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≫カルドセプトDS
■発売元 セガ
■開発元 大宮ソフト
■ジャンル トレーディングカード・ボードゲーム
■CERO B(12歳以上対象) ※セクシャル描写あり
■定価 5229円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DS振動カートリッジ対応、DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 53ページ
■推定クリア時間 16〜25時間(エンディング目的)、90〜150時間(完全攻略目的)
カルドセプト、それは絶対神『カルドラ』が宇宙を司る為に創り出した『創造と破壊の書』。
その力を支配した者は、新たなる世界を創造できるという。

遥か昔、カルドラと抑制神バルテアスはこの書を巡り、戦いを繰り広げた。その最後の戦いの地と伝えられる大陸『パブラシュカ』では、カルドラによって作られたクリーチャー『人間』が繁栄を誇っていた。
しかし、各地で出土する小さなカード状の石版が『カルドセプト』の破片と判明した後、事態は急変。伝説の書物の欠片を巡る争いが、カードの力を解放する能力者『セプター』達によって引き起こされ、大陸全土は混乱に陥る。
人々は大陸に平和をもたらす為に戦う、真のセプターを待ち望んだ。

そして一人の若者が現れた。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ボードゲームとカードゲームを織り交ぜた、独創性の高いゲームシステム
◆ゲーム本編のテンポの良さを引き立てる、レスポンスの良い操作性
◆総計370種類以上と、圧倒的な量が用意されたカード(しかも、後々持っていて無駄になるものがほとんど無い)
◆優れたバランスの恩恵により、安定した頭脳戦が満喫できる対戦プレイ(オンライン対戦も実装と実に贅沢)
◆昔懐かしさ溢れるドット絵で描かれた、暖かみのあるグラフィック
◆何処となく大人っぽく、質素な雰囲気を醸し出している独特の音楽
◆地味だけど落ち着いた雰囲気に富んだ演出(特に英語ボイスのアナウンスが秀逸)
◆地道に領地占領に励むのも良し、マップを周回する事だけに特化して攻めるのも良しなど、恐ろしいほど幅の広い戦略性(カードを入れるブックの編集も熱い)
◆先の読めない展開と戦略の幅広さから醸し出される、圧倒的な中毒性
◆先の読めない展開を大いに盛り上げる、敵CPUの高度な思考ルーチン(結構、賢い)
◆能力面で突出したカードが少なく、均衡が保たれている職人的なゲームバランス
◆秀逸なWi-Fi対戦の切断対策(反則プレイヤーは隔離するなど、良い感じの厳しさ)
◆オーソドックスな周回方式に分岐タイプまで、彩り豊かな作りのボードマップ
◆全編チュートリアルでありながら、一定した歯応えも兼ね備えた『ストーリーモード』
◆中断セーブ機能にプレイ成績の記録など、充実したサポート&オプション機能
◆エンディング目的なら短いが、極め出すとやり応え抜群の全体ボリューム

--- Bad Point ---
◆ストーリーモードではバランスブレイカーと化すクリーチャーカード『オールドウィロウ』(但し、それほどの威力にするに当たっては最強状態に成長させる必要が生じる)
◆ルールは分かり易い反面、勝てるコツを掴むまでが難しい敷居の高さ(定石紹介など、あっても良かったような)
◆獲得条件が厳し過ぎるやり込み要素の『メダル』(領地の10連鎖など…)
◆少し小さめの文字フォント(主にメッセージ周り)
◆1プレイの長さ(速くプレイして1時間ほどはかかる)
▼Review ≪Last Update : 11/14/2010≫
はまり過ぎた結果が徹夜。

自制しないと大変です。


1997年にセガサターンで発売、独創的なシステムと高い戦略性で熱狂的なファンを生み出した傑作『カルドセプト』の最新作にして、シリーズ初の携帯ゲーム機用作品。1999年にプレイステーションで発売された『カルドセプト エキスパンション』をベースにした移植作でもある。開発は過去のシリーズ全般を手掛けてきた大宮ソフトが担当。

