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≫女神異聞録デビルサバイバー
■発売元 アトラス
■ジャンル シミュレーションRPG
■CERO B(12歳以上対象) ※出血、暴力描写あり
■定価 4980円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ+中断1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 20〜25時間(エンディング目的)、80〜90時間(完全攻略目的)
高校二年の夏。
従兄弟のナオヤに呼び出された主人公は、渋谷の雑踏へと足を踏み入れる。

しかし、呼び出し主であるナオヤはなかなか現れない。
主人公は共に呼び出された友人、アツロウ、ユズと共に彼を探すが、それでも彼は見つからない。主人公は、唯一の手がかりとなる携帯ゲーム機『コミュニケーションプレイヤー』こと『COMP』を起動する。

そして起動と同時に、主人公達の周囲に悪魔が現れ、山手線全域が封鎖されるという異常事態が発生する。
そして、COMPは彼らに告げる。

――Let's Survive.
▼Points Check
--- Good Point ---
◆アドベンチャーとシミュレーションを並行しながら展開する、独自のゲームシステム
◆数は少なく使い回しも多いが、敵配置と勝利条件を変えて常に異なる遊びを見せるという独自の工夫が炸裂した、珠玉のマップデザイン
◆最長でも20〜30分程度と、手軽なボリュームでまとめられたバトルパートの構成
◆手軽なボリューム故にサクサクと進行するバトルパート
◆敵の全滅、民間人救助など、多彩なパターンが用意されたバトルパートの勝利条件
◆チーム同士で戦うRPGスタイルながら、戦略性の高い要素が満載の戦闘システム
◆硬派だがフリーマップによる救済処置など、懐の広さもきちんとしたゲームバランス
◆悪魔をオークションで落札し仲間(仲魔)にする、ユニークな仕組みの『デビオク』
◆全116体もの個性豊かな仲魔達(別の悪魔と合体させねば誕生しないものもいるなど、収集要素的な楽しみもある)
◆デザインが独特ながら、レスポンスなど使い勝手は良好なメニューインターフェース
◆サバイバルのテーマにマッチした残酷且つ、狂気染みた内容のシナリオ
◆狂気染みたシナリオの緩和剤として機能している、アニメ調のキャラクターデザイン
◆全6つものパターンが用意されたエンディング(選択肢によって様々な結末が訪れる)
◆マップ上のキャラクタードットなど、全体的に細やかな職人技が発揮されたグラフィック
◆詰まり防止のフリーマップに中断セーブと、痒い所にまで手の届いたサポート機能群
◆単純にクリアするだけならば短め、完全制覇を目指すと膨大という二面性を持った総計ボリューム
◆仰々しいカット割りが光るムービーデモ(特にラスボス戦は迫力満点)

--- Bad Point ---
◆たった1つしか作成できないセーブデータ(分岐ありの内容でこれは地味に酷い…)
◆やかまし過ぎる音楽(人によっては耳障りと感じるかもしれない)
◆バトルパートにおける、キャラクターの移動スピードの遅さ
◆同じくバトルパートにおける、カーソル操作の重さ(地味に煩わしい)
◆古きメガテンファンには賛否の分かれるキャラクターデザイン
▼Review ≪Last Update : 12/27/2009≫
おはヨウごザいママママママす。

みナ□ま、ヨイ一□□ヲ。


アトラスの看板タイトル『女神転生』シリーズの最新作にして、魔神転生シリーズ以来となる新作シミュレーションRPG。キャラクターデザインは『夜桜四重奏 〜ヨザクラカルテット〜』などで知られる漫画家・イラストレーターのヤスダスズヒト、音楽はゴダイゴの浅野孝己、開発は『グローランサー』シリーズのチームが手掛けた。

