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  4. 風雲!大籠城
≫風雲!大籠城
■発売元 nn.system(河本産業)
■ジャンル フォーメーション・マネジメント
■CERO A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSダウンロードプレイ対応
■総説明書ページ数 21ページ
■推定クリア時間 8時間〜15時間(エンディング目的)、20〜30時間(完全攻略目的)
かつて群雄割拠した戦国の世。
数多くの大名達を恐れさせた忍びの一族『籠(こもり)流』。

徳川幕府転覆を目論む『闇の軍』が戦乱を巻き起こし、太平の夢が奪われた日本。
籠流の若き当主、籠城守(こもり しろもり)は、日本に再び太平の夢をもたらす為、迫り来る強大な敵を迎え撃たんとする。この戦の行く末や如何に。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ユニットを配置して侵入してくる敵を撃退する、独自の忙しさに秀でたゲームシステム
◆能力とその特徴まで、直に理解できる分かり易さが光る、各ユニットのネーミング
◆攻撃力から効果を発揮する場面まで、緻密に調整された各ユニットの能力バランス
◆1マップ別の攻略から連戦まで、多彩な遊び方ができる『1人用』モード
◆終始連戦の緊張感溢れる展開が楽しめる、シナリオに沿って進む『絵巻』モード
◆ユニット配置位置、敵侵入ルートまで、緻密に作り込まれたマップデザイン
◆日本全国の城をそのままモデルとした、マップロケーション(全部で30種類以上)
◆リアルタイム故に始まったら画面から目が離せなくなる、強烈な中毒性と熱中度
◆通常タイプから地中に潜ったりするものまで、バリエーション豊かな敵ユニット達
◆長過ぎず短過ぎずの丁度良い量でまとめられた、総計ボリューム(1人用、絵巻共に)
◆ボタン、タッチペン共にレスポンスが飛び抜けて快適な操作性(ストレス皆無!)
◆戦略の面白味、システム特有のアドリブ性が絶妙に絡み合った、珠玉のゲームバランス
◆独特のチマチマ感を表現した、可愛らしいドット絵によるグラフィック
◆チマチマ感とグラフィックの可愛らしさを引き立てる、質感溢れる効果音
◆アッサリ気味だが、王道のツボは押さえた『絵巻』モードのシナリオ

--- Bad Point ---
◆入門編の作り故に乏しいやり込み要素(スコアアタック程度しかない)
◆非搭載の中断セーブ機能(あれば文句無しだった)
◆中断セーブが無い為、気軽にプレイできない『絵巻』モード(三連戦方式故に)
◆最後まで三連戦で展開する『絵巻』モード(少し単発もあって良かった気が)
◆絶妙だが、やや戦略がパターン化してる感も際立つゲームバランス
◆枠の黒ブチが無い為に時々、見失うことがあるカーソルグラフィック
▼Review ≪Last Update : 12/27/2009≫
瞬間移動ほど一般人に酷なものは無い…。

このゲームの時代で考えてみればの話。


主に下請けとして様々なゲームタイトルに参加してきたソフトハウス、河本産業株式会社が立ち上げた自社ブランド『nn.system』の第一作としてリリースされた新作タイトル。

