-Fiコネクション関連の要素
◆シリーズ史上最凶の”絶望感”に満ちたラスボス戦

--- Bad Point ---
◆相変わらず唐突で、失敗しないと分からぬ不親切さ炸裂のバッドエンド分岐
◆一部、異様に強いボスの存在(砂漠エリアのボスなど)
◆前作以上にアニメっぽく、低年齢層向けにシフトしたキャラクターデザイン
◆あまりにしょぼ過ぎる回復魔法(回復量が少な過ぎて実質空気同然)
◆回避し損ねると即死確実なのが厳しいラスボスの必殺技『バッドムーン』
◆作業感バリバリのサブウェポン熟練度システム(更に熟練度を上げて習得するスキルにも、極端な性能差が…)
◆攻撃はタッチペンという不便さが目立つ、クリア後の某隠しモード
◆よりにもよってレアゲーと呼ばれるメガドライブの『バンパイアキラー』の続きを描いたストーリー(別に同作を知らなくても楽しめる作りではあるが、そんな作品を前作と位置付けるのは敷居が高過ぎる)
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
「ノープロブレムだ。」

そんな余裕こいて大丈夫か?


ゴシックホラーアクションの先駆けにしてコナミの看板タイトル、『悪魔城ドラキュラ』シリーズのニンテンドーDS向け最新作、第二弾。

シリーズ異色の二人で戦う悪魔城ドラキュラだ。

ゲーム内容は横スクロールで展開する、探索型のアクションRPG。迫り来るモンスターを倒しながら広大なマップを探索し、イベントを進めていくという前作『蒼月の十字架』や『月下の夜想曲』の系譜に連なるものだ。
基本システムもレベルアップの概念、武器装備を始めとするRPG要素など、過去の探索型ドラキュラを踏襲。更に前作『蒼月の十字架』にて初起用された、ニンテンドーDSの二画面特性を活かした、リアルタイムで進行状況が確認できる上画面のマップ表示機能も継承。今回も快適且つテンポの良いマップ探索を堪能できる仕上がりになっている。その一方で『魔封陣』、『クリスタルブロック』のタッチペンを活かしたシステム、ギミックは廃止。今回は純粋にボタン操作のみに特化され、今までの探索型ドラキュラとほとんど同じ感覚で楽しめるようになった。一応、タッチペン操作でプレイする専用のシナリオなんてのも用意されているのだが、あくまでもおまけ。本編ではそう言った操作は今回、求められる事はほとんど無い。前作のタッチペン操作に煩わしさを覚えてたプレイヤーにとっては、嬉しい原点回帰と言えるだろう。
また今回は世界観も一新。今回は前作の蒼月より更に過去、1944年の第二次世界大戦の時代が舞台。シリーズの時間軸ではメガドライブで発売された唯一の悪魔城ドラキュラ、『バンパイアキラー』のその後となっている。主人公はその『バンパイアキラー』の主人公の一人だったジョニー・モリスの息子、ジョナサン・モリス。更にシャーロット・オーリンという少女が、彼のパートナー兼もう一人の主人公(操作キャラ)として登場。戦闘及びストーリーでジョナサンと共に活躍する。この設定から明らかだが、実は今回のドラキュラは主人公が二人。コンビで悪魔城を探索する、シリーズ初の『二人で戦う悪魔城ドラキュラ』なのだ。今まで一人で孤独に探索したり、敵と戦うのがお約束だったドラキュラシリーズの歴史に一石を投ずる試みが成されている。過去にも『悪魔城ドラキュラ黙示録』、そして『バンパイアキラー』など、もう一人の主人公が登場する作品もあったが、基本的には個別キャラ(シナリオ)としての扱い。一緒になって画面に登場し、共闘するという光景は、システムや設定の都合で拝めず終いだった。
しかし、今作はそれらとは違う。もう一人のパートナーも画面に登場し、共闘する。最も、最初から画面に登場している訳ではなく、ボタンを押して呼び出さねばならないのだが、相棒と共に迫り来る魔物を倒し、困難を乗り越えていくゲーム性は、今までのステージクリア型や探索型には無かった、新鮮な手応えをプレイヤーに提供してくれる。無論、謎解きや仕掛けにおいても、このシステムを効果的に活かす工夫が徹底。決して一人だけでの攻略は許されぬ、抜け目無い調整が図られている。謎解きだけでなく、ボス戦にもその工夫は万全で、中にはこちらに倣い、コンビを組んで攻めてくるボスもいるほど。そんな共闘方式をあらゆる場面へと反映させた、丁寧なゲームデザインも見逃せない。まさにこれぞ『二人で戦う悪魔城ドラキュラ』。その斬新な作りは、過去のシリーズに慣れ親しんだ方のみならずシリーズ初心者の方まで、新鮮な体験をもたらしてくれる。それほどまでに今回はシリーズ史上初とも言えるゲーム性が確立されている。
また、ゲーム性が斬新になった一方で主人公の性能は原点回帰。厳密には攻撃周りだが、久々にドラキュラシリーズの代名詞『ムチ』を主な武器として扱うキャラとなっている。但し、ムチ以外の剣、槍などの武器も装備できるので、基本的にはこれまでの探索型と同様の感覚で動かせる。逆にシャーロットは武器が飛び出す『事典』しか武器を装備できない、少し癖のある性能になっている。だが、武器が限定される反面、魔法が使えるという特技を所持。攻撃、補助、変身などその種類も多彩で、ジョナサンとは一味違ったアクションの妙が味わえるキャラクターに仕上げられている。パートナーの際もRボタンを押す事で補助魔法が繰り出せるなど、ただの支援キャラで終わらぬ活躍を見せてくれるのも結構、魅力的だ。そんな具合に二人ごとの差別化も丁寧に図られており、それぞれ違った動かす楽しさが秘められている。更に二人同士の連携による強力な全体魔法攻撃もできるなど、コンビである事を活かしたアクションも盛り沢山だ。こう言ったところにも、二人で戦う悪魔城ドラキュラへのこだわりは炸裂している。
今まで一人での行動、或いは個別の行動するお約束を破壊する試み。そして、細部に至るまでそのらしさを徹底したゲームデザイン。探索型という形態のみならず、今作がこれまでのドラキュラの中でもかなり異質な内容なのは、もはや言うまでも無いだろう。最初から最後まで、ずっと二人。孤独感は皆無と全てが新しい、風変わりなドラキュラなのだ。