やり始めるともう、止まらない。
底無しの奥深さと職人的な作り込みが光る、DS屈指の時間泥棒ゲームだ。

ゲーム内容は、トレーディングカードゲームと双六を織り交ぜた、その名もトレーディングカード・ボードゲーム。プレイヤーは『セプター』と呼ばれる魔術師となり、手持ちの魔力を消費しながらカードを駆使し、クリーチャーを召喚してマップ上の領地(マス目)を占領。最終的に一定数の魔力を溜めてスタート地点の城に到達するか、制限ラウンド(ターン)数までに最も魔力を溜めたセプターが勝利、というのが大まかな概略だ。より簡単(且つ乱暴)に言ってしまうと、魔力を溜めるのが目的のゲームである。
本編はターン方式のボードゲームと同様に展開。ダイス(サイコロ)を振り、出た目に従ってマップ上を進んで行く。普通のボードゲームと違うのは、ターンの開始と共にカードが一枚引かれること。このカードを使い、プレイヤーは領地の占領などを行っていく事になる。カードは領地を占領する『クリーチャーカード』、特殊効果を発生させる『スペルカード』、そしてバトル(※後述)にて使われる『アイテムカード』の計三種類が存在。これらを様々な状況に応じ、使い分けていく。ターン時に引かれるカードは、プレイヤーの持つ『ブック』から引かれる仕組み。『ブック』とは俗に言うカードデッキの事で、1つのブックの中に50枚のカードを組み込み、編集する事ができる。ブックに入れられる50枚のカードには一つのルールが設けられているのだが、それに関しては解説すると長くなってしまうので割愛。とりあえず、このブックからカードが引かれ、プレイヤーがそのターンで行える行動が限られてくる。なお、ゲーム中に手札として持てるカードの枚数は6枚。これを超えると1枚、捨てなければならなくなる。その辺の仕組みはトレーディングカードゲームを踏襲している。
また1ターンは、

ブックからカードを1枚引く

スペルカードを使用する(※ここでしか使えない)

ダイス(サイコロ)を振ってマップを移動

領地(マス目)にクリーチャーを配置して占領、発展させる。
また、占領済みのクリーチャーを追い出すために戦闘を行う。

ターン終了


という流れを基本として展開。移動して止まった領地(マス目)に相手のクリーチャーがいない場合は、クリーチャーを召喚して配置し、占領する事ができる。対し、相手のクリーチャーが配置されてる場合は通行料として魔力を支払わなければならない。他に選択肢として、相手のクリーチャーに自分のクリーチャーをぶつけて『戦闘』を起こす事ができ、ここで相手を倒すと領地を自分のものにできる。しかし、負けた場合は通行料を支払うハメになる。支払った通行料は相手の魔力として加算。魔力が加算されればされるほど、強力なクリーチャーを召喚できたり、便利なスペルカードやアイテムカードの使用に余裕が出てくる。また、占領した土地は一度そのマスに止まるか、スタート地点の城のマスなどに止まった際、魔力を割いて発展させる事ができる。発展させると、領地の通行料は上昇。沢山魔力を割き、発展させればさせるほど、その通行料は上昇。相手に致命的なダメージを与え、沢山の魔力を獲得する事ができるようになっていく。
このように領地の通行料で魔力を稼ぎ、クリーチャーの召喚などで力の差を広げて行くのが戦い方の基本。如何に相手に魔力を沢山支払わせ、勝利条件となる魔力総数を目指すかが戦略の肝となってくる。しかも、実は魔力を稼ぐ手段はこれだけであらず。通行料を支払う以外に周回ボーナスを重ねるというのがある。今作ではマップが周回する形で構成されており、一周してスタート地点の城に到達すると、『周回ボーナス』として魔力が獲得できる。この周回ボーナスは回を重ねるごとに獲得できる魔力が上昇。最初は100だったのが200⇒300とどんどん上がって行く。故に、ダイスの目数を増やすスペルカードを仕込み、周回を重ねていく…なんて大胆な手を使って戦うのもアリ。ボードゲームの文法に倣った戦略まで、一つの手段として使えてしまう。結構、大らかな作りになっているのである。
他にも『聖堂』という施設で『護符』なるアイテムを購入し、領地の発展と同時にその価値を上げ、売却して利益を得る、株取引な作戦も使えるなど、戦略の種類は数知れず。護符で稼ぐ作戦や戦闘時の結果を左右する『属性』(クリーチャーにも属性がある)、同じ属性のクリーチャーが並んだ領地を作り、一箇所の発展と同時にその影響を他にも及ぼす連鎖など、戦略に影響を与える要素も沢山あるのだが、これも解説すると長くなるので割愛。
とにかく、駆け足で紹介してきたが、このようにボードゲームの要素とカードゲームの要素が絶妙に織り交ぜられた、非常に戦略性の高いゲームとなっている。ややこしそうと感じたかもしれないが、システム自体の敷居は思った以上に低めで取っ付き易い。また、基本的な遊び方を教えてくれる全編チュートリアルの『ストーリーモード』も実装されているので、説明書をさほど読まずとも気軽に楽しめる設計。導入部から、ストーリーを楽しみながらゲームルールを学んでいけるので、初めての人にも優しい作りとなっている。システムの中身自体は非常に本格的で、尚且つ複雑ではある。だが、救済処置がしっかりしてるので取っ付き易さは抜群。ゲームとしての新しさを持ちつつも、遊び易さも万全というある意味、奇跡のような仕上がり。まさに職人的なセンスが炸裂したゲームとなっている。

