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≫昆虫ウォーズ
■発売元 サクセス
■ジャンル シミュレーションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 2つ+中断1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応
■総説明書ページ数 42ページ
■推定クリア時間 25〜30時間(エンディング目的)、80〜120時間(完全攻略目的)
それはある夏の日の、何でもない日の出来事だった。
小学生のヤマトとツバサは、今日も学校の裏山に昆虫を探しにやって来ていた。
そしてヤマトはカブトムシ、ツバサはモンシロチョウを見つけるのだが、その二匹は普通の昆虫ではなかった。突如、その二匹は彼らに対して喋り始めたのである。

二匹は『ムシワールド』と呼ばれる異世界から来たと言い、カブト、ホワイトと名乗った。二匹は『ムシワールド』の危機を救う為のパートナーを探しているという。

やがてヤマトとツバサの二人は、二匹の説得に応じて『ムシワールド』へと飛び立つ。
そこで彼らを待っていたのは巨大なムシ型ロボット『ムシボーグ』の襲撃。知恵と意思を持った昆虫達の住む世界『ムシワールド』は、突如として現れた黒い『ムシボーグ』達によって、今まさにその平和が乱されようとしていたのである。

かくして、『ムシワールド』を救う為の長き戦いの旅が始まった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆正統派をこだわり抜いた、取っ付き易さが秀逸なターン制のメインゲームシステム
◆敵配置から地形配置まで、考える面白さを徹底的に貫いた巧なマップデザイン(使い回しも少なく、各マップごとに新鮮な手応えを堪能できるのもグッド)
◆格闘専門・射撃専門・砲撃専門など、各々の特徴が明確に切り分けられた、こだわりのバランス調整が光る全種類以上ものユニット(ムシボーグ)
◆武器パーツ装備、エンブレムエディットなど、プラモデル好きはたまらないカスタマイズ要素の数々(武器パーツは190種類以上と盛り沢山!)
◆初心者救済処・やり込み要素として、見事に機能しているフリーマップ『古代の樹海』
◆丁寧なチュートリアル、3種類の難易度など痒い所に手の届いた、充実のサポート機能
◆選んだコマンドで戦局が左右する、絶妙な調整が見事な奥深いバトルシステム
◆スキップ機能非搭載ながら、驚くほどスピーディに展開するバトル演出(煩わしさ皆無!)
◆ミニゲームを成功させる事で必殺技が発動する、その仕組みと発想がユニークな『コマンドカード』による一発逆転要素
◆ボタンレスポンスからカーソル移動まで、快適さが尊重された抜群の操作性
◆マップ総数80以上、カード収集等のやり込み要素完備と、充実しまくりの総計ボリューム
◆マップのドット絵、バトルの3DCGまで、いずれも丁寧に描き込まれた、良質のグラフィック
◆曲数こそ少なめだが、壮大で熱い旋律のものが盛り沢山の桜庭統氏による秀逸な音楽
◆王道の内容ながら、友情や葛藤など大人でも見応え満点の良質なシナリオ
◆シナリオを盛り上げる、魅力的で濃過ぎる登場キャラクター達(特にヒュードル”さん”)

--- Bad Point ---
◆ダサ過ぎるタイトル(見事に名前損してる)
◆選択キャンセルの効かない、バトルの攻撃コマンド選択画面(地味に痛い)
◆面倒臭くて、ゲームテンポを崩している『コマンドカード』のミニゲーム(操作がタッチペン操作限定なのも×。せめてボタンでもできるようにして欲しかった)
◆ミニゲーム合戦となり、鬱陶しくなる後半マップ(特に『古代の樹海』の後半が酷い)
◆ステータス画面等に表示されない所持コマンドカード(確認できるようにして欲しかった)
◆欠落したオプションのコンフィング機能(操作設定やメッセージ速度などの調整が無い)
▼Review ≪Last Update : 3/8/2009≫
細い隙間から、我らがヒーロー登場!

怪しげな容姿など気にしちゃいけない!