そして今作最大の売りも、その二人で悪魔城内を探索していく新たなゲーム性だ。それまで、一人で行動する『お約束』を破壊し、過去のステージクリア型、探索型にもない「共闘の楽しさ」を表現させたチャレンジ精神の高さと手腕には本当に感服する。ややシステムの発展面で行き詰まり感のあったドラキュラシリーズに新たな方向性を提示した。
特にこのシステム導入の恩恵で、アクション周りの難易度が気持ち、緩めになり、より初心者に取っ付き易いものになったのは大きな進化だ。今までは一人で戦うが故、沢山の敵を処理するにもちょっとしたテクニックが求められるなど、アクションが苦手な人には厳しい所があった。だが今回は、予めパートナーを呼び出していれば、そのキャラが取りこぼしの敵を迎撃してくれるので、アクションが苦手な人でも対処がし易い。更にコンビによる強力な全体攻撃という起死回生の技もあるので、いざとなったらゴリ押しという手もあり。追い込まれている際、強力な攻撃を発動すれば、それで強引に乗り越えられてしまうのである。そう言った様々な方法が今回は選べるので、テクニックに自信が無い方も、気軽に探索の妙味が味わえるように。選択肢が増えたからと言って、決して全体の難易度が下がった訳ではないものの、テクニック以外の方法が無かった過去を考えれば、これはかなり適切な改善点と言えるだろう。まさに二人なら力も二倍と言ったところか。ゲームとしての新しさだけでなく、攻略の幅広さまでをもこのシステムは表現しているのだ。
難易度選択を導入し、初心者にも入り易くする手法のような安直さも無く、自然な公平さを表現しているのも見事なところ。素人でも考え付くような手で完結させず、自然な手法を取り込むその姿勢にはスタッフのセンスの高さとシリーズへの愛を痛感させられる。二人で共闘する独自のゲーム性も十分魅力的だが、そう言った選択の幅広さも、このシステムを語る上で外せぬ売り。新しさだけで終わらぬ魅力も満載なのである。
また、パートナーシステムのみならず、豊富なマップロケーションも見逃せない売りの一つ。実は今回は『砂漠』、『商店街』、『学校』などと言った悪魔城以外の地形が沢山登場。今までの探索型とは異なり、舞台となるのは城だけじゃなくなっているのである。というのも、今作では悪魔城のマップ以外に『絵画』のステージなるものが登場。悪魔城内の特定の部屋に設置されており、その中に入る事ができる。本編ではこの絵画の中で待ち受けるボスを倒し、悪魔城の結界を解いていくのが主な目的となる。要は今回のメインステージは城ではなくて絵。”悪魔城”ドラキュラのくせして、城がおまけも同然な構成なのである。まるでかの名作『スーパーマリオ64』を髣髴させる設定だ。
そして、その絵というのも実に様々。先も語ったが砂漠、学校、商店街と今までのドラキュラでお目にかかれなかった地形が沢山用意されている。無論、それらの地形に城の面影なんて皆無。そんな別世界を探索していく感覚は、やってる事は同じなのに何かが違う奇妙な違和感が満点。探索型、ステージクリア型に問わず、過去のドラキュラシリーズを体験した事のあるプレイヤーなら、それらの地形には色んな意味でショックを受けるだろう。パートナーシステムのみならず、この地形の増強もまた、ドラキュラシリーズとしては、革新的な試みと言える。
また、地形が豊富になった事でゲーム展開に華が増したのも見逃せないところ。何せ、城以外に砂漠などの地形まで登場するのだ。次にどんな世界が待ち受けているのか、気になってしまうのは必至である。また、絵画だけでなく城内にもイベントは盛り沢山で、唐突にボスが乱入したりなど、プレイヤーの関心を引き付けて離さぬ工夫も徹底されている。絵画がメインだからと言って、城の構造が質素な訳ではあらず。そう言った所もきちんと作り込まれており、悪魔城ドラキュラとしての体裁もしっかりと保たれている。断じて、『絵画城ドラキュラ』にはなってないので、シリーズファンはご安心の程を。
二人での行動を軸にしたシステムを実装、独自のゲーム性を演出するだけに留まらず、悪魔城以外の地形まで登場させる試みまで行っている今作。その他、今回は絵画のステージの攻略が目的である故、ステージクリア型を髣髴させる遊びが演出されてる点も面白い所だ。それも全ては、新しい悪魔城ドラキュラを確立する意気込みの賜物か。基本こそ、今までの探索型とは変わらないが、遊び方から展開に至るまで、ここまで大胆に変えた2Dのドラキュラというのも初めてだろう。そういう意味では、今作はまさに革命作と言っても不思議ではない内容と言える。大袈裟な物言いだが、それほどの斬新さが今回のドラキュラにはあるのだ。