タワーディフェンス入門に最適な逸品だ。

内容は、先の解説でも話した通りだが、2007年以降にFLASHで誕生した防衛主体の戦略シミュレーション『タワーディフェンス』そのもの。マップ上にユニットを配置して侵攻してくる敵を倒し、その侵攻が収まるまで防衛拠点を守り抜けばマップクリアという、ワリとシンプルなゲームだ。
各マップの展開は基本、ユニット配置と敵の侵攻が同時に行われる、リアルタイム方式。敵が侵攻する前にユニットを配置したり、または戦力不足を補う為に敵の侵攻上でもユニットを配置するなど、その場その場の状況に応じた戦略が求められる、戦略シミュレーションとしては珍しい「忙しさ」に富んだ作りとなっている。ただ、最終的に防衛拠点を守り抜けば良いだけの単純明快さなので、シミュレーションとしての敷居は低め。それがタワーディフェンスの強みでもあるのだが、総じて戦略シミュレーションに抵抗のある方でも、手軽に楽しめる内容に仕上げられている。
また、今作では複数のゲームモードを収録。好きなマップを自由にプレイできる1人用モード、ストーリーに沿ったマップ攻略が楽しめる絵巻モード、そして最大二人までの対戦プレイが楽しめる2人用モードと、様々な楽しみ方ができる。
特に1人用モードは、一つのマップを集中的にプレイできる『曲輪』、三マップ連続の連戦が楽しめる『城』の二つの異なるスタイルで遊ぶことができ、単純にマップを攻略していくだけで終わらせない、広がりが表現されているのが特徴。手軽にサクッとプレイするのも、どっぷりプレイするのもありの、なかなか懐の広い仕上がりとなっている。
マップ総数も全部で30と、一マップのプレイ時間が短いのを考慮するとやや少ない感もあるが、先の二つのスタイルで、異なった手応えが味わえるようになっているので、やり甲斐はある。更に極端な難易度の隠しマップがあるなど、物足りない方向けのおまけも万全だ。 全体としては、結構コンパクトな作り。ただ、スタイルごとに違った遊び方ができるので、なかなか深みのある出来となっている。ストーリーとかは一切ないので淡々としているが、やり応えはバッチリだ。
1人用には無い、ストーリーが存在する『絵巻』もなかなかの出来栄え。
全マップ三連戦と本格的な構成となっており、敵との全面勝負だからこその手応えを味わうことができる。ストーリーに沿ってプレイするスタイルも、タワーディフェンスとしては新鮮で、このジャンルの新たな可能性が掘り下げられているのも面白いところだ。ストーリーが加わると、タワーディフェンスはどう発展するのかと、そんな答えがこのモードにはある。
もう一つの対戦プレイが楽しめる2人用も個性的な内容で、というタワーディフェンスとしては新しいゲーム性を演出しているのが印象的。対戦環境の敷居も低く、基本的にソフト一本だけで遊べてしまうというのも良心的だ。
惜しむべきはWi-Fiコネクションに対応してなく、仮にそれができればより魅力的なものへ化けてたと思う事だが、タワーディフェンスの新たなゲーム性を模索する為にというのならば、それも仕方が無い。ただ、可能性は十分に発揮されていたので、次回作ではそのネットワーク対戦を実現して欲しいと思う次第である。厳しいものがあるかもしれないが。
このようにルールは単純ながら、様々な遊び方を本編に収録。じっくり遊ぶ事も、手軽に遊ぶ事も両方味わえる携帯ゲーム機らしい特色、そしてFLASHとは異なるゲームソフト単体だからこその強みが活かされた内容に仕上げられている。

だがこれでは、FLASHにあるタワーディフェンスに毛が生えた程度にしか見えないのも事実。単にそれをDSのゲームにし直しただけの内容と、思ってしまうだろう。実際、本当にそんな感じ。ゲーム性とか、対戦プレイは省いてほとんどFLASHのタワーディフェンスそのもので、その手のものをプレイした経験のある方なら、真新しさはほとんど感じられないだろう。『ロックス・クエスト』のような建設と防衛を分けると言った、独自の工夫も皆無なので尚更。しかし、そんな真新しさが薄い反面、ある部分だけは突出した出来を誇っている。
それはゲーム全体の「分かり易さ」だ。基本ルールは今更言うまでも無いとして、マップに配置できるユニットの種類とその特徴、配置できるポイントなど、そう言ったものが見た目ですぐ、理解できるように仕上げられており、抜群の取っ付き易さを演出している。特にユニット全般の分かり易さは特筆すべきものがある。槍兵なら槍で攻撃するユニット、弓兵なら弓で攻撃するユニットと言ったように、名前がその特徴を現しているので、ゲームを始めた途端にすぐ飲み込むことができる。更にマップに配置したユニットは、資金を追加する事で強化させる事もできるのだが、これも強化されたらユニットの名前が変わる…という事もなく、単にレベル2と色が変わる程度で、見た目で強いか弱いかを判断できるような配慮が凝らされているのだ。なので、沢山のユニットをマップに配置し、どれが強いユニットかの見分けも付け易いので、素早い戦略が組み立てられる。敵に応じた対応の取り方も分かり易い。例えば、空を飛ぶ敵は槍兵だと攻撃が届かないので、弓兵をで応じさせたり。固い敵(ボスを含む)には、地上の敵に大ダメージを与える鉄砲(兵)を配置させて応じるか、或いは周囲のユニットの能力を底上げさせる武将を配置させたりと言ったように。単に特徴だけでなく、応じられる敵の種類とかも見た目で分かり易くされているおり、適切且つ早い判断が下し易いのである。ユニットの数が6つと、少なめに限られているのもその判断のし易さにアクセントを与えていると言ってもいいだろう。
そのような感じに、見た目ですぐにわかると言う直感的な工夫が隅々まで凝らされており、只でさえ分かり易いタワーディフェンスを更に分かり易いものへと昇華させている。 全体の世界観が和風と、日本人に親しみ易いものとされているので尚更。さながら、戦略シミュレーションの敷居を下げた代表作、任天堂の『ファミコンウォーズ』を髣髴させるような配慮が、今作では徹底されているのである。ファンタジーとかそういうものが中心で、配置する砲台とかもそれに準じたものが多かったりするタワーディフェンスのゲームで、こうも親しみ易さを引き出したのは、まさにこのジャンルの盲点を突いたと言っても過言では無いだろう。
勿論、単に分かり易くしただけでない。分かり易くありながら、バランス調整も含め内容は本格的で、タワーディフェンス独特のアドリブが要される戦略性をきちんと表現したものに仕上げられている。30と数は少ないマップも、敵の侵攻ルートと種類共にバリエーションが多彩で、一つ一つの個性が尊重された丁寧な作り込みが成されている。
そして、リアルタイムだからこその「忙しさ」も健在。遊び始めるとつい時間を忘れてしまう熱中度もまた然りだ。戦闘に集中できるよう、敵を倒した時に出現するアイテムは自動で取得されるなど、プレイの快適さを意識した気配りも徹底されており、そこに関しては、一般のタワーディフェンスゲームを凌駕していると言っても良いほど。作りはシンプルなのだけど、中身は本格派というのは、まさに『ファミコンウォーズ』の系譜だ。タワーディフェンス自体は、戦略シミュレーションとは違ってそこまでマニアックと言う訳ではないが、それでも誰にでも遊べるように分かり易くしたこれらの工夫は、このジャンルをもっと世に広めて多くの人に楽しんでもらいたいというスタッフの思いが溢れている。
そういう意味では今作は、タワーディフェンスというゲームを体験した事の無い人にも遊び易くした、まさにターニングポイント的作品というに相応しいと言っても良いだろう。同ジャンルの入門編として、これほど申し分の無いゲームは他に無い。それほどまでに遊び易さが半端でないのだ。