手軽に、そして深く遊び込める、DSシミュレーションRPGの名作だ。

内容は、RPG風味の戦闘システム、アドベンチャー風味のストーリー展開の要素を取り入れたシミュレーションRPG。封鎖された東京都23区で展開されるイベント、悪魔との戦闘を攻略し、シナリオを進めていくというものである。
ゲームは基本的に悪魔との戦闘を始めとするミッションを行うバトルパート、シナリオ上のイベントを進めるアドベンチャーパートの二つを介して展開していく。本編は全7章(7日間)で構成。だがどのような展開を辿っていくかは、アドベンチャーパートのプレイヤーの選択肢によって変化。それによって結末が変わる、マルチエンディング制となっている。
アドベンチャーパートのシステム自体は、至って普通のコマンド選択型。ただ、主人公がプレイヤーの完全なる分身故、会話シーンでは過剰なほど選択肢が登場するという特徴がある。しかも、先の通りに選択肢次第で展開が変化してくる為、迂闊なものを選ぶと後に最悪の結果を招く事も。この辺は他のアドベンチャーゲームではよくある事だが、本編の量が結構多い故、基本に忠実ながらもなかなか緊張感溢れるものとなっている。そもそものシナリオが、封鎖された東京都からの脱出を目指すという、極限状態を描いた内容なので、このシステムは上手くマッチしていると言える。
システムは少し独特で、1ユニットが三人(?)のチームで構成。三人の内、中央のポジションを務める『リーダー』がやられると、ユニット死亡となるのが基本ルールとなっている。また戦闘は、敵味方含めた同時ターンで進行。画面上部に表示される行動順番の並びに従い、ユニットのターンが回って来る仕組みとなっている。
また、戦闘はコマンド選択型によるRPG方式で展開する。基本的に一回のターンで相手に行える攻撃は一発限りであるが、弱点属性を突いたり、素早さのステータスが勝ってたりなどすると『エクストラターン』なるボーナスが付き、二回攻撃が行えるようになる。逆に最初からエクストラターンがあったとしても、敵に弱点を突かれると無くなり、二回攻撃ができなくなる。今作での戦闘はその『エクストラターン』が如何に効率的に出せるかが、勝利への鍵となって来ると言っても良いだろう。(他に属性とか絡んでくるが)RPGスタイルながら、割と戦略的且つ骨太な仕上がりとなっている。更にチームに入れる悪魔は『デビオク』なるオークションで落札して仲間(仲魔)にする、ユニークなシステムを起用。悪魔を仲間にする方法は他に女神転生シリーズの代名詞、悪魔の合体システムでも可能。例によって、この合体でなければお目にかかれない悪魔がいるなど、ちょっとしたやり込み的な楽しみも凝らされている。その他にも、いつでも自由にプレイでき、ユニットを鍛え上げられる『フリーマップ』もあり、救済処置もしっかりとしている。
正直、全体的にシミュレーションRPGとしてはかなり特殊な内容ではある。オーソドックスなターン制シミュレーションRPGを期待してプレイすると、意表を突かれるかもしれない。
しかし、作りは特殊でありながら、実際はシンプルで遊び易く、救済処置も豊富なので、意外に敷居は低い。特殊なのだけど、人は選ばず軽い気持ちで楽しめる…今作はそんな、不思議な内容となっている。悪魔絡みのシステムも含め、如何にもアトラスらしい味付けが光るシミュレーションRPG、と言っても良いだろう。