その他、操作性は前作『蒼月の十字架』の完成されたものを継承。挙動からレスポンスと、プレイヤーの思うがままにキャラクターを操作できる、気持ちの良いものに仕上げられている。また、今回は『魔封陣』廃止でタッチペン操作がほぼ求められなくなった為、従来と同じ感覚で楽しめるようになった点も見逃せないところだ。
ゲームバランスもパートナーシステム導入の恩恵で、大分易しめに。ただ、一部強さがかけ離れ過ぎなボスが存在するのがちょっとした欠点。そんなに沢山いる訳ではないが、中盤の女王のボスなど、もう少し弱く設定出来なかったものか悔やまれるところだ。地味な所だが、絵画ステージのボスを倒した後に「ここからもう出て良い」というサインが表示されない辺りも少し意地悪。できれば、何かクリアした事を示す証を表示して欲しかった。
全体のボリュームは、エンディングまでは前作と大差ないが、やり込みを含めるそれ以上。クリア後のおまけも増強されており、その中にはシリーズファンならばビックリするシナリオも含まれている。難易度もかなり厳しい設定なので、コアゲーマーなら至福の手応えを満喫できるだろう。やり甲斐抜群だ。
グラフィック、音楽の出来も相変わらず高い。特に音楽は今回、あの『アクトレイザー』などで知られるゲームミュージックの巨匠、古代祐三氏が手掛けているだけに折り紙付きの完成度。特にジョナサンとシャーロットのテーマ曲である『凶月の招き』は必聴の価値アリだ。演出も主にボイス周りの強化が著しい。特にジョナサンを演じる櫻井孝宏の熱演は否が応にも本編を盛り上げる。また、『月下の夜想曲』以来となる若本規夫演じるドラキュラ伯爵もファンなら要チェックだ。

ストーリーも中身は正直言って薄味ではあるが、親子の不器用な絆やパートナーシステムを活かした展開など、構成はなかなか面白い。また、ラスボス戦での衝撃極まりない展開は必見。シリーズファンのみならず、その展開には言葉に表しようのない絶望を覚えるだろう。
前作以上にアニメっぽくなってしまったキャラクターデザイン、一部異様に強いボスの存在などの細かな欠点も散見されるが、全体的にアクションゲームとしての水準は極めて高い。また、ドラキュラシリーズ初の試みも満載で、歴代シリーズを遊んで来たプレイヤーから新規プレイヤーまで新鮮な体験を堪能できる作りになっているのも大変魅力的だ。
これまでの一人での戦いから、二人へ。そして悪魔城から別世界へ。様々な挑戦的な要素が豊富に導入されたこの『悪魔城ドラキュラ ギャラリーオブラビリンス』。
ドラキュラシリーズファンは言うまでもなく、アクションゲームが好きな方からシリーズ初心者まで、DSを持ってるのなら是非プレイして欲しい傑作だ。新しい悪魔城ドラキュラの形がここにある。オススメの逸品です。
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