『おさわり探偵 小沢里奈』シリーズ、『降魔霊符伝イヅナ』など、多彩なオリジナルタイトルをリリースしているサクセスが放つ、完全新作のシミュレーションRPG。

怪しいタイトル名を思わせぬ、驚異的な作り込みの数々が光る、DS屈指の名作だ。

ゲーム内容はクォータービュー(斜め視点)で展開する、ターン制のシミュレーションRPG。個性豊かな昆虫メカ『ムシボーグ』達をカーソルで動かしてマップ上の敵を倒しつつ、マップのクリア条件を達成していくというものだ。
シミュレーションRPGとしての基本的な作りはかなりオーソドックスで、これと言って真新しいと言えるようなシステムはない。過去、様々なハードで発売された多くのシミュレーションRPGをベースとし、それらの良い所を集めたかのような内容で仕上げられている。しかし、単にそれだけの内容という訳でなく、独自の要素や工夫もバッチリ。特に代表的なものとしては、戦闘システム全般とシミュレーションRPG初心者と上級者を考慮した充実した配慮の数々が挙げられる。
前者は、『格闘・射撃・砲撃』の三種類のコマンド(+カードのコマンド)を選択して展開する仕組みそのものがちょっと斬新。しかも各種攻撃はユニットごとに得意・不得意があり、カブトムシのユニットであったら格闘攻撃では無類の強さを発揮するが射撃はダメダメ、モンシロチョウのユニットであったら格闘攻撃がダメだが射撃が優れているなど、状況に応じて上手く使い分けていく必要性もきちんと演出。単純にコマンドを選べばそれで大概の戦闘がスマートに進められるという、安易なものになっていない。更に敵のターン時ではコマンドが『反撃・防御・回避』の三種類(+カード)に変化。これらに関してはユニットの個性でなく、現在のユニットの体力やマップの戦況を把握した上での判断が重要とされ、安全に守りきるか、或いは勇気を持って反撃するかの選択がプレイヤーに求められてくる。敵の攻撃を傍観し、その結果に一喜一憂するのではなく、その結果をプレイヤー側がなるべく良いものにしなければならないのである。その為、敵のターン時でも、プレイヤー側に休む間は無し。仕組み自体はシンプルなコマンド選択型システムながらも、プレイヤー側にちゃんと考えてもらいたい、そしてコントローラから手を離さないでもらいたいというこだわりが反映された、実に奥深さ満点のシステムとして仕上げられている。敵のターン時で傍観してちゃ行けないというのも、シミュレーションRPGとしては斬新。その恩恵もあって、異質の緊張感が表現されているのも特筆すべきポイントだ。
また、この戦闘システムでは『コマンドカード』と呼ばれる特殊なカードを使う事による一発逆転要素の存在も秀逸。単に使えば良いのでなく(回復系カードは別)、きちんとした効果を出したいのならば発動と同時に始まる『ミニゲーム』をこなさねばならないなど、シミュレーションRPGとしては稀なアクション要素がセットされてるのもまた、プレイヤー側に斬新な手応えを提供してくれるだろう。 そして後者も難易度選択機能、ユニットロスト無し(負けても撤退扱い)、未出撃ユニットにも配分される経験値、フリーマップによるレベル上げシステムなど大変充実。特にユニットロスト無しというのは、シミュレーションRPG初心者にはこの上ない配慮。ユニットを例え一体失ったとしても、それが失われる事は断じて無いので安心して、マップ攻略に没頭できる。しかし、失われない反面、現在プレイ中のマップには二度と復帰させられないなど、制約もあり。失われる分、プレイヤー側の大きな戦力ダウンにも繋がる為、一見救済処置のようで実はそうはなっていない。失われないと言って、熟練者は温いものをイメージしたかもしれないがそうではあらず。手応えはバッチリだ。
また、気軽に楽しみたい為に難易度選択機能、どうしてもマップがクリアできない場合の対処として、拠点メニューから自由にいけるフリーマップ『古代の樹海』でユニットのレベルを上げる救済処置もあるので、いわゆる詰まりを起こすこともほとんど無い。だから、初心者も「苦戦したらフリーマップで経験値稼ぎ⇒強くしてからマップに挑戦」と言った感じでプレイしていけば難なく楽しめる。対し、熟練者はあえてそれを制限してひたすらメインマップの攻略に務め、手応えを求める。実に色々な観点から楽しめる、懐の広い作りとなっているのである。
その他、プレイヤーが動かすユニット(駒)こと『ムシボーグ』は昆虫でありながらも、全てがロボット。その為にビジュアルも虫特有の生々しさが無いなど、虫嫌いの方への配慮として機能している。また、ロボット故の「お約束」、武器によるカスタマイズ機能も実装されており、自分だけのムシボーグを作り出す面白さもある。 更にムシボーグには『エンブレム』と呼ばれる紋章があり、それを自分でドットを打ちながら作成できる魅力的な機能まで実装。プラモデルやエディットが好きな方ならば、本編のプレイをも忘れて没頭してしまうだろう。