そんな今作最大の魅力は高い戦略性と中毒性、そして絶妙なゲームバランスの三つ。
第一の戦略性の高さに関しては今更語るまでも無いだろう。先に一通り解説してしまった通り、領地の占領に特化し、真っ向勝負を挑むも良し、ダイスのマス目を増やす事だけに特化し、周回ボーナス稼ぎで短期決戦に臨むなど、幅広い戦略を組み立てる事ができ、非常に奥が深い。カードゲームの根詰めで戦う面白さ、ボードゲームの迅速に行動して先手を取る面白さ、その双方の魅力が存分に発揮されており、斬新なゲーム性を演出している。
そして、第二の中毒性の高さはその戦略性の高さから明らかだろう。とにかく、戦略の幅が半端じゃなく広いので、少しでもコツを掴んだり、その広さに気付けば「あれもしたい、これもしたい」な感じでズブズブとはまっていく。更にその魅力を引き立てるかの如く、今作はCPU側の思考ルーチンもワリと賢く作られている。なので、こちらの裏をかく行動を取ったりと、先の読めない展開が繰り広げられていく。魔力で優勢と思ったら、思わぬ反撃行動を取って、僅差になってしまったり、果ては逆転されてしまったりと。そんな展開が繰り広げられていくのだから、目が離せなくなってしまうのも止むを得ず。そして最終的には1時間程度で終わらせるはずが、4〜5時間もプレイしてしまったと言った具合にあっという間に時間が疾風の如く過ぎ去る。もう、この辺で察したかもしれないが今作は、実は結構な時間泥棒ゲーなのである。なので、暇潰しでやろうと思ったら、貴重な時間まで潰れた…なんて事が平気で起こり得る。プレイヤーを引き付けた上で絶対に手放さぬ、驚異の毒が秘められているのである。まさに戦略性の高さと思考ルーチンの賜物と言ったところか。また、ボードゲームとカードゲーム、共に不確定要素が一種の鍵であるからこその先の読めなさが強いのも、今作の毒性の高さを引き立ててると言っても良いだろう。ゲーム性が斬新な上に脅威の毒性まで持つという凄まじさ。如何にこのゲームのシステムとバランスが練られているかを痛感させられる。
その第三の魅力たるバランスの素晴らしさも特筆に値する。主にカード周りだが、どれをとっても完全無敵と言える様な強力なのものが少なく、凄く魅力的な能力を秘めてるけど、大きな穴があると言った丁寧な個性付けが成されているのには感心させられている。しかも、今作では全部で370種類以上ものカードが登場。それほど沢山のカードが登場しながら、何一つ無駄と言えるものが無く、バランスを破壊しかねないものが存在しないのは、まさに職人の技。弱過ぎるカードにしても、他のスペルカードなどとの組み合わせで強いカードとの肩を並べる性能を発揮するなど、使い道を出すように設計されているのには驚きを禁じえない。領地を強化するととんでもなく強く、危なくなってしまうカードもあるのだが、それにしても成長するまでが長いという弱点を持ってるなど、均衡を保つ工夫が万全。一体、どれほど調整に時間をかけたんだ!?…と突っ込みたくなるほどだ。
この職人的なバランス調整の恩恵もあり、対人戦も非常に盛り上がる。まさに頭脳勝負とも言える白熱の戦いは、プレイヤーに終わりの無い戦いの日々を提供する。更にWi-Fiコネクションによるネットワーク対戦機能も搭載されているので、周囲に対戦相手が居なくとも対人戦を楽しめるのも有り難いところだ。
このWi-Fiコネクションの対戦システムも非常に完成度が高く、ボイスチャット対応、切断対策としてプレイヤー隔離のペナルティを実装、そして通信ラグの少ないテンポの良さと、遊び易さ抜群の環境を確立している。優れたバランス故の白熱した対戦、その対戦の魅力を損ねないように工夫したWi-Fiと、その隙の無い作り込みには圧倒させられる。
ボードゲームとカードゲーム、冷静に見れば組み合わせ的に無謀かもしれないこの二つ。その双方の魅力が最大限に活きるようなゲームデザインを施し、カードの能力などにも入念な調整を図り、最高の対戦環境と他に無いゲーム性を確立。しかも、パッと見の複雑さに反して意外に取っ付き易いという触り心地の良さまで実現してしまっているこのゲーム。これを職人の所業という以外に何と言うべきか。そんな具合に三つも魅力があるのも当然と言っても良いほど、今作は細部の作り込みが常軌を逸しているのである。まさにこれぞ、正真正銘の職人技と断言できるほどに。一度、対人戦を体験してみれば、その凄さは直に伝わって来る。そして、痛いほど思い知るだろう。何て深いゲームだ、と。