ただ、入門編としての宿命か、全体的なボリュームややり込み要素が乏しいのは残念なところ。特に後者はスコアアタック以外に難易度の高いモードとかがあったりすれば完璧だった。一応、その補足として隠しマップも用意されているが、できればそれに留まらず、もっと頑張って欲しかったところである。
また、バランスも全体としては絶妙なのだが、一部マップの戦略がパターン化するのも気になる。このユニットとこの量で戦わないと、後が厳しいと言った具合に。マップ上のユニット配置が固定されているが故の弊害とも言えるが、ここは正直な所、もう少し応用の利く調整を徹底して頂きたかった。攻防のバランスは申し分ないだけに、そこはちょっと勿体無い。
逆に操作性はかなり秀逸。ボタン操作、タッチペンの両方に対応しており、その二つとも驚くほど快適なレスポンスを実現している。直感的に且つ、正確に動かせるその気持ちよさは、任天堂並と言ってもいいかも知れない。
グラフィックと音楽も及第点の出来。絵巻モードだけで展開されるシナリオも、シンプルな王道モノだが、そのツボを上手く抑えた内容に仕上げられている。演出もシンプルではあるが、効果音の使い方が上手く、特に敵を倒した時の可愛らしい(?)悲鳴は微笑ましいものがある。チマチマ感を余すことなく表現した、エフェクト全般のグラフィックも印象的だ。

舞台となるマップの大半が実在する日本の城だったり、またストーリー上に聞き覚えのあるキャラが登場したりなど、世界観も魅力的なものに仕上げられており、単にゲームとしての分かり易さを出す為の存在として収まってないのも秀逸。
入門編故の乏しい内容、中断セーブ機能が無い、カーソルがやや見落とし易いと言った欠点も多いが、総じて全体の完成度は突出している。タワーディフェンスの魅力を殺さず、分かり易くまとめ上げた内容から独特の戦略性を始めとする隙の無い丁寧な作りが光る今作。タワーディフェンスというゲームを知るには最適の一本にして、傑作だ。DSを持ってるユーザーなら是非、プレイしてみて欲しい。どういうゲームかが知れる体験版もあるので、気になる方はお試しあれ。
また、今作はDSiWareで簡易版として『甘口!大籠城』というものもある。
200円で楽しめるので、こちらもオススメだ。そちらが気に入ったら、今作もプレイしてみて頂きたい。
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