そんな具合にシンプルながらも結構、作り込まれている今作。実はその驚異的な作り込みの深さ、シミュレーションRPGとしての完璧な仕上がりこそが今作最大の売りであったりする。
単刀直入に言おう。今作は2007年以降に発売されたシミュレーションRPGの中では、間違いなく最高クラスの出来である。確かに上記の通りシステムに真新しさは無い。戦闘システムには特徴があるが、シミュレーションRPGとしてはかなりオーソドックスな作りだ。だが、それ故に基礎がもの凄くしっかりしている。ゲームバランス、マップデザインの二つがまさに職人的としか言い様の無い完成度の域に達しているのである。
中でもゲームバランスの素晴らしさには、シミュレーションRPGを多く経験してきたユーザーならば感動すること、間違いなしだろう。先ほどの戦闘システムの完成具合からして一目瞭然だが、各種コマンドの使用意義と戦略性、ユニットごとの得意・不得意など、シミュレーションRPGでは基本中の基本である箇所がもの凄くしっかりと作られている。
特にユニット周りのバランスは最高で、どんなにレベルを上げようとも絶対に完全無欠のユニットにはならず、必ず「得意分野」と「苦手分野」を持ったユニットになるように調整されているのが見事過ぎる。もはや、巧の技だとしか他に言い様が無い。それは武器などの装備品も同じであり、こちらも「最強」と言えるものが皆無。どれを装備しようともユニットと武器の個性が尊重されるのだ。どこが強いユニットにするのかは、全てプレイヤーの自由。単調な力押しで終わらせない為の配慮と調整が、神がかり的なレベルで出来上がっているのである。
マップデザインと敵ユニット達の配置・パラメータバランスもまた然り。何処のマップも純粋に「駒遊び」、考える面白さへのこだわりが炸裂した仕上がりとなっているのみならず、使い回しが無い(類似マップが無い)ので、どのマップでも異なる戦略が求められてくる。単純な力押しだけで乗り越えられるマップが皆無同然なのだ。パラメータバランスも単に強いだけ・弱いだけじゃなく、弱いけど強力な武器を装備している、強いけど移動力に欠けるなど、単純な発想で終えない入念な調整が図られており、非常に素晴らしい。
そして、何と言っても秀逸なのが先に紹介した難易度選択システム。『ふつう』、『むずかしい』、『ゲキムズ』の三種類の難易度が用意されているのだが、この各種難易度の全体バランスというのが単純な敵のパラメータ増加ではなく、配置とCPルーチンも含めてまる換えするという恐るべき調整となっており、それぞれ異なる戦略の醍醐味が味わえるように仕上げられているのである。更に秀逸なのがどの難易度でもしっかりとした歯応えを出してること。一番低い『ふつう』であっても力押しは厳禁、ちゃんと考えた上での行動が重要となるなど、いい加減な設定になってないのだ。なので、この『ふつう』でも十分な歯応えと満足感が堪能可能。本当に、こんな怪しげで子供っぽいタイトルなのに作り込み過ぎ!としか言い様の無い、凄いものに仕上げられているのだ。バランス周りについては、コアなプレイヤーならばその凄さが少しでも分かっただろうと思う。全てがマジなのだ。
近年のシミュレーションRPGは、キャラクターと演出重視でゲームを疎かにするものがザラとなり、真にシミュレーションRPGというゲームを遊びたいユーザーにとっては欲求不満な状況となっている。そんな最中に出た今作は、まさに真にシミュレーションRPGというゲームを遊びたいユーザーが待ち望んだ一本と言えるだろう。タイトル名がダサ過ぎではあるが、断言しよう。本当にこれは真にシミュレーションRPGというゲームを遊びたいユーザーが待ち望んだ一本である。冗談抜きにこれは面白い、否、面白過ぎると断言できる、究極のシミュレーションRPGなのだ。

その他、操作性やインターフェース周り、テンポ周りもかなりの完成度。特に操作性、レスポンスは処理速度が非常に早いのもあって非常に快適。とにかく単にコマンドを決定するだけでも気持ち良い。ミニゲームのタッチペン限定仕様は残念な所ではあるが、総じてプログラマーの技術力とセンスの高さが存分に発揮された仕上がりとなっている。更に処理落ちが少なく、モタモタした動作でストレスを溜める事がほとんど無い辺りも凄いの一言だ。
グラフィックもマップ上のドット絵、戦闘シーンにおける3Dグラフィックなど総じて及第点。特に戦闘シーンで見れるムシボーグ達のセンス溢れるメカデザインは必見だ。音楽も曲数は少ないのだが、後半のマップ曲やイベント曲など良質なものが揃っている。しかも、驚くべきことに今作の音楽は『テイルズ・オブ〜』シリーズや『スターオーシャン』シリーズでお馴染みの桜庭統氏が作曲。いつもの桜庭節が効いた曲もちゃんと用意されているので、ファンならば要チェックしなければいけません!(命令)
そしてメインシナリオも子供向けで王道ながら、大人でも十分に見耐え得る内容に仕上げられている。キャラクターも魅力的な面子が盛り沢山で、その中でもゴキブリ(!)のムシボーグを操る最強の漢(おとこ)『ヒュードル”さん”』は超必見。そのあまりのカッコよさと面白さに、誰もが「ヒュードルさ〜ん!」と呼びたくなってしまうだろう(大げさ)。

とにかく、作り込みのレベルが桁違いにも限度がある本作。タッチペンで行うミニゲームが煩わしかったり、操作変更などのオプション(コンフィング)が不足していたり、戦闘システムで敵を選んだ後にキャンセルが出来なかったりなど、細かい欠点もあるが、ゲームの完成度自体が強烈過ぎるので、遊んでいて全く気にならないのが凄い。
昨今の力押し主体のシミュレーションRPGに辟易気味のプレイヤー、シミュレーションRPG未体験の初心者に送る、ニンテンドーDSシミュレーションRPG最高傑作『昆虫ウォーズ』。
子供っぽ過ぎるタイトルなんて気にするな!
気にしている時点で、貴方はとんでもない大物を見逃している!
これはニンテンドーDSを持っている全てのユーザーが遊ぶべき、史上最強の名作だ。文句無しにお薦め!特にシミュレーションRPGならば、絶対にプレイするべし。義務レベルだ。
このゲームを遊ばずとして、ニンテンドーDSのみならず、シミュレーションRPGは語れない。
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