そんな今作の売りは、特殊なシステムもさる事ながら、携帯ゲーム機を意識した抜群のテンポの良さと工夫にある。
具体的に言うと、バトルパートのマップ構成で、一回の戦闘が長くなりがちなシミュレーションRPG特有の欠点を考慮し、スケールを小さくし、ユニットの数を減らす反面、一体一体を強めに設定して手応えを取る、絶妙なバランス調整が成されている。この調整の恩恵により、テンポの良い展開が繰り広げられる同時にゲームとしての確かな歯応えも味わえ、短時間で決着が付けられると言う、携帯ゲーム機らしいお手軽さ、ゲームとしてのやり応え双方の魅力が最大限に活かされたゲームプレイを堪能できる。下手にマップを広くして双方のバランスを取るのでなく、限られた中で双方の両立を図るというそのゲームデザイン自体が、凄く携帯ゲーム機らしく、それでいて計算し尽くされたものになっていて非常に美しい。これぞ職人技と言っても良い、見事なまとめ方と言っても良いだろう。しかもそれが最初から最後まで継続するよう作られているのだから、なお驚かされる。更にバトルパートのプレイ時間も最長20〜30分程度と、1時間を超過しないボリュームでまとめられてるのも秀逸だ。これは戦闘シーンのスピード感溢れる展開、マップサイズの小ささの賜物である。そのマップも単に小さいだけでなく、種類も少なめにされており、本編では同じマップを繰り返し戦うなんてことが多々ある。単に聞く限りでは、展開が単調化しそうな印象を抱くかもしれないが、今作はそこさえも工夫できちんとカバー。同じマップでも違うユニットを置いたり、また勝利条件を変更したりするなど、多彩なパターンが用意されているので、展開が単調化し難い。全体の設計も一軒平坦なマップと思いきや、敵配置が変わる事で切羽詰まったものになるなど、奥行きを含めて丁寧に作られているのも特筆すべきポイントだ。
プレイ時間を抑えるのみならず、抑えたなりの工夫まで仕込む徹底振り。数を少なくしたからこそ、一つ一つの調整と検証に時間がかけられたこその仕上がりと言った感じだ。増やすのでなく、少なくして密度を濃くする手法は、何処となくマップを多く用意するシミュレーションRPGの昨今の傾向に対するアンチテーゼとなっていて、考えさせられるものがある。
テンポの良さに限らず、エクストラターン、そして技(スキル)を取得する『スキルクラック』など、作り自体はシンプル戦闘システムも、奥行きがあって深いものに仕上げられているし、チーム編成、デビオクによる悪魔取得なども、バトルパートでのどうすれば有利な戦いを繰り広げられるか、と言った考える面白さが深く、やり甲斐がある。
マルチエンディング制を起用している都合、一周するのに大体20時間ほどと、全体ボリュームも適度な量となっており、周回プレイの苦が無い配慮がされているのも好感が持てる。ただ、マルチエンディング制でありながら、セーブファイルが1つしか作れず、全てのエンディングを見通すのが作業となってしまうのは、残念としか言い様が無いが。最低でも2つ確保していれば、システム面は完璧な作りになっていただろうに、勿体無い限りだ。
とは言え、携帯ゲーム機向けに製作されたという元来のテーマを意識しつつ、奥深いゲーム性を演出する手法と工夫には脱帽の一言である。狭い中に濃密なシミュレーションRPGの面白味をぶち込むという容赦の無さとまとめ方の上手さ。コアなゲームには手馴れたアトラスらしくあり、そして携帯ゲーム機らしくもある。ある意味、今作ほどゲームとしての深み、そしてDSとしての特性がバランス良く表現されたタイトルというのも無いと言っても良いだろう。それほどまでにシミュレーションRPGとして、ゲームとしても非常にクオリティの高い内容となっているのだ。アトラスとしても、今までのDSタイトルの中では、最高傑作と言っても良いかもしれない。大袈裟だけど。

また、操作性からインターフェースと始めとする部分も洗練された仕上がり。使い易さを徹底的に意識した作りとなっており、いずれも動かしていて気持ち良く、ストレスを感じ難い。バトルパートのカーソルの反応の重さはもう少し軽くして頂きたかったが、やっていく内に気にならなくなっていくだけ、まだマシな方か。
シナリオも如何にもアトラスらしい、残酷な内容。ただ、人間キャラクターのデザインと性格付けがアニメ調なのもあり、その辺が上手い具合に緩和され、安心して見られる内容になってるのが絶妙だ。肝心の内容自体もダークさ全開で、次第に狂気染みて行く人々など、なかなか印象深いものがある。
グラフィックもドット絵が非常に美しく、アニメーションを含め、細部まで作り込まれていて圧倒させられる。東京の街並みを描いたマップのグラフィックも秀逸で、デザイナー陣のこだわりが存分発揮されている。
反面、音楽はあまりに耳障りなのが辛い。ゴダイゴの浅野孝己氏が作曲しているのだが、どの曲もやかましいだけのものばかりで聴いていて気持ち良くない。幾つか印象的な曲もあるが(主題歌、ラストマップなど)、全体的にもう少し大人しめに作れなかったのか…。浅野氏には申し訳ないが、この点だけは今作最大の失敗であると言わざるを得ない。

逆に演出は素晴らしく、終盤のド派手なムービーから技のエフェクトなど、いずれも気合いが入っている。その他、悪魔収集を始めとするやり込み要素などもそれなりに充実しており、深くやり込めるほどの奥深さがある。
携帯ゲーム機としてのゲームを意識したゲームデザインから優れたテンポ、ボリュームと何処を取っても完成度は高く、プレイ時の満足度もかなりのもの。ゲームバランスも基本硬派だが、初心者対策も充実しているなど、あらゆる層に合った調整が図られているのにも圧倒させられるものがある。数あるアトラスのDSソフトの中でも、トップクラスの完成度を誇ると言っても何らおかしくは無いだろう、この『女神異聞録デビルサバイバー』。
主にコアなユーザーにこそ是非、プレイして頂きたい傑作だ。初心者にも遊び易い作りなんで、DSを持ってるユーザーも是非。ただ、世界観は暗め且つ残酷。そこは覚悟の上で。
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