完成度の高さはシステムやバランスに留まらず。操作性、メニュー全般のインターフェースも素晴らしく、ストレスの無い快適な環境を実現している。特にキーレスポンスは大変素晴らしく、ゲーム本編のテンポの良さを引き立てている。
全編チュートリアルで構成された『ストーリーモード』のほか、中断セーブ機能、プレイ成績の記録などオプション周りも充実。痒い所まで手の行き届いた設計には絶妙なバランスと同等の職人の技が炸裂している。
ボリュームも純粋にエンディングを見る目的でプレイするのなら短め。しかし、極め出すとほぼ無限。止めように止められなくなるので、節度を持ってプレイしないと大変な事になる。
グラフィック、音楽なども総じて地味ではあるが丁寧に作られている。特に何処と無く大人っぽさを醸し出している音楽、効果音、英語ボイスによる実況などは邪魔になり過ぎず、適切なレベルでゲーム本編を盛り上げてくれる。音楽自体の出来もなかなか。作曲は『イース』や『アクトレイザー』で知られる古代祐三氏なので、その素晴らしさは折り紙付きだ。
演出も地味ではあるものの、ムービーを挟んだり、何気にそこに限ってフルボイスだったりと、結構凝ってる。とは言え、数が控え目な辺りは今作の主役はゲーム本編なんだ、というのを主張している表れとも言えるだろう。

初代カルドセプトからプレイしているファンへのサービスとして、漫画版に登場するキャラクターが登場したりと言ったおまけも収録。また、これはゲームとは関係ないが、今作の公式サイトは今なお、更新が続いており、ランキング発表が行われたりなど、購入したユーザーに長く楽しんでもらう為のアフターフォローが万全なのにも驚かされる。
強力過ぎるカードがストーリーモードに限り、無敵同然の強さを発揮してしまう事、対戦ルールの同盟戦が対人戦限定などの些細な欠点もありはするものの、素晴らしいバランスに高いゲーム性がそれを打ち消している。カードゲームとボードゲームを絡めた斬新なシステムもさる事ながら、奥深い戦略性と圧倒的な中毒性、そして優れたバランスと全編を通して職人の技が炸裂しているこの『カルドセプトDS』。これはニンテンドーDSを持っているプレイヤーなら要プレイの名作だ。人を選ぶ部分もあるが、合う人なら一度はまれば抜け出せなくなる。オススメです。
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